第26話 松尾守の休日2
連休前の2日間。学校は当たり前だが普通にあった。
月曜日の日は特に問題なく1日過ぎていった。いや実は結崎と出かけていたのが蓮花寺さんに発見されていたので、他に何か起こるかもしれないとか。思っていたのだが。俺が月曜日学校に行くと。
「おはよう。松尾君」
「ああ。おはよう」
俺より先に結崎が教室の席に居て――いつも通りの状態だった。
そして、相変わらずにの人気者室長様は休み時間の度に誰かと話したりしていたため。その日は俺と話すのはほとんどなかった。
むしろ話したと言えば――この日ちゃんと先に話したのは結崎ではなく。
「松尾ー。ヘルプー」
体育の時間終了後だったか。今日は昼休み前の授業が男女一緒に体育の時間だったのだがそれも終わり『よし、終わったし。教室戻るか』とか1人で思っていたら。急に蓮花寺さんに声をかけられた。
なんか蓮花寺さんが持っていたカラーコーンから嫌な予感はしたんだが。
って、今日の蓮花寺さんは学校バージョンというのか。普通に綺麗。美人だわ。休みの時との違いが――ヤバイ。とかそんなことを思いながらちょっとゆっくり呼ばれてから近づいたからか。
「松尾。今休みの時の私と比べてたでしょ?」
「……イエス」
バレてたか。とりあえず正直に答えておいた。
「素直ー。まあいいけど」
「で、なんか用?」
「片付けをね。先生に頼まれたから……松尾も手伝って」
「……だろうと思った」
予想通りだった。とりあえず俺は返事をしつつ他のカラーコーンを手に取った。
「おっ、文句なく手伝ってくれるの?優しい!次からも頼もっと」
「いや文句とか言ってるより。片付けた方が早く昼に行けるから。腹減ったし」
「でもラッキー。ありがとありがと」
ということで蓮花寺さんと話しつつ。体育に時間の片付けを2人でしてから蓮花寺さんとともに教室へと戻った。一緒に戻る必要はなかったと言えばなかったのだが。
カラーコーンを倉庫に片付けて鍵を職員室に持って行かないといけないと。蓮花寺さんが愚痴っていた時に偶然体育の先生が戻ってきて……。
「悪い。鍵まだ持ってるか?ちょっと使うことになったから。鍵預かるわ」
ということで鍵を職員室へと返しに行く必要がなくなったため。俺と蓮花寺さんはそのまま話しながら教室まで戻って来たという事だ。
「松尾。サンキューね。あっという間に終わったよ」
そんなことを言いながら蓮花寺さんは自分の席へと手を振りつつ戻って行った。俺も早く着替えて昼にしたいので自分の席に行くと。
「……」
なんか後ろから視線があった気がするが――気のせいだろう。何かを感じたすぐ後に声が聞こえてきてすぐにいつものメンバー。長宮さんや大木君らが結崎のところに来て話出していたので。その後はまあいつも通りだった。
放課後ちょっと……ちょっと……楚原先生にいろいろ突っつかれた気がするが。あれは予想の範囲内。月曜日は終了した。
そして翌日。火曜日は連休前でなおかつ先生らが放課後に会議?があるらしく短縮授業。つまりだ。放課後は部活とかもなく。委員会もない。授業が終わればとっとと帰れである。
いつもより授業が短いため。あっという間にどんどん時間が過ぎていく感じがあった。個人的には毎日こんな感じでもいいんだが。それは無理なんだろうな。そしていつもよりかなり早い時間に――。
「よし。じゃあここまで、終わったらとっとと帰るように。教室とか戸締りするからな。無駄に残るなよー。はい。帰れー」
とか先生が言った頃には。早い人はとっとと荷物を持ってすでに教室から出て行った。そして授業が終わると同時に教室はうるさくなった。
連休開始だからな。そりゃテンションあがるか。いろいろ予定の話が飛び交っている。
って、俺も早く移動を考えてはいたが。いや、今日は満員電車に乗る必要がちょっとあるのでね。日曜日にじいちゃんから頼まれた草刈り機の替え刃。とやらをホームセンターに探しに行かないとなので。多分この連休は掃除で終わるな。とか俺が思いつつ。カバンからじいちゃんにこの前渡された。メモというか替え刃の品番を再度確認。そもそもメモを持っているかの確認をした。これが無いと何を買っていいかわからないからな。家に戻る必要が生まれるためこの確認は大切である。
もちろんちゃんと持っていたんだがな。すぐに発見したよ。すると後ろから声をかけられた。
「それ何?」
「—―えっ?」
気が付くと後ろから結崎がこちらを覗きこんでいた。
ちょっとびっくりした。いや、後ろからのぞき込んできていたのでふと声の方を見ようとしたら結構近くに結崎が居たのでね。
「あ、いや、じいちゃんからちょっと買い物を頼まれてさ」
「……替え刃?って書いてあるね」
「そうそう。この前の日曜日からちょっと家の周辺の掃除しててさ。それで必要になって」
「あー、えっ、もしかして松尾君の家から駅のところって松尾君ところが掃除してるの?」
「まあ詳しいことは知らないけどそうなっているみたい。幸いこの2日間晴れてくれたからよかったけど……雨降ったら――まあ溝掃除とかが大変になっただろうな。って感じで。前の休みにしたのがそのままほってあるからね」
「大変だね――ってことはさ」
「うん?」
「今日は松尾君この後大学前の方に行くの?」
「そう。行きたくはないが……行かないとだし。でもまだ今だと駅がめっちゃ混んでいるだろうから。ギリギリまで粘ろう的な。あまり教室に居ると先生に叩きだされそうだけど」
「ふーん」
すると結崎は何かを考えていた。そしてこのタイミングで、さらにというのか俺に声がかかった。
「松尾守君居ますかー。って居た居た」
「—―えっ?」
前のドアから顔を出したのは……小さな生徒。ではなく小さな先生——いや、なんかいろいろ訂正。訂正しますので。
楚原先生が珍しく教室にやって来た。楚原先生は俺を見つけると近寄ってきて――って、それと同時にクラス内がすこしざわつく。
「あれ誰?」
「生徒?でも――制服着てないし」
「先生だよ」
「マジ?」
「マジマジ。あの先生怒らすと怖いらしいよー」
「あー、あれか噂の先生か」
「そうそう。やばいらしいよ」
「うわ――早く帰ろう」
「だね。うん。そっと帰ろっ」
「巻き込まれたらいやだからな」
「あいつ。終わったなー」
「かもねー。ご愁傷様。チーン」
楚原先生めっちゃ言われてますが――俺がそんなことを思っていると楚原先生が目の前まで移動してきた。
「松尾君。この後1時間だけ時間ちょうだい?」
「はい?」
「至急手伝ってくれないかな?」
そして、俺は楚原先生に連行されることになり。って、まあ楚原先生は何故か小声で話していたので、これは周りの生徒には聞かれたくなかったのだろうか?が。それがさらに教室内で噂を呼んだ。
「連行されたな」
「あー、あいつやらかしたな。逆鱗に触れたか」
「本返し忘れたりすると……恐怖の拷問室とかだろ」
「あれ?でも松尾って、図書委員だよ?」
「蓮花寺さん詳しいね」
「まあねー。ちょっといろいろ最近関わったから」
「でも、あれ連行だろ?」
なんかいろいろ噂というか声が聞こえたのだが。って、どんどん膨らんでいるというか。これじゃ逆に図書室に誰も来ないんじゃね?とか言うレベルになってきている気がするんだが。良いんですか?楚原先生?まあこれを起こしたの俺達ですが――。
って、なんか今蓮花寺さんの声が聞こえた気がしたが。俺が確認する前に楚原先生は急いでいるらしく。すでに結構前を歩いていたので俺はちょっと駆け足で楚原先生を追いかけたのだった。
◆
でだ。
――カタンカタンカタン。
すごくリズムよく良い音が今はしている。
現在俺は印刷室とか言うのだろうか。大きなプリンターの前に居る。そしてなんか紙をいくつか楚原先生に渡されて。
「松尾君。極秘指令です。このプリントを50部ずつ今すぐ刷ってください」
「—―はい?」
「……作るの忘れてたのー。お願い。職員会議までに必要なんだけど私他にもすることあるから。ね?ね?」
めっちゃ必死の楚原先生。
「……まさかの俺……便利屋!?」
「……」
「なんで笑顔のまま無言なんですか?」
「お願い。で、終わったら……入り口のところに机あるでしょ。そこに置いておいて。お願い。終わったら帰っていいから」
「……まあ……わかりました」
「ありがとう!じゃお願いね」
楚原先生はバタバタと印刷室を出て行った。って、俺がここでなんかしていていいのだろうか?とか思ったのだが。頼まれたのだから大丈夫だろうと。すぐに作業開始。
って、印刷するものを見ているからわかるのだが。あと、楚原先生もさっき言っていたか。これ職員会議までに必要なんだろうな。俺はそんなことを思いつつ。セットし。スタートボタンを押す。
先ほど1回だけ楚原先生がやり方を教えてくれたのだが。シンプルなので問題なく動いた。
――カタンカタンカタン。
――カタンカタンカタン。
――カタンカタンカタン。
そしてしばらくそんなくりかえしをしていると。っていうか、予想より印刷のスピードが速いのであっという間に終わった。
俺は順番に並べて……指定された机の上に。すると……。
――ガチャ。
ちょうど印刷室のドアが開いた。
「松尾君終わった?まだ――かな?」
「今終わりましたよ」
「さっすがー!」
楚原先生がナイスタイミングで印刷室に戻ってきて、俺から印刷物を受け取ると。そのまま正面にある職員室に駆け込んでいった。今日はお忙しそうだ。あれか。そろそろ会議が始まるんだな。ってか、俺に頼みに移動する時間で出来た――いや、もしかしたら他にもすることがあってか。って、とりあえず終わったし。俺は帰らないとな。
ということで下駄箱へと俺は向かった。幸いまだ数人生徒がいて。ドアも開いていたのでささっと靴を変えて外に出た。すると。
「あっ。出てきた出てきた」
「うん?」
声の方を見ると階段のところに腰かけていた結崎がこちらへと歩いて来た。何をしているんだろうか。この方は。
「お叱りは終わった?」
「……何してるの?ってまあそんなんじゃなく。普通に印刷の手伝いをしてきただけ」
「へー。なんだ」
「何が希望だったの?」
「松尾君が怒られて半泣きで出てくる?」
「……」
ちょっと結崎最近調子乗っているというか。冗談が増えた?と俺が思っていると。
「うそうそ、怒らないでよ。楚原先生がバタバタしていたの見ていたからなんとなくわかるよ」
「まあ怒ってないけど――少し前のどこかの誰かさんの事を思い出した」
「うわーーー。って墓穴じゃん私」
そう言いながら結崎がしゃがみこんだ。って結崎。スカートなんだからそのしゃがみ方はダメかと――と、俺は思いつつ慌てて視線を移動させた。ちなみに残念ながら何も見ていない。というか。結崎ちゃんと見えないようにしゃがんで――ってこの情報いらないな。
「—―で、結崎は何してるの?」
「友達待ち?」
そう言いながら結崎は立ちあがった。
「あー、まだ誰か来てないの?俺結構最後だと思ったけど……」
「そうそう、やっと来たんだよ」
「あっ、じゃあ。俺は行くよ」
「いやいや気が付いてよ。松尾君待ってたんだから」
「——えっ?」
俺?
「付いていっていい?」
「どこに?」
「ホームセンター」
「——何故?」
「普段行かないから面白そうだなー。って」
「まあ、俺はいいけど」
「ありがと、じゃあ行こうか。ちなみに駅はまだすごい人だと思うよ?」
「マジか……」
ということで、何故か結崎とともに移動することとなったのだった。
「ってか、結崎せっかく今日早く帰れるのに誰かと遊びにとかなかったの?」
「あー、今日はね。誘われはしたんだけど」
「あれ?」
「こっちの方が面白そうだったからね」
「……それなら――いいけど」
どういうことか知らないが。室長様はみんなで遊びに行くより。ホームセンターの方が興味があったようだ。不思議なことだ。ホームセンターって面白いのだろうか?そりゃいろいろあるから面白いっちゃ面白いかもだが。それから話ながら結崎とともに高校前の駅にやってくると。
「マジで減ってないな」
「でも、まだマシな方だよ?終わってすぐとかもっとあふれてるし」
「これ以上にか……」
俺は初めてではないのだが、大量の人であふれているホームの先っぽに結崎とともに立っていた。すると踏切の音がしてきて、いつも通りガラガラで電車が駅に入って来たのだが……すぐに車内はギュウギュウに。
一瞬で車内はパンク状態。これ乗れるのか?であったが。結崎は慣れているのか。ドア付近の隙間を見つけるとそこに入り込む。俺も最後に乗る形でドアのところに何とか乗り込み……そこでドアが閉まる。
「……の、乗れたね」
すると。結崎が俺の横に再度移動してきた。さすがスリム。隙間を抜けるのがお上手で。俺ドア大好き状態なんだが。マジで動けない。めっちゃ潰されてる感じだし。ちなみに車内に居る人はいつも通りの光景なのか。普通にこの状況下で笑いながら話したり。揺れる中でスマホをいじっている人も見えた。ホント普通の感じ。様子だった。それは俺の横に来たお方もらしく。
「相変わらずだよね。この混み方。遊びに行く時とか毎回こんな感じだから」
「……俺もう乗りたくないわ」
「早っ」
「動くなら……学生が居ない時間がいいな」
「まあ今日みたいな日はね。あと1時間もすれば空いてくると思うけど……」
「そこまでは待てないな」
「でも数分の我慢—―きゃ」
そこで電車が大きく揺れて結崎がふらつき――ギュッ。
「……」
「……」
「……ごめん、手すりとか何も持ってなかった」
俺の腕に結崎が捕まって何とかこけずに堪えていた。ってこの人だからこけるとかはない気がするが。とりあえず俺は結崎を軽く引っ張り。ドアのところにあった取っ手を掴ませた。
「ごめん」
「いや」
「びっくりした」
「座ってない時はちゃんとつり革とか持つべきだね」
「ホントだね」
って、話しながら気が付いたが。めっちゃ結崎が近くに居る。ほぼ密着——というか。普通に電車が揺れるたびに触れ合うような距離だったが、そんな状態は長く続かない。すぐに大学前だからな。
ちょっと変な感じもあったが。電車は大学前に到着。一気に人が車内から解放されていく。俺と結崎はドア付近に居たので開くと同時に押し出されるような形でホームに居た。そして改札が混んでいるのでちょっとほホームで待っていてから。
「そろそろ行こうか?」
「ああ、改札も空いていったしな」
俺と結崎は改札に向けて歩き出したのだった。
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