第425話 松尾家の秘密 ~雑談~

 大学前駅の構内へと入ると、ちょうどホームに立っていた楚原さんに声をかけられた俺と結崎は楚原さんのもとへと歩いて向かっていた。

 そうそう結崎は今……それこそなんだ?室長様モードに切り替えていた。

 切り替え早いが――なんというか。ほんの少し前まで、そこそこ騒いでいた――ではないが。駅構内は人が少なく。俺と結崎は改札の近くで先ほどいろいろ言い合っていた?話していたので、楚原さん見ていたのでは?などと思いつつもとりあえず俺は普通に返事をしたのだった。

 ちなみに結崎はとなりで会釈していた。室長様モード継続中だ。なんか楚原さんが笑顔――をちらっと見せたのは気になるが。良いか。


「楚原さん。先ほどは車いす助かりました。無事に――病院にたどり着きました」


 楚原さんの前まで行った俺は楚原さんにお礼を言う。


「いやいや、あれくらいどうってことないよ。またなんかあったら声かけて」

「ありがとうございます。そして――じいちゃん骨折していたみたいで――入院。手術となりました」

「ありゃ。そりゃ大事に。大丈夫なのかい?」

「一応楽な姿勢?の時は普通にしてましたね。手術も長期間の入院にはならないと言っていたので」

「そりゃ――よかったというのか。そういえばおばあちゃんは?付き添い?」


 すると楚原さんはたぶんばあちゃんの姿がなかったからだろう。周りを見つつ聞いてきた。

 まあ正解です。楚原さんである。


「あー、まあ付き添い――ですかね。病院近くのホテルに泊まるとかで――ノリノリでホテルに行きました。多分普段と違う生活というか。何か惹かれるものがあったみたいで――」

「あはは。まあ松尾君ところから病院は――遠いか」

「そこそこかかりますからね。あと今日は休日ですが平日だとばあちゃん1人で行き来――とかになるので、まあ近くにいた方がばあちゃんも楽かと思いますが」

「それもそうか。また乗ってもらわないとだから早く元気になってもらわないとね」

「あはは。意外とすぐに元気になりそうですが――」

「まあ無理しないようにって伝えておいてよ」

「はい。ありがとうございます」


 どうやら次発車の電車は楚原さんの担当らしく。

 俺たちは大学前駅の構内へと入ってからしばらく声をかけられた楚原さんと話したのだった。

 そして、そこそこ楚原さんと話してから電車の車内へと入った。俺たちが車内へと入ると楚原さんも先頭車両の方へと移動していき。他の駅員の人と話をしていた。

 ちなみに楚原さんと話しているとき。楚原さんは一緒にいる結崎のことは触れなかったが――まあ知っていたからというか。特に話すことがなかった……いや、話さなかったが。これはこれでまた楚原先生に伝わる可能性……月曜日どうなるか。


 ちょっとだけ車内に入った後。嫌な予感がした俺だったが――車内に入った後は、楚原さんの目が無くなった。見えなくなったからか。先ほどの結崎の叩き。突っつきが再開されたので、って――これはもういいな。ポンコツ幼児化娘が駄々こねていましたとまとめておこう。ポンコツポンコツ。


「――松尾君がなんか喜んでる?」

「それはない」


 なお、途中でおかしなことを言われたので、それだけははっきり返事をしておいたのだった。

 それから少しして電車は定刻通り大学前駅を発車したのだった。


 そして、電車は順調に進み。公民館前で結崎が一度下車。何やら――ちょっと準備――などと言っていたが。そのまま休むという選択肢もあるのに。どうしても松尾家に再度来ようとしているみたいだった。

 まあ長宮さんが来るのが確定しているので、結崎にはいてほしいが。


 そんなこんなで結崎と別れたたと。俺は車内に1人。

 いつも通りの状態で電車に揺られて田園駅へ。

 そして田園駅へと降りたつと――。


 静かだった。

 いや、これもいつも通り。電車の音と木々の揺れる音だけなのだが。

 今までがにぎやかすぎたため。電車から降りると急にいつもは感じない何とも言えぬ感覚があった。

 そして、そんなことを思いつつ俺は駅を出ようとすると――また楚原さんに捕まり。


「また何かあったら遠慮なく声かけて」


 と、最後に軽い挨拶かと思ってたら。そのまままた少し雑談となって。


「――そういえば、結崎さん。すごくご機嫌だったね。おばあちゃんたちと少し前に乗った時もだったけど、さっきもご機嫌だったね。あと、松尾君と2人の時はなかなか甘えん坊?」

「――あはは……」


 どうやら楚原さんわかっていて、いや、本人の前で言わなかっただけで、いろいろ感じていたらしい。というか、やはり結崎の行動バレていた。

 結崎。そのうち楚原さんにもいじられるかもね。あっ楚原先生にも注意かもね。って、結崎どんどん敵を増やすではないが。警戒すべき人が増えているような――まあそれは本人の行動の結果か。

 久しぶりにそのうち結崎がダウンしそうな予感がしつつ。今度こそ楚原さんと別れ。俺は1人で松尾家へと坂道を登って行った。

 次こそ静かな帰り道だったな。


 そうそう、1人になったところで、あることの確認をしておこう。

 みんな忘れているいるかもしれないが。って、俺は誰に言っているのか。まあいいか。とにかくだ。なんかいろいろ起こっている松尾家だが。実はまだ、文化祭が終わった翌日のことである。

 これ大切。

 ほんと文化祭より。文化祭の後の方が大変という謎なこと?が起こっている俺の周りというね。

 本当は文化祭もなんやかんやで大変だったから。のんびりしたいが。って、本当は1人になったので、のんびりできるはずなのだが。なんかね。この後大変そうだから。


 俺が1人でそんな余計なことを考えて家へと帰ってくると。こちらも静まり帰った松尾家――って、なんか玄関のところにキャリーケースが見えるのですが。あれは……なんだ?


 いや、マジで。松尾家。家へと帰ってきたらじいちゃんばあちゃんの家の方の玄関横にキャリーケースが置いてある。

 何この状況?

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