第158話 朝の――

「……」

「寝てる寝てる」


 なんだろう、身の危険を感じる。確か俺は寝ているはず。寝ているはずなのだが……重い。いや、重くは無いが――お腹あたりに何かを感じる。少し前にもこの感覚を経験した気がする。


 ってか。俺は寝ていて動いてないのにベッドが軋む音がするし。これは、とりあえず乗られたと言えばいいのか。何かを感じたあたりから起きた俺だった。


「……うん?」


 そして目を開けてみると――やはりという状況だった。


「あっ、起きた起きた」

「何をしているのか簡潔にお答えください。昨日もこんな感じだった気がしますが――ね。石見先輩」

「やっほー」


 朝からひまわり満開のような笑顔ありがとうございます。じゃなくて、いや、笑顔はいいと思いますがね。それは置いておいて。


「やっほー。じゃなくて、石見先輩。朝から何してるんですか?」


 ちなみに室内はエアコンが止まっているので、少し暑くなっているが。まだ大丈夫大丈夫だが。こんなことをしていたらすぐに暑くなるだろう。って、今日も石見先輩に馬乗りにされている俺だった。何で連続でこんな朝なんだよ。


「そりゃ――事後風?」

「朝から元気すぎだろ」

「そもそも後輩くん。こんな美少女が一緒に。同じ部屋に居るのに普通に寝てるとかさ。どういうこと?ちょっとお説教必要じゃない?私なら寝れないよ?」

「いやいや、石見先輩。確か昨日は即寝ましたよね?」

「なっ、後輩くんまさか変な薬飲ませたり……ちょっと私身体の確認した方がいい?」

「ないないない。朝からアホな事言わないでください。ってか降りてください」

「まあ、後輩くんが寝てる時に何かするような子じゃないってわかってるから泊まりに来たんだけどねー。ちなみに楽しいから降りる気はない」

「何で――ってか、いろいろ言われた気がするが。って、石見先輩。降りましょう」

「えー、後輩くんいじめてるみたいだからこのままがいい。起きてる時はさせてくれないし」


 そう言いながら俺の上で暴れる――跳ねる石見先輩。やめなさいである。


「当たり前です。何で石見先輩に毎回馬乗りにされないと何ですか」

「だから今乗るのがベスト」

「暑いでしょ?」

「大丈夫大丈夫。私服が冷たいから。今ちょうどいいくらいだし」


 そう言いながら着ている服を引っ張る石見先輩。そういえば今も少し俺の肌に一部が触れているのが――ひんやりとした感じが伝わってきている。


「……石見先輩はいいかもしれませんが。乗られている俺は?」

「あっ、なるほど後輩くんは服着てるからね。脱いだらいいんじゃない?」

「何でそうなる」

「あっ。もしかして、私に脱げとか言ってる?ワンピース捲っちゃう?見たい?」


 ニヤニヤ顔でそんなこと朝から言ってくる先輩。今俺の頭の中にある言葉と言えば『病院のどの科に連れて行ったらいいのだろうか?』だった。


「朝からテンションおかしすぎるんで強制的に降りてもらいます」

「きゃっ」


 俺はそう言いながら石見先輩の両脇を持って、俺の上から下ろし身体を起こした。ちなみに、やっぱり石見先輩が着ている服。確かにしっかり持つと、さらにひんやりがわかった。あれいいな。である。

 ちょっと男用も何かないかな?探してみようかな?。なお、俺がそんなことを思いつつ石見先輩をどけると。


「後輩くんに触られたー。きゃっきゃっ、ゆえちゃんに報告しないと」


 何故かさらにテンション上がる石見先輩だった。今先輩が喜ぶようなこと俺したか?


「——俺は乗られてたと報告か」

「報告しちゃうの!?」

「する」

「ってか後輩くん」

「はい?」

「昨日男女が2人っきりで何も起こってないけどいいの?」


 突然真面目な話。という感じで石見先輩が向き合う形で話しかけてきたが――これ真面目な話?


「——なんの確認でしょうかね?」

「私のセクシーショットないでしよ?身に何も纏ってない産まれたままの姿的な?きゃー」


 全く真面目な話じゃなかった。


「……朝から頭痛いな」


 この先輩何を言っているのか。誰か説明をしてほしい。1人で朝からテンションマックスみたいなんだが。もう相手できん。


「ほらほら後輩くん。リクエストリクエスト。今ならご機嫌だから何でもOKしちゃうかもよ?」

「じゃ水でも被って、頭を冷やしてきてください」

「えー、もう。これは後輩くんが男の子じゃない説流さないとだよ。女の子でしたーって」

「なんかそれはやめましょう。ってかその場合無理矢理止めます。怒ります」


 石見先輩が話しを広げるとか――いろいろ付け加えられる未来しかないのでね。それにちゃんと俺男だし。


「おお、全く怖く無い」

「……悲しくなってきた」

「あっ、後輩くん」

「……なんですか?」

「泊めてくれたお礼にハグさせてあげよう」


 すると、突然手を広げウエルカムを前面に出してくる石見先輩。なんでこのタイミングなのかはわからないが。


「……石見先輩はまだ着替えないみたいだから、俺が顔洗ってくるかな」

「無視されたー。マジで後輩くん女の子!?」

「なんでそうなる?」

「こんなかわいい先輩が誘ってるのに――無反応だし。傷つくなー」


 泣き真似をする石見先輩。って、チラチラ様子見すぎ。泣き真似がバレバレですから。


「はぁ……結崎呼びたい」


 俺はこのまま1対1が続くと大変ということで、ボソッとつぶやくと。


 トントン。


「「えっ?」」


 突然俺の部屋のドアがノックされたのだった。ビックリしつつ俺がドアの方を見ると、さすがに石見先輩も驚いてドアの方を見ていたのだった。

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