第102話 代理人?

 ♪♪~


 石見先輩と連絡先を交換し終えたタイミングで俺のスマホが鳴った。

 隣に居る石見先輩が試しに鳴らした。ではなかった。


 スマホの画面には、長宮さんからの着信を告げる表示が出ていた。

 すると俺の隣に居た石見先輩が普通に覗き込んできて、この先輩に個人情報なんやらは通じないな。


「おっ、彼女ちゃんかな?」

「違います」


 違いますから。こういうのははっきり言っておかないとなんでね。後々何かが起こると――なのでね。そして俺ははっきりと答えた後――。


「すみません。ちょっとクラスメイトからなので――」

「どうぞどうぞー」


 石見先輩に許可を取ってから電話に出てみると。


「—―もしもし」

「やっほー。松尾君」

「どうしたの?長宮さん」

「いやね。ちょっと当の本人がポンコツだったから私が代わりにね。ポンコツ過ぎるのがまた話してポンコツをやらかすと――私たちが笑い過ぎて壊れちゃうからね」

「—―はい?」


 長宮さん何を言ってるんだろうか。ポンコツという言葉だけが印象に残ったんだが。と俺が思っていると。


「昨日やらかしたんでしょ?あのポンコツが」


 長宮さんがそんなことを言ってきたのだが。昨日というのでもうピンときた。結崎絡みじゃん。ってことで。


「えっと――それは――」


 何か嫌な汗が――と俺が思っていると。


「女の子泣かせるとはね――えっ?あー、何?あー、松尾君は悪くない……大丈夫わかってるから。ってか気になるなら自分で話したら?ってダメダメ。私が許可してないんだった。ポンコツだからね。ほらほらポンコツは大人しく正座。正座—―うんうん。はいはい、私が話してあげるから。ポンコツは大人しく」

「—―」


 長宮さん。丸聞こえ。そして、少し結崎の声が聞こえたような気がしたので……今一緒に居るな。と俺が思っていると。


「もしもーし。松尾君ごめんねー」

「……なんか嫌な予感しかしないけど。一応、はい」

「聞こえた?」

「まあ――聞こえてた」

「ってことで、松尾君ならわかってると思うけど。あのポンコツのポンコツがポンコツな状態で。ポンコツパニックで、本当は松尾君とちゃんと話したいのに、心折れたー。みたいな。意味わからないこと言っていたから。こっちで勝手に叱っておいたから。また松尾君の都合のいい日に会ってあげてほしいんだよ」

「……ポンコツ祭りだね。マジでポンコツしか残らないんだけど」

「だってー、もうポンコツじゃん」

「……」

「あっ。松尾君。ホント意味わかんないポンコツ娘だから。もう相手できないとか思ったら、はっきり言ってあげた方がいいから。うん。あれ、相当ポンコツだったから。室長とか。無理矢理してるようなもんだから。中身ガラスだから。それも超薄い。触ったら粉々の可能性もあるし」

「……長宮さんいろいろ言っちゃってるけど……大丈夫?長宮さんがこの後怒られそうなんだけど――」

「大丈夫大丈夫。今既にめっちゃすごい力で片腕握られてる。多分明日痣になるねー。やめてくれないかなー。ポンコツなのに強いよー」

「いやいや、それは――」

「まあとりあえず。ちゃんとゆえの告白の返事してあげて。多分ちゃんと聞けるように――澪が指導したから」

「—―蓮花寺さんも居るのか。って――なんかいろいろ情報が漏れているというか……長宮さん――何したの?」

「にひひひー」

「……その場に居ただけの可能性が浮上」


 ってか、これ電話だからまだ俺話しているのだと思う。電話じゃないと――無理かな。と俺が思っていると。


「まあまあいろいろと分かり切っていたことだからさ、今更何ともだよ。ってか松尾君今からゆえのところ来ていいよ?めっちゃボロボロの超面白いゆ――ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……」


 その後数秒間。長宮さんとの通信は遮断した。


「—―あー、あぶなー。殺されるかと思ったー」

「……ご無事で」

「うん。澪が居てくれてよかったー」

「ははは」

「松尾君ホント注意だよ。ゆえめっちゃ力強いよ。襲われるよ?逆にやられるよ。危険危険」

「……えっとー何話してるんだか――長宮さんが場を和ませてくれているじゃなくて――ってそうそう、今日はちょっと無理かと。実は今学校で……」

「およ?学校?夏休みだよ?」

「いや、ちょっと図書関係で呼びだしを。委員会ですね」

「あー、お疲れー。夏休み早々大変だね。あと暑いのに」

「ははは……ホント暑いよ」

「ってかあれ?先生と松尾君2人っきりの濃厚な時間?」

「違います」


 さっきも言ったが違うことははっきりとっとと答える。これ大切。


「なんだー。って1人でなんかしてるの?」

「いや――まあ先輩と」

「およ?澪。何か松尾君先輩とプレイ中って」

「おかしいから!長宮さん!?」


 何か長宮さんの声が小さくって。何を勝手な事言ってるんですかね!?と俺が思いつつ呼びかけると。


「うそうそー。でも松尾君って誰か仲のいい先輩いた?私は――うん。ゆえと居るところしか知らないんだけど」

「—―長宮さんと居ることも最近は多いかと」

「あらー、私そんなに評価高くなってた?」

「—―どうでしょう」

「えー、高くないの?」


 何だろう。石見先輩と今日1日話していたからだろうか。長宮さんに付いていけるというか。何か、普通に話せている俺が居た。


「ってか、じゃあ今日は無理で――明日は?」

「いや、明日もまだ続きかも――結構大掛かりなことしているというか。早く終わらしたいんだけどね」

「ありゃー。ほらゆえ。松尾君忙しいじゃん。委員会だって。しばらくちゃんと話せないね。まあゆえが乗り込んだ――――ぎゃあああああ!」

「……」


 また長宮さんとの通信遮断が起きた。ってか、どこに居るのかわからないが。そんなに騒いで大丈夫かな?と思っている俺だった。すると――。


「松尾。お疲れー」


 電話の向こうの声が変わった。


「あっ、蓮花寺さん。あれ?長宮さんは?」

「実況した方がいい?すごいよ。ちょっと年齢制限かかるかもよ?」

「—―お断りしようかな?」

「めっちゃ面白いよ?ゆえがね。奈都の顔引っ張っててね。ぐちゃぐちゃにしてる。バタバタしてるね。あと絡み合ってる」

「……にぎやかだね」


 絡み合ってるってなんだ?


「ちなみに詳細教えとくとー。ゆえが白。奈都は黒だね、パンダだ」

「……何とは聞かない」

「丸見え丸見え」


 蓮華寺さんが電話の向こうで笑っている。


「蓮花寺さん。被害が広がるかと」

「ってことはおいておいて、まあゆえはポンコツなことしたみたいだから。まあまたそのうちでいいから話してあげ――いや、松尾。うん。相手する人は選んだ方がいいよ。うん。あれは―—ハイパーポンコツ」

「ははは……、めっちゃポンコツ言われてる」

「いやだって何してんの?でしょ。って、まあ私がなんか言ってもだし――って、何か隣がうるさいから。切るね。こっちに被害が来てもだから」

「あっ、はい。了解です」

「じゃまたー」


 ――はい。そこで多分どこだろう?結崎の――家?うん。家の確率が高いかな?うん。とりあえず、いつもの3名様からの電話は終わりました。

 いや訂正。2人か。結崎は――外野というか。直接は話してないんでね。まあ元気そうというか。壊れてはないみたい――って、何か話が広がってて、会いにくいんですが……と俺が思っていると――。

 そうそう俺の近くには先輩が居たんですよ。ちょっといろいろあって忘れかけていた。そんなことを思いつつ横を見ると。


「—―後輩くん何か面白うそうな会話が聞こえてきてなかった?」


 ニヤニヤしていた。


「……気のせいですね」

「えー、絶対面白そうじゃん。そして雰囲気からして女の子2人でしょ?」

「黙秘権で」

「えー、ってか、後輩くん。本当にハーレム作ってる?」

「ないですから、って図書室戻って作業再開しましょう」

「えー、今からするの?」


 石見先輩がスマホの時間を見つつ言う。


「……あー、でもまあ下校時間まではしないといつまで経っても終わらないというか……」

「後輩くんは真面目だの―。ふむふむ」

「何でおじいちゃん風?」

「のんびりした方が長い間後輩くんと楽しめそうだからね」

「……」


 などと石見先輩と話していると。


「あっ。いいところに居た!」


 ここで久しぶりの登場。楚原先生がこちらへとやって来たのだった。

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