第17話 目撃者
結崎の家に再度訪問後。
俺は先ほど田園駅へと帰って来た。当たり前だがホームには誰もいないし。今降りた人は俺だけ。いつもの光景だ。
すでに暗くなってきているので改札を出ると。不気味?って言うのかな。まあ慣れたから俺としてはあまり感じないが。はじめての人が来ると――真っ暗。街灯もない。なんか動物出てきそう。とか騒ぎそうな感じではある。とかそんなことを考えながら改札に向かって歩いていたからか。俺はあることを忘れていた。
「おっ、こんばんは松尾君。今帰りかい?」
「えっ、あっ。楚原さん。こんばんは」
俺が改札にたどり着く前に――運転室から運転手の楚原さんが出てきた。
「そういえば今日は公民館前駅から乗って来たよね?」
「あ、はい」
わかるというか。気が付くよな。あの時公民館前には俺しか居なかったし。反対側の大学方面なら何人か人が居たんだがね。田園方面はいつも通りの状況だったのでね。
「珍しいよね?松尾君が公民館前から乗って来るって……って、もしかして俺の時間に当たらなかっただけ?」
「……まあそういう事かもしれませんね」
「ちなみに、夕方に大きな荷物を持って公民館前駅に降りていった松尾君の目撃情報が他の運転手からあったけどね」
「……俺有名人なんですかね?」
いや、実はそんな気はしていたが。目立つというか。田園駅からの利用はね。俺の家だけなんでね。楚原さん以外はほとんど俺は話さないが……やっぱり有名になっている様子だ。
「あれかい?おじいちゃんかおばあちゃんに何か頼まれた?」
「まあ、そういう事です。ちょっとばあちゃんに荷物運びを」
「松尾君は優しいなー。おばあちゃんも喜んでるよ。こっちとしては。おじいちゃんおばあちゃんにも利用してもらいたいけどね」
「また言っておきます。町の方にも行くようにと。って楚原さん。そろそろ折り返しの時間では?」
「おー、危ない危ない。じゃ。気を付けて帰るんだよ」
「はい」
楚原さんとの会話が終わり。楚原さんは反対側の運転席へ。俺は改札へと向かった。
やっぱりというか。俺の行動は運転手さんらの間で話し合われるのか。うん。行動が大変である。って、もしかして――この前とか結崎が一緒に利用したりした時って、結構な話題というか。ネタ?にされていたのではないだろうか。結崎の姿も目立つからな。
ってそもそも――自主規制の時も――なんか嫌な予感もするが。気にしない方がいいか。気にしたら負けな気がする。
小さな鉄道小さな町では、個人の行動がよくバレます。隠し事は難しい。って、特に隠してないか。
その後改札を抜けた俺は暗い夜道を歩いていく。
ホント茂みからなんか出てきそうではあるが。今のところ遭遇はない。音は――聞こえることがあるが。野生動物もなんとなく縄張りを知っているというか。人間の居るところはわかっているのだろうか。
とかそんなことを考えていると。無事に俺は家に到着した。
「ただいま」
「おかえり。守や」
「結崎にちゃんと渡してきたから。で、美味しかったってよ」
「うんうん。次もまた頼むよ」
「—―次?」
「また週末にでも持って行ってやんなさい」
「……」
ばあちゃんは結崎にご飯を作ってあげるということに目覚めてしまったのか。何だろう。めっちゃやる気が見えていた気がした。
どうしよう。毎週俺は結崎の家に行くことになりそうなんだが?
「あ――ばあちゃん。とりあえず――結崎は1人暮らしな?作るにしてもあまり量が多いとだから」
「今週は買い物に行かないとだね」
「もしもーし」
「お魚の方がいいかね。若い子はお肉とかの方が喜ぶかしらね」
「もしもーし。ばあちゃん?」
「畑で野菜も作らないとね」
「……聞いちゃいない」
俺が言ったことは聞こえなかったらしく。ばあちゃんはメモ帳を取り出し何かをメモしていた。多分、次の買い物リストだろう。
ちなみに買い物にはじいちゃんばあちゃんが2人で行っている。重たいものがあるとたまに俺が代わりに行くが。
今のところ大変元気なじいちゃんばあちゃん。病院も一緒に行っているし。買い物もじいちゃんと行っている。
なんやかんやで、うちのじいちゃん。ばあちゃんは仲良しである。
まあ、じいちゃんは買い物について行かないと自分のお酒を買ってもらえない。ということがあるからな気もするが。いや、それがあるからか。『酒がなくなった』で、俺に頼んだところで、未成年は買えないのでね。じいちゃんが自分でお店に行く必要があるということだ。
「はあ、ばあちゃん作りすぎないように」
「次は魚にしようかね」
「……ホント聞いてない」
とりあえずこれは何を言ってもなので、俺は部屋へと戻る前に、風呂を見てきたら空いていたので風呂に入り。部屋へと戻って来た。
なんかオリエンテーションが終わってからの方がいろいろあった気がするが……やっと1人でのんびり休める。
俺は寝っ転がりながらその後はゆっくと過ごした。
★
同時刻。
「うーん。どこがいいかな。今日もわざわざ晩御飯持って来てもらったし。オリエンテーションの時も――迷惑かけちゃったし。しっかりお礼しないと……松尾君ってどういうところが好きなんだろう……?」
自主規制から繋がりが始まったお方がしっかりと数週間後のお出かけの予定を考えているとか。この時の俺は知りもせずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます