第78話 お届けに来ました2

 長宮さんが結崎に電話をして……何かがあってから約30分後。


 ちなみに一時的な変な空気?というか俺と長宮さんがフリーズしたのは、その後すぐに『まあ大丈夫かー』という長宮さんの声により即解除されました。どうなるかは……ですがね。俺は知らん。

 とりあえず変な空気はすぐに解除。いつもの長宮さんの周りというか。明るい感じ?とでも言うのか。まあいつも通りに即戻ったのだった。


 ちなみに今は、長宮さんは俺の家にて普通に洗濯をしている。

 おばあちゃんと外で何か話しつつ洗濯物を……そろそろ干しているはずだ。はずだ。というのは、俺は今室内にいるのでね。たまに外から聞こえてくるばあちゃんと長宮さんの声を聞いていただけというか。断片的にたまたま聞こえてきていたというべきか。決してこっそり聞いていたわけではない。


 そうそう、長宮さんが洗濯をすることになったのは、結崎に電話したが。途中で電話を切られたやらやらで、このままだと着替えが来ない。という可能性がある。ってことでね。洗濯へと向かった。


 なので、あれから少しして、昨日着ていた服をこのあと着て帰るために、長宮さんは服を洗う。やらやらで、まあ今に至る。夏だからな。洗って干したらすぐ乾きそうだし。大丈夫だろう。

 そもそもはじめから洗濯の方がよかったのでは?と今の俺は思っていたんだがな。長宮さんがここに泊ったということが外部に漏れなくて済んだはずだし……今はもう漏れた後だがね。結崎ならさらに漏らすことはないと思うけど……。

 漏れたと言えば、あとは、ばあちゃんにいろいろ話されてもなので、ちょっと長宮さんの様子をそろそろ確認しておくか。いや、勝手に俺の情報をばあちゃんが長宮さんへ。という可能性もあるのでね。などと俺は思いながら。自分の部屋から出て外を覗いた時だった。


 ガサッ。っと音が後ろでした?と思った時だった。


「…………おはよう。松尾君」

「—―えっ?」


 ふと、背後から聞き覚えのある声が――と俺が思いながら振り向くと。


 駅への道の方から結崎がやってきていて、既に俺の後ろに、歩いてくるところだった。ってもうほぼ目の前まで来ていた。


「……えっと……昨日はありがと」


 すると、何故かちょっと?恥ずかしそうに結崎がそんなことを言ったのだが……俺的には、今はびっくりだよ。マジでいきなり登場だったからな。

 まさかこの家に新たな人が来るとか思ってなかったから、マジでドキッとした。とりあえず俺はそんなことを思いつつ再度結崎を見ると。あれ?ちょっと結崎の不機嫌—―?な表情が気になりますね。でも体調は良くなったのか。元気そうな雰囲気ではあった。昨日がボロボロだったからな、でも寝たら治ったみたいで安心した。って、だからなんでありがとうと言いつつも表情の一部が微妙なのかな?結崎さんよ。俺何もしてないよ?


 ってか結崎の手には紙袋があった。何だろう?と俺が思うと同時くらいだった。


「あっ!ゆえ来てくれたー。電話急に切るから来てくれないのかと思ったよー」


 洗濯をしていた長宮さんも結崎の声が聞こえたのか、たまたまこちらに向かってきていたのか。結崎に気がつき。こちらにやってきたのだが。


「奈都?どういうこと?松尾君と……寝たって」


 結崎がすぐに長宮さんに……やはり電話でのことを聞いていた。何か雰囲気的に――俺……席を外した方がいいかな?と思っていると。何かを長宮さんも察知したらしく。


「ありゃー、松尾君バトンタッチ。私おばあちゃんとほのぼのお話してくるからーここの空気おかしいよ?」


 長宮さんはこちらに向かってきていたのを急にやめて、くるりと向きを変えた。Uターンですね。が、俺はそんな長宮さんに。


「拒否します。なのでこちらでどうぞお話し合いください。むしろ関係なさそうな俺が消えた方がいい気がするんだけど――」


 すぐに俺が断ると、長宮さんはこちらを見つつも、結崎と適度な距離を保ちつつ。


「えー、ってか。まあまあゆえ。大丈夫大丈夫。寝ただけだから」


 そんなことを結崎に言った長宮さんなのだが。このままだと傷口というかなんかいろいろ悪化をたどるしか俺には思えなかったので。


「長宮さん。説明下手過ぎ。ってか結崎。とりあえず暑いから室内入る?また倒れてもだし。部屋の中なら涼しいから。どうぞ」

「……あっ、う、うん。ありがと」


 俺が言うと結崎が返事をしてくれたので、俺の部屋に3人で入る。そして、結崎に説明ですね。ちゃんと説明しておかないと。って感じだったんでね。説明を先にすぐしました。


 とりあえず俺がさっと昨日結崎と別れてからの事を話して。もちろん駅からおんぶ。ってのは削除したがな。ここはいらないと判断した。少しして俺が話しを終えると。


「つまり……本当に寝ただけ?」

「そういうことです」


 俺と結崎が話していると。


「ゆえは寝取られたー。とか思って飛んできたんだねー。ホント即出て来た感じじゃない?」


 長宮さんが楽しそうに結崎に近寄りそんなことを言ったのだが。


「長宮さん静かに」「奈都。うるさい」


 俺と結崎の声が重なったのだった。


「酷い2人だー。って、息ぴったりー」


 するとそんなことを言いながら長宮さんは笑っていた。すると結崎は『あっ』と言ってから。


「これ……とりあえず奈都が服って言ってたから。持って来た」


 そう言いながら紙袋を結崎は長宮さんの方に渡した。ってそうか。着替えだよな。やっと何か納得した俺だった。


「あっ、ありがとー。助かるー」


 長宮さんが紙袋を受け取り中身を確認していると――結崎が俺の隣に来て。


「で、松尾君……ほんとに何も?」

「はい?」

「……」


 なんでそんなに気にするのかな?今話したよね?と俺は思いつつ。なんか結崎の表情は不安?不機嫌?なんかまだ変な感じがちらっとあったので、とりあえず再度言っておいた。ここで揉め事になっても大変なのでね。納得していただけるまで説明が安全と俺の脳内が言っていたのでね。


「ないない。ただいろいろあって、まあ遅かったから。この部屋でしか休めなかったから。まあ休んだだけ。ってこと」

「まあ、松尾君が言うなら……大丈夫かな」

「ゆえってば、松尾君の言葉しか信じてないし。もう。もし松尾君が嘘言っていたらどうするの?」


 すると長宮さんが結崎の横に再度やって来てそんなこと言い出した。


「松尾君は……嘘言わないから」

「ははは……」


 どうやら結崎俺の言葉は信じてくれる様子。って、長宮さんの言葉はダメなのか?と俺が思っていると。


「あらあらー、なら私がもし襲われててー。松尾君に口封じされているかも。っていうのでも。ゆえは松尾君を信じるのかー。そうかそうかー。酷いなー。友達なのにー」

「長宮さん。暴走はいいから」


 ホントややこしいことにしないで?と俺が思っていると。


「……松尾君一応だけど」


 再度結崎がまた聞いてきたので俺はすぐに。


「ないから、ないから。ホント何もないし。してないし。長宮さんの勝手なお話です。ってか結崎もいろいろ反応多いな」

「にひひー。ゆえ?どっちを信じる?もしかしたら私……」

「長宮さん?お黙り」

「えー、楽しいじゃん。このやりとり。ゆえがちゃんと判断できるか」


 長宮さんは何故かこの場を壊したいというか。ぐちゃぐちゃにしたいというか。何かしたいオーラ全開だった。やめてくれだな。


「結崎はまだ回復しだばかりなんだから。余計な事させない」


 これは本当の事だ。ここでまた結崎に無理させてもだからな。と思いながら俺が言うと。


「今倒れたらもれなく松尾君のお世話付きじゃん?」

「はぁ……疲れる」


 これは何を言ってもらしい。俺が諦めつつ長宮さんとそんな話をしていると。


「……今の感じからも松尾君を信じてよさそうだね」


 結崎が俺を見つつそう言った。なんか知らないけど、結崎がそう言ってくれるならいいや。と俺は思いながら。


「です。はい。とりあえずこの話は終了。ってか長宮さん着替えるなら俺出てくから」

「別に見ていてもいいよ?」

「……」


 ホント長宮さんは……、と俺は思いつつ。なんかずっと楽しそうにニヤニヤとしている長宮さんにはっきりと『出ます』と言って移動を開始したが。まだ長宮さんが何か言おう――としたタイミングで。


「——奈都。いい加減にしてよ。着替えるならとっとと着替える」


 結崎が長宮さんを止めてくれた。それで長宮さんが止まるかはわからないがね。


「にひひー。やばーい、めっちゃ楽しい」

「「はぁ……」」


 ――うん。結局。俺と結崎のため息が重なったのだった。

 俺と結崎は、長宮さんのおもちゃ?みたいな状況となっていたのだった。ホント夏休み初日から大変だ。

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