第16話 再度訪問
♪♪~
俺のスマホが鳴った。
「電話電話……っと、まあ電話かけてくるのは基本ばあちゃんかじいちゃんだよな」
結果は予想通りばあちゃんからの着信だった。画面確認後。何か用事があるようなので俺は部屋を出てお隣の建物へと移動した。これがいつもの流れというか。スマホが鳴る。俺向かうだ。
「どうした?ばあちゃん?」
「守や。これ出来たから。結崎さんところにに持って行ってやんなさい」
「—―ワット?」
じいちゃんばあちゃんの家に行くと。まだ台所で何かをしているばあちゃんが居たのでその横に行ってみると……何故かタッパーを渡された。あの料理とかを入れておくタッパー。って他にタッパーったあったっけ?まあいいか。でだ。「……ばあちゃんこれ何?」と、聞いたのだが。中身はわかっている。あれだな。大根と鳥肉の煮物?かなりなんか透けている感じからはそんな気がする。いい感じに大根に染みてますね。
――じゃなくて。
「多く作ったからね。結崎さんも学校の行事参加していたんだろ?ってことは疲れて帰ってきているはずだから持って行ってやんなさい。1人だとご飯が疎かになるからね」
「……う。うん?」
持って行ってやんなさい。というのは、理解したのだが……なんか量が多すぎる気がする。これ――何日分?とか俺が思っていると。
「あと、この漬物も持って行ってやんなさい。それと畑で取れた野菜と……」
「タイム。タイム。ばあちゃんストップ。漬物とかの前にこのタッパーの中身。結崎1人暮らしだぞ?ばあちゃんも今の会話から結崎が1人ってわかってたよな?」
「何言ってるの。守の分も入っているからだよ」
「再度のワット?」
ダメだ。どうも結崎と話してから俺のテンションがおかしいというか……頭の中がまだおかしいな。疲れかな?
「1人のご飯は寂しいからね。一緒に食べてきなさい。今から行ったらいい時間だからね」
「……はい!?」
今日は学校の行事が終了後いろいろなことが起こるな。何でだろうな。って、ばあちゃんは何してるんだか……。
結局ばあちゃんの勢いはかなり激しく……というか強引。ほぼ強制。うん。強かった。
現在の俺は自分の部屋に居る。
そして先ほどばあちゃんから渡されたまあ煮物だな。そして……漬物だろ。庭で取れたとかいう野菜だろ。あと、フルーツが買ってあったからと紙袋に入れて渡されたものを持って……とりあえずどうしようか考えている。っかなかなかな荷物だなこれ。
いや、まあ偶然というか。たまたまというか。先ほど結崎と連絡先を交換していたので……連絡するのは簡単なのだが。
なんかな。昼過ぎに別れたばかりでほぼ結崎側の無理矢理というか……いや無理矢理ではないか。俺もまあ「うん」と言った気がするし。でも――まさかの別れて数時間で連絡するのもな……とね。思いまして。
っか、もし連絡先知らなくて今のこの状況になっていたらら大変だっただろうな。それには陥らなかったが……って、余計なことも考え――。
とりあえず。時計を見ると。現在16時20分。時間的には今から家を出れば大学前方面に行く電車に乗れる。のだが……まだ連絡をしていない。普通にメッセージをすればいいのだが……もしすぐに結崎が見ないということがあると……電車に乗れないというか。次の電車までしばらく間が……というのと。
もし先に乗って向かったとしても連絡が付かないと――公民館前駅でどうしようになる。
だからこういう時は電話なのだろうが。仕方ない……掛けるか。俺は先ほど知ったばかりの新しい電話番号を探し……掛けた。
……♪……♪
何度か呼び出し音が鳴る。あと何回かなって出なかった場合は――ばあちゃんに再相談だなとか思っていたのだが……。
「……もしもし?松尾君?どうしたの?」
電話の向こうから。不思議そうな声が聞こえてきた。
「あ、結崎?」
結崎は予想したより早く出てくれた。
「どうしたの?何かあった?」
「いや、その――今から再度訪問は大丈夫かと……」
「—―—―え……えぇぇ!?」
……かなり驚かれました。まあまさかね。再度行くとかそんなこと言われるとか予想もしてないよな。
まあなんやかんやで何とか。何とか。結崎にばあちゃんのことを話して……いや、普通に説明すればいいだけだったんだが。なんかね。ちょっと大変だった。
なんか普通に言おう普通に言おうと思うほど詰まったりするというね。女子と電話……難しいです。
説明終了後。俺は電話を切り。家を出発。そして何とか間に合った大学前行きの電車に乗った。
当たり前だが。俺しか乗っていなかった。ちょっとした救いは運転手さんが楚原さんじゃなかったことか。楚原さんだったら。
「あれ?どうしたの?今からお出かけかい?」
的な事がね。起こりそうだったので。
電車は定刻通りに田園駅を出発して、しばらく電車に揺られた。そして数時間ぶりに公民館前駅へと俺はまたやって来た。
そしてこれもまたとなるか。数時間前に歩いた道をまた歩いて……数時間前に見たアパートに到着。そして階段を上り……隅っこの部屋へと。
――ピンポン。
「あっ、はーい」
インターホンを押すと。事前に連絡してあったので、結崎はすぐに反応してドアを開けてくれた。
「いらっしゃい。松尾君」
「あ、なんか。悪い」
「いいよいいよ。まさかすぐにまた来てくれるとは思わなかったけど」
「ははは……」
再度結崎の部屋を訪れると結崎は部屋着に着替えており。ラフな服装になっていた。
「入って入って」
「ああ」
俺は結崎に再度室内へと入れてもらった。いや、渡すだけで帰るという選択肢もあったのだが……一応電話でね。ばあちゃんがアホほど作って……一緒に食べてこいとか……勝手なことを言っていた事をちらっと言ったからか。
「なら、量を見てだけど……ご飯くらい炊いておくよ」
電話では言われたので、多分俺と一緒に食べてもいいという事だろう。
「で、物は……これです」
俺はそういいながら俺はばあちゃんからの物が詰まった紙袋を渡す。
「お、おぉ……予想よりすごい量って、漬物美味しそう。あっフルーツも。って、松尾君。すごい荷物だったよね?」
「まさかの野菜とかフルーツでなかなかいい重さがあった」
「ごめんね」
「いやいや、結崎は何も。うちのばあちゃんがなんか変に大量に準備したというか……こっちこそ急に大量に持って来てごめん」
「私としてはとってもありがたいよ?煮物とか漬物1人だとあまり食べないからね」
「ばあちゃんは何を思ったのか……」
「この前でかなり心配させちゃったかな?」
「……まあなんというか。久しぶりの男以外の来客で何かに目覚めた可能性もある……」
「ならまた遊びに行こうかな?」
えっ?またあんなド田舎に来たいの?というのが俺の頭の中に浮かんだ言葉。
「……」
「あれ?ダメ?」
「いや、そんなことはないけど――あんな田舎来ても何もないぞ?」
「松尾君が居るじゃん」
「俺は物か?」
「今の私の癒し?」
結崎は俺をどう見ているのか……わからん。まあいいが。
「……まあいいや。ってとりあえずこの漬物とかは……」
「あっ冷蔵庫にしまうね。フルーツは常温かな?」
「あー、ばあちゃんは普通に冷蔵庫横の棚に置いてたかな?だから常温?」
「なら食べる時に冷やした方がいいのかな?」
俺が持ってきた袋から野菜やらやらを出すと結崎が冷蔵庫などにしまっていった。
「あっ、松尾君」
「うん?」
「ご飯もうちょっと待ってね?まだ炊きだしたばかりだからね。あと20分くらいかな?」
「えっと……俺居ていいわけ?」
「えっ?なんで?」
「いや……ゆっくりしたかったんじゃないかなって……」
「大丈夫だよ?むしろ松尾君が居ると私めっちゃ調子いいよ?」
「……なんというか。そりゃどうも?」
「うんうん。とりあえずゆっくりしててよ。あっ物あさるのは禁止で。絶対駄目だからね?特に引き出しとか。さっき押し込んだから」
「あさらないから。ってそこまで正確に場所を言われると――開けろって言ってるみたいだな」
「なっ、絶対駄目だから」
「開けませんから」
あれかな?帰ってきて……というか。さっき俺が来た時もバタバタしていたか。それもあってまだ片付けているところに再度俺が来てしまったのだろう。
こういう時は大人しくだな。まあもともとあさるとかそんなこと考えてないし。結崎の部屋の間取り的に……キッチンに居ようが俺が今居るところ丸見えだから動いたらバレるし。
俺が持ってきたものを結崎が片付けたあとは、結崎と学校の事とかを話したり。この家の周辺のことを聞いたりと。そんな感じでご飯が炊けるのを待った。
話している時に何かトラブルというか。問題はなく。普通にただ話しているだけだった。
っか、女子の部屋に居るのだが……なんか普通に居る俺だった。
そんな感じで結崎と話しているとここ居心地良いなとかも思っていた俺だった。あれ?結崎と話しているのが心地いいというか。落ち着くのか?うん?
まあ終始結崎も楽しそうだったし。笑いもあったから――良しか。
♪♪~
「あっ。炊けた炊けた」
結崎としばらく話をしているとキッチンの方から音楽が聞こえた。あれか。炊飯器のメロディーらしい。
結崎が立ち上がりキッチンへ。
「あっ、松尾君」
「うん?」
「結構いっぱいおばあちゃんからおかずもらったから。ご飯ともらったおかずとかだけでいいかな?さすがにこのたくさんは……松尾君に少し消費してもらわないと……だから。しばらく私のご飯が大根の煮物にばかりになっちゃうからね」
「問題ない問題ない。むしろごめん」
「フルーツは切って冷やしておくから」
「あっ、なんかどうもです」
それから少しして結崎が部屋に暖めた料理を持って来てくれた。
今更だが俺は女子の部屋で何をしているんだろうね。座っているだけで、机の上に料理が並んでいく。何だろうこの感じ。
ちなみに結崎に部屋の机は小さな折りたたみタイプのもの。1人暮らしだし。部屋は広く使いたいもんな。
なので向かい合うように座るとそれなりに距離が近いというね。いや、間近とかではないんだがね。近いという。
「すごーい。ご飯炊いただけなのに。ちゃんと私がご飯作ったみたいになってる」
結崎は座りながらそんな事を言っていた。
確かに。結崎はご飯を炊いてくれただけだが。煮物もあるし。漬物もある。そして結崎の家にあったのだろう。トマトやレタス簡単なサラダまで作ってくれたいたので、とってもいい感じの夕食です。
「じゃ、いただきます」
「あっ、うん。いただきます」
ちなみに結崎曰く。来局用というか。予備の箸とかが無いやらで。
俺は偶然あったという割りばしを使わせてもらっている。あと、お茶碗も1つしかないと言っていたので。俺は小皿を出してもらいそこにご飯を置いている。
「あっ、松尾君ごめんね。お茶碗とか箸。ホント自分の物しかなくてさ」
「いやいや、急に来たこっちが悪いんだからそこは気にしなくていいか」
「やっぱり予備とかあった方がいいかな?ってこの大根美味しい。めっちゃ染みてる」
「まあ、結崎だと、友達とか遊びに来るならあってもいいかもしれないけど……無理して買っておく必要もないと思うけどね。誰か来た時に結崎が料理の披露をしたいとかじゃなければ」
「無理無理無理」
「えっ?」
「あっ、いやね。私この家に友達は呼ぶつもりないかな……うん」
急ひそんなことを結崎は言いだした。
「うん?」
俺はちょっと考えてから少し前に話していたことを思い出した。
「あっ、そうか。ごめん。さっき言ってたか」
「うんん。私もね。慣れたら友達呼んでー。とかしたいけど。今はね。学校だけでまだ大変だから。あっ、松尾君は別だよね?私の癒しアイテムだから」
「ついにアイテムに俺はなったのか――」
「使っても無くならないアイテムだよ?」
「それにどう反応したらいいんだか」
「とにかく……今はね。この家に来るのは多分松尾君だけだよ」
「えっ?」
「あっ、なんでもないなんでもない」
「っか――うん。ホント結崎休みたいだろうし。早く食べて早く帰るよ」
「えっ、いいよ?ゆっくりで」
「一応だけど、オリエンテーション帰って来た日な?」
「まあそうだね。でも、私今楽しいし」
「……そりゃいい事だが……」
なんかわからないが食べながらそんな会話が続いた。って……俺は何なんだろうな。会うたび。話すたびに。人。から離れていっている気がするが。変に意識されてないから。俺も気楽だしいいか。
「ごちそうさま」
「お腹いっぱい。美味しかった。おばあちゃんにお礼言わないとね」
「伝えとくよ」
「また行くって言っといてくれる?」
「OKOK。あっ食器運ぶよ」
「ありがと」
その後片付けをしてからフルーツが出てきて――それを食べてから俺は帰宅へ。現在は結崎の部屋の玄関に居る。
「また来ていいからね?松尾君なら歓迎するよ?あっ、来る少し前には連絡欲しいかなー」
「ははは……まあうん。無いと思うけど――」
「あれ?照れてる?」
「いや」
「ふーん」
「なんだよ。その顔」
「別に。楽しかったなー。って」
「じゃ、電車もあるからって、乗り遅れるとだからな」
「本数少ないからね。本当に駅まで送らなくていい?付いていくよ?食後の運動もかねてね」
「いいって、逆に結崎の帰りの方が心配になるからな」
「大丈夫だよ?いつもの道だから」
「派手だけど、中はボロボロなので大人しくしていてください」
「むー、なんか。ひどい事言われた気がする」
「心配している。で」
「まあ……そう受け取っとく。じゃ、気を付けて」
「ああ、ごちそうさま」
そう言って俺は結崎の部屋を後にしてまた公民館前駅へと向かって歩いた。
そして予想通りの時間に駅に到着して……電車を待った。
数分待っていると電車が駅へ。いつもの事だが。数人のお客さんが乗っていたが。公民館前駅で全ての人が降りた。
いつもならこのまま空気輸送になるのだろうが……今日は俺が乗るのでお客さん1人である。ホント乗るたびに思うが……この区間いつ廃止になってもおかしくないよな――である。ばあちゃんじいちゃんにもっと外出しろとか行った方がいいかな?とか思っていると、電車はトンネルに入り――田園駅へと走った。
数分後、無事に田園駅に到着したのだった。
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