第423話 松尾家の秘密 ~拗ねた~
「じゃ、松尾君。あとで行くからねー。あっ、ゆえはあまり調子乗らないようにー。松尾君そこの女注意ね」
「ちょ。奈都何言ってるの」
「にひひー」
大学前駅のバス停に着くと、まず長宮さんがすぐに自分の家の方向へと移動を開始していた。
余計なことを言っていたのは、女性陣同士のやり取り内だから俺は触れなくていいかな?それより俺は――。
「いや――あの、無理して来なくても――大丈夫……」
最後の悪あがき――みたいなことをしようとしたが。
「もうお母さんに、今日からクラスメイトの助けに行くってメッセージ送ったから」
「――いつの間に」
「バスの中で」
「結崎と話してたはずなのだが――」
「話しながらメッセージとか余裕だから。それにゆえが暴走しそうだからねーうんうん」
「……いや、それはあなたも――」
「まあまあ、じゃ、あとでー」
勝手に決まった決定事項?というのか。この後の予定通りに事が進んでいるみたいだった。
ということで、まず長宮さんが俺たちの前から姿を消した。
にしても今の長宮さんの反応。自分もテンションが高いことを認めたようなものの気もするのだが――触れぬが仏?かな。
そんなこんなで、大学駅前近くに俺と結崎が2人となった。
もちろん周りには休日ということもあり多くの人が居るが。久しぶり?かな。結崎と2人になったので急に静かになった。
そういえばすごく今更のことだが。今日休日だったな。日曜日だったら病院が開いてない。とかになったのか。あの病院土曜日も開いていてよかった。などと今更のことを俺が思っていると。
「――せっかく松尾君と2人と思ったのに――って、なんで松尾君強く奈都を断らないかなー」
静かになったはずだったが。すぐに結崎が口を開いた。
そして、どうやら。何かご不満?があったのか。長宮さんが見えなくなると、すぐに俺の服の袖を引っ張りながら結崎が抗議を開始した。
いや、なんなのこのポンコツ娘さん。仕草はかわいい。あと服引っ張らないように。
「あっ。今松尾君失礼なこと考えたでしょう。顔に出てた」
そして安定の鋭さ――って、この結崎の謎な感覚?は2人の時に作動するのか――などという余計なことを聞きたく――なっていたが。
とりあえず――家に帰ることにしよう。これからしばらく俺1人――のはずだから。とりあえず家に。もちろん1人なのかは謎な状態だが――でも家はまさかこんなことになるとは思っていなかったので、出てきたときのまま――?
いや、ちょっと待てよ。そういえば、ばあちゃんたち帰っているから、そこまで急いで帰る必要はないか。でもとりあえず……帰ろう。と、思った俺は。
「――えっと、特にそんなことは――ってか。結崎と、長宮さんが勝手にばあちゃんといろいろ決めちゃったんでしょうが――って、もしかしてばあちゃんが頼んだ形?」
止まっていると、そのまま結崎にいろいろ言われそうだった。またはその場から動かなくなる可能性もあったので、歩きながら結崎に返事をすることにした。
なお、俺が歩き出すと、結崎はちゃんと付いてきた。まだ服を掴んでいるが。それはいいか。服――伸びそう。いや、これはもしかして手を繋ごうのアピールだったり?いや、恥ずかしがる結崎の光景しか浮かばないな。ちなみに俺もなんか恥ずかしい。誰かに見られてる可能性は――低いと思うが。駅前は人が多いのでね。なんか気になった。
「松尾君が話を変えた――って、えっと――まあそうだね。おばあちゃんが頼んできた?だね。それに奈都が何故かノリノリ――」
とにかく、俺が歩き出しながら話すと、結崎は少し考える素振りの後。俺に付いてきながら返事をしてくれた。
にしても、わかってはいたことだが。今回なんかクラスメイトが超協力的?というのか。松尾家に乗り込んできそうになっているのは、ばあちゃんがスタートなんだよな。
もしかしてばあちゃんから見て俺の生活レベルがやばい。心配になった?まあ――なりそうだが。料理とかほとんどしないし。でも掃除とかは――まあまあしてるはず。はずだが。俺にも原因があっていろいろ協力要請?的なことになってしまったのだろうか?
って、もういろいろ考えても長宮さんはやって来るだろうし。結崎も乗り込んでくるだろうし。あきらめて普通にいるのが正解なのだろうか?
「……まあ結崎も。ノリノリになったか」
「ちょ、私は――そこまでノリノリでは――」
明らかに俺から見ても結崎もテンションが高いのはわかっていたので、そんなことを言いつつ。ちらりと結崎を見ると――何ともという表情をしていたので。あれはやはり、結崎もノリノリで間違いなかったらしい。
そして、ふと、少し前の思い出してみると、今日の結崎はかなり自分の世界に入ったりがあるので、まあノリノリ確定でいいな。でもそんなことを言うと、さらに拗ねそうな感じがあったので、俺は特に何も言わず。脳内だけで思っていると――。
「松尾君がまた失礼なことを考えてそう。いや、考えてる。むぅ……」
結崎になんやらか?のセンサーが反応したのだった。
いやいや正確すぎるから。にしてもこのまま相手をすると本当にいろいろ沼にはまるというか。結崎のご機嫌が斜めになってもなので、とりあえず返事なくそのまま駅の方へと歩いた。
「あっちょ、松尾君。なんで無視するの。ぜったい変なこと考えていた証拠でしょ。ちょっと、もう、拗ねるよ!」
「――悪化した」
そしてすぐに後悔した俺だった。
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