第83話 another story ~とある日の楚原先生~

 チクタクチクタク……。


 図書室内に時計の秒針の動く音が聞こえている。


 ――ブゥーン。ブゥーン。


 そして時たま、そろそろ使わないんですか?と訴えて来るかのように電源の入っているパソコンが――唸っている。


 でもここは謝らないといけないことかもしれないけど、今日はこれ以上このパソコンが動くことはないと思う。


 とりあえず点検の都合で付けていて、その作業も少し前に終わり。今日のパソコンの役目は既に終了しているのに、電源を付けたままなので、まだ使ってもらえると思っているパソコンは、定期的に唸って訴えてきている。という状況だった。


 でも音はそこまで気にするレベルでもない。

 それにもしかしたらまだパソコンを使うかもしれないので、パソコンにはそのまま居てもらおうと。現在1人で図書室で作業中の先生は思っていた。


 ここは初めにも言ったが図書室内である。


 そして現在学生は居ない。授業中とかではなく。また下校時間を過ぎた。でもなく。今は夏休みに入ったからだ。


 普段からここは静かなところなんだけど、少し前というか。終業式の時は多くの生徒が本を借りに来たので、なかなか賑わっていたが。今の部屋からはそのイメージは全く出来ない。


 現在図書の楚原先生は1人で作業中。いろいろと書類などの整理等々であるが。作業をしつつ。いろいろ考えていた。


 その内容としては……。


 最近さらに身長が小さくなったのでは?と、気にしていたりするのは、秘密である。

 ここ最近、後ろから声をかけられる際に何度学生と間違われたか。それも他の先生方に、いや、わかるよね?制服着てないからね?なのだが。ちょっと遊ばれている。と言った方がいいかもしれない。それはそれで周りが和んでくれているので、いい事なのだけど……複雑である。

 あと旦那からは『高校の制服を借りてみたらどうだ?』みたいなことを言われて少し締め上げてきた。というのは。そのうち松尾君くらいに話して盛り上がろうかとも考えていたが。あいにく先ほども言った通り。夏休みである。話をするのはかなり先になるかもしれない。


 この学校の図書室は、夏休みの期間も開いてはいるのだが。

 基本図書委員の子は呼ばない。今までも図書担当の先生。楚原先生が1人で担当している。そもそも今までは放課後の時間ですら担当をしてくれる生徒がなかなかいなかったから。休み期間中に出てきてくれる生徒はいない。ということで、声かけすらしていない。というのがずっと引き継がれたというか。生徒が居ないのが当たり前となっていた。

 図書室が開いている時間は、午前中のちょっとした時間だけなので、あっという間であるのだが。

 とりあえず今図書室内では、夏休み前の貸し出しとかでバタバタして出来ていなかった新しい本などの整理に楚原先生は追われていた。


 楚原先生は黙々と1人で作業をしていた。これはよくある姿である。知っている生徒は――居ないかな?

 他の先生方は知っているが。って、そういえば他の先生で思い出したが。最近小さな悪魔?みたいなことを言われているとどこかから聞いたような……。


 とある出来事からね。本を返さない生徒。先生を締め上げているみたいな噂がね。実際に他の先生を締め上げたこともあるのだが――。

 まあこれはこれで面白かったというか。実際ちょっとノリノリだった楚原先生であるが。どこかで何か変な呼び方をされているとかいないとか。


 そんなことを思いながら作業をしていた楚原先生がふと顔をあげた。


「……そういえば――図書室の模様替え。途中になってたんだったー」


 視線の先を見て見ると、本棚の上などに置かれているのは本の場所というか。看板等々がいろいろまだ置かれたままとなっている。あと、模様替えの準備のためいろいろ剥がしてあるのもそのままとなっている。


 夏休み中も図書室を開けるがその間、人が来ることがほとんどないので――その間にするつもりだったのだが。


「—―うんうん。いいこと思いついた」


楚原先生はとあることを思いついたのだった。


「—―松尾君来てくれるかなー。あっ、お友達も誘ったら。って、誰かイラスト得意って言っている図書委員の子がいたような?誰だったかな?その子も声かけたら……無理かな。その子ずっと来てないけど、でも委員会にはちゃんと来てくれていたから――ワンチャン。うんうん。それにせっかくなら、ちょっといつもと変えてみようかな。うんうん。まずは――松尾君確保かな」


 図書室内で、何かぶつぶつ独り言を言っている先生が居たのだが。これは誰も知らないこと。


 そして、この楚原先生の思いつきに見事に捕まった生徒が――数名いた。というのは。数日後のお話である。


 あと、いろいろいい事を思いついた楚原先生はちゃっかり『この後の残りの仕事も生徒にまかせちゃおう』ということで、その後の作業をサボっていた。というのは――秘密の事である。作業をサボりどのように呼び出すか。ということを考えていたのだった。

 ちなみにサボった。ということが……知られることはもちろんなかった。この図書室には他の人は誰も居なかったのでね。


 そしてこの思いつきから過去になく。いろいろとあった。起こる夏休みとなった図書室だった。

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