第422話 松尾家の秘密 ~帰り道~
幹線道路をのろのろと走る行きと同じ路線バスに乗っている俺たち3人。あっ、結崎だけは行きはタクシーだったから初めてとなるか。
ちなみにのろのろ走っているのはまた渋滞。どうやら今度は帰宅時間と重なったらしい。今日は休日なので、平日ほどではないと思うが――って、このあたりのことは全くわからないので、何とも言えないが。とにかく、今は渋滞にはまっていて、のんびりとバスが走っている。
そしてそんなのんびりとバスが走っている間にバスの車内ではこの後の予定が勝手に話し合われていた。
「じゃ、ご飯はゆえに任せてー」
「奈都もなんかしてよ」
「いいの?松尾君の評価上げなくて?にひひー」
「そういってだらけるつもりでしょ」
「だって、自由だよ?何も言われないところでしょ?騒いでもOKじゃん」
「奈都。松尾君の家だから」
「でも山じゃん」
「そうだけど――」
「ゆえだっていろいろ妄想してたくせに」
「も、妄想とかしてないから」
「顔赤い」
「赤くない」
「――あの、車内では小声でもお静かに」
結崎と長宮さんが俺の後ろの席に並んで座り何やら話しているが――ちゃんと触れなくてもいいよな?
結果だけ簡単に言っておくと、どうやらこの後長宮さんは一度家に帰り――荷物を持ってくる。結崎も一度家に帰って――らしい。
なんでこの2人はこんなにノリノリで俺の家に住み着こうとしているのか。
俺は2人の前に座っているので2人が小声だろうとちゃんと話は聞こえてきていたので、一応つぶやきはしたのだが。多分後ろの2人には聞こえていないのだろう。そのまま2人の会話は続いた。
まあ幸いというのか。病院まで来たのが、結崎と長宮さんだけでよかったか。
もしここに蓮華寺さん。石見先輩。新聞部とかが居たら――それはそれは、しばらく俺の家大変なことになっていただろう。って、こんなこと思っていると嗅ぎつけられる?そりゃこの2人が話しちゃうと――なのだが。今のところ他の人の名前は出ていないから――変に触れなければセーフ?というか。俺的には完全な1人暮らしというのか。ちょっと1人は1人で楽しみというか。わくわくではないが。今まで誰かが居る。というのが当たり前だったので、そりゃじいちゃんばあちゃんがともにいないと寂しいが――でも1人という今までになかったことにちょっと楽しみ。って、後ろ2人も同じ考え?あれ?でも結崎って1人暮らし――そもそも1人暮らしで大変な中松尾家のことまで巻き込んじゃったのか。
あと、長宮さんに関しては――もしかすると俺と同じ考えなのだろうか?普段は家に誰かいる。だから自由はあるだろうが。なんの監視もない自由な空間にあこがれた――とか?
にしても何度でもいうが。どうしてポンポンと話が進んでいくのか。
なんかほんとじいちゃんが帰って来るころ俺が倒れる――って、さすがに休日だから来ようとしてるんだよな。そうだよな。平日は――帰るよな。
そう思いたい――。
「ねえねえ松尾君?」
すると、後ろから結崎に声をかけられた。
「うん?何か?」
「今日の夜ご飯どうするの?」
「あー、何も考えてないというか。一応ばあちゃんに、家にあるもの食べていいというか。冷蔵庫にあるものから――は、聞いたから適当に――って、そもそもなぜ結崎が夜ご飯の心配を?」
「えっ?そりゃ――行くから?」
「やっぱり来る気か」
確認も込めて聞き返してみると――予想通りの返事が。本当は予想が外れてほしいが。もう無理みたい。
「まあまあ松尾君彼女が行きたがってるんだから」
すると、長宮さんが後ろから俺の方を叩きながら声をかけてきた。
「――それに乗っかる長宮さんは?」
「邪魔はしないから。うんうん」
あー、なんかするね。っか、結崎が来てくれるのは――普通にうれしいが。今の状況はできれば1人がうれしいのだが――その願いは叶いそうにもない。
「――奈都は無理して――来なくてもいいのに」
すると、ぼそりと結崎がそんなことをつぶやいた――って、うれしい。と言っていいのか。あの、結崎。今その言葉は――というか。前に居る俺に聞こえたということは、モロ長宮さんにも聞こえていると思うのですが――と、俺が思った瞬間だった。
「うわっ、松尾君ゆえがいじめてきた。彼女だからって調子乗ってる」
「ちょ、そんなつもりで――」
「私は松尾君に日々お世話になってるからそのお礼がしたいだけなのに、妄想ポンコツ娘が調子乗ってる」
「ちょ、奈都」
「ポンコツ娘」
「あの――車内ではお静かに」
今日の長宮さんはほんとノリノリである。
ってか、結崎もノリノリと言ってもいいのかもしれない。先ほどから自分の世界に入ったり。ボソッとつぶやいたのが普通に聞こえていたりと。なんか――ポンコツなのでね。あっ、ポンコツはいつも通りか。
とりあえず俺は車内で騒ぐのは――なので、後ろに小声で声をかけておいたが。
「ゆえ怒られてやんの」
「奈都が悪いんでしょうが」
「ゆえがえっちなこと考えてるからでしょうが」
「か。考えたないし」
「――はぁ」
まるで子供?ガキの小声の会話は、バスが大学前駅に着くまで続いたのだった。
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