第22話 おでかけ2

 翌日。


 今日は土曜日。普通なら学校は休みなのでゆっくりできる朝なのだが。今日は学校に行く時よりは遅い。でも休みの時よりは早く起きて出かける準備をしていた。


 服装は――自信がないが仕方ない。持っている中ではこれが一番……マシな気がするから。昨日からずっと気にしている俺だった。


 そして今はじいちゃんばあちゃんの家で朝ご飯の食べて――待機中。


 待機中というのはばあちゃんがいろいろまたなんか準備をしているから。朝ご飯の時に前みたいに大量だと結崎が困る。と伝えはしたのだが。


「これ、守の分もあるからね。一緒に食べてきなさい」

「……」

「あと、畑から野菜持ってくるからもう少しおまち」

「……」


 ばあちゃんは結崎の事になると元気というか。めっちゃ世話焼きというか……もう誰にも止められない。誰か止め方を教えてほしい。松尾家離れ?にお手紙をまたはメッセージをだよ。って無理か。


 俺の隣に居たじいちゃんもまたなんかしてるよ。みたいな感じで見つつ。ゆっくりと朝食を食べていて、それが終わるとなんかやることでもあるのか外へと出て行った。

 俺はまだ待機である。


 もう出かける準備は出来ているが。ばあちゃんの方が終わっていない。電車の時間まではまだ余裕があるのでいいのだが。どう考えてもまた荷物が多い気がする。


「守や、これも結崎さんに渡しといておくれ」

「ばあちゃん。荷物多すぎ」


 ばあちゃんがどんどん物を持ってくる。すでに前回と同じくらいあるのだが。なのに――何故かまだ持ってくる。持ってくる。


 結局前より少し多い?感じになり。俺は家を出発することとなった。


「これ――多いよな?」


 今はまだ家を出たばかりなので誰かに見られているとかそういうことはないが。俺は今から何をしに行くんだろうか。確か結崎と出かける――はずだったんだが。なんかばあちゃんから渡されたに持つの山。紙袋を持っているから、なんか変な感じがする。


 変な感じがしつつも俺は田園駅から電車に乗り。公民館前へ。ちなみに今の電車の運転手は楚原さんではなかったが。また噂になるのだろうか。とか思いつつ。公民館前駅の改札を抜けて、すでに何度か歩いた道を進んで行く。迷うことは――ないな。無事に向かっている。


 そして目的地に到着。インターホンを押す。


 ――ピンポン。


「あ、はーい」


 ――ガチャ。


 今回もすぐに結崎はドアを開けてくれた。待ち構えていたように流れるような速さだった。そりゃ、一応駅に着くときに連絡をしておいたから。ドアの前で待っていたのだろうが。って、マジか。


「おお」

「うん……?どうしたの?」


 いや、結崎の服装が。予想していなかったので。ちょっと固まった俺だった。


「いや……雰囲気違うなって」

「えっ?あっ……この服—―変かな?」

「いや、似合ってるなって。めっちゃ似合ってます。はい」


 普段は制服姿ばかりなので。今のズボンスタイルというか。足の細さがよくわかるズボン姿が珍しいというのと。かっこいい。です。はい。俺はこの服の名前とか全くわからないが。そんな俺でも言える言葉は――似合っている。です。はい。これ褒めてるって伝わってるかな?めっちゃ心配。とにかく頭の中では予想外の事でめっちゃ褒めている俺だった。


「よかった……って、なんかすごい荷物?」

「ホントそれはごめん。ばあちゃんの暴走が止まらなくて……」

「あはは――まあ私はすごく助かるんだけど。ご飯だけ炊いたらいいだけになるからね」

「……前より多いかも」



 間違いなく前より多いです。


「えっ?ってもしかして今回も松尾君の分が……」

「すみません。なんかばあちゃんが勝手に作ってました……俺の言葉は通じませんでした……」


 ホント申し訳ないしか言えないな。


「ふふっ。じゃ、遊びに行って帰ってきたらまたうちで食べて帰る?」


 さすがに2回目結崎も呆れつつ?もどうやら同じ流れになりそうだ。


「えっと……まあ結崎が迷惑じゃなければ。そうしないと俺の夕食は作られていない気がするので……」

「あはは。わかった。わかった。じゃとりあえず片付けて……行こうか?」

「なんかいろいろごめん」


 俺は玄関で少し待たせてもらって、その間に結崎がささっと俺が持ってきたものを片付けた。


「お待たせ」

「いや、大丈夫。むしろこっちがなんか大量に朝から持ってきたんだから」

「で、どこ行こうか?松尾君にお礼で誘ったんだけど……どこがいいかなーって結局決まらなくて、あははーごめん」

「いや、ホント俺はどこでも……」

「じゃあさ。お店巡りしようか?」

「えっと――うん。あっ。もしかして……俺の服装が着替えさせたいほど変とか?」

「えっ――?えっと。普通にいいと思うけど?」


 そう言いながら結崎は俺の服装を上から見ていき……下へ。そして再度視線が上がってきて。頷いた。


「……マジ?」

「うん。私はシンプルなのいいと思うよ?松尾君らしいし。松尾君がチャラチャラの感じで来たら……まあ着替えさせたかもしれないけど……」

「そんなものは持ってない」

「だよね。そんなイメージないもん。って電車の時間あるから行こうよ」

「だな。ここは乗り遅れるとだからな。次までが長いから」

「本数少ないからね」


 ということで俺と結崎は結崎の家を出発した。

 駅まではまあたわいもないことを話しながらやって来た。公民館前駅に着いたときにちょうど田園方面の電車が発車したところだったので……あれが折り返してくるのでまだ少し時間に余裕はあった。


「ちなみに、お店巡りってどんなところ行くの?」

「えっ、うーん。雑貨も見たいし……あっ。個人的になお願いをすると文具のところは行きたいかな」

「あー、それ俺も」

「「ノートが必要だから」」

「……」

「……」


 妙なところでハモった俺と結崎だった。

 ちょっと一瞬あれ?同じこと言った?みたいな感じで沈黙の時間があってから。


「ふふっ。松尾君も?」

「うん。ルーズリーフでいいかなーとか思っていたら」


 これはホント、出来れば買いたいな――と思っていたので、早めに行った結果がこれだ。被った。


「あー、あれだね。ノート提出。点検があるっていう」

「そう。なんで校則とかゆるゆるのうちの学校なのにそういうのは真面目にあるのかって」

「だねー。もう少し早くに言ってほしいよねー。もう1回目はルーズリーフに書いたから。ノート買って書き写さないとだし」

「ホントそれ」

「でも、あれだよね。なんとなくわかって来たけど。先生によってはしっかり決まり作る先生いるよね」

「うん。あれだな。あまりの学校のゆるゆるさにヤバいと思ったとか?」

「どうだろう?でも……ちょっとくらいちゃんとしててもいいかなー」

「おお、さすが室長様」

「なんか引っかかる言い方だなー」


 ちょっとだけジロりと結崎がこちらを見てくる。でもすぐに表情は緩んでいたから大丈夫だろう。


「とりあえず、俺も文具は見たい」

「じゃ駅前をぶらぶらって感じだね。あそこならほとんどのお店があるから」

「俺は全く問題ない」

「ならまず決まりだね」


 そんなことを話していると電車が田園駅へと入って来た。もちろんのことだが。もしかしてということがあるのでちゃんと報告をしておくと。


 今日も当たり前のように乗客は0人だった。

 もう1つ言っておくと、運転手さんは楚原さんではなかった。まああまり意味の無いことかもしれないけど、いろいろな人を伝って最終的には図書の楚原先生に話がたどり着きそうだし。今は気にしなくていいか。


「貸し切りだね」

「そういえば、今駅に他の人居なかったか」


 俺は結崎に言われて気が付いたがそういえば公民館前駅にも俺達以外は居なかった。なので今は貸し切り状態。リッチである。よくよくあることだがね。なのに……。


「だからなぜに正面に座るか」


 このやりとりも何度目だろうな。


「まあまあ、話すときは人の顔を見てだよ」

「そんなもんかね」

「そうそう。こうやって正面に座ったら松尾君がどこ見ているかもわかるしね」

「……結崎なんかいいキャラしてるな」

「松尾君の前でだけだよ。まあ周りを気にしていない時の通常運転かな?」


 そんなこと言いながら笑っている結崎。ホント。俺は精神安定のために必須というか。何らかのパワーを発している様子……俺自身は全くわかってないが。


 結崎と話していると電車は高校前へ。ここから先へ行くのは俺はかなり久しぶりかもしれない。ちなみに今日は休日なのでね。高校前でも数人人が乗って来ただけだったので車内はガラガラである。


 公民館前を出てしばらく。急激に車窓が都会になっていき。電車は大学前へと到着した。


「……やっぱり人多いな」


 あたりを見つつ俺はつぶやく。


「うん。土日はね。特に多いよ」

「平日の放課後は?」

「あー、うーん、あまり変わらないかもしれないけど……うん。一緒くらいかもしれない。平日はもっと学生がいっぱい歩いてるかな?って松尾君本当に知らないんだね」

「放課後はマジでこっちには近寄らないからな。満員電車にわざわざ乗って行きたいと思わないから」


 俺と結崎はそんな話をしながらとりあえず改札を抜けた。


「そしてこの後はどちらへ?」

「あっ……うーん、じゃ。まず2人ともが必要な文具あるところ行こうか?」

「あー、忘れる前にそれがいいか」


 ということで俺と結崎は大学前駅を離れて歩いて行く。ホントここまで来ると別世界というか。何でも揃う感じ。お店もいろいろあるし。にぎわってるし。なんでここから数駅離れた俺のところはあんなド田舎なのだろうか……とか思いつつ結崎に付いていく。


「松尾君。ここでいい?」

「あ、うん。ここなら来たことあるから買いやすいし」


 ということで俺と結崎は駅前にあるビルへと入っていった。全国的にあるお店なので俺も何度か利用したことがあるので入りやすかった。


「基本ここが探しやすいからね」

「確かに。欲しいもの大体はここで揃うよね」

「うんうん。種類も多いし。あー、ポーチもいいなー」


 結崎は文具の売り場に向かうまでにいろいろと誘惑されている?感じだったが、なんとか文具売り場まで無事にやって来た。


「ノート、ノート。っと」

「ここだね」

「やっぱりここだと種類多いな」

「テレビとかで紹介された文具もすぐにここなら売っているからね」

「さすがそういう情報は早いことで」

「まあ、周りがね。いろいろ教えてくれるから」

「俺にそのような情報は入ってこないから。シンプルなやつでいいかな」


 結崎と話しながら俺が手に取ったノートの隣にあったのノートに手が伸びてきた。


「あっ」

「うん?結崎もここの?」

「うん。いろいろ図とかが書きやすい。って、なっているノートもあるけど……やっぱり普通のがいいからいつもこればかり」

「俺もだな」


 結果一緒の物を買った。ではないのだが……色違いというやつだ。やっぱり使い慣れているというか。シンプルなのが良いからな。


「あっ、あと、ボールペン見てきていいかな?」

「うん。俺シャーペンの芯探してくるよ」

「あっ、芯ならレジ横だよ」

「……慣れていることで」

「結構放課後に来るからね」


 ということで一時結崎とは別行動。俺はレジの方へと行き。シャーペンの芯をゲットし。必要なものは見つけれたのでお会計。俺が支払いをしていると結崎もやって来た。


「松尾君見つかった?」

「大丈夫。もう買えた」

「よかった。私もこれでOK」


 そういい。結崎は俺の次にお会計をしてもらっていた。俺は結崎に声をかけてから文具売り場の外で待機していた。


「お待たせ。次はどこ行こうか?」

「えっと。俺はすでに欲しかったものは買えたので――」

「じゃあ……アクセサリーショップとか――あり?」

「いいけど?」

「じゃ、こっち」


 で俺はまた結崎に付いていく。結崎の行きたかったお店はすぐ近くだったらしく。


「ここ」

「近っ!?」


 文具売り場から2つ売り場を移動したところだった。アクセサリーショップとか言っていたので。勝手にピアスとかそういうのがたくさん売っているところかと思っていたが。


 ハンドメイドとか言うんだっけ?自分で作るやつ。その素材というのか。まあなんかいろいろと売っていた。あと、小物?というのか。小さな置物とか。なんか言い方が悪いかもしれないが。女子こういう店好きそうだな……とか思いつつ。俺は結崎に付いて行き中に入った。


 結崎はブレスレットかな?そういうのを見ていた。俺は一緒に見るのは……だったのでぶらぶら初めて来たお店を見学していた。って、これ自分で作るんだよな?今俺の目の前には小皿?にたくさんのビーズ。いろいろな種類の物が並んでいる。これを欲しい分だけ買って……作るのか。とか思いつつ見ていると。


「松尾君そういうの好きなの?」

「えっ?あ、あーいやこうやって売っているの初めて見たから。すごいなー、みたいな感じで。結崎は何か見つかった?」

「うん。ちょっとねストラップが欲しくて」

「ストラップ?」

「うん。定期入れに付けようと思って」


 そう言いながら結崎は星の形をしたストラップをこちらに見せてくれた。紐のところはゴム紐らしくあれなら付けるのは簡単そうだ。あと、ワンポイントみたいに付いている星がまたいい感じだった。


「いいセンスで」

「そう?見ていたらちょっと目に留まってね。これいいかもって」


 そう言いながら結崎は目をキラキラさせてストラップを見ていた。どうやらこういうものが好きらしい。とか思っていると。


「あっ、これ買ってくるね。松尾君も何か買うものある?」

「ここは……大丈夫かな」

「わかった。ちょっと待ってて」


 結崎はそういうと店の奥にあるレジへと向かって行った。

 俺はまた少しの間店の外で待機。にしてもさすが休日というか。なかなかの人だ。学校も休みだからか。子供も多いし。


 ——すると俺は結崎ではない人に声をかけられた。


「あれー?松尾?」

「えっ?」


 俺が声の方を見てみると――誰?だった。

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