第13話 オリエンテーション終了

 ――翌朝。


 結局昨晩は深夜2時前くらいまで周りの部屋が大変。大変にぎやかだったことは覚えている。どんだけ規則がゆるゆるというのか。先生ら全く関与しないって感じだったのではないだろうか。うるさかった。


 そして今日の朝は前日と違い。起床時間が朝の7時30分とこちらも前日の予定からみるとかなりゆっくりであった。今回はちゃんと寝る前に冊子を見て時間は確認しておいた俺。まあなんか寝たような寝てないような感じで朝になったんだがな。

 ホント騒がしかったんだよ。ドタバタもあったし。キャーキャー声も一時すごかったし。

 あと、誰かが一時転がり込んできたおかげで――。


 ちなみに集合時間まではまだ30分ほどある。

 そして今日の朝もラジオ体操と書かれていた。そうそう先ほど先生の声がスピーカーから今日も聞こえてきたところである。


 俺は着替えて外に行く準備をし。今日も早めに外へと向かった。


 廊下に出たときは数人の生徒がすでに出ていたが。まだ準備中という感じだった。というか。眠そうな生徒が多かった気がする。そりゃあれだけ夜うるさかったからな。寝たい生徒もいただろうに……。


 ちょっと周りを見つつ入り口のところまで行くと。


「あっ、お、おはよう松尾君。今日も早いね」

「あ、おはよう。結崎そっちも早いことで」


 玄関のところで結崎とばったり会った。そういえば昨日も会ったからな。今日もなんとなく結崎は早いんじゃないかとは思っていたが。まさかの予想通りだった。

 そういえば、ふと結崎を見て。昨日と違う事?というのか。昨日と違うところをすぐに見つけた。というか。わかりやすいというか。


「今日は結崎。元気そうだな」

「——そ、そう?」


 俺がつぶやくと結崎がちょっと恥ずかしそうにつぶやいた。


「ああ。昨日よりはるかにマシな顔してる。特に目元」

「マシってことは、まだわかる?」

「いや、ほぼ目立ってない」

「って、朝からどこ見てるの?」

「いや、昨日の事があったんでね」


 昨日の目元のクマからみれば今日は――ほぼわからない。って、結崎も言っていたが俺は何故朝っぱらから室長様の顔チェックなどしているのだろうか。今結崎からもちょっと変な視線があった気がする。


 少し結崎と話しつつ外に行くと今日は数人先客がいた。昨日と同じだが俺と結崎は出席番号でなら前後のため。今日も多分このあたりになるだろう。というところで俺と結崎は止まり話を継続した。


「あっ、その、昨日はありがとう」


 すると、急に後ろから小声が聞こえてきた。


「いや、なんか人助け?になったならいいが……」

「凄く助かった。あと飲み物とお菓子も」

「—―うん?」

「美味しかったよ?」

「食べたんだな」

「部屋に戻ったら急にお腹空いてね。全部食べちゃったから。お腹周りが心配だよ。あっ、あと。部屋の子にそれどこで買ったの?とかの話になって。みんなも買いに行ってたよ。ちょっとしたお菓子パーティー?かなちょっと盛り上がったよ」

「ははは、あれから自販機が混雑したか。って、急激に太るものではないかと思う」

「—―太るワードは危険だと思うよー?」


 ちょっとじーっと見られた気がした。


「……はい。気をつけます」


 ちなみに今は、結崎とは向かいあっては話していない。見られた気がしたが、俺は軽く流すみたいな感じで話しているが。今向かい合っていたら、なんか結崎の表情が怖く。ガチガチになっていたかもしれない。でも今のところお怒りオーラは感じないから大丈夫だろう。多分。


 っか、なんか結崎とは話しやすいな。とか思っている俺だった。最近よく話すからだろうか?それとも結崎が話しやすい雰囲気を作ってるれている?さすが室長様か。とか思っていると。


「夜中に食べ物を渡してきた松尾君には今度運動に付き合ってもらわないとね」

「……」


 あれ?ちょっと怒っているのかもしれない。なんか後ろから嫌な雰囲気を少しだけ感じた俺だった。でも結崎が元気そうなのは――よかったか。


 そんなことがあって、それからすぐに他の生徒も集まってきて、先生登場からのまたラジオ体操。昨日と同じだし。カットだカット。


 はい、カット。


 ラジオ体操第2まで無事の終了。すると――。


「よーし、前列の人。ちょっとこっちまでプリント取りに来てくれ。そんな嫌そうな顔をするな。はい。持って行く。で、後ろに回すように」


 なんか先生の声が聞こえてから少しすると。なんか文字が書かれている。って、これもしかして――校歌?


 少し見てみると、校歌だった。校歌の歌詞が印刷されたプリントだった。


 まさかのこの自然の中で朝っぱらから、学校の校歌の練習をさせられた俺達だった。

 いやさ、そりゃまだ知らないよ?入学してすぐだからな。そんなに聞く機会まだないし。が、こんなところで練習する必要あるか?無くないか?誰かこの学校の先生たちに言ってやってくれて。

 なんかこの場に合っていないというか。なんで朝から校歌を何回も歌うことになっているのだか。


 結局校歌の歌詞が書かれたプリントがまわってきてから、1回目は聞くようにと言われたので聞いていた。

 そして2回目からは歌うようにと言われて……それが数回続いた。数回も続いた。ホントうちの学校わけわからん。


 校歌の練習をさせられてしばらく。俺はなんか歌詞は前半くらい?は覚えたころで終了。よかった。完璧に暗記しろ。とかだったらまだ終わらないだろうが。まあある程度覚えたら、みたいな感じの時に終わりになってくれた。


 その後は食堂に行き朝食となった。

 なお、食堂への移動中いろいろと生徒たちからぶつぶつといろいろな声が聞こえたりしていた。そりゃ朝から校歌を何回も歌わせられたらな。でも中には早速校歌を大声で歌い周りを笑わせている生徒などが居た。元気だな。とか俺は思いつつ最後尾あたりをゆっくりと歩いていた。


 ちなみにここでの食事はこれで最後。昼前には帰るみたからな。って、ホントこの学校行事はなんのためにしているのだろうか。とか思っていたら朝食の場で昨日作ったあの作品の発表会?ではないが。先生らからの評価があった。


 優秀と認められた生徒数人の作品はこの建物内の展示室に当面の間飾られるらしい。その他の人は持ち帰り。つまり優秀と認められた人は帰りの際に荷物が1つ少ないという事。もちろん俺は持ち帰りだろうと思っていた。


 ちなみに最優秀賞?というのかこの施設長の人が一番気に入ったとでもいうのか。それはあの仏様?を掘っていたあの生徒のだった。

 あれに勝てる生徒は居ないと思う。すごかったもん。

 それから数人の生徒が紹介されて――。


「最後、〇組の松尾」

「……えっ」


 まさかの俺。作品を持ち帰らなくてもよくなった。どうやら細かい作業というか。そこそこ真面目に作ったからか。それが評価されたらしい。何だろう。変にちょっとだけ目立った朝食後だった。

 まさか俺に芸術のセンスがあるとは、たまたまだろうがな。


 朝食のち一度各自部屋に片付けに行き。部屋の掃除をするように言われた。俺は1人だから散らかってもないし。ささっと片付けて終了。

 それからしばらくしてから施設の建物前へ移動。来た時に整列したところに俺たちは集められていた。


 現在は、施設から帰る前の儀式というか。退所式?とかいうのか。なんでもイベントごとの最初と最後にあるあれである。


 施設長挨拶。


 俺たち生徒の並んでいる列の一番前のところ。中心にマイクが置かれておっさん。おっちゃん?おじいちゃんではない人が登場し。そしてマイクの前で話し出した。デジャヴ?


「コホン。えー。はい。皆さん――」

「……」

「……」

「であって……」

「……」

「……」

「……」


 なげーよ。めっちゃなげーよ。だから長い!


 ってこれやっぱりデジャヴだよな?何か数日前に経験したような――とか俺が思っている間も話は続いた。


「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……以上で終わります。気を付けて帰ってください」   


 挨拶終わったー。

 その間にバスも駐車場のところにやって来たらしく俺たちはバスへと移動して乗り込んだ。

 帰りも座席はどこでもいいという事だったが。俺が乗った時、また一番後ろが空いていたため俺は一番後ろの開いていた座席にそして寝るの一択をとった。昨日の夜なんか寝れなかったからな。移動時間自由なら寝る一択である。


 しばらくバスに揺られ――次に気がついたときは見慣れた光景になっていた。


 ◆


 なんやかんやで学校到着である。ちょっと昼を過ぎたくらいに学校に帰って来た。他の学年はまだ授業のため学校に居るが俺たちはこのまま下校。そして明日は休日である。


 なんかまだまだ元気な学生が多いような気もしたが。俺は特にこの後どこか行こうとか。お昼ご飯を食べに行こうとか言っているグループに入る予定は全く無いので、解散後は普通に帰宅する為。駅に向かい歩いていた。

 俺が駅に着いた頃には、すでにそこそこの人がいた。駅は1年生だけなので、いつもよりかはちょっと少なく感じるが。でも大学前方面はそこそこ混雑していた。一方こちら田園方面は少ない。いつも通りだった。

 そしてまず大学前方面の電車が入ってきて俺の視線から生徒が減った。それからしばらくして田園行きの電車が入ってきた。ちなみに空っぽだった。


 そういえばここ数日俺が利用しなかったことで……多分だが、公民館前と田園の間は乗車人数0が続いたかと思われる。1、2人は居たかもしれないが……どうだろうか?楚原さんに会ったら聞いてみようか。とか思いつつ。俺はいつも通りガラガラの電車に乗り込み座席に座る。俺の乗ったこの車両は1人だけだった。前の車両には……2人?くらい人影があった。と、思ったら発車間際に1人。俺の乗っている車両に飛び乗って来た。


「——ふー。間に合ったー」


 その人はつぶやいただけか。または俺に向かって言ったのだろうか。

 普通ならつぶやいただけ――なのだが。今は多分俺に向かって言ったらしい。目が合っていたからな既に。


「……おつかれ?」


 俺は自然と飛び乗って来た人物に話しかけた。そして飛び乗って来た生徒は俺の正面に座った。 

 って、結崎よ。なんでわざわざ通路を塞いだ?周りガラガラなのに。と、俺は思いつつ結崎を見る。


「結崎がそこに座るともし誰かが来た場合通路が通れないかと思うが?」

「大丈夫だよ。お昼だからね。人も乗ってこないよ。現にこの車両はいないみたいだし」

「まあ、そりゃそうだが……」


 前にも言ったと思うが。この電車は小さい。車内も狭い。なので今俺と結崎の足は微妙にぶつかりそうでぶつからない謎な距離で通路を塞いでいる感じである。


「やっぱ話すときはちゃんと顔を見ないとね」

「なに?俺怒られるの?」

「お礼をちゃんと言おうと思ってね」

「—―お礼?」

「昨日の夜はありがとう。ホント助かったよ」

「あー、って、ホントなんで俺の部屋来たわけ?」

「それは……松尾君と居る時が一番楽だから?」


 首を傾げながら言われてもな。俺はわからん。


「……楽?」

「うん」


 楽らしいです。うん?どういうこと?と俺が思った時。ちょうどその時に電車が動き出したのだった。

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