第120話 夏休みが――消える?7
現在は学内の自動販売機の前で、たまたま学校へとやってきた長宮さんと、俺と石見先輩は合流した。その後長宮さんが六石のところへ昨日の件で行くということで、何故か俺たちも一緒に移動ということになり。美術室へと向かっているところである。いや、図書室の作業もやらないとまた明日も――とかになる可能性があるのだが。何故か美術室へのお供が優先となっている今だった。とりあえず長宮さんに勝てる可能性はほぼ無いため、大人しく付いていく形で俺が歩いていると。
「ってか。学校の中。蒸さってない?外以上に暑くない?サウナじゃん」
俺の少し前を歩く長宮さんが胸元をパタパタしながら俺の方を見て聞いてきた。って、いやいや、長宮さんよ。絶対いつも以上にボタン外してるでしょ。休みとはいえ――いや、やっぱり余計なことは言わないでおこう。既に今日は石見先輩にやられているからな。触れないのがまた正解だろう。ということで、俺は長宮さんではなく廊下の遠くを見つつ。
「それは仕方ない。窓が開いてないと風が全く抜けてないから。あと、昼になってどんどん気温が上がってる。朝以上に酷い」
「外もめっちゃ暑かったけどさー。って、そうそう松尾君。今さ体操服洗って干してるから。そのうち持って行けばいいよね?」
「夏休み明けまでに返ってくれば問題ないかと。使うことは――まあ図書室の片付けとかで使うことがあるかもだけで、もう一着あるからな。って、そういえば何で俺は今日も制服を選んだのか――」
そうだよ。体操服って選択肢あったんだ。忘れてた。
「OKOK。ってか。松尾君今日も予備持ってる?」
「何でその確認が必要?ちなみに今日は持ってないので」
「なんだー。持ってたらちょっと校舎の裏で水浴びでもしようかと思ったのに」
「学校で何をしようとしている」
やはり暑いからみんな考えがおかしいのか。と俺が思いつつ。ちょっと呆れながら歩いていると。
「でもさ。松尾君」
「うん?」
「窓の外見てごらん」
「外?」
長宮さんに言われ俺はちょっと窓の外を見てみる。
すると、少し先の方。校舎裏の――あれはどこだ。百葉箱?があるから――なんかの畑?使っているかは知らんがとりあえずそんなところで7、8人のユニホーム姿の男女が水浴びをしていた。
水道のところにホースが付いているのか。それを使って女子が周りに居る男女に水を――という光景だった。ちょっと離れているので声はほとんど聞こえないが。よくよく耳を傾けると、キャッキャッ言っている声が――聞こえなくもなかった。
暑い中。何してるんだか。って暑いから水浴びしてるのか。何かの運動部だと思うが。ユニフォームだけではわからないから。でも運動部でいいか。とりあえず数人の学生が楽しそうにしている姿が見えた。
「青春してるねー。いやー。私もああいうことがしたいんだよ」
「長宮さんなら混ざってきても問題ないかと」
「いやいや、だから着替えが無いんだよね」
「——なるほど。あれが見えていて、やりたくなったから俺に体操服の確認か」
「まあだねー。ってそこには入る気はないかな」
「ないのか」
「だってー。って、松尾君はもう男子らと仲直りしたんだっけ?」
「えっ?」
「ほら、顔面流血事件?」
「なんか突然物騒な事――を、って。あー、あの時のか」
そんな名前であの時のクラスマッチ?だっけ?スポーツ大会?の事故は記憶されているらしい。
「そうそう、松尾君がさ顔面流出――流出?」
「流出は違うね。顔面流出はもう取り返しのつかないことが起こってるな。流血かと。って、はじめは長宮さんちゃんと言えてたじゃん」
「いやいや、笑い狙いだよ」
「笑いを求めなくても。2人しか居ないのに」
「まあそれは置いといて。って松尾君は優しすぎるんだよ。怒ればいいのにさー。あんなわざとしてきたやつ。許す必要ないし」
急に長宮さんのスイッチが入ったらしく長宮さんの周りにお怒りオーラが見えてきた。
「長宮さん。無駄なことで怒り出すとさらに暑くなるかと」
「——確かに。って、まあとりあえずあそこはあいつらの居るところだからね」
「えっ?あっ、もしかして、大木君や在良君の居る部活か」
「まあ正確には混ざってるね」
「さすが長宮さんよく知っている。って――この距離でよくわかるね」
再度俺は窓の外を見てみるが――結構男女が水浴びをしているところは離れている。なんとなく顔がわかるわからないレベル。ってか動き回ったりで校舎の陰に入ると見えないしね。俺には誰が居るのかは今のところわからなかった。
「むかつくやつはオーラでわかるから」
「マジか」
「嘘だけどねー」
「嘘かい」
「いや、でも半分くらいはわかる。って松尾君。同じクラスの子いると思うけど――2人以外にも」
「マジか――見えんから。わからんということで」
「松尾君もなかなかかー。ってあれか。ゆえしか見てないのかー、なるほど!これゆえに言ったら倒れそう」
「突然おかしなことを言いださない」
「すみませんの」
笑いながら長宮さんが返事をする。って――ホント石見先輩と似てるな。
「キャラ変わらなくていいから」
「ってか。松尾君。暑い」
「長宮さんは騒いだからでは?」
「違う。あんな涼しそうなことをあんな見えるところでキャッキャッしている人が居るから悪い」
「なんか水浴びしている人たちがかわいそうなのだが――」
「ってか、行こう。六石にお金請求してアイス買う」
「はははー」
「ってか、松尾君。六石居ると思う?」
「居るとは……思うけど――何とも。今のところ見てないし」
ちなみに俺は六石の連絡先とか知らないのでね「今いる?」とかの事前確認もできないし。今の雰囲気からして長宮さんも知らないみたいだからな。とりあえず確認するためには美術室に行くしかないという状況だ。
「居なかったら、松尾君に請求か」
「マジで俺に請求するの?」
「もち!」
いやいやそんなところ元気に返事しないでくれである。昨日付いて行ったから金額は何となく覚えているが。安い――って額でもないのでね。いや、そりゃ払えない。って額ではなかったが。俺が払うことになっちゃうの?
「——冗談では?」
「ない!」
「……六石マジで居てくれないとか。居なかったら探しに行かないとか」
「さてさて、松尾君が払うことになるのか!結果は――このあとすぐ!」
「長宮さん。テンション高いね」
俺の横では司会者にでもなったのだろうか。無駄にテンションの高い子供が居た――訂正。女性が居た。子供は訂正しておこう。でも、明るく元気な少女に現在の長宮さんは見えていた。何て言うんだろうな。クラスの時の明るい雰囲気とはまた別で――無邪気といえばいいのか。めっちゃいい笑顔してるしな。
って、あれ?ちょっと待て。そういえばここまで来る途中の長宮さんと話している時。俺は自然と2人みたいなことを言った気がするが――あれ?2人?――2人で移動ではなかったような?今子供と思って何か忘れていることを思い出したような?などと俺が思っていると。とりあえず俺たちは美術室の前へと到着したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます