第43話 掃除の後

 大掃除後に図書室の準備室の掃除。というのが急遽入ったため結局下校時間は普段の学校から帰る時間。委員会終了時間と同じくらいとなった俺達。

 いやー、真面目に頑張ったというか。真面目だったな。


 ホントびっくりだったのは、途中なんか盛り上がっている時も会ったが。結崎、長宮さん、蓮花寺さんが普通に手伝ってくれたことか。

 これ一番びっくりだな。何度でも言う。真面目だったよ。予想外。


 そして今は、図書室で楚原先生と別れて。高校前駅までは4人で移動中。

 この前と同じように長宮さん蓮花寺さんが大学方面。俺と結崎が田園方面へとなったのだが。俺達が駅に着く直前に田園方面の電車が行ってしまったため。

 いや、ホント悲しいタイミングというか。駅が見えた。と思ったら田園方面の電車入線というね。長宮さん蓮花寺さんは、そこまで待ち時間はないが……こっちは一番長い待ち時間のパターンという。

 でも今はどちらの方面ともに電車が無いということで。


 いつもは混んでいる大学方面もさすがに今日はそこそこ空いている。今の時間学生が少ないからだろう。なので結崎がそっちのホームへと行って、長宮さん蓮花寺さんと。まだなんかまた話している。というか。声は聞こえないのだが、長宮さん蓮花寺さんに結崎が――いじられているように見えなくもない状況という。


 簡単に言えば3人が楽しそうに、訂正2人が楽しそうにして結崎がなんか2人に言っているという光景であるが。俺は特に関わる必要がなかったため。というか関わらない方が安全と直感的に身体が言っていたのでね。今日はこの直感が良く働いている。


 なので田園方面のホームで1人スマホをいじり待機中。あまり3人の方は見ないようにしつつ。電車が来るのを待っている。


 すると。


 ♪♪


「——うん?」

 

 俺のスマホにメッセージが届いた。相手は、ばあちゃんだった。何かあったのか。と思って見てみると。何時に帰って来る?というものだったので、ってそうか。お昼の時は委員会の掃除が入ったとすぐに連絡したのだったが。その後連絡してなかったからな。と俺は思いつつ。俺はばあちゃんに今から帰ることを伝えるためメッセージを送ってすぐだった。


 ♪♪~


 今度はばあちゃんから電話がかかって来たのだった。


「……もしもし?」

「あー、守や」

「どうした?ばあちゃん」

「今日は結崎さんは居ないのかい?」

「——ワット?」


 何故にここで結崎の名前が出てくるかだよ。ってばあちゃんホント結崎好きだよな。とか思いつつ。目の前を見る。一応視線に入るところには居るが――。


「結崎さんじゃよ。この前様子見に言ってから会ってないからね。そろそろうちに連れてきなさい」

「……」


 ばあちゃんに言われて、再度反対側ホームを見ると。まだなんか3人で話している結崎がいた。


「いや……まあ結崎も予定あるだろうし。急には」

「残念だね。今日はいい魚が手に入ったからね。食べてもらいたかったのにね……」


 何だろう。マジで落ち込むばあちゃんが居たため。どうしようか。とりあえず結崎に聞いた方がいいだろうか?っか、今魚と言わなかったか?どこでいい魚ゲットしたんだよ。何度もいうがうち山なんだけど。川も近くにはないぞ?とか思っていると。ちょうど大学前方面の電車が駅に入ってきたため。結崎が2人と別れてこちらへとやって来た。


「あっ。結崎いいところに」

「—―えっ?」


 俺が電話をしながら結崎に言うと。なんか驚いた様子というか。そうか俺がスマホ片手にだったから。電話中と察した結崎はこっちに静かに戻ってきたのか。なのにいきなり俺が声かけたらびっくりするわな。


「いや、ばあちゃんがさ。今日晩ごはんどうかって」

「……えっ?」

「なんかいい魚がー。とか言っているだけど――」

「えっと……私はそりゃ嬉しいけど。魚とか1人だとほとんど食べないから……っていいのかな?ホント何度も……」

「いいじゃない?とりあえず、ばあちゃんにOKって言ってもいい?なんか結崎が来ないから落ち込んでいるみたいで」

「えっ、あ、うん」


 結崎が驚いている横で俺がばあちゃんに――。


「結崎大丈夫だって」


 すぐに伝えると。


「そうかいそうかい。じゃ準備しないとねー」


 めっちゃ明るい声が聞こえてきたのだった。

 あれ?もしかして俺騙されたのか?ってそれを言ってばあちゃんすぐに電話切るというね。あーこれは騙されたな。落ち込んでなどなかったと見た。演技だな演技。結崎に会いたいがための。


「……」

「……どうしたの?松尾君難しい顔して」

「いや……騙されたかなー。って」

「えっ?」


 とりあえず俺は電車が来るまでに結崎に今のばあちゃんの様子を伝えて、騙されたかもの説明をしていたら電車が駅へとやって来た。


 そして2人で電車に乗り込んで並んで座った。

 その車内で「あー、着替えてから……行った方がいいよね?」とか言っている結崎が居たが。俺は別に気にしないしばあちゃんじいちゃんも気にしないだろうし。わざわざ家に帰って、また出てもらうのは結崎が大変だろうということでそのままで来てもらうことにした。


 それから本日は田園駅まで乗客が2人もいる。という状況で田園駅に着いた際。運転手さんがこちらを2度見していた。普段は1人の利用客くらいで、ってか0人が普段の光景か。なのに1度に2人も降りるとか珍しいからな。って、最近はよくある光景かもだが。今日の運転手さんは初めての光景だったのかもしれない。俺が勝手に思いつつ。駅の改札を結崎とともに抜けると。


「なんか珍しい物見た。って感じだったね。今の運転手さん」


 結崎も気が付いたらしくそんなことを言っていた。まず結崎が目立ちますからね。っか、また楚原さんところにこの情報が広がるような。とか思っている俺だった。っか夕方になってもセミ元気だな。おい。マジで大合唱だよ。


 それからセミの大合唱を聞きつつ。結崎とともに俺の家へと向かう。そして到着後俺は自分の部屋へ。結崎はじいちゃんばあちゃんの方に行ってもらった。

 多分時間的にもうご飯になるだろうし。変に結崎がくつろいでいる。みたいな感じをばあちゃんに見せると何でね。


 俺が荷物を置いて着替えてからじいちゃんばあちゃんの方へと行くと、すでにほとんど準備が出来ている状態だった。

 ばあちゃんはもちろん落ち込んでいるとか。そんなことはなく。普通にハキハキと台所で動き回っていて、その横で結崎が手伝いをしていた。


 ちなみに男性陣。じいちゃんはすでにお酒飲みつつ枝豆をつまんでいた。平和だ。俺は特に手伝うことが無さそうなので、じいちゃんの隣に座る。


「結崎さんが来てくれると。飯が美味い」


 すると、じいちゃんはそんなことを言っていた。そういえば、結崎が居る時はご飯が豪華になるほかに、じいちゃんの酒のつまみ。料理も豪華になってるよな。普段はつまみとかない事の方が多いし。


 ってこの家ホント結崎が居るか居ないかでガラッと変わるというね。ばあちゃんの気分次第というか。結崎が居るかいないかだな。この家は間違いない。


 それから少しして――。


「あー、松尾君だけ着替えた」


 そんな感じに何故か着替えた俺結崎に怒られた。いやいやここ自分の家というか。結崎曰く「私だけ……埃っぽいというか。なんか場違いじゃん」みたいなことを言っていたが。いやいや別にそんなことをないかと。とか思っている俺だった。


 ちなみに本日の料理は、本当に魚居た。あと唐揚げも居た。デカいエビフライも居たりと。一瞬女子的に――こういう料理はどうなのだろうか。とかも思ったが。結崎は。めっちゃおいしそうに食べていたから大丈夫らしい。


 それからばあちゃんが結崎をかわいがるというか。2人でなんやかんや話していた。そしてご飯が終われば片付け。それも結崎が手伝っていて、それから少しして。俺の部屋に結崎が来ていた。と言うか。じいちゃんばあちゃんにはもう帰る。と先ほど言って隣の家を出てきたのだが。出てから気が付いた。


 俺達は時間を確認せずに家を出たことを。この時間は電車の本数も少ないというか。普段から少ないのでね。駅のホームで待機は。帰って来るときもだったが。夜でもかなり暑いのでね。

 少しでも駅での待ち時間を少なくするために再度じいちゃんばあちゃんの家に……だと。結崎が帰るタイミングがまた遅くなったりしてもなので、俺の部屋へと入ってもらった。隣の家とは離れているのでね。多分じいちゃんばあちゃんは結崎が帰ったと思っているだろう。


 とりあえずまあ涼しさを求めて俺の部屋に入ると――。


「あー、どうしよう。美味しかったからめっちゃ食べちゃったよー」


 結崎がそんなことを言いながら俺のベッドに腰かけている。もう結崎この部屋慣れた感じだな。緊張とかなく。くつろいでいる感じに見えた。


「いや、結崎スタイル良いから全然問題ないかと」

「いやいや見えないところがやばいんだよ。ぶよぶよになっちゃうから」


 そんなことを言いながらお腹周りをチェックしている結崎。って、むしろもっと食っても大丈夫—―と思った俺だが、それは言わなかった。なんか怒られそうだったし。


「太ったら松尾君に責任を」

「何故に俺?」

「美味しい食事会に誘ったから?」

「……そうなるのか」

「ってか。ちょっと横なっていい?ベッド見たら横になりたくなっちゃった」

「俺のベッドですが……まあ無理されるのもだからどうぞ。ごゆっくり」

「ありがとー」


 そのままベッドに伸びた結崎だった。『気持ちいいー』とか言いつつ伸びている。って、めっちゃ俺が普段から使っているベッドなんだが……いいのかね。何度も寝てるが。とか思っていると。


 ♪♪~


「うん?」


 俺のカバンの中から音が、って着信か。もしかしてばあちゃんにまだ居るのが早速バレたか。と思いつつスマホを取り出すと。


「蓮花寺さん?」

「澪?」


 俺がつぶやくと結崎は身体を少し起こしてこちらを見ていた。って無視はダメだので一応電話に出ると。


「もしもし」

「あっ。松尾。おつかれー」

「うん。えっと――なんかあった?」

「ちょっとね。ゆえの事なんだけど」

「結崎?」


 俺が言ったのでベッドに居る結崎が、ちょっとピクリと反応してこちらを再度見てきた。


「いやさー、駅でたくさんいじめたからさ。ちょっと拗ねちゃったかなー。で」

「えっと――それ俺に連絡する必要ある?」

「早く松尾とくっつけよー。とかね。松尾出したから」

「それを俺に言う時点でなんかおかしくないかな?」


 いじられすぎだろ。結崎。とか思いつつ冷静に返事をする俺。


「だからさー。松尾も早く言ってやんなよー」

「だから。俺と結崎はまあ話すだけというか」

「はいはい。面白くないなー。って、ゆえも全く同じことさっき言ってたから。ホント仲良しで」


 すると俺の真横で音がしたと思ったら。シー。というポーズをしつつ――結崎がこちらに耳を近づけていた。ってか、近いな。って今のシーのポーズめっちゃドキッとしたというか。普段見ない結崎の表情で……かわいいと思った俺だった。

 っか、結崎。冷静さを保てないから突然何かしないでくれよ。


「と、とりあえず……って拗ねてるとかそんな事—―帰りの電車ではなかったかと」

「じゃ、ニヤニヤしてた?」


 蓮花寺さんが楽しそうに話しているが……蓮花寺さんよ。多分—―結崎に聞こえているかと。俺は知らないけど――。


「……それもないかと」

「でもホント。ゆえが私たちと同じように接してる男子松尾だけだからさ。絶対もう松尾の事めっちゃ大好き!だ……」

「澪!何言ってるのー!」


 こういう時に耳がキーン。としたというのをいうのだろうか。

 結崎よ。真横でいきなり大声はやめてくれ。あと田舎では――響くというか。まあこのあたりは周りにホントに民家もないから大丈夫だと思うが……って待て待て。


「……あっ!?」


 結崎がヤバイ。って顔を俺の横でしている理由は俺でもすぐにわかる。だって今結構いい時間。学校から帰ってきて……ご飯食べて。結崎が片付けも手伝ってくれたからな。

 ちなみにもちろんだが、既に外は真っ暗。普通の学生なら家に帰っているのが当たり前の時間。そんな時間に、俺の電話口から結崎の声が聞こえるというのはおかしいことで。


「あれれー、今なんかゆえの声聞こえなかった?松尾」

「……」


 電話の向こうでは――絶対ハイパーニヤニヤとか言ったらしいのだろうか?いいネタゲット!みたいな感じの蓮花寺さんの声が聞こえてきている。俺知らないぞ?

 

 俺はどう返事をしようかで……真横に居て、やってしまった!という顔をしている結崎を見るが。結崎が会話するは無理だね。顔真っ赤。そして口を手で押さえて、爆発寸前みたいな感じだから触れないでおこうとと思ったら。


「松尾。ごめんね。いいところ邪魔してー」


 再度ニヤニヤ声の蓮花寺さん。


「いやいや、これには理由がありまして」

「大丈夫大丈夫。みんなに言うから」

「だから話を聞こうか!って広めるなー」

「松尾。元気だね。もう夜だよ?」

「蓮花寺さんもなかなかなテンションだよ!?」

「まあまあゆえに言っといて。た・の・し・み!って、じゃおやすみー」


 そこで蓮花寺さんからの電話は終了したのだった。最後めっちゃ楽しそうだったよ。蓮花寺さん。これ――どうなるんだろうね。

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