第96話 電話は突然に

 翌朝。何か目覚めが良くないのは――あれか。

 昨日のぶっ壊れた結崎が心配というか。いやまあ――大丈夫だろうと思うが。何か勝手に壊れていったというか。ホント布団に丸まって耳塞ぐ子っているんだ。だったからね。

 かわいいところ見れたと言えば見れたのだが。でも学校が夏休みに入っていてよかったと思うべきか。


 もし今日学校があったら――結崎と再度ちゃんと話す機会がすぐに出来ただろうが。そりゃ席前後だし。でも昨日の様子だと学校で結崎があのパニックというか。あの様子になったら――なんでね。クラス大騒ぎだろうから、休みで良かった。ということにしておこう。


 って全く関係ないことを言うと――席替えってホントなかったな。あれ?前にも言ったか。俺もちょっと混乱中か。ってホント余計なことは頭の隅に追いやって――とりあえず俺は起き上がったのだった。


 時間はまだ早い。普段学校に行く時間だ。ってこの時間に起きたのは、結崎の事が心配――もあったのだが。あれだけ取り乱していると――だからね。でも、もう一つある。


それは、単にじいちゃんばあちゃんの朝ご飯の時間に合わせて起きないと。なんでね。いつもの事ってことよ。


 俺は背伸びをしつつカーテンを開ける。

外は――うわぁー。また最高に暑そうな太陽が頑張っていた。 


 それから俺は着替えて。朝ご飯。食後には完全に目が覚めた。朝ごはん食べるって大切だよ。休みの日でもちゃんと目が覚めるからね。


 そして、じゃ、結崎の様子を、はさすがに無理だ。まだ時間は朝の08時。多分あの様子だと――結崎はしばらく休んでいるというか。今はまだ夢の中の可能性があるから、まあ落ち着くまで、もうしばらく待った方がいいだろう。お昼過ぎ……午後は暑いけど。それくらいに1回結崎の様子見というか。連絡しようかな?そんなことを考えつつ。部屋に戻って来ると――そのタイミングで。だった。


 ♪♪~


 部屋に置いてあった俺のスマホが鳴り出したのだった。

 もしかして結崎朝になって落ち着いて連絡してきた?と思いつつ俺がスマホを手に取り画面を見ると――。


「……えっ?」


 そこには通常なら……ほとんど。いや、ほとんどじゃないな。滅多に――うーん。これも違う。あれだ。普通はかかってくるはずがない。なんというか、問題児とかじゃない限り?いや、でも連絡事項とか何かあればかかってくることはあるから。ほとんど。にしておこう。

 って俺がいろいろ考えている間もまだスマホは鳴り続けている。

 決して、何か出たくないから時間稼ぎをしているわけではない。ということを言っておこう。


 えっと、スマホの画面には――学校からの連絡を告げる表示が出ていた。


 出たくない。


 でも、俺はとりあえず通話ボタンを押した。いや学校が表示されるのは。一応何かの時にこちらから学校にかけることがあるかもしれない。ということで、学校の番号を登録していたのだが。まさかかかって来るとはだよ。担任の先生だろうか?


「—―はい。松尾です」


 俺何かやらかしたか?と恐る恐る電話に出てみると。


「あっ、松尾君おはよう。今日暇?」

「……はい?」


 ちょっと決心して電話にでたのだが。スマホから聞こえてきた声はらなんか。学生。ではないが。普通に友達に電話をかけているような感じの声りってこの声は楚原先生だった。


「えっと――朝からなんでしょうか?楚原先生」

「急にごめんね」

「いや、ホント学校から電話とかビビりました」

「ごめんごめん。お詫びに、今日のお昼ご飯奢ってあげるから学校に来てくれないかな?」

「……うん?」


 お詫びに――お昼ご飯。そのために学校へ?いやいや。何かおかしいと俺は思いつつ。


「あの――楚原先生。お昼ご飯以外に大きな用事あったりします?」

「あるの!図書室の模様替え。そのまま放置で気が付いたら夏休み。さすがに新学期までにちゃんとしないといけないから。手伝ってー松尾君!」


 スマホからは泣き真似?のような声が聞こえて来た。


「……なるほど。そういえば――」


 そういえば、ちょっと掃除というか。終業式か。あの時の図書室の光景を俺は思いだしていた。確かいろいろ中途半端になっていたな――と。


「ダメかな?ちなみにちゃんと他にも図書委員の子が手伝ってくれるから」

「……えっ?」


 何かめっちゃ珍し事を聞いた。他の委員の人が?昼休みは何人かが交代制とかで居たらしいが。って俺は逆に昼休みの時間に入ったことが無いから知らないのだが。

 いや、ホント他の委員の人とは接点がないんだよなー。委員会の時は顔合わすけど――名前とか全然知らないし。とか思っていると。


「でもその子も久しぶりだし。その子にはその子の作業というかね」

「は、はい?」

「とりあえず。ベテランさんも欲しいの」

「—―それが俺ですか。その子の作業というのも気になりますが……」

「まあまあ。で、ダメかな?」

「いや――まあら暇だからいいですけど」

「ありがとう!じゃあ待ってるからね。図書室で!」

「えっ、ちょ、ホント今から?」

「です!」


 ――プチ。


 そう言いながら先生は即電話を切った。

 多分あれだ、俺の気持ちが変わると。とか考えたのだろう。一度頷いたら絶対確保!とか思っていたのだろうな。


「—―制服?いや体操服?うーん。一応体操服持っていくか」


それから俺は、そんなことを考えながら。夏休み早々、学校へ行く準備をすることになったのだった。


 楚原先生からの電話から数十分後。俺はばあちゃんに学校へと行く事を伝え。家を出て田園駅へと向かったのだった。

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