第24話 おでかけ4
カッキーン。
カーン。
カキーン。
みんな打つの上手いな。と、見ている俺。えっ?何をしているかって?簡単に言うと、金属にボールが当たっている。えっ?わからない?
「……」
「うん?どうしたの松尾君?固まってない?」
すると結崎が声をかけてきた。
「いや……結崎のチョイスに驚いた」
「えっ?あっ、もしかして違うところ予想していた?」
「えっと、まあストレス発散とか言ったからカラオケかなー。とか」
「あー、松尾君カラオケの方がよかった?」
「いや、全く自信なかったから。というか行かないから。心のどこかではよかったー。ってなってる」
それはホント。よかったー。って、間違いなく今身体のどこかで思っている。
「ならバッティングセンターは?」
「まあ、あまりは来ないけど……久しぶりかな?ちなみにここにあるのは知ってた」
「ならよかった。ちょっと打ってこうよ」
すぐに結崎は中へと進んで行った。
喫茶店を出た俺と結崎はそのまま駅に戻るのではなく。駅とは反対方向へと進んで行き。バッティングセンターへとやって来た。いや歩いている途中になんで駅前とかにあるカラオケに行かないのだろうか――とか俺は思っていたが。ふと路地を抜けたあたりから。
あれ?この先って――確か。と俺はなっていたのだが。そのままバッティングセンターへと普通に結崎が来たので驚いた。
施設の中に入るといろいろな球速のマシンが10台くらい並んでいる。休日なのでそこそこ埋まっていたが。2つほど空いているところがあった。
「あっ、両替してこないと。さっき喫茶店で細かいの使っちゃったから」
財布の中身を見ながら結崎がつぶやく。
「あっ。なら俺出すよ。喫茶店そこそこいい金額だったでしょ?」
「でもそれだとお礼のが……」
「まあまあ数百円だから。ってマジで100円玉がたくさん財布に入ってて重たいから使ってほしい」
これホント。なんか知らぬ間に財布の中に100円玉がたくさん入っている状況だった。あれか。さっきもだが小銭を出すのが面倒で1000円札とかすぐに出しちゃうからか。小銭もちゃんと出すようにしないとな。この昔から使っている財布……そのうち穴あきそうだし。
「ならわかった。えっと……ここの機械は球速を選べるところ――だね?」
「確かそうだね。80か90?から120キロだっけ」
「そうそう。私は頑張って120—―ごめん嘘。90かな」
「なんでそこで見栄を張ったか。でも俺も最近来てないからどうだろう。打てる自信が無いんだけど」
結崎よ。諦めるまで早くないか?と思ったが。空振りばかりは楽しくないからな。打てる速さが無難だろう。
「大丈夫だよ。楽しんだらいいんだよ。私から打っていい?」
「どうぞどうぞ」
俺がそういうと結崎がドアを開けて打席の方に進んで行った。
確かに結崎は慣れている感じだった。置いてあったバットを持って――お金を入れるところにお金を入れて、球速設定。ここまでスムーズにそして、左打席に結崎は立った。
「当たるかなー」
とか楽しそうにつぶやきながら。そして――。
カキーン。
カン。
カキーン。
カキーン。
「—―すげー。かっこいい」
ホームランゾーンにボールがどんどん飛んでいるわけではないが。結崎がバット降るとほぼボールは前に飛んでいっていた。なんて言うんだっけ?あっそうそうライナー性?のあたりでボールが飛んでいっていた。
カキーン。
「うーん。ホームランはやっぱり無理だね。あそこまでは飛ばないよ。でも当たると楽しい」
1ゲーム終えた結崎は満足そうに出てきた。
「結崎。すごいね」
「そう?」
「なんかしてたの?」
「うんん、全く」
「—―えっ?」
「でもね。いつだったかな?小学校?中学の時かな?友達に連れてきてもらった時にやってみたら当たって。そこから結構好きかな?この音も好きなんだよね。バットとボールが当たる音が。気持ちいいんだよ」
「高校の友達とも来てるの?」
「うん。まだ1回だけど。澪や奈都。在良君や大木君と来たかなーまあ在良君大木くんしか打ってなかったけど」
「オールスターだ」
「えっ?」
「いや、こっちのこと」
あれだ。よく教室で集まっている仲良しメンバーですね。あのメンバー集まったら。オールスター。クラスの有名人全員集合というやつだ。
「にしても……結崎ホントにすごいかと。俺……大丈夫かな。今の結崎見たらなんか変に緊張してきた」
「なんでさー。まあほらほら松尾君もやろうよ。もちろん120キロだよね?」
「……今の話聞いてた?久しぶりって」
なんか結崎のテンションが上がったらしい。まあ調子いい感じだったもんな。あれだけ当たったら楽しいわ。
「えー、そこはかっこよく機械の最高速度でホームランとか?」
「悲しい結果が見えているから……せめて……100」
「110で」
「なんでさ。まあ――いいけど。当たらなくても笑わないように」
ということで俺は久しぶりに打席へと。バットは3種類の長さがあったので俺は持ってみて持ちやすかった一番長いバットを持ってお金を投入し。球速を設定。そして左打席へ。
あー。ちゃんと結崎の指定通りの球速にしましたよ?どうなるか……だが。
「うん?」
すると、そんな声が後ろから聞こえた気がするが……もうボールが飛んできそうなので前に集中。
カス。
「……」
何とか当たっ……カスっただけか。なのでボールは前には飛ばなかった。でもなんかボールは見えた。いけるかも――とか思いつつ2球目。
カーン。
「おお」
カーン。
カス。
カキーン。
カキーン。
「おお。すごい。当たってるじゃん」
こういう応援が後ろからあると……なんかテンション上がるわ。結崎の拍手も聞こえるし。
なお、俺も結崎と同じくライナー性ばかり。それも……狙ってないのだが機械にそのままダイレクトで返しているような感じとなっていた。機械がそのうち怒って頭とか身体にボールを投げてこないことを祈る。って、マジで狙ってないからな?たまたまというか。そこにしか飛んでかないんだよー。
とりあえずそこそこいい感じに1ゲーム目終了。よかった……空振りばかりじゃなくて――と、思いながら俺が出ると。
「松尾君すごいじゃん」
「まあホームラン性のあたりはなかったけど……機械にばっか打ってた気がする」
「でもさっきも言ったけど、楽しければいいんだよ」
「まあ確かに……当たると気持ちいいよね」
「うんうん。そういえばさ。松尾君って左利き?じゃないよね?」
「あー。いやなんかね。こういう時は左の方が打ちやすいというか。なんか右打席より振りやすくて……」
「じゃ、私と同じだ」
「うん?あっそうか結崎も……箸とか右だったよな?」
「うん。はじめての時は右打席で打ってたんだけど。なんか変な感じでね。ふと。左にも打席あるんだから試してみよう。で、左でやってみたら今みたいに打ててそれからはずっと打席は左かな?」
「わかる。うん。なんか打ちやすいんだよな。わからんけど。右は違和感というか……」
「うんうん。意外と息が合いますねー松尾君」
「まあ……確かに?」
「私、次は100に挑戦しよーっと」
そう言いながら結崎が交代で中に入っていった。それから俺たちは結局3ゲームずつかな?バットを振っていた。
「楽しかったー」
バッティングセンターを出た時の結崎は満足。という顔をしていた。めっちゃ結崎は楽しんでいた。クラスで見る以上の笑顔だったな。
「今日ズボンで良かった。ちょっと動きにくいけど」
「いやホント結崎うまいかと。最後なんて120やって当たってたよね?」
「前には2球くらいしか飛ばなかったけどねー。でも最後のボールが前に飛んだから良しだね。楽しかった」
そんな感じで2人ともバッティングセンターを楽しんだ。
「そろそろ帰ろうか?晩御飯も待ってるからね」
「あー、そうか」
ばあちゃんが作った大量の料理の事を思い出した俺だった。忘れたら――あとで間違いなく結崎が食べに来てって連絡してくるやつだな。
「そうそうおかずはあるけど……ご飯冷凍とかでもいい?」
「全く問題ないです」
「なら、大丈夫かな。じゃ帰ろうか?」
「了解」
ということで俺と結崎は駅へと向かって歩き出した。駅までの会話は、ずっとバッティングセンターでのことだった。いや普通に楽しかったし。なんか盛り上がったというか。来てよかった。しばらく歩いて大学前駅へと戻って来ると――。
「やっぱり田園方面に行く電車は空いてるね。外にはこんなに人居るのに」
「まあ……いつも通りと言えばいつも通りか」
夕方になって来たということもあり、大学前駅の周り。近くはかなりの人が居たのだが――改札を抜けて止まっていた電車に乗り込むと。10人くらいしか人は居なかった。
「この鉄道。本当に廃線とかならないか心配なんだけど……」
「大丈夫だと思うけど……」
そんなことを言いながら俺と結崎は席へと座った。
ちなみに今は同じ車両に何人か人が居たためか。結崎は俺の隣に座った。通路を塞ぐのはだからな。正しい行動。
それから発車時間になり電車は動き出した。そして高校前で数人降りて……数人乗ったが。その次の公民館前では俺も降りるので。
「空っぽになったね」
「空気輸送だな」
そんなことをホームで結崎と言いつつ空っぽになった電車を見送った。
「って、なんかご飯までごめん」
「なんで?私は全く問題ないよ?」
ばあちゃんが変に俺の分まで……と大量に結崎に作らなければ先ほどの電車で別れてそれぞれ家へと言う形で今日は終わったのだが。今日はまだ終わらない。
駅から結崎とともに歩き。結崎の家へと。なんか朝も来たするが――最近ここよく歩くな。
「どうぞ」
「お邪魔します」
「適当にくつろいでもらっていいからね」
この前来た時と――ほぼ同じ。結崎の家の室内だ。
「そういえば――おばあちゃん今日は何くれたんだろう?ちゃんと見てなかった」
「確か……肉じゃが?」
俺が言った後、結崎はばあちゃんからの料理の確認へ。
「うわ――美味しそう。しっかり染みてる」
キッチンからはそんな声が聞こえてきた。それからしばらく待っていると。
「はい。どうぞ」
「ありがとう」
これはばあちゃんが作った。ということを知ってはいるが。結崎が作ってくれた。とか思うだけで、なんかすごくいいというか。言っちゃ悪いが。もし本当に結崎がこういう料理を全部作ってくれたら。ギャップに負けるというか。想像がつかない。まあ今でもこのちょっと派手なお方から——和食を出してくる。という状況だけでなかなかなんだけどな。
「どうしたの?」
「いやばあちゃんが作ったのを知ってるけど……結崎が出してくれたから。なんかまた違う感じに。って思って」
「へー」
「あっ、変な意味はないので」
「わかってますよー。さあさあ食べちゃおう。運動したからお腹空いたよ」
ということで結崎の家にて晩御飯いただきます。味はいつも通りのばあちゃんの味だった。が、ご飯の味とか。お茶の味とか。ちょっと家とは違うものがあるので。
「松尾君?」
「うん?なに?」
「いや本当においしそうに食べてるなー。って、いいなー。こんなおいしいおばあちゃんの料理を毎日松尾君は食べているとか」
「いや、まあそれもあるけど。なんか違和感じゃないけど、いろいろ混ざってるからさ。なんかこういうのもいいなって」
「うん?」
「肉じゃがとか漬物はばあちゃんの味だけどさ。ご飯は結崎が炊いてるし。お茶も家のとは味が違うし」
「あ、合わなかった?」
「いやいや。それが合ってるから。なんかいいなって」
「よかった。本当は炊き立てのご飯とか、味噌汁があれば……もっとよかったかな?」
「いやいや俺はこれで十分かと。っかばあちゃん肉じゃが多すぎだろ」
「ま、まあ……それは――だけど。美味しいから。でもこれ1人だったらホント……4日くらいありそう」
苦笑いの結崎。でもマジでそれくらいありそう。
「だろうな。作りすぎるなとは言ったんだが――なんか悪い」
そんな会話をしつつ。晩御飯の時間はあっという間に過ぎていき……。
「食べた……」
「ありがとう。これで後ちょうど1回分くらいになったかな?」
結崎はタッパーの中身を言いながら言う。最後は俺が頑張っていもの消費した気がする――ちょっとジャガイモの残っている比率が多かったのでね。
「……ばあちゃんいも率が高い」
「ジャガイモたくさんあったのかな?」
「かもしれない」
結構食べたので――いもを。俺はちょっと休憩。その間に結崎がお皿などの片付けをしていた。
ホントすみません食べ過ぎで動かないとか。マジすみませんである。少しして結崎の方の片付けも終わり。結崎が俺が居たところにやって来た。
「大丈夫?」
「満腹」
「だよねー。最後いもばかり食べてもらったから」
「でもそろそろ帰るよ。結崎も1人でゆっくりしたいでしょ?」
「あー、うん。でも私今でも結構ゆっくりしてるよ?」
「まあゆっくりしてるのかもしれないけど、今日の蓮花寺さんみたいにさ。もう完全に休日モードとかになった方が楽なんじゃないか?」
「まあ……そりゃ、誰にも見られない。見せれない姿でだらけてるのが楽だけど」
結崎のスーパー自宅ダラダラモードとか言うのかは知らんが。ちょっと見てみたい気もしたが。まあそんなことを言えないので。
「ってことで俺は帰るよ」
「あっ、まだゆっくりでも――」
「いや、結崎も休みたいだろうし。じゃありがと」
「いえいえ。こちらこそだよ。ってあまりお礼をした感じになってない気がするけどね。バッティングセンターでお金全部出してもらったし」
「いや、大丈夫大丈夫」
「なんかごめんね」
「いいって。久しぶりで楽しかったし」
「うん。私も楽しかった」
「じゃ、ちょうど電車もあるし。あっ。送りは大丈夫だから」
貴重品を持とうとした結崎に俺は言った。
「—―そう?」
「結局結崎が1人で戻る時なんかあったらだし」
「このあたりそこまで治安歩く無いよ?」
「まあまあ、じゃおやすみ」
「あっ、うん。おやすみ。今日はありがとう。また行こうね」
「あ――うん」
結崎とあいさつのち。俺は帰路へと。今日この道何回目だろうか……とか思いつつ。そして俺が乗った電車の運転手が楚原さんだったため。田園駅でちょっとお話があったりしたが。そのことはいいか。なんか久しぶりに休日を満喫したという感じで俺は家へと戻った。
◆
「あれ?俺なんか普通に話の流れで返事したけど……別れ際に結崎……また。って言わなかったか――?うん?」
とかちょっとしたことでちょっと悩んだ俺が居たのだが。このこともそんなに触れなくていいな。
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