第402話 松尾家の秘密 ~病院~
文化祭翌日(文化祭の時より。文化祭後。松尾家での方が何か使えることがいろいろとたくさんあった気がするが――それはちょっとおいておこうか)。松尾家一同は病院へと向かっていた。少し前まではほんと大移動。大人数での移動だったが。今は人が減ったところだ。
どうしてそんなことになったかというと、じいちゃんの腰痛治らずだからである。ってか、俺が少し昨日からのことを思い出していると、俺たちは大学前駅に着いた。
そして到着後は新聞部の2人とは別れたのだが――ここからだ。ここから重要というか。
現状。長宮さんが普通にじいちゃんの車いすを押している。そしてばあちゃんと雑談している。ちなみにじいちゃんは――痛い様子。この痛がり方。なんか――いやな予感がする――って、じいちゃんには悪いが。病院に着くまでは俺たちでは何もできないので、ちょっと我慢しておいてもらって。
何故に長宮さんが普通に残っているかだ。
長宮さんの優しさ――と、もう人も居るかもしれないが。数分前のこと。
『暇だし。私も病院お供するよ。あとでゆえがどんな表情するかなー』
とか言っていたので――優しさにより残ったという雰囲気ではないかな。そりゃ少しくらいはあるかもしれないが――ってか。
「あっ、あそこのお店のシュークリームすごくおいしいんですよ」
「そうなの?なら帰りに買ってみようかね。もちろんお手伝いしてくれてる長宮さんの分も」
「ほんとですか。やったー」
「年寄だけだと大変でね」
「いえいえこれくらいいつでも呼んでください」
「……」
めっちゃ普通に話している。そしてなんか――じいちゃんの病院の後にお店寄ろうとしてません?長宮さんの目的そっち?ってか、ばあちゃんよ。年寄だけ――俺。一応一緒に居ますが?数に入ってない?入ってないよね?
うーん。これは俺必要なき子になったのかな?
「松尾君タクシータクシー捕まえてきてー」
「――了解です」
すると、長宮さんからそんな指令が――長宮さんノリノリというかテンション高くなったな。シュークリーム効果?
なんかこの後どうなるの?という感じがプンプンとしているが。とりあえず俺は3人を抜きまして――駅前でタクシーを捕まえに行ったのだった。
「すみません――病院までいいですか?」
「あいよ」
そのあとは一応順調に――タクシーを俺が捕まえて、じいちゃんを――って、ここで問題発生。じいちゃんは車いすに乗っていた。それは駅で借りたもの。つまり、返しに行かないといけないので。タクシーに待っていてもらうこともできただろうが。じいちゃんの様子が――なので。
「じゃあ守。車いすお願いね。職員さんにお礼言っておいて」
「了解」
なぜか痛いのを我慢?するじいちゃんをタクシーに乗せた後(ちなみに、なぜじいちゃんが痛いのを我慢する感じだったのかは。勝手な予想だが肩を貸していた長宮さんに痛がっているところを見せないように――とも見たのは気のせいと思っておこう)。
「じゃ、守病院でね。あっ。これお金持っときなさい」
「あ、うん。わかった」
ばあちゃんはタクシーのドアを閉める前にさっと財布から1万円札を取り出して俺に渡してきた。
ということで、俺は駅まで車いすを返しに行くことになったので、タクシーには一緒に乗らず後で追いかけることとなった。なので、2人でじいちゃんばあちゃんを乗せたタクシーが出発するのを見送ってから。大学前駅。いつも使っている鉄道会社の――えっと、窓口で良いのかな?とりあえず大学前の駅の方へと車いすを返しに歩き出したのだった。
ちょっと待とうか。
1人多いな。このパターン多いな。
「じゃ、松尾君。駅に車いす返しに行こうか」
「――えっと……長宮さん。何故にタクシーから降りた?」
長宮さんはじいちゃんを乗せるために先にタクシーの後部座席に乗り込んで――じいちゃんのサポートをしていたはずだったが。なぜかじいちゃんが乗った後、反対側のドアから降りてきて、俺と一緒にじいちゃんばあちゃんを見送ったというね。多分それもあって、ばあちゃんは2人で来なさいという意味で1万円札だったと思う のだが――って、申し訳ないというか。使う気満々みたいなことを言われるかもしれないが。長宮さんよ。ここまで一緒なら、病院に付いた時も乗り降りで人手が必要と思うので一緒に乗って行ってもらった方が――。
「松尾君今なんであんた降りたんだよ。病院でも乗り降りあるだろ?見たなこと考えてる?」
「――ナンノコトデショウカ……」
やばっ、顔に出ていたか。いや、にしても的確過ぎない?長宮さんも怖いというか。俺の周りの女性陣無駄に勘のいい時がありませんか?
「嘘嘘。松尾君はそんなこと思わないでしょ」
「――」
「って、せっかくだし。おじいちゃんおばあちゃん2人にしてあげないと」
「いやいや、片方怪我人」
「まあまあ」
「――はぁ。って、とりあえず車いす返しに行かないと」
「だね。で。そのあと松尾君と二人っきりで移動中ってゆえに連絡してみる」
「――めっちゃ楽しんどる……って、やめろ。手伝ってもらって――だが。余計なことするな」
「おぉ、ちょっと強めに言ってくる松尾君もいいね。あとでゆえに松尾君に怒られたって言ってみよっと」
「――これ俺が何を言っても負けるのか?」
どうやらテンション高めの長宮さんを止めるのは俺では無理みたいだ。ここは結崎――いや、結崎じゃ無理か。蓮華寺さん?いやいやいない人を召喚しちゃだめだよな――ってことは。大人しくしているのが正解か。
「松尾君?行かないの?」
「行きますよ。病院早くいかないとなので」
「動かないから。私との2人っきりをもっと楽しみたいのかとドキッとしたよ」
にやりと笑う長宮さん――遊ばれてるな。
「――ご機嫌ですね」
「イエス。ゆえをわたわたさせるネタ作り」
「――はぁ」
ほんとため息しか出ないのですが――って、長宮さんテンション高すぎてか。顔赤いですよ。どんだけ俺。いや俺というか俺たちか。この後ネタにされるのかね。付き合っているのがバレると――というか。結崎が知らなかったのが知っただけだが。マジで結崎そのうち寝込みそう。などと思いつつ。車いすを押して長宮さんと駅の方へと歩き出した俺だった。
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