第97話 先輩

 ガッタン――ガタン――ガタン。


 今日もいつも通り。俺一人を乗せて電車は田園駅を出発した。

 この区間はホント俺だけの率の方が高いのでね。って最近はら2人以上も多々ある気がするが――今は俺だけである。

 2両編成で俺だけ。いつも通り運転手さんと俺だけである。


 にしても夏休み中は電車に乗る回数が減るかとかホント思っていたが。昨日も乗ったし。今のところ毎日乗ってるわ。と俺は思いつつ。外を見る。真っ暗。まだトンネ――あー、明るくなった。そして電車は公民館前駅へ。


 本当は結崎がどうなったかも、気になるが。まだ朝の早い時間だ。学校帰りに連絡でいいだろう。と俺は思いつつそのまま乗車を続ける。

 ちなみに公民館前駅で10人ほど乗ってきたため、いや、予想以上に乗ってきた。

 それはいい事だがね。誰も乗っていないより一人でも多く電車を使ってこの鉄道が消えるとかいうことが起こらないようにしてほしいのでね。

 そんなこんなでそこそこの乗車率で電車は高校前へ。夏休みと言えど、部活などはあるので数人が一緒に駅で降りた。よく見たら先ほど乗ってきた人の一部。部活動のユニフォーム?の人が混じっていた。


 それから、俺もその数人の後ろを付いて行く感じで学校へと向かったのだが。そういえば昇降口。下駄箱のところって鍵開いているのだろうか?と歩きながら思っていたのだが。普通に開いていた。どうやら文化部?の部活のためか。普通に開いていたし。普通に生徒が廊下を歩いていた。すると――。


「—―あー、運動部頑張ってるんだなー」


 ふと目についた掲示板には運動部の功績。試合結果などが書かれていた。そういえばあまりちゃんと見たことが無かったが。掲示板、学校内に複数カ所あったかと思うが。そこに貼られている……ポスターじゃないな。これは――記事?記事だね。誰かが書いているみたいなのだが――ずっと同じとかではなく。ちゃんと更新されているんだよな。

 結構定期的に変わるんだよな。と俺は思いつつ構内へと入って行く。

 ちなみに、いつもより構内に人が少ないからか。普段あまり気にしないようなところにも目がいった。

 図書室に行く途中でも、どこの部活かはわからなかったが。活動をしているらしく。声も聞こえたし。途中で、なんか見覚えがあるような無いような?同じ学年かな?同じクラスだったかもしれないような人の姿もあった気がするが。

 向こうも忙しそうというか。何かバケツ?掃除中ではないと思うが。いや、でも掃除かもしれないか。とにかく忙しそうに何かしていたので、俺はちょっと目についただけというか。特に詮索せずに、そのまま図書室へと向かった。


 俺が図書室へとやって来ると。今日は一応開館の日らしいが人は居ない。誰も居ない。ドアは空いているが誰も居なかった。


 ◆


「—―うん?何故に空っぽ?」


 俺は図書室に入るとつぶやいた――が。特に誰も反応してくれなかった。図書室内を見渡すと――。


 多分、何かをしようとしていたのか。机の上には画用紙やらやらが散らかっている。筆記用具もそのまま置いてある。


 本棚の方には――脚立があったので、模様替え中というか。整理中というのは本当らしいが。誰も居ないとはどういう事だろうか?と俺は思いつつ。とりあえず空いていた机に荷物を置いた。


 その後受付を見て見ると、パソコンは唸っていた。ウィーンというのか。ブィーンなのか。とりあえず電源が入っていたので唸っていた。もしかしたらずっと付いているのかもしれない。とか俺が思っていると――。


「—―せてください!なんでも描いちゃいますから。こういう担当待っていたんですよ!めっちゃ楽しそうですからね」

「ありがとう。出来れば普通に委員会も来てくれると先生さらに助かるんだけどねー」

「えー、放課後はもっと楽しい事と言いますか。図書室でも面白いことがあるなら毎日お手伝いに来ますが――」


 廊下の方から明るい声と――1人は楚原先生と思われる声が聞こえてきた。そういえば他の委員の人が手伝ってくれるみたいな事先生言っていたな。

 すると、楚原先生が図書室へと入ってきた。


「あっ、松尾君。さすがー。連絡から来るまでが早いから助かる!」

「ま、まあ――暇でしたから」


 俺が楚原先生に返事をしていると―—もう1人の影が。


「あっ。先生。彼?もう一人の助っ人は?」

「そう。松尾君。1年生だから石見いわみさんからは後輩ね」

「……」


 はじめましての人が登場した。って、楚原先生パート2……ではないが。全く似てないからね。でも、いや、口には出せないが――俺より後輩というか。小さめの方が楚原先生の後ろからひょっこりと現れた。

 手には、工作でもするのか。ハサミやペンなどをいろいろ持っている。って、ここ中学生居たっけ?まさかの楚原先生助っ人に自分の子供?いやいやそれはない。確か楚原先生のところは子供は居ないと聞いた気がする。 

 ってか、さっきも言ったが似てないしね。ってそういえば今、後輩って言葉が出たよな。石見いわみさんだっけ?あれ?でも今――彼女から見てって感じだったから――あれ?もしかして今俺の方を見ている。えっと、なんか楽しそうな顔をしている美少女さんは――先輩?と俺は思いつつ。再度確認する。


 見た目では判断できません。


 身長は楚原先生と変わらない為。俺より小さい。この学校には珍しく――というのはおかしいか。普通に黒髪で今も風に少し髪が揺れているがサラサラしているのが良くわかる。 

 あと、長さは肩にかかるくらいで――あー。この学校の生徒らしいところ発見。

 ちょっと制服を着崩しているというか。シャツのボタン多めに外してます。というのとスカート短くしているから、健康的な足が眩しいです。などなど俺は――今の情報を実際には瞬時に頭の中で整理していた。瞬時にね。なので――。


「後輩くんか―。1学期は全然1年生と接点なかったから後輩くんの知り合い第1号だよ」


 ジロジロ俺が見たとかそういうことが実際にはないため。楚原先生とともにやって来た――かわいらしい?と言うと失礼なのかもしれないので、美少女先輩。とでもしておこうか。美少女先輩は跳ねるように俺の目の前までやって来た。


「うんうん。背高いね……って、なかなか真面目そうな子。って、まあそうか。先生に呼ばれて夏休みなのにすぐ来るんだもんねー。って、じゃあ私もめっちゃ真面目な子じゃん。すぐに私も来たんだからね。まあ家が学校に近いからだけどー。徒歩圏内だからね。って、なんで私はこんなに小さいんだよー!こんちくしょー!たまには私より小さい人居ないの!?後輩くん大きいし。何かそばに居るとめっちゃ安心感ありそうな子じゃん。ちょっと!なんで!?」

「…………はい?」


 ――なんかジロジロ俺の方が……石見?先輩に見られて、らいきなり怒られました。何故!?である。いろいろツッコミを入れたいところが多かった気がする。すると楚原先生も近寄って来た。


「まあまあ自己紹介は追々ねー。結構作業詰ってるからねー」


 そんなこと言ってきたのだがその時。俺の目の前に居た――美少女先輩が。


「あっ、そうだよ。先生。なんで先生私の事は名前覚えてないのに後輩くんはスラスラ出てきてるの?どういうこと!?」


 美少女先輩。石見先輩は俺の前から次は楚原先生の前へと移動していった。


「いや、だって石見さん委員会でしか会わないから。あははー。それに松尾君は放課後はほぼ皆勤よ?」

「えー。ひどいーひどいー。ねえねえ後輩くん。どう思う?」

「えっと――う、まあその――とりあえず楚原先生。本日のメンバーは……」

「以上です!」

  

 元気に見た目学生の先生が返事をした。

 はい。何かいろいろ確認をしないといけないのだろうが。俺はこれ以上人が増えないことだけ確認をしたのだった。

 っか楚原先生めっちゃ楽しそうにしている。図書委員の活動をしてくれる生徒が増えたからだろうか?


「あれ――後輩くんに話変えられた気がするな―。ちょ、後輩くん実は冷たい子?そんな子には見えないんだけどなー」


 また高速で石見先輩が俺の目の前まで移動してきた。


「いや――そんなわけは……」


 誰か助けて。美少女先輩の顔がめっちゃ近くにあります。何かめっちゃいい香りもしますが――って。先輩。胸元危険です――その――はい。底まで見えちゃいそうなと言いますかね。はい。お腹が見えそうです。

 お腹が見そうということは――既にブラは見えてます。はい。決して……ぺったんこだからちょっとしたふくらみだけで――服の隙間からおへそが――ではなくてですね。もちろんそんなところまでは見えませんが。

 とりあえず結構胸元が広く開いている……と言いたいんです。はい。ボタンは――ちゃんととめてくださいというか。せめてあと1つとめて。などと。再度俺の脳内では一瞬の整理作業が起きていると――。


 いや、俺の脳内語りすぎだよ。


「石見さんと松尾君。いきなりいいコンビねー」


 すると楚原先生がそんなことを言っていたのだった。いやいやどこをどう見てなの?だな。

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