第99話 本領発揮

 本日はら何をしに図書室に来たんでしょうかね?誰か教えて欲しい。俺はもうわからなくなっています。


 現在は楚原先生が買って来てくれたお昼ご飯を持って3人で校舎の陰。外で食べているところだ。

 さすがに外は暑い――のだが。校舎の陰は風もあり。マシだった。慣れてくるとちょうどいいというか。風が気持ちいところだった。

 もしかすると。室内よりこういうところの方がいいかも。と今俺は思いだしていた。ってそんなことはいいか。


 とりあえず問題がある。図書室内の作業が全く進んでいない。本来なら担当の先生の指導が入ってもいいのだろうが。その指導をすべき先生はというと。


「松尾君はね。優しいからね。うんうん。たまに意地悪な事するかもしれないけど。先生が見てる限り。大丈夫な子だから」

「えー、でも先生。私の事かわいいとか言うのは――目?頭?大丈夫?ですよ」

「松尾君。実は石見さんみたいな子がタイプなのかもねー。広めないと」

「あー、なるほどー。そう言う考えも……」


 何を勝手に石見先輩と話しているのかである。


「あの。ちょっとすみません。真横にいるので忘れられることはないと思っていたんですが。本人居るのに勝手にいろいろな事言わないでくれますかね?」

「えっ?松尾君あれでしょ?夏休み中にハーレム拡大でしょ?」

「楚原先生は何がしたいのか――」

「他の子が知らないところで松尾君がいけないことしていて、それがバレた時の修羅場が見てみたい!」

「……」


 楚原先生暑さでおかしくなってるのかな?帰りの電車で楚原さんにあったら伝えておいた方がいいかな?


「先生。私そんな修羅場にほりこまれたら。先輩でも負けますよー。身体の見た目で一発KOですよ」

「あの―—石見先輩のそろそろそのお話は。はい。終わりましょう。この話をずっと続けているとホント今日何しに来たかわからなくなるので」

「えー、今日中にしないといけないことじゃないから。今日は親睦会で」


 石見先輩がそんなことを言ってきたので――。


「おかしいですよ?はい。楚原先生一言」

「えっ?親睦会じゃないの?」

「—―聞く人間違った……」


 誰かマジで助けてくれ。俺大変なとこっろへと来てしまったみたいである。


「あっ。楚原先生!」


 後ろから――体育の先生が声をかけてきた。


「はい?」

「ちょっともう一回この後いいですかねー?忙しかったらまたでも――」

「大丈夫ですよー。今日は2人も委員が来てますから」


 おいおい、作業全くしてないんですが。


「助かります。お昼終わったらで大丈夫ですから職員室にお願いします」

「わかりました」


 楚原先生、またこの後抜けるなー。と俺が思っていると。


「ってことで、松尾君。段取りはわかってると思うから。よろしく。あっ。一つ新しく作るのは受付前に本棚ね。そこは岩見さんの本の紹介文とかでたくさん飾るところだから。あとはー、まあ今日では終わらないと思うから、のちのちでー」

「ついにほぼ丸投げ――ってこの先生今日で終わらないって言ってる」

「ベテランまかせた」


 楚原先生がなんでそんなに楽しそうにポーズしているのか俺にはわかりません。


「後輩くんすごいねー。1年生で既にベテランとは。それも、鬼と言われている先生からの絶大な信頼」

「……何も感じなくなってきた」

「まあまあ午後からは私できるところ見せるからさ」

「お願いしますよ?石見先輩」

「まかせなさい!そしてその後。後輩くんの目が大丈夫かもちゃんと見てあげるから」

「それは必要ないです。ってなんでそこに戻すのか――」


 お昼休み――ではないか。とりあえず昼食休憩もにぎやかな感じに過ぎていったのだった。

 昼食後。楚原先生はまた何かのお手伝いなのか。職員室へと消えていき。俺と石見先輩の2人だけで図書室へと戻った。


「ってか後輩くん」

「はい?」

「さっき後輩くんが飲み物買いに行ってる時に先生から聞いたんだけど。後輩くん超仲良しの美人クラスメイトと付き合ってるの?ねえねえどうなの?先生は詳しくは松尾君へー。みたいな感じで言ってたんだけど。超気になってるんだけど」

「……何という嘘を」

「えっ?違うの?」


 いや、まあちょっと今ややこしい事というか。何か自爆したポンコツなお方がいるので、それも何とかしないといけないのだが――って、そんなことを俺が全く事情を知らない石見先輩に言えるわけもなく。


「そのいろいろあって――仲が良いと言いますかね。そんなことで――今は」

「えー、何その微妙な答え。ってか紹介してよ。でさ。今日後輩くんに私さ。かわいい。美少女。とかいきなり言われて。狙われたんだー。って美人クラスメイトさんに報告してみたいから」

「絶対紹介したくないというか。石見先輩。大人しく作業をしてください」

「じゃあ私が真面目に先生に頼まれたイラストとか全部描くからさー。書いたら語り合おう。そして紹介して」

「……絶対先輩と――結崎とは合わない気がする」


 俺がそんなことをぼそりというと――。


「……結崎――?」

「—―—―うん?先輩?どうかしました?」


 隣を歩いていた先輩が何か引っかかったのか。ちょっと考えるポーズを急に始めたので――俺が声をかけると。


「あー、ごめんごめん。いやね。ちょっと懐かしい苗字聞いたな―って」

「懐かしい苗字?」


 俺が聞き返すと、ちょうど俺たちは図書室内へと戻ってきた。


 図書室はもちろん誰も居ない。って俺たちが出て行く時鍵を閉めたのと。午後は今日開いてないことになっているみたいなのでね。多分誰も来ることはない。

 俺が椅子に荷物を置くと、石見先輩は朝から何かいろいろと散らかっていた机の席に座った。どうやら作業をちゃんとしてくれるみたいだ。と俺が思って見ていると。


「実はねー。昔めっちゃ仲のよかった子がね。私居たんだよ。その子の苗字も結崎でね」


 どうやら、作業ではなく。何か昔話が始まりそうな感じだったが。石見先輩は筆記用具に手を伸ばしていたので作業をしつつ話。という感じらしいので、俺も棚の方へと移動しつつ。石見先輩の話に返事をした。


「昔ですか」

「まあ私が小学生の時なんだけどねー。親からね。お隣さんの子と仲良くしてだったかな?まあ隣に住んでいた子がね。親がよく留守にするから私のところに預けられてたんだよ」

「あー、あるほど」


 石見先輩って――小学生のころから――もしかしてこんな感じだったのだろうか?もしそうだと、そのお友達さんも振り回されたんだろうなー。


「年は違ったんだけどね。でもしばらく学校の登下校よく一緒だったし。放課後もよく遊んだし。そうそう休日もね。一緒に遊びに行ったりで、めっちゃ楽しかったんだよ。私さ。小学校の頃は――まあね。ぶっ飛んでたから」

「……既にか」


 あー、やっぱりぶっ飛んでいたか。って――なんか変な間があったのは気のせいか。とか俺が思っていると。


「まあそんな大きなことはしてないよ?ちょっと教室の入り口にさ。あれ、教室に黒板消しあったでしょ?あれセットしてみたりさ。あっ、ドアにテープもしたかな?べチン。って先生に顔に張り付いたのは――傑作。大成功だったなー。あとはー、あーそうそう蛇口全開で水浸し事件もしたっけ?」

「……」


 何だろう。石見先輩の過去を知ると――悪ガキにしか見えなくなってきた。と俺が思っている間も石見先輩は懐かしそうに?多分。そんな感じで話を続けていた。


「あとね。一番大きなことだと――理科室でふざけて爆発させたかな?」

「石見先輩」

「うん?」

「今はしてないですよね?」


 頼むから大爆発とかやめてくださいね?巻き込まれたくないから。


「当たり前だよー。もう高校生だよ?大丈夫だよー」

「—―なんか心配」

「酷いなー。ってそうだよ。私の事じゃなくてさ。その子はね。ボソボソというかね。目立たない子だったの」

「……石見先輩と真逆」


 その子、大丈夫だったのだろうか。と俺が思いつつ。本を整理しながら聞いていると。


「でも、普段は目立たないだけど。そのめっっっちゃ笑顔がかわいいわけ。うん。私の事を大先輩。みたいな感じで見てきてくれたしね」

「—―あれ?俺が思っているより――いいコンビだった……?」

「私はね。お姉さんを頑張ったんだよ。すごいでしょ?もうそりゃいろいろ教えてあげたよ?勉強もだし。スポーツも。そうそう料理もだよ」

「石見先輩が本当に万能なら――ですね」

「ちょっとー。なんで信じてないの?私できる子だよ?」

「—―じゃあ……後日機会があったら見せてください」

「おお。いいよいいよ。見せてあげる。この学校で初めての後輩くんだからね。うんうん。何でもしてあげよう」

「—―年齢制限がかからないように」

「あれれー?それはフリかな?私に何か期待してる?後輩くんそういう子かー。やらしいー」

「……脱線しないように予防線を張ったんですがね――これは俺のミスですね」


 先に行って脱線を防止する――そのパターンは無理か。と俺は思いつつ。作業の場所を移動する。俺の姿が棚で隠れても石見先輩の話は続いた。


「そうそう。伝説をせっかくだから後輩くんに教えてあげよう」

「伝説?」

「私ね。習字の時間だったかな?」


 ピンときた。という言葉がピッタリだと思う。

 俺は石見先輩の口から習字と、いう言葉。書道とかでもだが。そのワードが出て来た時にホントピンときた。過去を知らないがまるで知っているかのように――。


「あっ。予想が出来ました。全身で墨汁をかぶったとかですね。または身体中に書いてみた。とか」

「……後輩くん。どんな想像してるわけ?私仮にも女の子なんだよ?そんな全身真っ黒になるとか。ウケ狙いで体張らないからね――?今は」


 そんなことを言っている岩見先輩だが――石見先輩。今は。とは?と俺が思っていると。


「……なんでわかったかな。実は後輩くん私の過去を知ってる――?」


 何か石見先輩がぶつぶつ言いだしたのだった。


「石見先輩。かぶったんですか?それ――あとあと大変だったんじゃないですか?」

「ちょちょ、後輩くん。墨汁をかぶった。ではないからね?ちょっとね。手に付いているの知らなくてね。気が付いたら顔が真っ黒なだけだからね?ウケ狙いでやったわけではないからね?まあ一度汚れたから――その後派手に自分からしたけどー」

「あー、なるほど。でも体張ってますね」

「だからー、まあ、その後教室は先生含め大爆笑で――まあみんなも私が笑いを取りに来た。みたいに思ったらしくてしばらく笑いの神とかも言われたけどー」

「他の生徒はマネしない。やりにくいようなことも普通にやっちゃう先輩。ってことで伝説になったんですか?」

「ま、まあ――そうかもしれないけど。多分未だに伝説の強心臓。とか覚えている子いるかもしれないけどー。なんか男子がゲーム内の……能力?みたいなので言いだしたのが一時期広まったんだよね。何でもする。出来る子って感じで私見られて」

「とりあえずやらかしたという事ですね。わかりました」

「—―何だろう。急に恥ずかしくなってきた。ってことで、はい。後輩くんこの話終わり。何か後輩くんに話すと恥ずかしくなってきた!」

「—―了解です」


 石見先輩って――面白い人。あと――今は姿が見えないのが残念だが。多分照れているところもかわいい。だろうな。と思っている俺だった。

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