第19話 勘違い
「今から図書室行っても大丈夫かな?ちょっと友達待ってて暇してるんだ」
そんなメッセージに気が付いたのは、メッセージが届いてから50分ほど時間が経ってからだった。
公園前の駅のホームにあるベンチに座っていた俺だが。って、そうか蓮花寺さんが言っていたんだ。結崎が図書室に、と。でその後から連絡が取れないと。
「これはもしかして俺が原因というか。結崎は俺からの返事を待っているから動けない?いや、動けないことはないよな……」
とかぶつぶつ言っていた俺だが。ここは早く返事をしてあげるべきだろう。と思い。スマホを操作した。
「ごめん。マナーでメッセージに気が付かなかった」
とりあえずその文章だけ先に送信した。と、送信してから気が付いた。
「……そういえば……」
楚原先生と話しながら作業をしている時に一度。ドアが開いたような気がしたことを思い出した。もしかして、結崎、俺がメッセージに気が付いていないと思って様子を見に来た?でもなんで声をかけなかったんだろうか。うん?
そんなことを考えながら続きというか。
「で、何か用事だった?一応まだ駅には居るんだけど……」
そんな文章を作っている時だった。
♪♪
今度はマナーモードを解除していたので音楽が鳴った。
「ごめんなさい」
そして開いてみるとそんなメッセージが……。
「うん?なんだこれ」
何故に俺は結崎に謝られているのかがわからない。なんか話がかみ合っていないというか。謝るのは俺の方なんだが――メッセージに気が付かなかったから。
ということで、俺は先ほどまで作っていた
「で、何か用事だった?一応まだ駅には居るんだけど……」
いう文章を全削除し。
「結崎。もしかしてまだ学校に居る?」
と、聞いてみた。蓮花寺さんも探していたからな。まあもしかしたら返事が来ないかもとか思っていたのだが……幸い返事はすぐに来た。
♪♪
「帰ったよ」
4文字だけ送られてきた。なんか寂しいというか。ただ文字だけが送られてきた。先ほどもなのだが……。
って、もしかして――結崎が俺に会いに来たのは……まさかな。俺の頭の中には以前の自主規制やら、オリエンテーションの時の結崎が。
「……体調が悪くて助けてほしかった?そういえば蓮花寺さんがこの後買い物……とか言ってたから――」
そんなことが頭の中に浮かんだ。そしてもしかして図書室に来たが。俺は本を片付けていたから入り口からは見えない位置に居たから……結崎は気が付かなかった?
俺が居ないと思った結崎は自然と開いていたドアを閉めて立ち去ってしまった。なんとなくだが。そんな感じが少しした俺だった。
「ってことは――結崎帰ってないんじゃないか?そうだよな。昇降口に居た蓮花寺さんが結崎が通ったのに気が付かなかったわけがない。俺に気が付いたくらいなんだから」
俺は荷物を持ち。一度高校前駅から出た。そしてまた高校へと向かった――すると。
「あれ?松尾じゃん。どうしたの?忘れ物?」
また蓮花寺さんに捕まった。ってまだ蓮花寺さんがここに居るということは通過してないという事だろう。
「あーうん。って結崎さんまだ来てないの?」
「そうなんだよー。ゆえが約束に遅れるとかほとんどない事なんだけどね。まあゆえの事だからどこかで頼み事されてバタバタしてるのかなー。とか思うことにした」
「……なるほど」
「で、松尾はどうしたの?帰らなかった?」
「あ、ちょっと教室に忘れ物」
「おつー」
「じゃ」
蓮花寺さんとはそこで会話を終わらせて。俺は構内へと戻った。そしてとりあえず自分の教室へと向かってみた……が、まあそんな簡単に結崎は見つからなかった。
ちなみにすでに下校時間後。校舎内は、ほとんど人が居なかったので、静かに歩いていた。というかね。先生に見つかると厄介そうなので。まあなにも言われないとは思うが。
ちなみに職員室前とかはまだ何人か生徒がいたんだが……教室はね。ほとんど0。通過した教室に……カップル?みたいな感じの男女が居た気がするが……あれはスルーした方がいいな。向こうはお取込み中だったのか。幸い廊下を通過した俺には気が付かなかったみたいだし。
教室を確認した俺は、ふと考え――。
「……図書室か」
結崎は図書室まで来た。と考えると――。
「図書室の近くにまだ居るのか?か、そこまで来て……ギブアップしている?」
なんか最悪の状況もということを考えつつ。教室を離れて図書室などがある方へと移動した。が、図書室には多分まだ楚原先生が居るのでそこに結崎が居る可能性は――0だろう。ってことは……とか思いつつ。俺は結崎が入っている書道部をチラリと見てみたが。今日は休みらしく。ってそうだよな。結崎が放課後に出かける約束していたんだから。部屋は真っ暗だった。
廊下で立ち止まると――とっても静か。ちなみに図書室が見えるがあそこはまだ電気が付いているみたいなので楚原先生が居ることは確定。
確か結崎は楚原先生を知らないと言っていたから……図書室に居る可能性は0だろう。って……あー、トイレか。
ふと。以前の自主規制。を思い出していた俺。うん。あれは……だが。それを考えた時。普通体調不良なら、トイレか保健室に行くか。と、この階にももちろんトイレはあるが――一番隅っこにあるため……人通りがほぼ無いというか。ちょっと行きにくいというか。めっちゃ行きにくいわ。
「——普段は人が来ないところか」
そんなことを思い俺はトイレの方へと一応向かってみた。
◆
「ってここからどうするんだよ」
俺はトイレのところまで来たが。次どうすればいいのかがわからない状態だった。
ちなみにだが。今俺の目の前にあるのは。男子トイレ、女子トイレ。そして車いす。障害者用?の広めに作られているトイレがあるのだが。
――めっちゃ静かである。
さすがにこの男子トイレの中に結崎が入っている……はないと思うのだが……女子トイレに声をかける勇気などない。もしだ。もし。誰かが入っていたら……ちょっとしたトラブルが起こりそうだしな。
「うーん」
悩んだのち。俺はスマホを出して。
「本当に大丈夫か?」
文章を作りメッセージアプリで再度送ってみることにした。もちろんマナーに結崎がしていたり。そもそも本当に帰ったのなら……迷惑なことかもしれないがな。とか思いつつ送信すると。
少しの間があってからだった。
♪♪
「……へっ?」
それは俺が立っているところの斜め前。女子トイレからだった。いや……偶然。というか。誰かが中に居るのは今確定した。すると。
♪♪
ガタッ。
「あっ」
俺のスマホが鳴る……って今トイレから音がした。これは――トイレの中に居る人にこの音が聞こえたことを意味する……はず。
ちなみに先にメッセージの確認をしてみると――。
「大丈夫。ごめん気にしないで」
また文字だけが来ていたのだが……まあ、この言葉は嘘だろうということで。
「結崎ー」
ガタッ。
「—―痛っ……」
女子トイレの方に声をかけてみたら。なんか……ぶつけた音が聞こえてきたが……中に入る勇気はないのでできれば外に出てきてほしい。出てこれないような状況なら再度メッセージとか送ってくれると……とか思っていると。
数十秒くらいだろうか。その場で待っていると――。
「……松尾君?」
「—―本当に居たよ」
「な、なんでいるの?」
そっと女子トイレから顔を出した結崎は……まあ以前の自主規制の顔。ではなかったが。何か疲れているというか?うん。何だろうこの顔は……悲しんでいる?うん。わからん。全くわかりません。
「いや、メッセージ気が付かなかったのは悪い。で。なんか気になったからな。探しに来て見た」
「……なんで学校にまだ居るの。もう下校時間過ぎてるよ?」
「いや、昇降口でさ、蓮花寺さんがずっと待っていた?というか結崎を探してる。って帰ろうとしたときに声かけられてさ」
「えっ?
スマホの画面を見た結崎がそんなことを言っていた、そして慌ててスマホを操作していた。って、様子を見る限り――体調不良ではなさそう。
「で、なんか用事だったか?」
「えっ?」
「いや、放課後図書室にわざわざだったから」
「あ、その……ごめんなさい」
「そういえばなんで謝ってたんだ?」
「えっ?だって……邪魔したかなって」
「……邪魔?」
「……うん。松尾君……仲良さそうな子が居るのに――私が急に絡んじゃったから」
シンキングタイム……シンキングタイム……。
「—―はい?」
「…………へっ?」
ちょっと待て待て、こいつは何を言っているんだろうか。誰か俺がわかるように説明してほしいんだが……まあこの状況はちゃんと聞くしかないわな。
「結崎……何言ってるんだ?」
「えっ――だって。松尾君図書室で――女の子と楽しそうにしてたよね?」
「……はい?」
さらにわからない。今日の図書室利用者0だぞ?
「えっ……その……バシバシ。叩かれているというか。仲良さそうな感じで話していたから……その――」
「……」
結崎の話を聞きつつ。少し前の記憶を蘇らせる俺—―。
◆
ちょっと待ってくれよ。今ちゃんと思い出しているからな。
◆
「—―—―あー、はいはい。叩かれてた叩かれてた」
思い出しました。
「……でしょ?だから……そのまま邪魔しないように」
「あの――結崎さん?」
「……なに?」
「楚原先生って知ってるんだっけ?」
「……えっと……前に私が休んだ時に――その松尾君が連絡してくれた先生?って今なんで関係あるの?」
「まあ、そうそう。で、顔知ってる?」
「えっ?えっと……し、知らないかな。図書室の先生ってことは知ってるけど……」
「顔知らないってことは、どんな人かも知らないと」
「えっと――えっ――?」
結崎の頭の上にどんどん?マークが浮かんでいる状況になって来た。わかりやすい。こいつ何言ってるんだ?みたいな表情に結崎がなっている。
ちなみに俺は結崎がとんでもない勘違いをしていることにすでに気が付いているが。下手に説明してもわかってくれないとややこしくなるので――。
「結崎。ちょっと今から大丈夫か?」
「う……うん。大丈夫」
俺はそう言うと。結崎に付いてくるようにと言った。
俺が向かった先は先ほど電気が付いていると確認した部屋。結崎は俺が図書室に向かっているということに気が付いたのか。少しずつ。距離を……ってなんで歩くスピード遅くなるんだよ。
「結崎?」
「あっ。ごめん」
俺が声をかけると結崎は俺の隣にやって来た。そして俺は一応時間外ということもあり。ノックをしてから――。
コンコン。
「えっ。あ。はーい。居ますよ?」
室内からは予想通り楚原先生の声が聞こえてきた。遅くまでお疲れさまですだな。
「失礼します」
「あれ?松尾君。忘れ物……ってあれ?」
楚原先生は俺の後ろに隠れるようにと言うか。あとから入って来た生徒を見て驚いていた。
「すみません。ちょっとした勘違いが起こりややこしいことになる前に解決するために来ました」
「—―はい?」
楚原先生もきょとんとしているが……結崎は……。
チラリと見てみると、敵視。ではないが――なんか気まずさ満開だった。そして俺が見て居ることに気が付くと。
「……どういうつもり?」
ちょっと言葉に棘があった気がするのだが……やっぱりこいつは勘違いをしていることがこれで確定した。ってか気がつけよ結崎も。
「はあ……結崎。この人誰だと思う?」
「—―えっ?」
俺が聞くと結崎は楚原先生の方を見た……そして。
「……さ、さっき、松尾君と仲良くしてた――人」
小さな声で言った。すると――。
「えっ……?あー。はいはいはい――――クスッ」
俺達の前に居た。楚原先生はあっという間に謎がすでに解けたらしく。
すでに笑い出していた。めっちゃ笑いをこらえている。いや、これネタ提供にもなるのだが――ちゃんと解決しておかないとなのでね。仕方ない。
「結崎。下校時間後に学生が図書室に1人で居ると思うか?」
「……?」
俺が言うと結崎はへっ?という顔をしてきた。
「生徒が帰った後も残っている可能性がある人は?」
「…………先生?」
「……つまり」
「……」
「……」
「……ッ!?」
「……」
「……」
「……カァ――」
3人ともが沈黙。なお、1人はめっちゃ笑いをこらえている。そのうち大笑いをするかもしれない。
そしてさらにもう1人は、なんでこんなことになってるんだよ。と思っている。さらにもう1人は目をぱちくりして……自分以外の人を交互に見ている……そしてもしかしたらそろそろ叫ぶかもしれない。耳栓必要かな?声が漏れ出しているし。
「――—―えぇぇぇぇぇ!!!!????」
……ほら、叫んだ。耳栓耳栓――ないか。
俺達のクラスの室長様。放課後に図書室で大騒ぎ。ってそのうち新聞部に書かれるぞ……って、新聞部ってうちの学校あったっけな?うん。あるかもしれない。
そんなことを思っている俺の横で「うそでしょ!?」みたいな顔で俺たちの前に居る結崎は……楚原先生を見ている。
その見られている楚原先生はもう我慢をやめて声を出して笑い出した。結崎以上に騒ぐ楚原先生。学生同士のやり取りを見ているというか。楚原先生やっぱり制服来たら混ざれますよだな。
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