第417話 松尾家の秘密 ~買い物~
俺がじいちゃんの病室へとやって来て少し。
『ごめん。今気が付いた。あと、おばあちゃんは必要なものは全部持ったって』
俺のスマホに結崎からの返事が届いた。
普段ならすぐに反応しそうな結崎がそこそこメッセージに気が付くのが遅かったのが気になるが。そういうこともあるよな。四六時中スマホを抱いているわけじゃないし。などと思いつつ結崎に返事をした後。
今の俺はじいちゃんに頼まれて飲み物などを買いに再度病室を出ていた。
病院では着替えやタオルなど日常使うものは借りれるというのか。そういうセット?があるらしく。準備をするのは下着くらいで、それはばあちゃんが持ってくるはずなので今の俺がしているのは飲み物の準備。
さすがに食事の時だけの水分ではじいちゃん足りないのでね。
じいちゃんに何がいいか聞いて俺はコンビニに買い出しへと向かっているところ。そして――到着した。
病院内のコンビニは普通のコンビニとほとんど同じ――いや、介護用品?というのか。そういうのがかなり多いか。半分くらいそのような商品のスペースがある。
でも普通のコンビニと同じように食べ物なども売っているので、今もそこそこ多くの人がいる。多分だが。診察待ちの人や。入院患者の人が気に来ている様子。
食事制限がなかったらぶらりと暇つぶしに来て何か買うだろう。
現に今。じいちゃんと同じパジャマ?を来た人がお菓子を買って出て行った。
俺はそんな病院内のコンビニを観察しつつ。じいちゃんから頼まれたもの。水分と――ちょっとしたお菓子を購入した。
今のところじいちゃんも食事制限はないみたいだったのでね。
食べないなら俺が持って帰ればいいということで、普段家にありそうなお菓子などを少し飲み物と一緒に買って俺はじいちゃんの病室へと戻った。
「じいちゃん買ってきたよ」
「おお。とりあえず届くところに置いといてくれ」
「はいよ」
ベッド上で大人しくしているじいちゃんに言われた通り俺は買ってきたものを置く。
ちなみにお菓子は――。
「もらおう」
らしい。食欲も問題なしというか。本当に骨折れているのだろうか?と思うくらい今のじいちゃん普通――。
「――あ。だだだっ……」
じゃなかった。少し変な動きをすると痛みが出るらしい。
「じいちゃんとりあえず大人しくしておくこと」
「ははは」
それから俺は特にすることがなかったので――本当は書類を書いていてもよかったのだろうが。あいにく筆記用具を持っていなかったのでね。そりゃコンビニで買ってきてもよかったが。今日中ではなかったし。ばあちゃんが書くだろうということで、しばらくじいちゃんと雑談をしていると――。
「あっ、ここじゃない?」
「奈都。静かにしてよ」
「ごめんごめん」
「……わかりやすすぎる」
しばらくして廊下からまず長宮さんの声がして、そのあと結崎の声が――と、その直後。俺が入り口の方を見ると。ちょうど開いていたドアのところに長宮さんの顔がひょっこりと出てきた。
「おっ。松尾君発見。ここであってるね」
そしてそのあと呆れ顔の結崎――って、結崎が荷物を持ってきてくれたみたいなので、俺は立ち上がり。
「結崎それじいちゃんの?」
「あっ。そう。着替えだって」
「ありがとう。じいちゃんとりあえず棚に入れとくから」
「入れといてくれ」
結崎から荷物を受けとり。中身をパッと見てから――下着類だけみたいだったので、棚へと入れておいた。多分じいちゃんは動けないので――わかるところにおいておけば看護師さんが――だろうと思いつつ。でもまじいちゃんも見ていたし大丈夫だろう。
「ってか、個室じゃん。そして窓小さいけど、眺め良い」
「――奈都。子供じゃないんだからはしゃぎすぎ。ってかテンション高すぎ」
すると、室内へと入って来ていた長宮さんがじいちゃんに軽く挨拶――からのそのまま通過して窓際へ。って、もう長宮さん慣れてるよね。じいちゃんとも馴染んでるというか。緊張とかそういうのは全くないらしい。まあ結崎もだが。って、結崎の意見には心の中で同意しておいた。
いや、長宮さんなぜか楽しそうというか。明らかにテンションが高いのわかるからな。なんでだろうか?じいちゃんが骨折したのが――うれしいということはそりゃないだろうが。普段と違うから?とにかくかく。長宮さんなんかテンション高い。と俺も思って――って、足りないぞ?
「あれ?結崎ばあちゃんは?」
「あっ。看護師さんに挨拶するって。ナースステーションに」
「――まあばあちゃんらしいか」
「あっ。あと――松尾君」
「うん?」
するとなぜか結崎が何か言いにくそう?な表情をして、小声で話しかけてきた。
何事?と、俺は思いつつ結崎の次の言葉を待つ。
「その――おばあちゃんね。今日からホテル泊まるって」
「……うん?」
えらく急だな。などと俺が思った瞬間。
「あっ。ここね」
ばあちゃんもじいちゃんの病室へとやってきた。
やってきたが。ばあちゃんの手元に目がいった。何故なら――
「旅行にでも行くのか」
「あはは」
ばあちゃんはキャリーケースとは言わないのかもしれないが。それに近いもの。買い物のときとかに荷物を入れて――という。やはりキャリーケース?とにかく女カバンを引っ張っていた。
あと、先ほど結崎が持ってきてくれたじいちゃんの荷物よりはるかにばあちゃんの持っている荷物の方が多いというね。
ばあちゃん。マジで旅行行くのかな?
ちなみに、俺の隣では結崎が苦笑い――これは家で何かあった――?
いや、わかる。さすがにわかるぞ。多分あれだ。長宮さんとばあちゃん意気投合の継続だろう。
多分長宮さんがいろいろばあちゃんを助けて――だろうと思った俺の予想。これが大当たりだった。
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