第5章 みんなが知ったがゆえに――

第401話 松尾家の秘密 ~外出~

 文化祭翌日――って言うより。文化祭の後、俺の家で散々皆さんが騒いだ後の翌日のことをざっくり言うと。って、あれだ。じいちゃんどうなったかだな。これ大切だよな。


 ◆


 あのあと、まず俺と結崎で田園駅の方へと向かい――たまたま楚原さんが居たため。そのまま楚原さんに状況説明。

 そして、車いすを貸してもらえないかとう相談をして、無事に次の電車で車いすを大学前の駅から運んできてもらい。車いすを借りて――家へ。そしてじいちゃんを乗せて。大人数で移動となったのだった。

 ちなみに家から駅までは下り坂。それもでこぼこだ。なので車いすで運べなくはなかったが――。


「ぉぉぉぉぉ――ぐぁ」

「じいちゃん駅まで我慢で」

「――ま。全くいだぐぎゃああ」

「――じいさん。うるさいですよ」

「いや、痛いんだと思いますけど――なるべくゆっくり行きますから」


 家からの移動中。何度もじいちゃんが悲鳴を――それはそれは普段聞かないような声を――って、これ痛めたというか。なんか起こってない?だったが。ここに居るのは素人のみ。ということで、俺たちはとりあえずじいちゃんがなるべく揺れないように(と言っても全く揺れないのは無理だったが)とりあえず、俺と結崎。長宮さん、六石が車いすの両サイドで――という感じで駅まで移動した。

 その他ばあちゃんと石見先輩七和先輩は俺たちの後ろを付いてきていた。

 何気に七和先輩が荷物運びをしてばあちゃんと親しげに話していたのが――なんか気になってしまったが。

 いや、こういう時だから何か企んで――とかはないと思うが。でもね。今までの行動からして――なんだよ。いきなり信じてくれは難しいというね。ってか、じいちゃんを運ぶ。押す。揺れないようにすることで結構大変だったので、後ろの3人の会話はほとんど聞こえなかったんだがね。

 ――すごく気になるというか。変な話をしていないか心配。


 とりあえず、そんなこんなで松尾家から大移動。とでもいうのか。

 大変珍しいことに田園駅に多くのお客が――という状況をこの後俺たちは作ったのだった。


 ちなみにそのあと駅に入ってきた電車の運転手さんは楚原さんではなかったため。状況。話を聞いていなかったのか。俺たちが駅に待っている姿を見てか。2度見。3度見くらいしつつ駅へと電車を走らせていたな。まあちゃんと電車止まったからよかったよ。驚いてそのまま停止しなかった――とかいうことになったら、大事故なのでね。ってか、やはり田園駅に多くの人が居ると驚くのか――というのを駅に居た全員が多分感じたのだった――あっ。じいちゃんは……それどころじゃなかったかな?家から駅までの移動でなかなか腰に響いたみたいでね。

 ばあちゃんには『このくらいで痛がって。恥ずかしい』などと言われていたが――いやいやばあちゃん本当に痛いのだろうし。実際声がマジだった気がするし。まあ周りに女性陣が居たからか。移動中結崎が心配して声をかけると毎回大丈夫大丈夫と言っていたが――あれはやせ我慢だろうな。


 そして、さすがにそのあとみんなとは解散となった。結崎は公民館前。石見先輩は高校前。長宮さん新聞部は大学前でそれぞれ別れることとなった。俺とじいちゃんばあちゃんは大学前からはタクシー予定だ。

 ちなみに結崎はじいちゃんが心配だからと、一度家に帰ってからまた来てくれると言っていた。その際になんか石見先輩と長宮さんが反応していたような気がするが――さすがに付いてこないだろう。多分――多分――。

 

 そんなこんなで、田園駅からいつもよりはるかに多くの乗客を乗せた電車は順調に走り。公民館前駅で結崎を下ろし。新たなお客さん――って、車いすでスペース使ってます。すみません。他へ――という状況だったが。

 いや、この電車古いからか。または小さいからか。車いすスペースがちゃんとあるわけではなく。運転席後ろのドア近くに――って形なのでね。何も知らない他のお客さんは乗ろうとしたら乗れない――という状況だった。まあでも今日は休日で人が少ないのは救いだったかな。

 それから石見先輩が降りて――大学前では残りの3人様。

 長宮さん新聞部2人に車いすを電車から降ろすところまで手伝ってもらい。2とは別れたのだった。


 ――うん?2人……?

 おかしいな。計算が合わないな。結崎と石見先輩がすでに居ないから残りは新聞部2人と長宮さんのはずなのだが――本来ここでは3人と別れたとなるはずが―何故2人。


「暇だし。私も病院お供するよ。あとでゆえがどんな表情するかなー」

「……」


 ちょっと俺が余計なことを考えていると、じいちゃんの車いすを押し出す長宮さんと目が合ったのだった――。


 いやー、早くも俺の予想当たるだった。俺の予想当たりすぎでしょ。ってか、いいのかな?とか思いつつもう歩き出した長宮さんと隣で話しているばあちゃんを追いかける俺だった――って、みんなばあちゃんと仲良くなりすぎでは?なんか俺より松尾家の情報聞いたりしてない?

 って、今はとりあえず病院へか。

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