第121話 夏休みが――消える?8

 2人?俺の頭の中で何かがひっかかっているうちに、俺とテンション高めの長宮さんは六石が居るであろう美術室までやってきた。

 ちなみに言うと。現在いる場所付近が昨日の事故現場である。今は綺麗に何の痕跡もない。


 そうそう、ちなみにだが美術室のドアは空いていたので、こういう場合は中をそっと覗いて確認か。などと俺が思っていると。俺の横から人影が通過していった。


「頼もう!」

「——いやいやマジかい。って、頼もう!の使い方がおかしい気がする。なんか違うと思う」


 俺がつぶやいている間に、長宮さんはそんなことを言いつつ美術室の中へと入って行った――ホント、ガキかも。


 にしても、突然誰かがやって来たら中の人がびっくりするというか。美術部の人が作品つくりなどをしていたら超邪魔になるでしょ。そんなことを俺は思いつつ美術室内へと入って行った長宮さんを追いかけると。美術室内は静かだった。が。誰も居ない。というわけではなく。


「——やっぱり2人の声だったか」


 六石が俺達を見ていた。ちなみにいきなり長宮さんが美術室に乱入したが。六石は特に驚いた。見たいな雰囲気はなく。普通に俺たちの方を見ていた。


「居た!」

「いや、マジでいきなり騒がしくてすみませんだよ。長宮さん。入り方がおかしいから。突然乱入みたいな入り方しないように」

「えっ?だって美術室に六石しか居ないの先に見えてたし」

「——ちゃんと見ていたのか」


 話しながらここまで来たから、てっきり長宮さんは周りなんて気にしてないと思ったのだが。どうやら長宮さんはちゃんと周りは見ていたらしい。むしろ俺の方が暑いやらやらで周りを気にしてなかった。


「まあね。そりゃ誰が居るかわからないところにいきなり突撃しないよ。怒られるかもじゃん」

「しそうなんだが――」

「失礼だなー。って。六石。これ、昨日帰りに服買ったんだけど。その代金支払って。それで許す」


 制服のポケットからサッっと昨日買ったであろうレシートを六石に早速差し出す長宮さん。ちなみに長宮さんがレシートを差し出した際に俺も言葉を付け加えておいた。


「あっ。大丈夫。アホみたいに高くないから。俺一応付き添ってたから。一応――普通の金額――かと思うから」

「えっ、あー、あぁ、了解。問題ない。おもいっきり昨日は水かけたし。そこそこの額は覚悟してる。って――えっと、その長宮昨日は――」

「はっ?長宮?」


 六石の言葉にビシッと反応する長宮さんって、怖い怖い。するとすぐに六石は言い直して――。


「——長宮……さん。うん。長宮さん。昨日はホントごめん。悪かった。ってことで――服代は払う。あと、これお菓子。まあコンビニのだけどよかったら食べて。ちゃんと保冷剤入っているところに居れていたから――問題はないかと思う」


 机の横に置いてあった六石のカバンからお弁当などが入ってそうな保冷バックが出てきて、その中からコンビニの袋が出てきた。中には、コンビニでよく売っているカップのケーキが入っていた。


「わぁお。六石いい奴じゃん。うんうん。許す」

「——ほっ」

「お菓子最強か」


 いやいや、まだ六石お金払ってないぞ?ということはもちろん言わず俺はそんな光景を見つつカップケーキを見てつぶやいておいた。なお、長宮さんが服代を忘れるということももちろんないので。


「あー、惑わされるところだった。服代」


 すぐに服代の事は思い出していた。


「えっ、あっ、服代まだか。えっと――レシート?」

「これこれ。よろしく」


 それから六石が長宮さんが再度差し出したレシートを見つつ。支払いが完了——しなかった。


「——松尾。ちょっと金貸してくれ」

「何でそうなるんだよ」


 ちゃんと自分で払う気満々だったじゃん。


「いや――財布の中にお金入れ忘れた」

「そんなことあるのかよ」

「松尾君お支払いは?」

「長宮さんはちょっと黙ってようか?」

「えー」

「黙る」

「はいはい。美術室見てまーす」


 長宮さんからレシートをもらい金額を確認して自分の財布を出した六石はフリーズしていた。理由は、財布の中身が入ってなかったからだ。コンビニで気がつけよ。だったが。電子マネーもありますからね。普段は入れてないお金の存在に――らしい。


「松尾―。明日帰すから。明日学校居るか?」

「明日居るのかはわからんが――マジか」

「マジで頼む。俺切られたくないんだが」

「いや、殺人事件は起こらんだろ」

「いやいや、長宮だしさ」

「うん?今長宮。ってまた聞こえなかった?気のせいかなー?松尾君」

「……松尾様!」


 長宮さんちゃんとこちらに耳は傾けていたらしい。


「六石も暑くておかしくなったか。って――俺もいきなり――って、ぴったりあるし」


 俺は財布を一応確認してみると――びっくりだな。100円くらいの残高を残して足りてしまうという。小銭が無いのでおつりが長宮さんから出ないと。真面目に財布がすっからかんになってしまうのだが。あるかな?


 ふと長宮さんの方を見ると。美味しそうなカップケーキをお食べになっておられました。自由人だわ。めっちゃ自由だわ。美味しそうなの食べてるわー。


「……あの――長宮さん。100円のおつりある?」

「うん?100円?あるよー。あるある」


 制服のポケットに長宮さんが手を入れてごそごそ。するとちゃんと100円玉が出てきたのだった。


「……ということで、俺が支払い――六石は早めに俺に支払いを」

「助かった」

「うんうん。支払いはとりあえず完了ね。はい。松尾君100円。ってこれ美味しい」

「マジで自由人だわ」

「松尾君も間接キスでいいなら一口あげるよ?」


 スプーンにケーキを乗せて長宮さんがこちらに差し出してきたが――俺が返事をする前に。


「まあそんなことしたゆえに殺されるから。しないけどねー。松尾君して欲しかったら。ゆえに許可もらって来て」

「長宮さん。謎な事はいいから。って――財布の中身が――からっぽ」


 はい。俺の財布の中身が急激に減少したのだった。いやいや、なんでだよ。俺完全に巻き込まれてるじゃん。何でこうなるかな。ってお金返って来るよな?ホント。数千円。返ってきてくれ。


「そうそう。六石」

「うん?」

「松尾君にちゃんと支払いしなかったら。澪たちと乗り込むからね?わかってる?」

「——はい」


 あー、これはちゃんとお金返って来るわ。六石が再度フリーズしたのだった。

 いや、長宮さんって、やっぱり強いわ。存在感が強いというか――味方だと大変心強かった。子供とか言わなくてよかった。さすがです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る