第403話 松尾家の秘密 ~撃退?~
「ありがとうございました。助かりました」
「いやいや、おじいちゃん大事じゃないといいね」
「多分大丈夫――いや、無理したみたいですからね。うーん」
「とりあえず……お大事にかな」
「あはは。ほんとありがとうございました。助かりました」
俺は借りていた車いすをちょうど駅に居た楚原さんへと返したところだ。
今楚原さんとも話していたがじいちゃんは何があったのか――素人が勝手に判断するとぎっくり腰かと思っていたが。もしかして違うのだろうか?何か持病あったか?うーん。とりあえず今の俺にはわからないので、楚原さんと少し話してからしばし駅で待機。
――何故病院に向かわないんだと?いや、俺の方に付いてきたお方がですね。今いなくて。俺が車いすを楚原さんに返しているときに、長宮さんはお手洗い――って、ちょうど俺の視線に長宮さんの姿が入ってきた――が。
「――あっ、ねえねえそこのかわい子。ちょっといい?」
「ちょっとだけだからアンケート答えてくれない?」
「――はい?」
「……」
いやいや、ベターというのか。まあ長宮さん――綺麗だからな。うん?綺麗?そりゃ確かに綺麗だが。なんというか……。
かわいいというと長宮さんに怒られると思うが。でもかわいい。に入る長宮さん綺麗というと、結崎蓮華寺さんが当てはまる気がするんだよな。あと七和先輩とか。そして長宮さんと石見先輩はかわいい枠――って、俺は何を勝手に考えているのか。そもそもこの考えって前にもしたような――してない?もういろいろあって忘れたよ。
とにかくだ。ちょっとお手洗いに――と、行っていた長宮さんが戻ってきた。と、思ったら。俺までの距離約数メートルのところで2人組のスーツを着た男性に声をかけられたのだった。
こっち病院に行かないといけないので、あまり余計なことに巻き込まれたくないのですが。ってか、長宮さんなら普通に断って来るかな?来るよね。長宮さんだもん――とか思って思っていた俺だが。今の長宮さんテンションが高いことを俺忘れていた。良からぬことしか考えないというか。余計なことを考えるプロというか――だったな。
「えっ、えっと――」
なぜか大人しい子アピールとでもいうのか。小さな声でもじもじと答える長宮さん。いやいやいやいや、いつもの雰囲気どこ行った。
「ちょっとだけだから」
「よかったら飲み物も準備してあるんで」
「でも――」
「ほんとちょっとだけだから」
「――」
押したらいけるとでも男性2人は思ったのかどんどん声をかけていた。
ちなみにあれは付いていったらろくでもないことになるだろうな。ということははすぐに俺でも分かった。ってか、俺がわかるのだから。長宮さんもわかっていると思うが――って、そもそも結構近い距離でやり取りをしているので、俺に会話は丸聞こえ。耳を澄まして――周りのざわざわを消して――とかしなくてもほとんどちゃんと聞こえてきている。
あと、男性2人は背中しか見えていないのだが。長宮さんは俺の方を見ているので、さらにすでに目はあっている。
そして俺の気のせいでなければ――なんかにこっと長宮さんが先ほどした気がするのだが。あのお方この状況で何をしているのか。
ちなみに俺なんかが男2人の相手をできるとでも思っているのだろうか?背丈は俺と変わらないが――相手は2人。そりゃ駅前だから暴力――とかはないだろうが。
ホント、今から行くところがあるのに長宮さんはなんでいつもの雰囲気を出さないのか。
「えっと――その急いでまして」
「大丈夫大丈夫。ほんとすぐ終わるから」
「もしお友達居るなら呼んでもらっても」
なんで乙女キャラ演じてるんだよ。ちょっと真面目にかわいい仕草してるけどさ――って、こんなのずっと見ているのもだから、とっとと呼びに行こう。
もし何かあってもすぐ後ろは駅の窓口だからな。何とか――なるだろう。それに周りに人はそこそこいるし。
ということで、俺が長宮さんの方に歩き出すと――長宮さんが笑顔になった気がした。なったな。今のはわかりやすかった。絶対何かネタにしてやる――って、感じだろう。ここで俺が行かなかったらそれはそれで後でいろいろ言ってきて――今みたいに動いたとしてもあとで何かいじってくるのだろう。ほんともう。俺の周り面倒なお方が多いよ。
「――すみません。ちょっと」
「あん?」
「なんだ」
あれー、長宮さんに話しかけているときは優しい声だったはずの男性2人。なんか俺が後ろから声をかけると。睨むように。あと低い声でこちらを見てきたんですが。えっ?何この違い。俺の登場お邪魔でした?そりゃ男性2人にはお邪魔だっただろうが。俺もこの状況をスルーという選択肢は後で怖いのでね。
「――友人に何か用事ですか?ってか急いでいるんで」
「――っ」
「――こいつ」
俺が話しながら長宮さんの横に移動すると。さらに何か――とか思ったのだが。あれ?意外と何も男性2人は言ってこなかった。むしろ――なぜか俺を見たら引いた?もしかして俺変な姿していた?いや、一応普通に外出てもいいような服装だったはずなのだが――。
そもそも俺が変な服装とかだったら結崎が間違いなく声をかけてくれるはず――とか思っていると。
「し、仕方ねえ」
「ああ、邪魔した」
「――うん?」
男性2人。そそくさに姿を俺と長宮さんの前から消したのだった。
――何故?俺……何もしてないよ?
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