第100話 実力者
石見先輩の昔話を聞いていたのももう過去の事。
現在はやっと俺たちは真面目に作業を開始したところである。
俺は棚の上などに置かれていた看板などをとりあえず降ろしつつ。正しい場所にかけるため移動させたりしている。
石見先輩はというと――今は机に向かって作業中。あれだ。図書室内にいろいろと飾るイラストを描いている。
果たしてどんなものなのだろうか。と俺は思っていたのだが。見ているとこちらの作業が進まないし。そもそも邪魔にもなりそうなので。とりあえず別々に作業中。
なのだが、結局図書室の模様替えという名の片付け俺が1人でしているんですが。楚原先生どこ行った?
「後輩くん後輩くん。こんなのでどうよ。完璧」
俺が図書室の奥の方に居ると石見先輩の声が聞こえてきたので、一度先輩のところへと行ってみると、どうしよう。予想以上だった。石見先輩。マジですか。
「—―石見先輩。マジでイラスト上手い。ってか。文字も綺麗ですね。いや、何かさっきは……その、すみません」
「でしょー」
机の上には――多分先輩のオリジナルのキャラなのだろう。かわいい女の子のキャラが書かれており。おすすめ!という看板を持ったイラストが出来上がっていた。
って、いやびっくりなのは、石見先輩作業を始めたらホント静かになったなー。とは思っていたが。すごいものが出来ていた。
キャラの肌の感じ何?めっちゃ柔らかそうというか――いや現実で女子の肌柔らかそう。とか言っているといろいろ問題になるかもしれないが。石見先輩のキャラだから大丈夫だろう。ほっぺというのか。肌の部分全てがやわらかそうなタッチで描かれていて、しばし俺が見惚れていた。
いやマジで予想以上だったんでね。びっくりしていた。
「どうよどうよ。私の実力」
「凄いです」
「うんうん。じゃ――あれ?後輩くん私何か約束してなかったっけ?」
「—―記憶にございませんが?」
石見先輩が言ってから少し前の記憶が少し出てきた気がするが――なんか嫌な予感というのと。そこまで思い出す必要はないと瞬時に判断した俺はそんなことを言いつつ再度石見先輩の完成したイラスト見つつ。
「にしても――すごいですね。石見先輩。いや、ホント、これならもっといろいろ描いて欲しいですよ」
「—―ホントに?」
俺が再度感想を言うと岩見先輩は少し驚いたような表情をしつつ聞いてきた。
「……えっ?」
「いやね。私今までは自分用ってか。自分が満足するイラストしか描いてなかったというか。人に見せる用とかに描いたことなくてさ。ちょっとドキドキだったんだよねー。下手とか言われたらどうしようって」
「いやいや何を。マジでこれすごいと思いますよ?透明感のあるイラストというか――うん。あと先輩。字もめっちゃ綺麗ですよね」
「まさかの字まで再度褒めてきた。ちょっと後輩くんどうしたの?私褒めても何も出ないよ?」
「いやいや感想を言っただけなんですが……ってホント自信もっていいと思いますし。もっといろいろ描いてほしいかと。まあ個人的にですが。でも楚原先生もOKくれると思いますが」
「おおマジかー。よっしゃ!じゃあ頑張っちゃうよ?どんどん描いちゃうよ?」
それから先輩はまた黙々とイラスト作成へと入った。
途中鼻歌が聞こえてくるほどご機嫌だったみたいなので、俺はそのままそっとしておいて、こちらはこちらの作業を続けた。
ちなみに、今度声をかけられたのは――先ほどより早かった。
「あー、後輩くん後輩くん」
「はい?」
俺が本を運んでいると石見先輩が手を振っていた。
「後輩くん」
「どうしたんですか?」
「いやさ、本の紹介ポップ?まあそう言うの作ろうとしてるの」
「あー、あの本屋さんとかであるやつですよね?あらすじとか。感想とかが書いてある」
「そうそうそう。なんだけどー。今この図書室でおすすめになってる本私どれも読んだことないんだよねー」
「……なるほど。書けないと」
「ってこと!」
「えっと――じゃあ。普通に新作。とかさっきみたいにおすすめ。あっ。個人的な事を言うと受付って看板。イラストあってもいいかと」
「ふむふむ。なるほどどこにでも使えるようなタイプを作って――そっか。本の紹介は先生に描いてもらって、そこだけ変えれるような感じにしておけばいいのか。そしたらずっと使ってもらえそうだし」
「そんな感じですぐにイラストが描ける先輩がすごいです」
「でしょー。ちょっとね。ハマっていた時期はずっと描いていたからね。イメージはたくさんあるんだよ」
「石見先輩は――オールマイティーと」
「だね。何でもこなすよー。って、後輩くんの意見を聞くと。この図書室を私好みに変えていいってことだよね?どんどん変えていい?」
「—―それは――どうなんでしょうかね。まあ普通にが無難かと」
「えー、後輩くん的に年齢制限かかりそうなイラストは?」
「図書室にそのようなイラストの看板というかポップが置けるとでも?」
この先輩マジで大丈夫だろうか?
「…………まあ、無理かー」
「即答してほしかったな。うん。すぐに答えてほしかった」
「じゃあ、普通に全年齢対象で」
「ってかさっきのでいいんですよ。さっきみたいなイラストでお願いします」
「後輩くんは褒めまくってくるねー。でも私的にはそれ好き。やる気出るからね。よーし。やるかー。暑いのがー。だけど」
「暑いのは――耐えてください。こっちはこっちで日差しで暑いので」
「エアコン頑張れ!だよ」
「まあこれだけ暑いとエアコンもなかなか効かないんですよね」
「だよねー。もっと最強の居るよね?先生にあとで言っとこ」
俺と石見先輩はそんな話をしつつ――作業へと各自戻って行った。
それから俺は台を持って来て――台に上り高いところの看板設置や。ほんの整理をした。
にしてもちょっとした上り下りなのだが。日差しが窓から入って来ているからか。暑い。少し動いたら汗が――ってやつだった。
おまけに今は窓側に来たので、換気のために一部開いている窓から風が入ってくると――なのだが。今は無風。暑い。が、作業を少しでも早く終わらすために俺が台に上り下りしながら本を並べたり看板を付け直したりしていると。
石見先輩の声が真下から聞こえた。
「—―後輩くん」
「!?ちょ、石見先輩。いつ移動してきたんですか?」
びっくりだった。足音とか全く聞こえなかったんだけど。
「なんかさ。誰かがこういうはしごとか台に乗っていると。揺すりたくなるんだよねー。揺すってみていい?」
そう言いながら俺の乗っていた台を持つ石見先輩。
「……先輩ですが――ガキですか?」
「嘘だよー。ここで後輩くん落下したら私捕まるからねー」
「捕まるかは――ですが。まあケガさせたらですね」
「だからちゃんと声かけたじゃん」
「……それは俺がOKしたら揺するつもりだったと」
「—―いやだなー」
「先輩さっきからすぐに反応してほしい時にちょっと遅いんですが」
「ってか後輩くんこれどうよ。新作」
そう言いながら石見先輩は手に持っていたイラストをこちらに見せてくれた。
そこには本を読んでいる女の子と男の子のイラストがあって、図書室では静かに。と書かれていた。
図書室にピッタリなイラストですね。
決してそれを石見先輩の背中に貼ってやろうか。とか思ったことは――ないので。まあ数パーセントはあるが。何とか口に出さずに――終わった。よしよし。
「石見先輩。ホント上手ですね。ってか1枚描くのめっちゃ早くないですか?なんていうのか――二頭身?くらいのイラストじゃなくて――その何というか。ラノベ?ライトノベルとかの表紙や挿絵で使われているようなイラストなのに、そんな短時間でかけるんですか?実は描いて持って来ている?」
「いやいやちゃんと書いてるよ?それにもっとちゃんと描いたらそりゃ時間かかるよ。今はささっとだから」
「マジか。これでささーっとか」
俺は再度、石見先輩が持って来たイラストを見る。これでささっととか――マジで石見先輩の書いたイラスト欲しいかも。
「およおよ?後輩くん私の描いたイラストなんかに惚れちゃった?もっと上手な人はたくさんいると思うよ?」
「いやいや石見先輩の描くのもすごいですよ。何か書いて欲しいくらいですもん」
「—―そ、そうなんだ。そこまで行ってくる子は初めてだなー。じゃ、気が向いたら描いてあげよう!」
「マジですか」
「うん!気分がいいからねー。描いちゃおう。さっきも言ったけど、本当に怖かったんだけどねー。でも後輩くんそこまで褒めてくれるからねー。描く。年齢制限ありをだよね!」
「……できれば全年齢対象で」
「えー。後輩くんあれでしょ?コソコソ見るんでしょ?」
「部屋に飾りたかったんですけど?」
「あー、年齢制限ありのをか。眺めてニヤニヤすると」
「だから、違いますよ!?」
石見先輩って、ほんと残念というか……何というか。
「ってか。後輩くん」
「はい?」
「後輩くんのやってる方の作業ってさ。今日で終わるの?ちなみに私の方のイラスト描きは――まあ無理だね!」
「……こちらもですよ」
はっきり言おう。1人でなんか俺はしているが――こんなの図書室内すべてしているので、今日1日で終わるわけないというやつである。ってかふと俺が図書室内の時計を見て見ると――。
「—―もう16時だと!?」
現在時刻に驚いた。
「あっ。ホントだね。今日後輩くんとほとんど2人っきりじゃん。きゃー」
「石見先輩。元気ですね」
「って後輩くん」
「はい?」
「明日も続きやろう!」
「……マジですか」
いや、しないといけないんだろうな。とは思っているのだが。毎日しないといけないようなことではなー。
ってか、一応忘れてないが。結崎の事も気にしてるんでね。ってそういえば連絡しようとしていたけど。今は難しいから夜か。あっ、帰る時でいいか。などと俺が思っていると。
「後輩くんは明日、用事あるの?私は――あっても来るからね」
「あるならそちらを優先していいかと――」
「大丈夫大丈夫。予定なしだから。それになんか後輩くんと話していると楽しいからね。もし予定あっても私はこっちを選ぶよ」
「……なんかすごいことを言われている気がするが。まあ俺も予定は何もないんで、楚原先生がOKなら。って多分ここ、平日は開いていると思うんで作業は大丈夫だろうと思いますが」
「じゃあ明日も続きやろう!そしていろいろ語ろう!」
「語る必要はあるのかな?作業した方がいいかと」
「えっ?根掘り葉掘り後輩くんのハーレムに関して聞かないとだし。そうだよ。さっきこんなこと言ってたんだよ」
「……思い出さなくていいのに」
「まあまあ、ってかホントに後輩くんとなんか話してると楽しいというか。イラストも褒めてもらえるからね。うん。やろう!」
石見先輩はそんなことをめっちゃいい笑顔をで言いながら。明日の予定を決めていった。とりあえず明日もここで作業ということが決まると。
「よし。後輩くん。喉乾いた。飲み物買いに自販機行こう!」
「……はい」
自販機へと移動することになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます