第410話 松尾家の秘密 ~快調?~

 そもそもバスがまっすぐ病院に来るルートじゃなかった――ということがわかってから少し。

 あっ、あと、道路工事による渋滞は今抜けた。という状況である。

 ちなみに俺の幼少期の話とかしてないからな?


「松尾君の幼少期ー幼少期のネター」

「――」


 ……隣で何か言っている長宮さんは無視でいいだろう。無視無視。必要のないことは語る必要なしと判断。

 っか、ネタとか言っている時点で、もし話した場合。ろくでもないことに使われることが確定しているような――決して話さん。


「聞いてる?松尾君?」

「俺の話とかいいでしょ」


 なぜにそこまで長宮さんは俺の昔話など聞きたいのか。

 絶対面白いことなどないと思うのだが――あっ、ネタにするなら面白いのか?


「せっかくだからさ。ゆえの知らない情報教えてよ。ゆえの情報あげるから。どうよ、おつり来るでしょ?」

「いや、それはそれでダメでしょ」


 結崎のいないところで結崎の話。そしてそれを俺が知らないことだと――まああとで揉めるか。何か起こるしかないだろう。


「大丈夫じゃない?松尾君が私から聞いたこと口にしなければゆえは知られてない。でも松尾君は知っている――っていうまたニヤニヤパターン?」

「なんかだましているみたいな――って、ニヤニヤパターンとか言っている時点でアウトかと」

「ってことで、ゆえの情報出したら松尾君の幼少期の話ね」

「話が嚙み合ってない気がするんだが――」

「聞いたら話す。これ普通でしょ」


 どうやら長宮さんは話したくて仕方な様子。でも一応――俺の頷き。了解?でも待っているのか。または俺が聞きたがった。ということにしたいのか。とにかく今のところ勝手に話し出すという雰囲気はないが。いつストッパーが外れてもおかしくないような状況な気がする。


「いや、結構です。この話やめよう。うん。やめよう」


 と、いうことで、俺が話を変えようとしたが――。

 

「ちなみにゆえの両親も海外なんだって」


 ストッパーすでに破壊していたというね。

 あれだ。単に長宮さんが焦らしていた?俺の反応を楽しんでいた?らしい。って、その情報俺知らないことだな――って、聞いちゃダメな気がするが。


「あの、長宮さん?俺は聞きたいとか。話してとか言ってないんですが――って、結崎のところも?」


 海外と、いう同じ……なのかは今のところわからないが。なんか似たようなこと?というのか。長宮さんの言葉に反応してしまった俺だった。

 あれだ。聞いてしまうと――である。おまけに海外というワードがね。


「食いついた。食いついた」


 なお、俺の反応は長宮さんの予想通りだったらしい。

 俺――遊ばれているのかな?


「――いや、今のは。って本人が居ないところで話すのは――でしょ。ってことで、やめておきましょう」

「松尾君も知りたいでしょ?彼氏として?後々の挨拶とか――もしかしたら海外旅行になるかもだし」

「いや、それは本人から聞くものかと。あと勝手に変なことを言わない」

「あっ、挨拶を否定しなかったということは――行く気満々か。なんか複雑だけど――まあゆえにそれとなーく伝えてあげるか。うんうん。って、ゆえの場合は――松尾君のパターンとちょっと違うのかな?あまり楽しそうには――だったような……まあ。松尾君口硬そうだからいいか」

「いやいや、あのまあとかじゃなくてですね。勝手に個人情報漏らさない」

「七和先輩よりはマシでしょ」

「――」


 そこと比べるとね。

 マシと思ってしまった俺。かなり七和先輩。新聞部にやられているというか。慣れてきてしまったというか。やばいな。七和先輩の個人情報のばらし方というか。盗撮というか盗聴というか。とにかく。あっちはあっちでやばいからなー。

 新聞部と比べてしまうと――長宮さんの話は――雑談?レベル?いや、でも勝手に人の話は――だよな。


「松尾君が何かと戦っている」


 すると、俺が黙ったからだろう。隣で長宮さんが何やらつぶやいていた。


「気にしなくていいです」

「まあ新聞部が何かしているより――私からの情報ならちょっとした雑談レベルに感じちゃう――とかじゃないの?」

「何エスパー?」

「おっ当たり?おお。私も松尾君検定のレベル上がってる?」

「――何それ。いや、答えなくていい」

「えっ?適当に今考えただけだけど?」

「だから、なんとなくわかったから答えなくていいって言ったのに」

「あっ、これ石見先輩とかに提案したら面白いことになるかな?」

「しなくていいです。ってか、石見先輩だとマジでなんか盛り上がてくるというか。なんかやりそうなので、言わないように」

「じゃ、口止め料ってことで、ゆえの話聞いて」

「おかしい。かなりおかしい」

「まあまあ」

「――テンション高いな」


 俺と長宮さんを乗せたバス。もうすぐ――病院には着くとは思うのだが。まだ到着しないため。バスの車内では無駄な話?がしばらく続くのだった。

 そういえば、気が付いたら、バスの中は俺と長宮さんだけになっていた。この時間帯ってもしかして病院ってあまりみんな行かないのか?いや、普通午前中が診察時間だよな?なんで――こんなに空いているのだろうか?

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