第27話 松尾守の休日3

 学校帰り。結崎とともに大学前駅の方にやって来た俺。現在は改札を抜けてホームセンターへと向かっているところだ。


 ホームセンターは駅から少し離れているためしばらく徒歩移動。バスとかもあるかもしれないが。そこまで遠い距離ではないし。普段あまり使わないのでわからない為。調べているくらいなら歩いていたらつくのでね。徒歩移動となった。


「結崎はホント初めてなの?」

「うん、こっちに来てからはないかなー。雑貨とかなら。駅前とかショッピングセンターで何とか揃うからね」

「ああ、確かに。でも替え刃はなー」

「それは売ってないよね。そういうのはやっぱりホームセンターだよね」

「うん。それに確か前も今から行くところで買った感じだったし――じいちゃんが」

「聞いたの?」

「いや、過去のレシートが取ってあった」


 俺はちょっと文字が薄くなっているレシートを結崎に見せた。


「おお、すごい。ちゃんと取ってあるんだ」

「じいちゃん曰く。店で店員に渡したら自分で探さずとも持って来てくれるんだと」

「あー、なるほど」

「まあ俺が居なかったりしたら、じいちゃん自分で買いに行くはずだったからな」

「でも今なら松尾君が平日はほぼ毎日近くまで行っていると」

「まあそういう事。明日からの連休はホント掃除でつぶれそう。まあ個人的にはそれでもいいけど」

「ふーん」

「ちなみに結崎は付いてきたがなんか見たいものとかあるわけ?」

「えっ?うーん。こっちのお店がどんなのか見たかっただけだから」

「まあもしもの時に知ってると便利か」

「でしょ?あっあの店なら確か置いてたかも。とかでも何も知らないよりはいいからね」

「確かに。はじめて行くところだと……わからないことだらけだしな」

「そうそう」


 結崎と歩いていると学生が多かった駅前から離れたからから、現在は人通りは減って、車は多いかな。そして、目の前にホームセンターの看板が見えてきた。


「ちょっと離れるだけで結構な大きさの店舗あったんだ」

「まあここが一番揃うかな」

「ちょっと楽しみ」


 ということで、2人でホームセンターに入店。


「おー、予想通り」

「まあホームセンターだとどこもこんな感じじゃない?」

「だね。外には煉瓦とか。苗?後肥料とか売ってて」

「ここもそうだったな」

「で、入ると棚とか後水回りの物とか。ペンキもここはたくさんあるね」

「えっと……でお目当ての――」

「替え刃だったよね?どこだろう?園芸とか?」

「かな」

「あっ、あそこに剪定ばさみとか上に書いてあるよ?」


 そう言いながら結崎は通路と通路の間の天井からぶら下げられている看板を指さす。


「多分そのあたりだな」


 っか、制服姿の男女がなんでこんなところをうろうろと放課後見ているのだろうか?とか思っている人は居ないだろうが。結崎が見つけてくれた剪定ばさみのところのコーナーには、畑仕事とかの合間に来た。という感じの人が数人。なんか制服姿の俺と結崎はやっぱり変な感じかな?


「あっ、あれじゃない?」

「うん?あー、そうそう」


 俺と結崎。無事にお目当てのところに到着。


「へー、いろいろ種類があるんだね」

「ホント……えっと――じいちゃんのご希望は……」

「どれどれ」


 結崎も俺が手に持っている品番の書かれた紙を覗き込んでくる。なんか言っちゃだめだと思うが。結崎からいい香りがした。というくらいの近さに結崎が今居る。こういう場合は――一息ついて。何も考えない。よし。OK。


「えっと……うーん。結構似た感じのたくさんあるね……」

「ホント。種類多いな――ってかあったわ」

「なんだ。すぐ見つかったね」

「うん。って待て――高っ!」


 値段見てびっくりである。うん。びっくり。


「—―うん?あー。10枚も入ってるんだ。そして……いいお値段」

「そういう事か……って前にじいちゃんが買ってるのも10枚だからこれで――あってるのか……えっ?レシートに書かれてるより高くないか?」

「値上げしたのかな?」

「あー、それは……あるかも」


 じいちゃんご希望の替え刃——まさかの5000円出して数百円しかおつり来ない。って、ちょっと待て。お金足りるよな?確か朝お金は入れたはず――だが急に不安になったので。俺はカバンから財布を出した。


「……よかった」

「うん?」

「いや、ちょっと予想より高かったから、お金の心配を」

「あー、足りないなら貸すよ?」

「大丈夫です」

「そう?」

「はい。まあ後でじいちゃんから帰って来るからな。とりあえずこれ買って――結崎他見るか?」

「あっ、いいの?せっかくだからちょっと見たいかな?」


 そんなこんなで、替え刃をゲットしてからぐるりと1周ホームセンターを回った。俺もここまでちゃんと回ったことはなかったのでなんか見ているだけだったがなかなか楽しかった。


 ちなみに結崎は照明のところでしばらくにらめっこ。という感じだった。なんかいろいろなおしゃれな照明があったので。それに呼び寄せられていた。


「意外と楽しいね」

「確かに。なんか見てるだけでもこれはこれでありかな」

「うんうん」

「まあ、放課後に来るのは……とか思うが」

「あー、でも今日はいいんだよ。用事があったからね。でもここなら同級生とかには会わないかなー」

「よほどじゃないと学校帰りには来ないかな?うん」

「だよね」


 そんな会話をしつつ俺はレジへと並び。じいちゃんからのおつかい完了。


「うん?」


 すると……確かレジの先で待っていると言っていたはずの……結崎が消えた。


「あれ?」


 結崎が勝手に帰るとかはないと思ったのだが。とか思いつつとりあえずお店の外に出てみると。


「松尾君!こっちこっち」

「—―うん?」


 んか横から声がした。ということで、声の方を見てみると。


「……食べ物に引き寄せられたか」


 とりあえず、結崎を無事に発見した。お店の外で売っていたたい焼き屋さんの前でこちらに向かって手を振っていた。そして呼ばれたので、行ってみると。


「はい。松尾君。どーぞ」

「えっ?」


 ちょうど結崎が店の人からたい焼きを2つもらったところだった。そしてそのうち1つを俺に渡してきた。


「これはカスタードだって」


 俺はなんか流れでたい焼きを受け取った。あったかいというか。熱い。出来立てだな。


「えっ、あっ。お金払うよ?」


 俺はそう言いながらもう片方の手に持っていた替え刃を――ちょっと苦戦しつつカバンに入れて財布を出そうとしたら。


「いいよいいよ。これ1匹100円なんだって」

「安っ」

「うん」


 メニューを見てみると――全品100円。ワンコインでたい焼き。いいじゃん。となっている俺だった。

 ちなみに中身はあんこ、カスタード、チョコ、抹茶。と書かれていた。ちなみに本日抹茶は売り切れとのこと。


「そこのベンチ空いてるから座って食べよ」

「あ、うん。ごちそうさま」

「いいよいいよ」


 俺は結崎とともに空いていたベンチに座り。買い食い?になるかな?もちろん我が高校。禁止とかではなく。地域発展のためOK。という風に書かれている。そう買い食いはどんどんしろ。と書かれていた気がする。面白かったからなんか覚えていた。


「あっ、美味い」

「あつっ」


 俺の隣では――って結崎はチョコレートを買っていたらしい。チョコは……熱いよな。カスタードも結構熱いけど。


「でもおいひい」

「ゆっくりどうぞ」

「松尾君は頭から?」

「うん?あー、まあ気分的に?」

「私も特にこだわりはないかなー、っていつも半分に割って食べるからね」


 そういえば結崎は半分に割って食べていた。なるほど、だから……アツアツのチョコがすぐに襲ってきたのか。結構たっぷり入っているからな。すると……なんか視線が。


「—―そっちも美味しそう」

「……半分食べます?」


 俺は頭の部分しか食べていなかったので反対側の尻尾の方をちぎる。


「いいの?ありがとー。じゃ私も」


 結崎も片方の手に持っていた尻尾側のたい焼きをこちらへと差し出してきた。


「って……松尾君」

「うん?」

「先にそれ食べちゃった方がいいと思うよ。クリームが――」

「うわっ」


 俺馬鹿だった。頭の方をすでにかじっていたので、そこで尻尾の方を割ったら中のクリームがどちらかというか両側からゆっくり漏れてくる。今は尻尾側があふれる危機。


「あつっ」


 とか言いつつ……ちょっと結崎に見守れつつ――頭側を完食。


「—―熱かった」

「セーフだね。はい。チョコレート」

「どうも」


 今度はゆっくり食べることが出来た。って、チョコも美味いな。いい甘さ。ちょうど冷めたらしく。激アツではなかったのでチョコは美味しくゆっくり食べれた。


「この端っこのカリカリのところ私好きなんだよね」

「わかる。俺もその部分なんか好き」

「だよねだよね。なんか美味しいんだよね。ここ」


 話しながらたい焼きを完食した俺と結崎だった。


「美味しかったー。松尾君に付いてきたらいいお店発見できたよ」

「そりゃよかった」

「そろそろ松尾君は帰るの?」

「あー、うん。帰ろうかな。とりあえず買うもの買ったし」

「そっかー」

 

 結崎はなんか寂しそうなかんじで言っていた。と、一瞬思ったのだが。すぐに何か思いついた感じで、急に笑顔になりこちらを向いて。


「ねえねえ。付いていっていい?」

「……どこに?」


そんなことを結崎は言いだした。


「松尾君ところ」

「—―何故?」

「あー……おばあちゃんにいつもおかずもらってるからお礼?かな。今日まだ時間早いし。今から帰ってもダラダラしちゃうだけだからさ」

「……俺は別にいいけど、結崎はダラダラして休息していただいた方がいいような」

「いいの。松尾君と行動は私ホント何ともないから。ってか急にだけどいいの?」

「まあ。問題はないかと」

「じゃ、付いて行こーっと」


 結果。俺と結崎は大学前駅へとまた歩き出した。なんかご機嫌というか。たい焼きが美味しかったのだろうか。結崎の持っている通学カバンが元気に揺れている気がする。確かにたい焼き美味かったからな。


「あっ、松尾君松尾君」

「うん?」

「おばあちゃんってなんか好きな食べ物と勝手ある?」

「えっ?」

「いや、手ぶらじゃなー。って。今までのお礼もだから。で、せっかくこっちに来ているからね。なんか買って行こうかなって」

「いや、好きでしているからそこまで気にしなくても」

「でも、もらってばかりはだからね」

「まあ……ばあちゃんというか。じいちゃんばあちゃん両方だけど――和菓子?は好きかな……たまに病院とかでこっちに出てくるといつも――駅前のところのお店でどら焼きとか。団子?買って帰ってきている気がするし」

「うんうん。じゃ、どら焼き買って行こうかな?駅前のお店なら私も知ってるし」

「でも、ホント気にしなくても」

「いいのいいの。私の勝手だから、あっ、ちょっとだけ時間いい?」

「あ、うん。それは問題ない」


 俺と結崎は駅前まで戻ってきて――駅ではなく。駅前にあるお店へと入った。


「あったあった。どら焼き……栗入りと両方買って行こうかな?すみません。どら焼き栗入りと、普通の2つ……やっぱ3つずつお願いします」


 結崎が買い物中俺もお店の商品を眺めていた。いやあまり1人ではこういう店に来ないのでね。


「お待たせ」

「あった?」

「うん。じゃ行こうか」


 結崎の手には紙袋が追加された。

 それから俺と結崎は大学前駅へ。ちょうど電車が発車する時間だったため。ちょっと駆け足で電車の中へと乗り込んだ。


「セーフ。だね」

「ホント」

「にしても……こっち向きは空いてるね」

「—―この路線大丈夫だろうか」


 車内はガラガラというわけではないが。数えれる人数しか今のところ乗っていない。俺と結崎は座っている人の前を足がぶつからないように通過。そして車両の真ん中あたりに並んで座った。


「あっ、でも今日は田園駅まで2人行くね」

「あー、確かに。ある意味レアな事か」


 そんなことを結崎と話していると電車は発車した。


「そういえば松尾君はこの休み掃除の手伝いって言っていたよね?」

「うん。まあ多分。全部ではないと思うけど。はじめの1日2日は掃除だろうなー。結構大変なんだよ。じいちゃんが刈った草を畑まで運ぶのくりかえしだし」

「畑?」

「あー、なんか肥料になるんだと。まあ捨てるとなるとうちはいろいろ大変だから」

「なるほど」

「で、今年はなんか木も伸びてきているからそれ切らないととか言ってたし」

「それはそれは大変だね」

「まああんなド田舎に居るから仕方ないよ」


 車内でそんなことを話していると電車は高校前に着いて――発車。そして普段は結崎が降りる公民館前駅にも到着。そして発車。この時点で先ほどの予想通り乗客は俺と結崎だけになった。


「公民館前を出ると一気に山だよね」

「うん。毎日思う。トンネルを抜けたら陸の孤島」

「確かに。ほとんど道もないんだよね?」

「うん。鉄道が死んだら完全に孤立だね」

「それはこの鉄道に頑張ってもらわないとだね」

「マジでだよ。急に廃線。とか言われたら。まあ引っ越し検討だろうな。うん」


 結崎とさらに会話を続けていると電車はトンネルを抜けて――田園駅。終点へと到着した。


「……」

「どうした?結崎」

「あっ、うんん。ちょっと過去のことを……」

「……まああれはなかったことで」


 そういえばここ現場だ。


「ホント……ごめん」

「いやいや、いいからさ。とりあえず行こう」

「うん。でも、ホント松尾君と居ると私普通で居るなー。体調も良いし。全然疲れないし」

「それは……よかった」


 そんなことを話しながら改札に向かっていると――。


「松尾君おかえり。ってあれ?2人?」


 運転席から楚原さん登場。どうやら楚原さんの担当電車だったらしい。


「楚原さん。こんにちは」

「ああ、ってあれ?この子は……」

「あっ――えっと……楚原さんってことは……あの時はいろいろご迷惑をおかけしました」


 結崎がぺこりと頭を下げていた。


「あー、やっぱり。いやいや大丈夫大丈夫」

「あっ、楚原さん多分先生の方にも噂が行くのだと思うのではっきり言っておきますが。結崎はばあちゃんに用事でこっちに来ましたので。そこを楚原先生にちゃんとお伝えを……」

「ははは。わかってるわかってる。気を付けて帰るんだよ」

「はい」

「……」


 結崎は俺の横で――まああの時の事を思い出したのか。ちょっと小さくなっていた。そういえばあの時楚原さんだったもんな。一応結崎もあのあとちょっと俺が話したこともあり。覚えて居たらしい。って楚原さんも覚えてるよな。あれはなかなかの出来事だからな。

 楚原さんに挨拶をした俺と結崎はそのまま改札を抜けた。


「……はー、ちょっとドキドキした」

「えっと――大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫大丈夫。倒れそうとかじゃないから。でも、あの時のは……だから」

「まああまり気にするのも……だと」

「だよね。うん。ありがとう、って、さっきから気になっていたけど――この両側の草が刈られているのは……」

「まあじいちゃんが出来る範囲というか日曜日にしたまま。ってやつだな」

「本当に駅まで草刈りしてたんだ――結構あるよね?」


 あたりを見渡しながら結崎がつぶやく。


「ある。それにじいちゃん曰くもう少し中までするとか言ってたから……手前だけしてもすぐ草は伸びてくるからね」

「あー、そうだよね。でも、ちょっと刈ってあるだけで雰囲気は変わるね」

「うん。刈る前は……夜ちょっと怖いレベルだったな」

「動物かなんかが出てきそうだもんね」

「ホント」


そんなことを話しながら歩いていると、じいちゃんばあちゃんの家に到着しましたとさ。話しているとやっぱりあっという間だな。

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