第66話 終業式それは始まり10

 ♪♪~


「「!?」」


 ちょっと静寂になっていた結崎の部屋で、急に俺のスマホが鳴ったため2人ともびっくり。うん。何事!?という感じで俺と結崎はそれぞれを見てから。

 やっと俺は自分のスマホが鳴っていることに気が付いて、慌ててカバンからスマホを出した。


 カバンからスマホを出して画面を確認すると。


「……長宮さん?」


 スマホの画面には長宮さんからの着信を知らせる画面だった


「奈都から?」


 結崎が何か不思議そうな顔をしつつこちらを見ていた。


「あ、うん。ちょっとごめん。無視すると後が……だから」


 俺はそう言いながらちょっと立ち上がり。結崎から離れて結崎に背を向け電話に出ると。


「やっほー!松尾君!どうどう?ゆえと2人にしてあげたけど。あれからどうなった?」

「……はい?」


 長宮さん相変わらず謎なテンションであった。っか、なんかわからないことを言っているので……とりあえずは。


「えっと……長宮さん。暑くておかしくなった?大丈夫?」

「ちょっと松尾君?なんか失礼なこと言ったよね?」

「いや、ホント外は暑かったし。それに学校で走り回っていたから……その大丈夫かなー?と」

「あっ、もしかして普通に心配してくれてる?」

「まあ、うん。見た感じあの暑さの中全速力で逃げていた気がするから」


 俺は少し前の学校でのことを思い出しつつ。ホントよくあの暑い中走っていたよな。2人とも。と俺が思いつつ話すと。


「ホントだよ。ゆえの必死さヤバイからねー」

「長宮さんがいろいろ言ったからでしょ」

「まあねー。楽しかったー。まあ追っかけっこはいらなかったけどねー。汗だくになるしー。松尾君にパンツ見られるしー。にひひー」


 何故にそれを思い出させるか。忘れてたの思い出しちゃったよ。と俺は思いつつ。なるべく冷静に。


「見たくて見たわけじゃありません」

「どうかなー?」

「……電話。切っていいかな?」

「ちょちょ。ストップストップ。切ってもすぐにかけなおすからね?」

「はぁ……で。なんでしょうか?」


 これ絶対切っても無駄なパターン。切っても連続でどんどん電話をかけてくる未来予想図が見えたので……俺は長宮さんとの電話を続けたのだが。長宮さんのテンションは変わらず高かった。


「だ・か・ら!2人にした結果は?何かあった?夏休み突入のタイミングでなんかあった?何もなかったとかないよね?」

「……ホントテンション高いな」

 

 俺はつぶやきつつ。現状をそのまま話すと……さらに長宮さんのテンションがおかしいことになってしまいそうなので……と俺は考えつつ。


「—―普通に帰りましたが?」


 とりあえず嘘を言うという選択肢になった。

 一応その際に結崎にも聞こえているので……結崎的には「??」という感じになってしまうと思うが。ここで変に向こうに感づかれてもなので、結崎とは後で話を合わせておけばいいか。と俺は思い。話を続けた。


「えー、なんで?なんかないの?」

「なんでなんかあると思った?」

「だって、ゆえもう我慢できない!ってか、松尾君ラブが溢れて……」


 とかいう長宮さんからの声が聞こえてきた時。その直後だったな。


「ちょっと!?奈都!!何言ってる!?」

「ひっ!?って……」


 突然背後からの大声とかびっくりしますから。ってちょっと待てよ。である。デジャヴっか。あれ?これまたやばくない?と俺は思いつつ。

 いつの間にか俺の後ろに来ていた結崎の声に驚きつつ後ろを見ると。俺と目が合うと同時に結崎が自分の口に手を当てながら「……あっ」と小さな声で言い。またミスったー、みたいな表情をしていたのだが。

 あれだけの音量だとね。ってか結崎復活早すぎというか。もう少し弱っていれば先ほどの事は起きなかったのに、とかとか俺は思いつつ。


 起きてしまったことは……なので。正直に、ってかスマホから。


 ハイパーニヤニヤというか……何というのだろうかね。超ウキウキしているような声が聞こえてきていた。


「あれれー?今ー。ゆえ?あれれー。だね?松尾君、松尾君。どーゆーことかなー?今ゆえの声が聞こえたなー。おかしいなぁー。私に嘘ついたのかな?なんで今ゆえの声が聞こえたのかな?」


 どんどん長宮さんが話してきていた。止まる気配は……無かった。


「あー……えっとですね。これには訳がありまして……」


 さてどうしようか。と考える俺の後ろでは、ごめんポーズ。というのか。手を合わせてこちらに頭を下げている結崎が居た。似たような光景あったような……。

 っか、これ、どうするべきか俺が全く思いつかない間も。電話の向こうからは。


「まあまあ松尾君。今はー。もしかしたらお邪魔したみたいだから。あとでゆえに聞くから!って言っといて。じゃまたねー。松尾君にも連絡するからねー」

「あっ、ちょ。長宮さん?もしもーし。ちょっと待って。話を……」


 ――プチ。


 電話切れたよ。である。切られただった。

 絶対今長宮さん1人でハイテンションか。もしかすると周りに誰か。という可能性もあるが。

 でも長宮さんの声しか聞こえなかったし。周りは静かな感じだったから、誰も居ないことに賭けよう。


 にしてもわ夏休みに入った瞬間なんか。そのうち長宮さんに捕まりそうな雰囲気がプンプンというか。これどうしましょうね。


 とりあえずスマホの通話終了となっている画面を閉じたのだった。

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