第94話 another story ~事後報告~

 松尾君の家から帰って来て――どれくらい経ったかな?

 今の外は――もう真っ暗。ホント真っ暗。って23時だから当たり前かー。夜だよ夜。と私は思いつつ。ベッドに寝転がる。


 風呂上がりでちょっと髪がまだ濡れているがそんなことは気にせず――スマホを触る。そしてふと思いついた。


「なんか進展あったか聞いてやろー。っと」


 私が帰る時ゆえは松尾君のおばあちゃんのお相手とかで、そのまま松尾君のところに残ったからね。うんうん。私優しい!って私は私で松尾君に駅まで送ってもらったけどねー。

 もしかしたらゆえもそっちの方がよかった――?ってその後に送ってもらってるかな?いや――ゆえだとなー。どうだろう。と私は思いつつもとりあえず何かあったか。面白いことが聞けないかと思って、ゆえのスマホに電話をかけてみた。


 ――。


 ――。


 ――。


 しばらく呼び出し音が続く。出ないな?寝てる?お風呂?まさか――松尾君と密着中?などなどと私が思っていると。


「……」


 繋がった。が――向こうから何も聞こえてこないので。


「もしもーし?ゆえ?」


こちらから声をかけてみると――。

 

「……な……奈都――ぐすっ……ぐすっ」

「—―えぇぇぇ!?」


 うん。予想外。

 電話に出た。と思ったら――あれ?なんで泣き声?ってちょっと待て!?何があった!?松尾君かー。松尾君何かやらかした――!

 いや、ちょっとそれは――待とう。あの松尾君が?ゆえを泣かすようなこと……するかな?私にですら優しいというか。ホント一緒に居ても疲れないというか。楽な存在の松尾君が?この可能性はない気がする。

 ってことは――あれか。澪か。澪が泣かせたか!?って――あれ?もしかして――原因私!?とか思っていると――。


「—都……奈都」


 あっ。しまった。泣いている子の相手を忘れていた。

 耳元のスマホからゆえの泣き声がまた私の耳に届いてきた。そうだよ、ちゃんと話を聞いてあげないとね。お友達だから。


「えっ?ゆえどうしたの?何があった?お姉ちゃんに話してみ」


 お姉ちゃんじゃないけどね。まあそんなことが私に口からは出たのだった。優しい私。である。


 そして――ぐずぐず泣いていた?ゆえと話す事—―数十分後。


 ――。


「……アホの子。いや――お馬鹿。うんん。ポンコツ娘!!」


 私は――とにかくこの電話の向こうに居る馬鹿娘。ポンコツ。何ていうのが一番いんだろうか?と考えつつ。ゆえの言い訳を聞いていた。


「だ、だってー。その、もうドキドキ……で。もうパニック。で、でも何とか――言えた。だから念を押して――その――」

「にしても!何でそこで真面目にというか。ラブじゃなくてライク!って言っちゃうの!?ってか余計な事言わなくても松尾君ならちゃんと伝わったというか。好き言ったんでしょ?それだけで良かったじゃん。なんで余計な事を――それも言い間違って――って。もうこっちから見てたら、とっととくっつけだったんだからね!?聞いてる!?ってかホントポンコツ!」

「……き、聞いてます――」


 電話の向こうからは――うん。もう完全い敗北者の声が聞こえてきていた。


「で。何!さらにそのポンコツ娘の誰かさんがもうめちゃくちゃな事言って1人でその場の雰囲気ってか。何かいろいろぶっ壊していたのに。それでもちゃんそばに居て。話そうとしてくれていた松尾君を追い返した?おい!何様だ!?」


 何か言葉使いとか気にしないで。私いろいろ今頭のかで言葉がまわっているからね。うん。言いたいこといっぱいなの。


「……はぃ」

「あのね。絶対松尾君はゆえの事良くわかってるし。この前のね。お世話見てたらわかるからね?2人の空間はぶち壊すのこれは大変だー。だったんだから。まあ松尾君もポンコツがたまに入るかもだけどー。でもだよ。絶対ゆえが騒がないで、松尾君から話を聞いていたら、ちゃんと返事くれたから。なのになんで、言い間違えた自分が許せなくて、その時の時間を消したいとかほざいて、挙句の果てには、心配して付いてきてくれた松尾君追い返しちゃうかな?ゆえのメンタルで次松尾君に会えるわけ?もう一回言えるわけ?どうなの!?」

「……」

「どうなの?パート2!!」

「…………頑張る――つもりです」

「うわー、これしばらく時間かかりそう。ってか夏休みなんだよ?次いつ会うの?」

「……そ……それは――」

「会う予定ないんじゃないの?決めてないんじゃないの?」

「……」

「松尾君からゆえに遊びに行こう。って可能性は低いと思うよ?松尾君基本私たちが振り回していただけだから。わかってる?」

「……はぃ」


 とってもとっても小さな声が返って来た。


「はぁ――なんで2人がやっとくっついて、これからたくさんいじれると思ったら――そんな意味の分からないややこしいことになってるかなー」

「……だって……ホント。頭の中真っ白……」

「はいはい。過去の事はいいから。何をしてもゆえがポンコツで、せっかく後は返事だけだったのを自分で潰すっていう意味の分からない報告ありがとう。うん。電話かけた私ナイスタイミングってことで、この面白い話は澪にも報告して明日ゆえの家行くから」

「えっ。な、なんで――!?」

「ゆえ。早く――その、やり直し言うのか知らないけど。ちゃんと説明しないと。松尾君に嫌われても知らないからね?なんか好きって言ってきたと思ったら。急にポンコツ発揮して――大騒ぎして追い返してきた変な奴って」

「もう言わないで――心折れてるから!やめて――!!」


 電話の向こうから悲鳴に近いものが聞こえてきた。


「はぁ――とりあえず。明日いじめに行ってあげるから。その後—―今度は私たちが傍で監視してあげるから」

「—―それは……もっとパニック」

「お黙り!どうせまた意味わからない行動するかもしれないでしょ?ゆえだから」

「……」


 やっぱり私が付いてないとだね。ゆえ――松尾君絡むとホント……クズ。ポンコツ。何がどうなったらしっかり者の室長からここまでポンコツになるかなー。うん。


「とりあえず――午前中はきついと思うから。午後に行くから。わかった?」

「……うん」


 そこでゆえとの電話は終了。


 それから私は澪に連絡。


「ゆえがポンコツ発揮して、告白ミスったとかほざってるから明日いじめに行こう!100%ゆえがポンコツってだけ先に言っとく」


 メッセージを入れると――数秒後。


「OK行く!面白そうなことになってるじゃん」


 明らかに楽しんでいるであろう感じのスタンプとともに返事が来たのだった。


 って、この間に松尾君の近くに私以外の誰かが来ても――ゆえ。知らないからねー?まあ夏休みだからないと思うけどー。と思っている私だった。

 えっ?私?いやだなー。隙あればだよ。にひっ。

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