第11話 オリエンテーション2日目 中
早朝散歩からしばらく――。
全員が戻って来たであろうタイミングで先生がマイクを持ち。集めてきた木材やらは各自部屋などに置いて食堂へ移動するように声がかかった。
「あー、室内に持って行くの面倒とかいう人はこの場に置いていっても行ってもいいぞー。朝食食べた後はここで作業だからなー。朝ごはん食べながらどんなもの作るか考えておけよー。できないと昼抜きになるぞー」
――らしい。
ちなみに何人かのグループで集まっている人の方からは。
「じゃ、ここにまとめて置いておこうよ」
「だな。中に持って行くの面倒だし」
「えっ?みんな真面目に集めたわけ?俺なんも集めてないんだけど?」
「お前昼抜きだな」
「ヤダよ。誰かわけてくれよ」
などとの声が聞こえてきていたが。
現在のところ1人の俺は、部屋にでも置いておくかと。なんかこの場に適当に置いておくと……消える。ということも起こりそうだしな。
どうせ部屋には行くつもりだったので、そのまま集めてきた物が入っている袋を持って俺は部屋へと一度戻った。そして荷物を部屋に置いてから食堂へ向かったら――。
「出遅れたな」
当たり前と言えば当たり前か。
さっきの場所から全員が一気に動いたので食堂は入り口から大渋滞。朝から密。超混雑な状況。あれかな。1人部屋だからちょっと息抜き。みたいな感じで部屋で数分だがくつろいだのがダメだったか。いや、でもそのまま来ていても一緒か。とか思いつつ最後尾あたりに俺が居ると……。
「凄い人だね。混みこみだね」
また同じパターンデジャヴを俺は感じた。何故って?結崎の声がしたからだよ。
「——うん?あー、結崎って、どっか行ってたのか?」
「えっ?なんで?」
「いや、もっと早く食堂行っているかと……俺は部屋に寄ってたからさ。ちょっとゆっくりしてたし」
「あっ、私もね……ちょっと部屋に行ってたから」
「そういう事か」
たまたまなのに、よく結崎と一緒になるというか。もしかしたら同じような行動パターンなのだろうか?とか思っていたら。やっと前が進みだし。皿を乗せるトレーなどの置いてあるところまでやって来た。
食堂はバイキングスタイル。と言えばいいのか。小皿やらがいろいろ準備されていて勝手に好きなものを持っていけ。みたいな感じだったので。馬鹿みたいに大量に持っていく人もいたが。食堂の職員の人は喜んでいるみたいだ。
あれか。どんどん作るからどんどん食べてよ。若いんだからたくさん食べな。みたいな感じなのだろう。厨房の人はめっちゃ忙しそうに動いてる。あれは……大変そうだ。
俺はそんなに朝から大量にはいらなかったので、普通に食パンとジャム。ヨーグルトがあったのでそれと飲み物を取って空いている席へと行こうとしたら――。
「結崎。それだけ?」
ふと目についたというか。ちょっと振り返った時に俺の後ろに居た結崎のトレーが見えたのだが――フルーツと飲み物だけだった。
それもかなり量は少ない。えっ?さすがにそれ少なすぎないか?とか俺が思ったのだが。俺の声は結崎には届かなかったらしい。周りがかなりざわざわしているからな。仕方ない。
そしてすぐに結崎はいつものメンバー。蓮花寺さんや長宮さんに呼ばれてそちらに向かって行ったので――朝っぱらから起こされたから。まだ食欲ないのか。とか俺は勝手に思いつつ。空いていた席に移動し座り。いただきます。
ちなみにこの時の俺は周りの人と話した。何故かって?たまたま隣が空いていて「隣いい?」と多分他のクラスの男子が声をかけてきて空いているのでOKを出したら。ちょっとした会話がある朝食となった。俺ぼっちじゃないよ。
朝食の後はゆっくり。とかいうことはなく。またすぐに外の広場に集められた俺たち。
今度は列に並べとかはなく。朝集めてきたんもので作品作り。先生が丸太?だろうか直径10センチくらいの丸太の輪切りというのか。悪い。あれがなんというものなのか俺にはわからない。なんていうんだろう。まあとりあえず木の台をまわしてきてこの上になんか作れと。
なんというか。それで何を作れというのだろうか。ちなみにボンドやらは先生らがいるテーブルで貸し出しとのことだった。
「……」
木の台を受け取った俺——フリーズだ。
作品?無理無理。どうしたらいいんだよ。とそんな時間が少し続き。周りをちょっと観察していても――まだ作り出している人は少数。が、これ作らないと自由時間。お昼ご飯にならないようなので……。
ちょっと考える俺。ちなみに俺は木の実や木の枝などが袋に入っている……が、これで何をしろと?とか思っていたら浮かんだ。
「—―家か」
何故かそんなことが頭に浮かんだ。いや、単にこの施設の建物を見ていたら浮かんだだけなんだがね。今の俺は閃いた。といった感じだった。
とりあえず直感は大切ということと、それにこれ以上悩んでいても、他にアイデアが出るとは思わなかったので俺はすぐに行動に。
俺は細くて扱いやすい枝を同じ長さにしていき。互い違い?というかまあ四角に組んでいき……2センチくらいの高さになったら。『これは――屋根の部分を三角にできれば何とかなるんじゃね?』と1人でぶつぶつ考えながら作り。それなりにパッと見たら家。ログハウス?とかいうのか?とりあえず雑だが家だろう。と、わかるものが出来た。
そして建物、家の前に木の実を1つ置いてみた。人を作るほど俺は器用ではないので、ただ置いてみただけなのだが。『なんかそこそこいいものが出来たんじゃね?』と結構自己評価は高めだった。
ちなみに作業を開始してからは、黙々と1人で作業をしていたからか。気が付くと1時間以上がすでに経過していた。集中すると時間はあっという間だ。
そして現在はボンドが乾くのを待つためただ座っている俺。周りをちょっと見てみると――なんかいろいろなものが出来上がっていた。
とあるところでは俺が諦めた木の実やらで棒人形?というのか。そんなのを作っている人がいれば。大きめの木を台に置いて……あれは削っているのか?仏様ではないと思うが……何かを作っている職人が居た。
ちなみに、その生徒のところには結構な人が集まっていた。あれを才能というのか。こういうの得意な人いるんだよな。
それからしばらく完成した俺は作品とにらめっこ状態で待機をしていると。
「おーい、出来たやつはホールに一時保管するから持ってこーい。あとここにある紙持っていって名前かけよー。名前ないと評価できないからなー」
そんな先生の声がどこからか聞こえてきたが。今行くとまた混雑に巻き込まれるため。俺はそのまま待機を選んだ。
ちなみに、仏様か何かわからないが木を削っている生徒君は――まだ削っていて。ついには先生たちもなんかスゲーもの作っている生徒が居ると、代わる代わる見に来ていた。あと写真も撮ってたな。いや、ホントあれはすごい。なんかコンテストとかあったら間違いなくあの生徒優勝だろう。
そんなこんながあって、少しして俺は、空いた頃を見計らって作品を置きに行った。作品を置いた後はその部屋に居た先生に『ここでとどまらないで食堂行けよー』とか言われたため食堂へと移動した。
そういえばかなり集中できていたからか。すでにお昼の時間はとっくに過ぎている。いやー、自分に驚いている俺だった。こんなに集中力あったんだな。びっくりだ。
ちなみに昼食時。何故か隣が担任の先生であった俺。なんか知らんがめっちゃ話しかけられたな。いや、正確に言うと俺だけではなく。俺の周りに居た生徒全員が話しかけられていたというか。先生が静かな空間をぶち壊しに――という言い方はか。とりあえず先生が生徒とコミュニケーションを取りに来ていた。
そんな感じで昼が終わった後は、一時休憩があったので部屋に一度戻り。俺はその後の予定をちゃんと今回は確認した。今まで確認していなかったからな。そして冊子を確認すると――。
「—―集団行動……」
……確認しなければよかった。
これはもういやな予感しかなかった。
この後は休憩のち集団行動とか書かれていた。カットしたい。マジで。
はい。カット。
とか物語とかでならできたかもしれないが。現実はそんな甘くない。休憩時間が終わると俺たちは各クラスごとに男女別で集められ。
集団行動をした。みっちり80分……90分ほど――長い。なんか行進?というのだろうか。歩いたり――止まったり。回れー右やら。右向け右。やら……。
なんか軍隊?とか言ったらいいのかな?そんなことをさせられた。これなんの意味があるのかね?ホント整列やら何十回とした気がする。
集団行動の終了と同時に半分くらいの生徒が体育館床に倒れ込んでいた。そりゃそうだめっちゃ疲れたし。みっちりしていたからな。今も頭の中で回れー右や。休めの先生の掛け声が勝手に今も流れている気がする。
ホントカットできたらよかったのに。
俺がそんなことを思っていると、全体がある程度終わったのか。先生がマイクを持って何か――全体がざわざわしだしたので、次また何か始まるのか?とか思っていたら。
「よーし。お疲れさん。今からもう今日は自由な。体育館使ってもいいし。外行きたいやつは行っていいぞー。あー、あと。キャンプファイヤーの準備手伝ってくれる生徒いないかー。ちょっと何人か手貸してくれ」
はい、一気に周りの雰囲気が変わった。どうやらもうこの後は自由らしい。先ほどまで倒れ込んでいた生徒らが急に全員復活。嘘のように復活していた。元気だな。みんな。
ちなみに全員というと一部から怒られるかもしれないから。正確に。ほぼ全員が復活。一部無反応という生徒もいる。俺みたいにな。
さっそく体育館の倉庫へ向かっている生徒や。先生が呼びかけたキャンプファイヤーの準備の方に集まっている生徒もいる。
ちらっとだが。結崎含め俺のクラスの人気者というか。目立つグループさんらは皆さんキャンプファイヤーが楽しみらしく。そちらの方に集まっていた。いやあのグループ目立つからね。すぐに目につくんだよ。ってか、あのグループこそ床に全員寝っ転がってなかったか?なのに今はもう完全復活。
俺は――自由ってことは部屋もOKだよな?ということで退散をすることにした。
もちろん俺と同じことを考えている生徒も一定数いたようで、部屋に向かっている途中『この後——の部屋集合な』みたいな声が結構あちらこちらから聞こえた。なお俺にはそのような呼びかけはなく。俺も誰かを誘うとかそういうことはなかった。
突然のフリータイム。
部屋に戻って来ると廊下はかなりにぎやかな状態だった。そんな中でも俺は1人を楽しむがな。なんたって1人部屋だから。これを使わない手はない。のんびりしよう。誰かがやって来るとか言うことはないだろうしな。
俺は部屋に入るとまずベッドに寝転んだ。ちょっと周りが騒がしいが問題ない。この1人でリラックス大切。とっても気持ちい。
少し寝ころんだあと窓から外を見てみると、ちょうど広場が見え。そこの中心では丸太などを生徒、先生らが組んでいた。どうやらあそこがキャンプファイヤーの会場らしい。ここからでも火は見えそうだ。のんびり見学させてもらうか。いや、俺はあそこに行くことはないのでね。『強制参加じゃなくてよかったー』とか思いつつ。再度部屋でダラダラをすることにした。
しばらくダラダラと部屋でしていると。スピーカーから先生の声が聞こえてきた。
「あー、連絡連絡。夕食だがな。冊子に書いてある通り。18時から19時30分までに食堂行くように。その後は閉めるぞー。で、風呂は20時から22時くらいまでに入るように今日の消灯は23時な。あまり大騒ぎはするなよ。あー、キャンプファイヤーは19時からな参加したい生徒は外の広場集合な。手伝ってくれるやつまだ募集してるぞー」
――だと。
つまり。今晩は昨日よりも規則がゆるゆるらしい。明日は帰るだけだからな。ホントこの行事の目的って何なんだろうか。とか、思いつつ俺は、ぼーっと次は外を見ていた。今もまだ一部生徒が頑張っている様子が見えている。
◆
18時45分。俺は多分ピークはもう過ぎているのではないだろうか。とか思いつつ食堂へと向かっていた。
食堂へ到着すると予想通りというのか。半分くらいの席が空いている状態だった。
キャンプファイヤーを楽しみにしている生徒は、この時間じゃ遅いからな。俺は興味が無いので空いているであろう時間を選んで正解だったようだ。夜のメニューはメインが2つ。肉と魚がありメインを1つ頼んだ後はいろいろと並んでいる小鉢やらを好きなだけ取るらいいので俺は選びつつ進んでいった。
それから特に何事もなく。静かに夕食をいただきます――何事もなく……いや、あったよ。いただきますにたどり着く前にね。
「だからあんた。昨日の子ホント大丈夫なのかい?」
「いや、俺、そこまで接点多くないんで……」
「仲良さそうに話してたじゃないの!」
「……」
何故か俺は食堂のおばちゃんに絡まれていた。何でこんなことになっているのかだな。
料理を持って席に1人で座っていたからか。ピークを乗り越えた食堂のおばちゃんおじちゃんたちも同じく食事の時間になったらしく。数人の人を食堂に残しこちら側に食べ物を持って出てきた。そしたらだ。俺の横に昨日の夜にも話しかけてきたおばちゃんがやってきてしまった。なんたることかー。
ちなみに俺は何とか話しつつも食事をして途中からは帰るだけになったのだが。でもね。なかなかおばちゃんが解放してくれなかった。
このおばちゃん人を捕まるプロである。間違いない。そして何故かおばちゃんが気にしているのは俺の事ではなく今ここには居ない結崎の事らしい。
おばちゃん曰く結崎は少し前に来たが――今日もメインはいらないと言って小鉢だけ持って行ったとか。いや、確かにそれを聞くと気にはなるが。『俺そんなに結崎の事詳しくないですからね?』的な事を言ったところで解放されず。結局おばちゃんが食べ終えるまで俺は話相手をすることとなった。
そりゃおばちゃんの言っていた食欲のない結崎が確かに気にはなったが。今食堂を見ても結崎は居ない。多分キャンプファイヤーの方にすでに行っていると思われるので、俺には何もすることが無い。以上である。
◆
おばちゃんに拘束されたことにより俺の予定は少し狂っていた。
本当は食べ終えたそのまま風呂にとっとと行くという予定だったのだが。すでに風呂の時間が始まりしばらく経過。何気におばちゃんに捕まったことで俺は食事時間を延長させたみたいになっていたが。俺食べ終えてましたからね?ただおばちゃんの話し相手をしていただけです。とか。もし先生に『いつまで食べているんだ』とか言われたら言い訳もちゃんと出来ていたが。特に先生には何も言われてないし。俺が食堂を出る頃には先生らもまだ食べていたし。さらにはその先生らと食べている生徒もいた。のんびりな空間だ。さすがゆるゆる学校。時間とか関係ないね。ホント。平和だよ。
そんなことがあり。予定よりちょっと遅れたことで風呂が混んでしまったかもしれない。とか思いつつ俺は着替えを持って風呂場へと向かった。すると――。
「……マジか」
激混みだった……ではなく。まさかの貸し切りだった。ちょうど風呂場に入る時に5人くらいの生徒が出てきたのだが。それが今のところ入りに来た人の最後だったらしい。
多分キャンプファイヤーに行った人は、まだ広場のところに居たのでね。部屋の窓から楽しそうに踊っている姿が見えていたし。
とまあ偶然にも貸し切りということで、俺はさっと入ってさっと出てきたのだった。そしてタイミングがいいのか俺が脱衣所で着替えていると今度は10人くらいの団体様が入って来た。俺、捕まったが運がいいのか。団体とは避けられているのか。っか、これはおばちゃんのおかげというのかもしれない。奇跡的なタイミングで広々と使えたからな。とか思いつつ。階段へと向かうため角を曲がった時だった。
「きゃっ!」
「—―うわ!?」
特に急いでいるとかもなく。俺は普通に歩きながら角を曲がったのだが。まさか誰か来るとかいう予想をしていなかったため。見事に歩いてきた人とぶつかってしまった。
「……あっ、松尾君。ごめん前見てなくて」
「いや、こっちこそごめん」
ちなみに俺がぶつかってしまったのは結崎だった。どうやら――結崎。今は1人らしい。手に持っているものからして風呂に向かっているみたいだが。って、こけるとかはなかったが。結崎が後ろにふらつく程度にはぶつかってしまった。
「結崎こそ大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから」
「悪い。ホントごめん」
「うんん。気にしないで。そういえば――松尾君はキャンプファイヤー行かなかったの?」
「えっ?あー。うん。部屋でのんびりが楽だから」
「あっ、松尾君1人だもんね。くつろげるよね」
どうやら結崎俺が1人ということを忘れていたのか。そういえばといった表情になっていた。忙しい結崎俺のお1人様部屋については忘れていた様子。って、そりゃそうか。自分に関係ないもんな。って、そういえば――結崎食堂のおばちゃんが気にしていたが。パッと見は……大丈夫そう?って、ここで足止めさせる必要はないか。
「——そうめっちゃ楽だよ。周りを気にする必要ないから。って。ごめん。風呂行くんだよな?」
「あっ、そうだった。じゃ、またね」
「ああ」
とりあえず、いやー、よかったかな。ここで結構派手にぶつかって結崎がどこか痛めてしまった。とかがあったらなのでね。クラスから何を俺は言われるか。何もなかったようでよかったよかった。
結崎と分かれた後は自分の部屋へと戻り。着替えを片付けて外を見てみた。
広場のところではまだ何人もの生徒が火の回りに集まっている感じだ。音や声まではさすがに聞こえないがな。楽しんでる様子は見える。
って、そういえば――。
「そういえば、結崎こそ。キャンプファイヤー行ってなかったのか?」
俺は外を見つつそんなことを思いつつも、もうこれですることもなし。どこかから誘われているということもないので部屋でのんびりすることにした――が。それから1時間もしないうちにだった。
訪問者が――。
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