第434話 松尾家の秘密 ~トンネル~

「六石君。ちゃんと付いてきてる?」

「居ます。居ますけど――七和先輩。本当に大丈夫なんですか?このまま進んで」

「多分ね」

「多分――」


 未だに道なき道を歩いている俺と七和先輩。

 俺は目的地を知らないため。七和先輩に付いていっているだけ。そして先ほどからいろいろ不安な言葉を危機――かなり嫌な汗を背中に流しつつ歩いていた。

 七和先輩は――いつも通りだが。どの言葉がほんものか全くわからない俺だった。

はっきり言うと。めっちゃ心配。でもついていかなければ――である。


「って、ことで熊がもし出たらよろしく。私あまり周りちゃんと見えないから」


 ほんと心配だ。

 だからまじで熊居るなら危ない。あたりは暗く。草木が生い茂っているところもあるので、そのようなところに何か隠れていてもわからない。

 あと、これは声に出してはっきり言った方がいいだろう。


「サングラス外しましょう!七和先輩」


 そう、七和先輩。このたまに急斜面。崖があるような道なき道を薄暗い中歩いているというのに、何故かサングラス姿。

 いつも通りの姿なのだが。今サングラスは必要なのだろうか?もちろんサングラスをかけることで周りが見やすくなっているのならいいが。明らかに今の七和先輩の声からして周りがよく見えているとは思えない。

 じゃなくても、俺自身。目が悪いとかではなく。むしろ良い方だと思うが。そんな俺でも薄暗い中は見えにくくなっている。

 そんな状況でサングラス姿で、少しテンション高めの七和先輩――危険しかない。


「でも、それは断る」

「危ないですよ。本当に」


 なのに前を行く当の本人は慎重に歩くとかそういうことはなく。普通に。ほんと普通に歩いている。

 ちなみに七和先輩。虫が居るとかそういうのは全く気にしていないし。汚れるとかそういうのも気にしないタイプなのか。普通に歩き続けている。続けているのだが――危険な香りしかないし。


「大丈夫大丈――」


 ズルッ。


 すると、言わんこっちゃないだった。急に前を歩く七和先輩の身体のシルエットが崩れる。足をとられたらしく。斜面。先ほどの崖ほどではないが。でもかなりの斜面に七和先輩のシルエットが吸い込まれていく。


「きゃっ」

「危ない!」


 俺はとっさに七和先輩の上でを掴む。

 そして身軽?なのかはわからないが。何とか俺の力だけで七和先輩の身体を止めることに成功した。

 さすがに驚いたのか。俺が掴むと同時くらいに七和先輩も俺の腕に少ししがみ付くような感じだった。

 それもあってか。一瞬は俺も斜面の方へと身体が傾いたが。しゃがむという方法で何とかとどまることに成功。そして七和先輩も無事だった。

 ということで、道なき道に座り込む俺と七和先輩。

 ちなみにちらりと斜面の方を見てみると――5メートル?くらいだろうか?スマホのライトを照らすとそのくらいの高さだったことが判明。って、本当に怪我する可能性があったという。


「ナイス六石君。さすが私の相棒」


 でも七和先輩はというと、先ほど少し驚いた様子だった割に、今はもう普通にいつも通りという感じで話していた。サングラスをしているため。この薄暗い中で七和先輩の顔を見ると――なんか怖いというか。不気味――というのか。やっぱりサングラスいらないですよ?実は隠している目はウルウルしているとかないですよね?などと思ってると。七和先輩は俺の肩を叩きつつ。立ち上がる。


「――ほんと。七和先輩。危ないので、今はサングラスはやめましょう」

「えー」

「いや、もうマジで暗いですし」

「でも今みたいなことが起これば。六石君は私の身体に触れて、もし落ちたとしても私の身体を抱きしめて守ってくれたら――おさわり放題だよ?」

「自分の身体を大切にしてください。って、何気に今ももし落ちていたら怪我していた可能性あると思いますが――って、七和先輩。ここは――どこなんでしょうか?確か駅。公民館前駅から歩いて――どこへと向かっているんですか?ってか、公民館前駅近くにキャンプ場とか聞いたことないと思うんですが――あのあたりって住宅地だったような――?」

「まあまあ、道は大丈夫だよ」

「もうかれこれ結構な時間歩いている気がするんですが――」


 何分くらい歩いた――と言うよりもしかすると1時間以上俺たちは歩いているかもしれない。


「秘密の場所があるからね。そこまでいけばだよ」

「――本当に大丈夫なのか――って、秘密の場所?」

「さあさあ行こう!六石君も付けばわかるから」

「いや――わからないと思うんですが」


 公民館前駅のところなどあまり降りた記憶がない。そもそもないかもしれないので、そんなところから歩いたところで、俺が知っている場所などないと思うのだが――などと思っていると、七和先輩が歩き出したので、俺は慌てて追いかける。


 すると――。


「あれ?こんなところで前にトンネルあったっけ?」

「――ちょ、七和先輩。なんかすごく不気味すぎるトンネルなんですけど」


 先ほど斜面に七和先輩が落ちかけたところから少し歩くと――急に舗装された道路。でもボロボロの道路に俺たちは出て。すぐ目の前に車がギリギリ通れるようなトンネルが現れたのだった。


「――あれれ?」


 そして七和先輩も少し困惑――って、俺たちマジでどこに居るんだ?そして――これ大丈夫なのか?

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