第412話 松尾家の秘密 ~到着~
ピンポン。
「あっ松尾君に押された――何気に押したかったのに」
「子供か」
「ひどい。子ども扱いされた。あとでゆえに報告しよ」
「ほんともう」
現在は、長宮さんとじいちゃんばあちゃんの向かった病院へと行く途中のバスの車内。ちょっと時間はかかった気がするが。いや、かなりかかった?でも、やっと次が目的地となったところだ。
窓から外を見ると、大きな建物。病院も見えてきている。大きな駐車場も――って、なるほど、病院は車。自家用車で来る人も多いか。それもあってバスは利用者が少なかったのか。って、こっちはなんかタクシー結構止まってないか?少なくとも3台は院内の入り口?近くに見えるような……あっ、そうか。そもそも家にタクシーを呼んで来るっていう人も多いか。本来じいちゃんも家にタクシーまたは。全く動けないなら救急車。いや、でもあれは――腰痛?ぎっくり腰?かと思われるから。こういう場合は救急車は呼ばないよな?呼ぶ機会がないからそういう判断というか。基準がちょっとわからないが――。
「――――もし。もしもーし。松尾君?無視ですか?無視?」
「えっ?」
するとどうやら俺余計なことを考えていて長宮さんの話を聞いていなかった様子。肩をつんつんとされて気が付いた。
「全く聞いてなかったか。って、何?松尾君ゆえと一緒じゃないから。もう寂しくて仕方ない?もう、それだとほんとゆえじゃん。絶対ゆえも松尾君いないと寂しがって泣いてるからね」
「――えっと――話をちょっと聞いていなかったのはごめんだけど。さすがにそれは想像ですよね?」
「うん」
「すんなり答えたな」
「でもでも松尾君的に寂しがって。いつも思ってくれる子?っていうのか。そんな子どうよ。どうよ」
「えらくぐいぐいって――長宮さん着くから」
結局最後の最後までというか。バスの中ではずっとどうでもいいこと。ろくでもない会話を続けていたと思う俺と長宮さん。
やっとのことで、バスは病院内へと入り――少し正面入り口からは離れているがちゃんとしたバス停というのか。そこそこ大きな待合室もあるところへと到着した。ちなみにこのバスに今から乗るという人はそこそこいるみたいだ。バスが来たからか。座っていた人が立ち上がり近づいてきている――って、やっと病院に到着だ。
降りる人が降りないと、乗る人が乗れない様子なので、俺と長宮さんはまずバスから降りる。
「着いたー」
俺の前で背伸びをする長宮さん。ってちょっと邪魔です。止まらないでください。
俺は長宮さんを後ろから軽く押す。
「急に止まると危ないので進んでください」
「おお、楽。松尾君そのまま押して」
「あのですね。のんびりしたいならなぜに付いてきた」
「そりゃ心配だからね。えっへん」
「――えっへんと言うところでいろいろ言いたいが――まあとりあえず早くじいちゃんばあちゃん探さないと。って、ばあちゃんスマホ持っていったのかな?」
「電話してみたら?あっ、病院だと消してる?」
「かもしれないし。そもそもちょっとバタバタしていたから持ってきているか――」
「でもまあ、普通に考えて。まず総合案内?とかじゃない?」
「かな?とりあえず病院内に入らないとか」
「そうそう、じゃレッツゴー」
「お静かにお願いします」
「OK」
「……心配しかない」
バスを降りた後。謎なテンションというのか。ずっとこんな感じかなんか子供を連れてきたというと叩かれそうだが。それに近い感じで、俺は長宮さんとともに病院内へと入ろうとすると――。
「あっ、やっと来た。ってか、なんか――2人の距離が近くないですかね?」
「……あれ?」
「およ?ゆえ?なんでもういるの?瞬間移動?」
病院の入り口から中へと俺と長宮さんが入ろうとすると、ちょうど結崎がスマホ片手に院内から出てきて、俺たちと目が合ったのだった。
って、おかしくない?
確か結崎は公民館前駅で降りている。そして自分の家に行ってから来るはずなので――特に寄り道をしていない俺と長宮さん。まあ大学前駅で少し時間を使った気がするが。それでも結崎に抜かれることはなくないか?それこそ今長宮さんが言ったように、瞬間移動?って、もちろんそれはないと思うが――って、結崎の視線がなんか痛いです。何もやましいことはないというか――いや、ここは変にいろいろ考えない方がいいな。
俺がそんなことを思っていると、結崎がこちらへと近づいてきて――俺と長宮さんの間に割って入った。
「もう。ゆえ。こんなところでいちゃつくの?」
もちろんそんなことを結崎がしたので、長宮さんが結崎にわき腹を突っつきながら。楽しそうにそんなことを言っている。
「奈都が近すぎるから」
「えー。そんなことないと思うけど?まあバスではずっと隣だったけどー。密着でね」
「長宮さん。変な言い方しない」
「――松尾君後で会議」
「結崎もわかっていると思うが――って、ちょっといろいろおいておいて、なんで結崎居るの?」
そう、この後俺が結崎に何か言われそうな予感はするが――それはちょっとおいておき。何故結崎の方が先に病院に居るのか。これめっちゃ気になる。
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