間章 各自の日々の生活

第82話 another story ~守り木の独り言~

 ここは何もない駅。本当に何もない。

 何もないという言葉がそのままピッタリ当てはまる駅である。 

 緑はたくさんあるでしょ。と、言われると。そうなのだけどね。


 この駅の名前は田園駅。とある鉄道の終点の駅である。


 終点の駅なのでこの先にはレールが続いていない。駅の先のレール上には、大きなクスノキが立っている。線路を塞ぐように。ドーンとクスノキが立っている。


 私の記憶によると、昔はちゃんと車止めが線路の先にはあったのだけど。いつの間にか。無くなった。というか、木が勝った。

 駅の外にはたくさんの木があるのだが。この車止めのような役割を果たしている木の周りには他の木がないからか。大変日当たりが言い。風当たりもいいが――。

 とにかく木が元気に育つには良い環境だったらしく、ぐんぐん伸びたみたい。そういうことにしておこう。とりあえず木が元気に育つ環境があった。木もびっくりなくらいにね。


 実はその木は一度役目を終えかけていたのだが。駅を利用しているおじいちゃんおばあちゃんが、とある時から手入れをしてくれて、今も元気に立っていたりする。それは、今のところ多くの人が知らないことである。鉄道会社の人も知らないことだったりする。


 ◆


 実は結構前からクスノキはあった。元々線路が続いていなかったからね。でもそこまで木の事を気にしている人は、いなかったかな?ってか、木の成長がちょっと早くてね。どんどん伸びたんだよね。ってそうだ。おじいちゃんおばあちゃんの話をした方がいいね。


 木の手入れをしていたおじいちゃんおばあちゃんは、本当はもう少し離れたところにある木。これも1本だけある桜の木の手入れをしていたのだが。少し前?だったかな。あれは、嵐の後だったか。そうだね。嵐の時にクスノキに雷が落ちて、そこまで大きな被害はなかったんだけど、雷によってクスノキは少し弱ってしまった。


 これはこのまま枯れちゃうかなー。という時に。おじいちゃんおばあちゃんが木も手入れをしてくれて、復活となった。


 ……えっ?何で2人のおじいちゃんおばあちゃんが勝手に駅の清掃。手入れをしているかって?

 それは、このおじいちゃんおばあちゃんのためにこの駅はあるようなものだからね。

 この駅の周辺には民家は一軒しかない。その一軒がおじいちゃんおばあちゃんの家なのだけど、おじいちゃんおばあちゃんは誰かから何か言われたわけではないけど。昔から家から駅までの清掃ついでにこっそり駅の清掃もしてくれている。

 そして、気が付いたら駅の中に1本だけあるクスノキをこの土地の守り木。みたいな扱いに勝手にしちゃったんだけど。いいかな?気分はいいし。

 

 多分だけど、雷でちょっと弱っていた木を手入れしたら、びっくりするくらい回復して、どんどん成長していたから、おじいちゃんばあちゃんは勝手にそう思ってくれているのかな?なんかすごい木。ってことでね。


 そういえば風の噂ではもうすぐ小学生の男の子がこの家に来るらしいが。それは別の話かな。噂だからね。

 

 実は――まだおじいちゃんおばあちゃんも知らないことかもしれないけど。


 でも私はわかるよ。勘だけどね。この鉄道をたくさん利用してくれる男の子が来るとね。そして、ちょっとずつ利用客数を伸ばしてくれることも。

 ちなみに男の子はいろいろ大変そうな生活をするみたいだけど、私はゆっくり見守っていこうかな。


 以上。田園駅から謎な報告でした。


 ――――えっ?私は誰だって?ここ最近線路上でしっかり鉄道会社さんの邪魔をしちゃっているものですよ。


 ……多分――8年……9年後くらいに――ちょっと問題を起こしちゃいますが。

今は静かに立っています。はい。問題を起こす頃には――多分彼がまた頭を抱えるかな?さてさてどんな未来になるでしょうか?


 ◆


 数年後。


 数時間前に彼はこの駅から大学前方面へと電車に乗って行きました。

 発車前には今日も運転手の人と何か楽しそうな会話をしていましたね。何を話していたのでしょうかね?

 あれかな?最近女の子も良くこの駅を利用してくれるようになったから、そういう事かな?もう少し大きな声で話してくれると聞こえるんだけど。私が大きくなりすぎたかなー。って、まさかの彼なかなかのハーレム作り屋というか。ハーレム作り屋って何んだろう?あっ、私新しい言葉作っちゃおうかな?ってそれはいいか。にしても最近の彼。ホント良く女の子連れてきてるんだよね。やっぱりあたらしい言葉作っちゃおうかなー。


 そういえば、少し前になんか言いたそうな子と電車に乗って行ったけど、あの後どうなったのかなー。私に報告は来るわけないかー。まあ楽しめ学生だね。


 ってかそろそろおじいちゃんおばあちゃんが来てくれる頃かなー。と私が思っていると。噂をすればなね。


『あっ、おじいちゃんおばあちゃん。こんにちは、暑い中お手入れありがとうございます。今日もすごく気分がいいです』


 私の声はおじいちゃんおばあちゃんには聞こえないと思うけど、手入れをしてくれるおじいちゃんおばあちゃんにお礼を言った。


 いやー。ホントおじいちゃんおばあちゃんのおかげで、昔の傷はどこへやら。だよ。ホントその後どんどん大きくなっちゃってーこれ異常なくらい早く大きくなってるんだけど、いいか。


 って……。


 ――そろそろ問題の時が近づいているのが気になるけど。どうなるかな?まあ私はずっと見守っていますよ?

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