第81話 新しい……関係?

 ちょっと俺が結崎の後ろ姿を見ていると、結崎は音でわかったらしく。こちらを振り向いた。


「あっ、おかえり。松尾君。奈都余計な事言ってなかった?」


 幸い俺がちょっとだが。結崎の後ろ姿を見ていた事には気が付かなかったので、今帰って来た。ということにし返事をした。


「うん。普通に帰って行きましたよ」


 ちなみにどうやらあれから、晩ご飯の準備は問題なく進んでいたらしく。机の上は準備よし。という感じになっていた。今日も豪華。


 なので俺が帰って来て、すぐだな。松尾家は晩ご飯となったのだった。ってか、結崎が居るバージョンのね。最近よくあるな。ホントよくある。


 ちなみに晩ご飯の時は結崎もリラックスしていた。って、長宮さんが居ないだけでこんなに気にすることが無くなり。結崎もくつろげるのか。と俺は思っていた。

 結崎も普通におばあちゃんと楽しそうに話しながらの食事だったからな。いい光景だよ。


 そうそう晩ご飯の後は、ちょっと料理の量が多かったというか。ばあちゃん長宮さんも居る。って、勝手に思って作っていたからね。長宮さんが少し持って行った。とはいえどなかなか量があったので。満腹の俺と結崎は俺の部屋でのんびりと話していた。


 ちなみにらのんびりしていたのは、満腹もあったが。時間的に電車が無かったのでね。


「にしても……奈都も適当な事言って」


 ちなみに先ほどから結崎はぶつぶつ言っている。長宮さん好き放題言っていたからな。と俺も思いつつ。返事をする。


「ははは……ってか結崎?」

「うん?」

「昨日ぶっ倒れていたけど。本当に体調いいのか?まあ普通に晩ご飯食べていたからそこまで気にはしてないけど……」


 一応ね。見ている感じは大丈夫そうだったが。昨日の事があるので確認をしておくと。


「う、うん。それは大丈夫。寝たら治った」

「それは良かった」


 やっぱ人間寝るのは大切らしい。


「いつもごめん。迷惑ばかり」

「いや、それはいいから。長宮さんがまた何か言ってくるかもだから。それで疲れるかもだけど」

「あー、でもまあ奈都にも迷惑はかけたから……うん」


 あの駅での会話というか。絶対長宮さんは後日何か結崎に言うだろうな。と俺が思っていると。


「でも本当に奈都。変な事言ってないよね?」


 再度結崎は確認してきた。


「いや大丈夫。長宮さんの暴走はわかってきた気がするから」

「暴走ってか……まあだね。暴走だね」

「そういえば、なんか名前で呼べとか。パシリにするとかは言われたけど……」

「えっ!?」


 ふと駅での事を言ったら。かなり結崎が反応して俺の方に身を乗り出してきていた。って、俺変な事言った?そんなに驚くようなことだった?


「……どうした?結崎」

「あっ。いや……その――奈都そんなこと言ったの?」

「言ってたな。って。もちろんパシリは嫌だから丁寧にお断りしたが」

「そ、そう」

「うん?」

「あー、なんでもない何でもない」


 そう言いながら結崎は手をワタワタしてから、スマホを手に取り。


「あっ。そ、そろそろ行こうかな」


 画面を見つつ立ち上がる。


「そろそろ電車時間か。暗くなってきたし家まで送ろうか?」

「えっ……あー」


 俺が言うと結崎は少し考えてから。って、まあそこまでまだ遅くないし。ちょっと迷惑な事言ったか。


「お。お願いしようかなー」


 結崎がそんなことを言ってきたため「……意外にも」と俺は思いつつも立ち上がり。


「うん。じゃ、俺も貴重品だけ準備するよ」

「ありがとう」


 俺も出かける準備を開始した。

 にしても、結崎の方は長宮さんに服を持って来ただけなので、来た時より荷物は減っているから特に準備とかはなく。カバンを持ったら出る準備OKだった。


 さすがにばあちゃんも結崎の分のお土産は………………あった。うん。あったよ。あるのかよ。


 俺が準備をして結崎とともに外に出ると。結崎がじいちゃんばあちゃんに挨拶してくると言い行ったのだが。結崎がなんか戻ってこないなー。と俺が思っていたら。少しして紙袋を持って玄関から結崎が出て来たのだった。


「……ばあちゃんからか?」


 一応わかっていたが。俺が結崎に聞くと。


「あはは……いっぱいもらっちゃった」


 またたくさんもらっちゃったよ。的な顔で結崎が言った。悪い。結崎である。


「家まで……それ持つよ」

「大丈夫だよ?荷物は来た時より少ないから」

「いいから。どうせ送るんだし」

「なら……ありがと」


 俺は結崎から荷物を受け取る。ってマジでばあちゃんどれだけ準備したんだよ。と、俺は思いつつ。ちょっと中身を確認すると、いつも通りだな。

 ちゃんと保冷もされているので、多分おかずやらやらだろう。

 とりあえず俺は紙袋をちゃんと持って結崎とともに田園駅へと歩き出したのだった。


 それから駅までの道のりはらこの時間でも暑いやらやらとかそんな話をしながら駅まで結崎とともに歩いた。

 駅までは特にトラブルなくだな。普通に俺と結崎は話しながら田園駅へと到着した。


 しばらく待っているといつもの小さな電車が駅へとやってきた。この感じ数時間前にも俺経験したな。と俺は思いつつ。そうそう次また楚原さんだと……楚原先生から呼び出しというか。さらにネタ提供になるな。とか俺は思っていたのだが。今回の電車は楚原さんではなかった。


 電車が田園駅に到着して、ドアが開く。もちろん誰も降りないし。乗ってない。

 降りてきたのは運転手さんだけだ。それから俺と結崎は後ろの車両に乗り込んだ。


 何度でも言うがが誰も車内にはいない。

 本当は夏休みとか休み期間になると電車の利用回数が減るから。マジでこの鉄道大丈夫だろうか?と俺は思っていたのだが。今のところ学校に行っている時より利用回数多くないか?田園駅の利用者が多分普段より多くないか?とか俺は思いなが座席に座る。


 すると、俺の正面に影が出来た。


「……うん?結崎?」

「な、なに?」


 影に気が付いて俺は正面を見た。

 当たり前だが俺の正面に居たのは結崎だ。一緒に乗り込んだんだからな。ってか、俺が聞きたいのは……今の結崎の場所だ。


「なんでわざわざ正面に?」


 俺が聞くと結崎はとりあえず俺の正面の座席にそのまま座った。

 するとそこでちょうど電車の発車時刻となったため。ドアが閉まり。ゆっくりと電車が動き出した。


 ガタゴトと走行音だけが響く。


 現状、誰も他にいないからいいが。通路を塞いでます。なんだがね。って、前にもこんなこと言ったな。。


「あ、あの……えっと」

「うん?どうした?」

「こんなところで言うのも、だけど。ここが一番人が居ないというか。聞かれないというか……その奈都の言いなり……みたいだけどさ」

「うん?」


 どうしたんだ?と俺が思いつつ結崎を見ると、ちょうど走行音が小さくなった瞬間だったと思う。


「私……松尾君の事……好き……だと思う」

「…………はい?」


 いやいやいきなりなんか。うん?うん。

これはなんだ?なんて言った?

 とりあえず、俺がわかるのは……正面に座っている結崎はめっちゃ照れているくらいだ。っかマジで一瞬何があったかわからなくて。走行音が消えたというか、いやもちろん今は普通にガタゴト響いているが。あれ?えっ?ホント……えっ!?である。なにが起こったんだ?


 ◆


それから数分間。電車が止まるまでずっと俺と結崎の距離は変わらず。お互いに何か言うでもなく。

 電車は公民館前駅へと到着したのだった。






(第1部 おわり)

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