第437話 松尾家の秘密 ~盛り上がる?~

「ということで、トンネル抜けるよ。六石君」

「……マジですか」

「マジマジ」


 目の前には真っ暗のトンネル。明らかにやばい雰囲気しかない。


 静かな森?の中。俺は七和先輩と一緒に移動中――移動中……だよな。目的地はわからない。聞いているのは――なんだっけ?もうわからなくなってきたが。

 あっ、キャンプだっけ?でも――確か駅から歩き出すときはこんなことになるとは思わなかったのだが――どうしてこうなったのだろうか?

 さすがに不安。これはマジで引き返した方がいいのではないだろうか?という現状なのだが。何故か七和先輩に迷いの表情が全くない。と、思う。暗いからほとんど表情なんて見えないでも――迷いはないように声から思う。


 これは俺がおかしいのだろうか?

 新聞部ならこういうことも当たり前にあるのか?

 いやいやないような――取材?にしてはって体張りすぎだよな?ってか、そもそもこれ取材じゃなかったか。えっと――あれ?俺マジでなんでこんなことになっているのだろうか?誰か教えてくれ。そうだ。松尾――と、叫んでみるか。などと俺が思った時だった。


「六石君ー。行くよーほらほら。トンネルデート」

「絶対ダメなやつでしょ!?」


 この先輩やばいかもしれない。

 ――訂正。俺の彼女――やばい。でも――2割くらい現状を楽しんでいる俺がいなくもない――って、少なすぎるよな。普通彼女と2人っきりならもっと――だよな。明らかにこれは付いていくべきなのか迷ってしまう現状だ。

 そしてこういうなんか密着出来るシチュエーションならもっとなんというか。いろいろな感情が――だが。今は進んではいけない。この先何かある。やばい未来予想図が――下手したら死もある。みたいな感情いうのか。とにかく危ない感じで埋め尽くされているというか。あれだ。


 ヤバい。


「六石君どうしたの?」

「七和先輩が動じてなさ過ぎてびっくりです」

「そりゃこんな経験何度もしてるからね」

「マジですか」

「うんうん。嘘」

「――ちょっと!?」

「いいじゃん。死にはしないよ」

「マジでやばいですから。そ。そうだ。七和先輩。来た道戻りましょうそれが安全」

「えー、森の中で迷子はやばくない?」

「トンネルもやばいと思いますが――」

「わかったわかった。ほらほら。私の腕に捕まる許可を与えるから」

「普通ならうれしいことのはずだが――今は何と言えない――」


 どうしても進む気満々の七和先輩。

 そりゃ腕に捕まれるのは――って、こういう時って逆だよな?などと俺が思った瞬間。


「あっそうか。こういう時は私が捕まるべきなのか」


 七和先輩も同じことに気が付いたのか。俺の方へと近寄って来て――そこそこしっかりと腕に捕まってきた。


「よし!」

「よし!じゃないと思いますけど!?」


 感触は大変良い――じゃなくて、なんでこんな山?にあるトンネルの前でこんなことをしているのか。

 

「何まだ何か必要なの?もう最近の六石君は松尾君に影響されたか。あっちは複数プレイしてるからね」

「なんか気になる発言ありましたけど――今はやっぱりそれどころじゃないと思います」

「でも六石君進まないとここで野宿になるよ?まあ私はいいけど」

「なんで七和先輩そんなに落ち着いているんですか!?この状況なかなかと思いますけど」

「余裕余裕!」


 と、言いつつも何故か俺の腕に伝わる七和先輩の力が強くなって気がしたのは――気のせいか。単にしっかり持っただけか。


「ほらほら――早く移動しようよ。こんな――本当に幽霊出ちゃいそうな場所からはさ」


 すると七和先輩が俺の腕を引っ張り歩き出す。


「って、そんなこと思うなら進むべきではないかと――って、まさかですけど七和先輩怖いの我慢してます?」

「全く」

「――」


 返事ははっきりしていたので――大丈夫そう?などと俺が思っていると、七和先輩はそのまま俺の腕を引っ張り。トンネル内へと足を進めて行った――って、俺の心の準備は!?


「あっ六石君。せっかくだしカメラカメラ」

「そんな余裕ないです!」

「新聞部失格だなー」

「無理ですよ。ってか、マジで暗い」

「後声が響くね」


 トンネル内へと足を踏み入れると。暗い。当たり前だが暗いので持っているスマホの明かりだけが頼りだ。

 トンネル内はマジで明かりがない。

 今スマホが消えたら真っ暗だろう。

 あと、多分誰も歩いていない。使われなくなってからかなり立っているのだろう。足場も悪いというか。このトンネル崩れないよな?なんか石?岩も転がっているような――。


 ぴとっ。


「~~~~!?!?」


 急に俺の首筋に冷たい何かがあたり声にならない悲鳴――って。なんだ!?マジで冷たい冷たいってなんだ!?


「ちょ。ちょ、六石君急に暴れないでよ。危ないじゃん」

「なんか首に来たんです」

「幽霊?スクープじゃんカメラカメラ。いやビデオ!」


 急に首に冷たさを感じた俺がわたわたしていると、七和先輩がそんなことを言いながら本当にカメラの準備を始めた――時だった。


「ふぎゃあああああ!?!?!?」

「ひっ!?」


 急に七和先輩の悲鳴?と、ともに俺に七和先輩が抱き付いてきて――。


 ガシャン。


 その衝撃で俺が手に持っていたスマホが手から離れて――地面に落下。それと同時にたまたまなのかライトが消えてしまい――唯一だったライトが消えたトンネル内。


 まああれだ。


「「真っ暗!?!?!?!?!?」」


 俺と――まさかの七和先輩も大慌てとなったのだった。

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