第29話 松尾守の休日5

 連休初日。俺の朝は早かった。


 日の出の時間には起きて、朝食。

 ちなみに昨日の夜の時点で決まっていた事なのでばあちゃんの朝食準備は完璧。じいちゃんももちろん起きている。というか。じいちゃんが言い出したからな。朝早くからして早く終わらそうと。

 急がないと天気がな。ちょっと……もう早いと明日には崩れるらしいからな。雨の中で掃除とかは勘弁だ。ということで今日は朝が早い。ちょっとでも時間が欲しいからな。


 朝ご飯を食べると俺は掃除用の服に着替えて――というか長袖長ズボン。学校のジャージに着替えた。

 じいちゃんはまだ準備中みたいだが。昨日じいちゃんが刈った草がまだそのまま道に放置されているので俺は先に一輪車を出して片付けを開始した。


「……眠い」


 そんなことをつぶやきつつ。作業開始だ。

 ちなみに刈られてから1日も経過してないが――昨日の夜に風が吹いたらしく。草は道全体に広がっているというね。大変だこれは。


 俺はその状況を見たため、ほうきも持ってきた。まあすでに溝に溜まっている草もあるが。それは後回しということでまずは道の掃除と大きな草を運ぶこととした。

 俺が2往復くらいした時にじいちゃんが草刈り機など機械類を持ってやってきた。

 そして残っていた草がどんどん刈られていく。俺の作業が――増える。どんどん増える。そりゃ機械は早いし。そもそもじいちゃんはずっとやって来たことだから慣れてるからな。作業が早いんだよ。

 今日はそこまで暑くないとはじめは思っていたが。何往復か上り坂をすると。


「暑い……マジ暑い」


 もう汗ダラダラである。滝のような汗だ。

 すると、じいちゃんは草刈りが終わり。のこぎりを取りに今は家の方に向かって行った。誰か来るとかそういうことが無いので。道の真ん中に普通に草刈り機や。その他道具が置かれている状況である。


「お茶お茶……あっ持って来てないか」


 水分不足はやばい。と、いうことで俺も一輪車を一度置いて。家に向かうこととした。


「……おーい。松尾君」

「—―うん?」

「松尾君ー」

「えっ?」


 家の方に歩こうとしたらなんか後ろから声が聞こえた?気のせい?と思ったら次の瞬間はっきりと声が聞こえたため俺は後ろを振り向いた。


「……何してるの――結崎」

「おはよう」


 普通に結崎がその場にいた。何故……?


「あ、うん。おはよう。で、どうしたの?なんで居るの?」

「うん?昨日ご飯の時に今日は朝から掃除だー。って言ってたからね。美味しいご飯もらっちゃったし。今日は私予定なくて暇だったから。手伝いに来ちゃった。はい、飲み物。スポーツドリンク買ってきたよ」


 そう言いながら多分コンビニかどこかで買って来てくれたのだろう。レジ袋からスポーツドリンクが出てきた。


「えっ……ああ、ありがとう。ちょうど飲み物とか思ってたから」

「よかった。あっ、おじいちゃんおばあちゃんにも挨拶してくるね」

「えっ――マジで手伝うつもり?」

「うん。だってこの姿だよ?」

「あー、うん。まあ見た目は……」


 そう。顔を合わせた時から違和感があったのだが。現在の結崎は俺と同じ長袖長ズボンのジャージ。俺と全く同じものを着ている。先ほど言ったが。学校のジャージだからな。同じだよな。


「掃除と言ったらこれでしょ?」

「まあ……そうだよな」

「じゃ、ちょっと家まで行ってくるね。あっ。ねえねえ松尾君の部屋開いてる?」

「うん?う。うん。普通に開いてるけど――?」


 あの部屋基本鍵など必要ないからな。ちょっと留守にする時くらいはかけるが。こうやって家に居る時はフリーだ。


「カバン置いといていいかな?」


 結崎はそう言いながら肩にかけていたトートバックを見せてきた。


「別にいいけど」

「スマホとか財布も置いておいていいかな?」

「あー、うん。大丈夫と思う。家にばあちゃん居るし……基本他人があそこに来ることはほぼほぼないから」

「なら置いてくるね」


 そう言い結崎は足取り軽く家の方へと進んで行った。


「—―元気だな」


 俺はそんなことをつぶやきつつ。結崎からもらったスポーツドリンクを一口。うん。冷たくて……美味い。

 あー、あれだ。ホント水分不足だったんだ。身体に染み込む感じがする。美味しい。水分大切だな。もう一口飲んでおこう。


 それから俺が作業を再開すると。結崎が身軽になってこちらへと降りてきた。手にはじいちゃんかばあちゃんに貸してもらったのか。軍手が装備されていた。いやもしかしたら、自分で持ってきた?いやちょっと使った感じがあるから。うちのだろうな。結崎のあの部屋に軍手が置いてあるのがイメージできなかったし。


「この草を運ぶの?」


 そして、マジで室長様。お手伝いをしてくれるらしい。


「そうだけど、ってホントにいいの?なかなかな重労働だけど」

「ダイエットになりそうだからね」

「いやいや何を言うか。細い人が」


 結崎が太っているとかになったら……もうえらい事である。無駄なものないよね?ってレベルなのに。結崎がそんなことを言いだしたら。他の人どうしたらいいんだよ!?である。騒ぎが起きるな。間違いなく。


「細くないって。昨日もたくさん食べたし。昨日帰ってから食べすぎたー。って1人潰れてたんだから」

「……まあ、うん。とりあえず……今は草を集めてもらうと助かるかな?俺が畑まで運ぶからこの道に広がっている草を集めてくれるとかなり助かる」

「わかった。よーし。動くよ」


 ということでちょっと予定が変わって。3人での掃除が始まった。今ちょうどじいちゃんも戻って来たのでね。3人だ。なんかじいちゃんが笑顔になった気がするが。あれか。女の子登場で喜んでるな――間違いない。

 それからはじいちゃんがどんどん木を切ったり。草を刈ったりする。それを結崎が道の真ん中などで集めて、俺が一輪車で運ぶ。その繰り返しがお昼前まで続いた。


「……ふー」

「結崎マジで無理しなくていいかな?ここで無理してダウンしましたとか。やめてくれよ?」

「大丈夫だよ。ちょっと大変だけど、気持ちいい感じだよ?」

「マジか……俺腕と足がやばいんだが」

「松尾君一輪車で坂道上り下りしているからね」

「行きは重たくて帰りは軽いが急ぐと危ないからそれはそれで大変なんだよな」

「にしても松尾君ところのおじいちゃん元気だね。ずっと木切ってるよ?」


 少し離れたところでは生き生きというのか。元気にじいちゃんも動いている。


「ホントだよ。明日寝込むんじゃないだろうな?いつもは適度に休憩を結構しているはずなのに……」

「そうなんだ」

「あれか。やっぱり結崎が居るからか」

「——私?」

「男ばかりだとやる気が出ないが女子が居ると……何じゃないか?」


 多分これあたりな気がする。


「そんなことないと思うけど。私そんな雰囲気じゃないでしょ?」

「何を言うか。お派手なお方か」

「派手って髪の毛だけで判断してるよね?今はジャージ姿だけど?とっても普通ってか。ダサい学校のジャージだよ?」

「まあ学校のジャージはそんなもんだ。でも結崎なら何着ても似合うだろ?」


 実際、同じ服を着ているはずなのに結崎には華がある気がする。俺は――何もないと思うが。


「さすがにジャージは無理だから。まあ、なんか体操服は――いけるよ。とか。奈都とかは言ってたけど」

「……それは――まあ、ノーコメント」


 ちょっと想像したが。こういう時はノーコメントの方がいいだろう。いや、長宮さんで体操服を想像するとね。


「へー」

「なんだよ」


 すると結崎がじーっと見てきていた。


「やっぱり男子が居る時に感じる視線はそういう事かー、ってね」

「再度ノーコメント」


 いや、その、体操服は体操服の良さがあるというか。別に余計なことは言わなくていいな。とりあえず、なんか良いものもあるってことで。


「松尾君。なんか今回すごいたくさん乗せてるけど大丈夫?」


 そして結崎に言われて気が付いた。話しながら作業をしていたからか。一輪車に乗せた草の量がちょっと今までより多くなっていた。


「—―ちょっと減らすか」

「なんか動揺している?」

「ないない、じゃ、運んでくから」

「気も付けてね?」


 俺が一輪車を押して畑に向かうと。結崎はじいちゃんが刈った草や。木を道へと出していた。いや、ちょっと後ろ振り向いてみたらちゃんと動いているというか。なんかこういう作業とか女子嫌いじゃないのかな?とか思ったんだが。自ら来るだけはある。虫!とかの悲鳴も今のところ聞こえないしな。


「きゃああ!?!?虫!!」

「……」


 訂正。たまたま今まで遭遇しなかったらしい。でも大騒ぎとか。全く触れない。見れないではないらしく。ちょっと立ち止まり後ろを確認してみたら、なんか木の棒やら使ってなんかしてたから――大丈夫そうだな。


 それから少ししてばあちゃんが「お昼ご飯出来たよ」と言いに来たため。俺とじいちゃん結崎は一度家へと戻った。


 ちなみにちょうどいい感じに草や木を運ぶのは終わったところだった。そして家に帰って来ると、素麺が机の上に置かれていた。


「あー、美味しそう。暑かったからちょうどいいね」

「だな。身体を冷やそう」


 じいちゃんがすでに座り。お茶を飲んでいた横に俺が座り。その横に結崎が座るが。なんかちょっと結崎が俺と距離をとっていた。まあ1人分もないくらいだが。すると結崎が俺が不思議そうにしていることに気が付いたのか。


「あっ。その汗のニオイ――あるかもだし……」


 ちょっと言いにくそうに話してくれた。って、なるほど。


「いやいや、そんなの気にしないし。むしろこっちの方が朝から動いていてやばいから……なんかごめん」

「汗拭きのシートか何か持ってくればよかった。荷物少ない方がいいかなって余計なもの置いてきたから」

「いや、マジで気にしてないから」

「松尾君……そういう趣味?」

「違います」


 そんな感じにお昼休憩を1時間ほどする予定だったのだが。


 ちょうどその時にテレビから天気予報が――どうやら雨が早くなってきているらしく。今日の夜。早いところでは夕方から雨が降り出すと言っていたため。


「守。溝だけは終わらさんとな。雨が降って来るとだからな」

「了解。動くか」


 じいちゃんがそんなことを言いながら立ち上がったため。俺も続く。ちょっと休憩時間が短くなったな。


「あっ、結崎はまだ休んでていいからな」

「えっ?大丈夫だよ。むしろ雨が降る前に終わらした方がいいんでしょ?」

「いや、まあそうだけど。って、溝掃除は――結構汚れるというか。土とかがすでに流れているからさらに大変だから」

「大丈夫大丈夫」


 そんなことを言いつつ結崎も付いてきた。

 ちょっと1時間くらいの休憩が短くなったが。確かに外に出てきたら。午前中より雲が多くなってきていた。これで早く降ってきたら最悪だ。

 俺とじいちゃんはスコップで溝に溜まった土や。刈った草などを出していく。

 これがなかなか大変なんだよな。浅いからまだいいのかもしれないが。距離はそこそこあるし。中腰というか。ちょっとしゃがんだ感じでしないといけないし。坂道だしと。いろいろ大変なんだよ。おまけにちょっと湿った感じのところもあるし。


 ちなみに結崎にこの仕事は――だったのだが。何故かやる気だったため。結局してもらっている。なので3人でしているため進みは早い。ってか、結崎こういうのホント嫌がらないな。むしろ自分から進んでやっているとか言う感じだし。室長様。何でもしてくれます。


「うわー、ここすごい土」

「あー、そこはちょっと流れが緩やかになるから溜まるんだよな」

「でも、こういうところ掃除しとかないと。大雨の時すごいんじゃない?」

「まあ、大雨だと――すぐにこんな浅い溝はあふれるけどな」

「それは大変だね」

「大雨の時とか普通に道を水が流れてるからな。靴が毎回重くなる」

「うわー、嫌だ嫌だ」


 そんな感じで話しながら溝の掃除をしていき。かなり空が暗くなってきた頃。無事に駅までの掃除が完了……ってヤバイ。腰に来た。明日寝込むかも。


「いい運動したー」

「いや、結崎マジで助かった。天気崩れる前に終わったし。ホント助かった」

「よかった。邪魔にならなくて」

「まあとりあえず……戻るか。じいちゃんはもう道具持ってあがってったし」


 現在は俺と結崎2人。残り少しになった時に。あとは俺と結崎でしておくと。言ってじいちゃんには片付けに入ってもらった。まあ俺が草刈り機とか。その他道具のしまってあるところ。ってそもそも機械の片付け方がわからないからな。


「あー、午後の方がきつかったー」

「明日筋肉痛かもな。いや、決定か」

「かも。って、めっちゃ汗かいた」


 結崎はそんなことを言っているが。見た感じほとんどわからないという。俺なんてもう全身から汗流れているんだが。女の子ってどういう身体しているのでしょうか?見えなところではドバー?とかなのだろうか。って、わからんことはわからんな。聞く必要もないし。


「あー、結崎着替えとかあるなら。風呂使っていいぞ?そのままは……だろ?」

「そうさせてもらおうかな。って。そう言って欲しかった!うん!ちゃんと着替えとか持ってきたからね。お風呂借ります!」


 俺の言葉を待っていたのか。お風呂の言葉に結崎の目が輝いていた。入りたいよな。これだけ動いたら。さすがに昼前には言えないが。終わった後なら――である。


「準備が良いことで」

「汗かくのはわかってたからね。汗拭きシートは忘れたけど……」

「ははは――じゃあ、とりあえず帰ったら風呂確認しとくよ」

「ありがとっ」


 俺と結崎が家に戻ると。風呂には先客が居た。


「悪いもうじいちゃんが入ってるみたいだった」

「まあ、私たち話しながら来たからね」

「まあすぐ出てくるだろうし。ちょっと待ってて」

「大丈夫大丈夫。着替え取りに行かないとだし」

「あー、俺の部屋か。まあ普通に開いてるからご自由に」


 それから少ししてじいちゃんが出てきたので結崎に風呂が空いたことを伝え。入ってもらった。


 俺は……もうしばらく待機。どうせならで、ちょっと家の周りの草やらを片付けたりして待った。いや、汚れてるからな。部屋で寝ころぶとかできないからな。ならちょっとでも、ということで家の周りを掃除していた。そんなことをしていると。


「松尾君。お風呂ありがとう」

「ああ」


 風呂上りバージョンの室長様登場。なかなか――良いです。ジャージ姿から。普通の私服に変わった結崎。七分丈とか言うんだっけ?それにロングスカート。似合ってるね。って。こんなド田舎に急に美少女が現れたよ。

 いやそりゃジャージ姿だろうと――だが。やっぱり服装は大切か。これだけ変わるんだもんな印象が。


「うん?」

「あーいや。じゃ、俺も浴びてくるわ。なんか泥とかすごいし」

「うん。なんか髪の毛洗ったら葉っぱ落ちてきたよ」

「それは掃除していたらよくあること。じゃ。あっ。俺の部屋でもじいちゃんところの居間でもどっちでもいいからゆっくりしてて。あっドライヤーは。俺の部屋の入ってすぐの棚にあるから」

「じゃ、ドライヤー借りるね。ありがと」


 結崎と少し話してから俺も風呂へ。シャワー最高である。めっちゃ気持ちいい。最高。シャワーを浴びていると全てが流れていく感じ。気持ちよかった。

 ちなみにじいちゃんがお湯をいれた?いやないな。多分ばあちゃんだな。まあどちらでもいいがお湯を張ってくれたらしく。湯にも浸かれましたとさ。って、結崎も使っていた?という余計なことは考えず。


 その後俺はジャージやらを洗濯機に入れて洗濯。ジャージとかならすぐ乾くからな。もうすぐ雨降って来るかもだが汚れたままでは、なのでね。洗濯機が動き出したのを確認してから俺は自分の部屋へと向かったのだった。

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