第420話 松尾家の秘密 ~追いかける~

 ばあちゃんとともに、じいちゃんが入院することになった病院から今は今日からばあちゃんが過ごすことになったホテルへと向かっているところ。

 前を見ればもうすぐホテル。10階建て――かな?そしてホテルの横にはコンビニなどもある。いやー、ほんと住みやすそうな場所。って、普段が山の中だからとくにそう思うのだろう。などと俺は思いつつ。ふと後ろを振り返ると。じいちゃんのいる病院の一部が見える。いや、ほんと病院から近い。いいところにホテルあったな。

 

「――ちょっとー!」

「松尾君待ってー」


 そして、何やら俺とばあちゃんを追いかけてきているような2人の姿が見える気がするが――そうか。病院を出るときに連絡するの忘れたというか。いろいろ勝手に話が進んでいたので、何を俺はしたらいいのか忘れていたよ。

 そしてばあちゃんも初めて――ではないと思うが。久しぶり?のホテル生活。いつもとは違うことだからか。周りのことを少し忘れていたのだろう。ホテルに向かって歩いている途中に聞こえてきた声が耳に届いたみたいで……。


「あれま。そうだよ。2人のこと忘れてたね」


 などと俺の隣で行っていた。

 ちなみに――俺は完全に忘れていたわけではないが――ここは忘れていた。いろいろあって混乱中の演技でもしておこうか。


「あっ。そっか。2人はちょっと席を外すで帰ったわけじゃなかった」

「もう、松尾君もおばあちゃん私たちを病院に置いていくって。ゆえが気が付かなかったらまだ普通に病院の待合室で話してたよ」


 俺とばあちゃんのところに小走りでやってきた結崎と長宮さん。まずは追いつくなり長宮さんに怒られた?かな。

 いやでもホテルと距離近いから――って、そうだった。俺は混乱中の演技をしないとな。


「ごめん。なんかいろいろあって、というか。することあって忘れてた」

「ひどいなー。ってことで、後でお詫びね」

「――えっ?」

「にひひー」

「奈都。また余計なこと考えてるでしょ」

「そんなことないよ?」


 演技――だったが。どうも今長宮さんの頭の中に良からぬことが――って、これ忘れて行ったお詫び――とかとか後で何か発生することが確定した?この演技って選択肢俺ミスじゃね?ミスだよね?しまったー。


「まあ、とりあえずおばあちゃんをホテルに連れて行かないとね」

「あら。ありがとうね。ホテルまで取ってもらったのにここまでしてもらって」

「大丈夫ですよ。じゃあ行きましょう!」


 俺が選択しミスった。などと思っている間に長宮さんがばあちゃんと話しながら歩き出した。

 にしてもばあちゃんと長宮さんがどんどん仲良くなってないか?


「松尾君?」

「あっ。ごめんごめん」

   

 俺が長宮さんとばあちゃんがこのまま仲良くなって大丈夫なのだろうか?などと思いつつ2人を見ていると。動かない俺に気が付いた結崎が声をかけてきた。


「松尾君なんか疲れてる?」

「いや――慣れない事ばかりで」

「まあそうだよね。病院とか入院って」

「それもあるけど――」


 確かにじいちゃんの入院はイレギュラーなこと。普段はないことなので、いろいろと気を使う。でも――そこにクラスメイトが混ざっているのもなかなかなのだが。などと俺が思っていると。どうやら結崎にそれが伝わった?らしく。


「あっ。もしかして私たちが居て――迷惑だった?」


 少し心配そうに聞いてきた。


「あっ。迷惑とかではないんだけど――もちろん助かっているんだけどね。その――長宮さんが」

「あー、なるほど」


 決して結崎たちが手伝ってくれたことは迷惑ではない。むしろいろいろ助かったのだが――が。だよ。

 とりあえず俺が小声で結崎に話すと。どうやら俺の視線にも結崎が気が付いたらしく。少し苦笑いしてから頷きつつ返事をしてきて――。


「ちょっと奈都が何か考えてそうだよね」

「です」

「まあ、頑張って止めるから」

「――止めれる?」

「むっ。なんかあまり私が信用されていない――」

「いや――相手がだからね」

「そりゃ――なんかめっちゃ元気というか」

「テンション高いよね」

「めっちゃ高い」

「あー、このあともどうなることか」

「あっ、えっと松尾君」

「うん?」

「この後なんだけど――」

「うん」

「なんか私たち――また松尾君ところ行くかも」

「――よし。その話はばあちゃんを送ってからしよう」


 どういうことだ。ここは普通。ばあちゃんをホテルに送る。そこで解散となって、俺は1人暮らしをすることになるはずなのだが――なんか今おかしなことを結崎が言った気がする。

 でも、ちょうどその時前を歩く長宮さんとおばあちゃんがホテルに到着。そのまま入り口から入っていったので、俺と結崎は一時話を中断し。2人を追いかけてホテルへと入ったのだった。

 

 この後のことを言うと、ばあちゃんの代わりに長宮さんが受付――からの後はホテルの人に任せてもいい感じ。というか。俺たち3人は泊まるわけではないし。あまりぞろぞろと大人数で館内へ――というのは。だったこともあり。俺たち3人はロビーでばあちゃんと別れることにあった。

 ってか、ばあちゃん意外とこういうの慣れている?というのか。部屋の鍵をもらうとすいすいという感じでエレベーターへ。そして何かあったら連絡するからそれまでは家のことを頼むという感じで声を俺にかけて――ばあちゃんはエレベーターの中へ。

 なお。その際に――『結崎さんと長宮さんもごめんね。守のことお願いね』と、いうセリフが大変気になったが――もうばあちゃんに確認することはできなかった。エレベーターはドアを閉めて上へと上がっていったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る