第424話 松尾家の秘密 ~視線~
まさかの結崎の精神年齢?が再度下がるとは。いや、予想できたことか。
もちろんまだ幼児化――まではいっていないと思うが。クラスメイトの前ではしないような甘える……違うな。わがまま?なんというのだろうか。普段はしない仕草などをするというか。とにかく俺は現在幼児化しそうなポンコツ娘に絡まれてる?状況となってしまった。拗ねる宣言までしているし。ちょっと言葉のミス。選択ミスだな。
なお、その後の俺はとりあえず止まったら負けな気がしたので(立ち止まって話を始めると結崎にいろいろ言われそう。突っつかれる――いや、叩かれながらの抗議が始まる予感がしたため)、立ち止まることなく歩いた。
もちろん結崎は俺の服の袖を持っていたので、俺が結崎を引っ張るではないが。連れて行く?というのか。まあなんかそんな感じで、後ろからぶつぶつ文句を言う結崎と駅へと向かったのだった。
そうそう、余談としては、これって、周りから見ると、子供が駄々をこねて引っ張っているように見えるのは――って、そんなことを言うとあとあと怒られるのですぐに頭から消した俺だった。
そして、こんな光景新聞部が見たらネタにされるよな――などと思っていると。
「――あれ?」
「うん?どうした?結崎」
ふと、大学前駅の改札近くで、結崎が急に何かに反応し振り返ったので、今度は俺が少し強めに引っ張られる形で足を強制的に止めることとなった。
「いや――今なんか――うん?誰かいたような――」
「えっと――知り合いでも居た?」
「かもしれない。まあ駅だからね。でも今は松尾君と居たから――」
どうやら知り合い?の姿でも見かけたらしい?などと俺が結崎の様子から想像していると、結崎が少し恥ずかしそうにしつつ。
「――デートしてると思われたかも?」
「……」
なんか照れつつ言い出した。
いや照れるならわざわざ言わなくてもと思うのだが。言いたかったのだろうか?何かのアピール?
または、もしかすると結崎。2人っきりになったから、ポンコツ能力を遺憾なく発揮発揮している……なるほどその可能性は高いかもしれない。
にしても、ほんと、恥ずかしそうに何を言い出すのかと思えば――少し前までは拗ねていて、今は照れる。忙しいこっちゃである。
「ちょ、松尾君?なんで無言?」
すると、俺の反応がなかったからだろう。今度は軽く腕を叩きつつ結崎が抗議をしてきた。そして少し腕を引っ張ったりしてきている。この娘。やはり子供――いや、元気だ。元気と言っておこう。あとスキンシップが今日は多い。いや、最近は――これくらい普通?とにかく反応しないと再度拗ねそうだったため俺はすぐに反応した。
「いや、結崎なんやかんやでいつも通りで安心するなー。と思ってね」
「絶対馬鹿にされてる。もう、さっきから松尾君意地悪じゃない?」
意地悪なのかは――だが。最近の結崎の扱いがわかってきたというか。
ポンコツはポンコツですからね。馬鹿には――していたか?いじっていた?まあとにかく、今は素直に答えてもなんか安全そうと直感で思えたので――。
「まあ馬鹿にしていたのは――正解か」
「ちょっと、松尾君素直すぎ!怒るよ」
「すでに叩かれていますが」
そうそう、腕とか叩かれている。先ほどより少し強めになった気がするが――また俺の選択ミス?いや、もしかして俺――叩かれるの好き。って、おかしなことになりそうなので、変に考えるのはやめて。
とにかくだ、そんなこんなで、俺と結崎は少し騒ぎつつ。またすぐに歩き出して――改札を抜けたのだった。
まあ結崎が隣であーだこーだ言っていたが。それがかわいい生き物に見えつつ。となったところで、俺が歩き出すと、文句を言いつつも結崎が付いてきただな。
そして駅の構内へと入ると。こちらは改札の外と違って人は少なめ。いや、いつものことだが。『この鉄道本当に人が居ないときはいないが大丈夫なのだろうか――?』と、毎度のことながら思ってしまうが。今回に限っては人が少なかったからというべきか。よくよく知った顔をホーム上で見つけた俺だった。
また、相手も俺たちにすぐに気が付いて声をかけてきた。
「おっ、松尾君。おじいちゃん大丈夫?」
特に隠す必要はないので、とっとと誰を見つけたかというと。駅の構内で俺たちに声をかけてくる人と言えば――楚原さんだ。
駅に止まっている2両編成のいつも通りの電車の最後尾の車両近くに立っている。
というかそもそも声をかけてくる人って他に居ないか。ってか、たくさん居てもらうと困るというか。
今に限っていえば、さらに状況が悪化しそうというか。ノリノリで付いてきそうな人が増えるとか勘弁なのでね。って、こんなこと思っていると、それがフラグになるって?なら忘れよう。よし忘れた。楚原さんのもとへと移動しよう。
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