第10話 オリエンテーション2日目 上
オリエンテーション2日目。
昨日は気が付いたら寝ていたので何時に寝たかは覚えていないが。普段よりかなり早く寝たのはわかっているので――。
「……早く起き過ぎた」
目が覚めた俺はスマホで時間を確認。
まさかのまだ05時26分。完全に早く起き過ぎた。というか。寝るのが早かったから仕方ないか。そんなに長く寝れなかった。いや、このいつもと違う枕、布団が原因な気もする。枕が変わると寝れなくなるとか聞いたことがある気がするし。
でも、寝れなかったというわけでは身体は無いようで、何故かすっきりと目覚めてしまったので、ベッドに横になりながらスマホでもいじるか……とか思っていた矢先の事だった。
「起きろー!朝だぞー。着替えたら6時までに外の広場集合だからなー。忘れるなよー」
「—―」
突然の部屋の天井にあるスピーカー?でいいのかな。とりあえずそこからの先生の声。
……あれ?こんなに朝って早いスタートだったか?と、俺はカバンから冊子を確認。確認――あっ、5時30分起床になっていた。ってことは――俺の身体は正しかったのか。寝る時に全く時間とか気にしていなかったが。って、これよくよく考えたら俺は1人だから今の放送とか気が付かなかったら――1人大遅刻とかいうことになっていたのか。ちょっと変な汗が流れた気がする。
ベッドから出た俺はとりあえず着替える。1人部屋なので自分の部屋みたいに使えるのがこの部屋のいいところ。そして少しずつだが他の部屋から声が聞こえてきたので、みんな起きだした頃だろう。
「そういえば外集合だったな」
俺は再度朝の集合場所を確認。
集合場所は間違いなく外だったので、あれから5分くらいしか経っていないが。暇だし。ということで外に出ることにした。遅刻するよりはいい事だろう。『たまには一番乗りとかでもしてみるか』とか思いつつ部屋を出た。のだが……。
「おー、松尾も早いなー」
「一番……じゃなかったか」
廊下に出たときはまだ男子は誰も出ていなかったが。そこから外に出てみると……。
うちの担任の先生を含めた数人の先生らが待っていることは予想していたのだが。
「——あっ、おはよう。松尾君」
結崎がもう居るとは思わなかった。室長さんは朝の集合時間が早かったのだろうか?って、生徒は結崎しかいない。室長だけ集合時間が早いとかそういうことはないらしい。
「俺のクラスすごいな。もう2人も来たよ」
「うちの生徒は誰も来る気配ないですよ」
「夜大変そうでしたよね」
「ホント、ホント。脱走してたり。見回りも大変大変」
ちなみに少し離れたところでは担任の先生が他の担任のクラスの先生と朝から楽しそうに話している。すると――。
「あー、松尾、結崎。出席番号順だからもう並んでろよ」
「はーい」
「わかりました」
ということで俺と結崎は、多分このあたりだろう。という場所に向かう。俺と結崎は並ぶ場合前後になるからな。一緒に居てもおかしくはない。
ちなみにまだ俺と結崎以外は誰も出てきていない。ちょっと出入り口のところに生徒の姿は見えてきたが――まだ一部だ。
俺は周りを見つつそんなことを思いながら多分自分はこのあたりになると予想した場所に止まると。後ろに結崎がもちろんだが来て……。
「松尾君も早いね。寝れなかったの?」
「いや、普段より早く寝すぎたからか。ちゃんと朝っぱらに目が覚めてた」
なんか顔も見ずに返事をするのは悪い気がしたので俺は振りむきながら答えて結崎側に身体を向けた。
「寝るの早いよねー。21時に寝るって普段じゃありえないことだから。部屋の子たちみんなブーブー言ってたよ」
「まあ基本てっぺん超えるくらいまでは起きてるかなー」
「うんうん。ゲームとかメッセージとか。電話してたらあっという間だよね」
「わかる――っか、結崎大丈夫か?」
「へっ?」
本人は気が付いていないのかもしれないが。俺は振り向いて結崎の顔を見た時からちょっと気になっていた。
「なんか……寝れなかった?すごいクマというか。うん。寝不足?」
「えっ――わかる?部屋では誰も気が付かなかったのに……」
そういいながら結崎はポケットから……鏡だろうか。女の子ってすごいな。何でも出てくるよ。とか思いつつ。なんか言っちゃダメな事言ったかな?と思い訂正を試みた俺だったが。
「いや、ごめん、気のせいかもしれない。気にしないで」
「—―」
俺の返事は聞こえなかったのか。結崎は鏡とにらめっこ状態になった。
いや先ほど結崎の顔を見た時にぱっと見はいつも通り……なのだが目元がね。たまたま目についたというか。やっぱり室長でいろいろやることがあるから疲れているのだろうか。とか。いや、たまたま光の当たり方でそう見えたのかもしれない。だから訂正を――だったが。結崎は鏡とにらめっこ。
って、今結崎自覚があったんじゃ……?とか思っていると。
「松尾君ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね」
「え、あ、ああ。いってらっしゃ……」
そう言って結崎がまた建物の方に入っていった。担任の先生が不思議そうに見ていたが。それと入れ替わりくらいに何人かの生徒が建物から出てきたため、ざわざわしだしたからか先生も気にしなくなった様子だった。というか『整列しろー』とか声かけが忙しくなった。が正解か。
それから少しして結崎は戻って来た。その頃にはほとんどの生徒が集まっていたため特に声をかけることはなかったが……。
どうやら目のクマを隠しに行ったらしい。ほとんど目立たなくなっていた。っか、女子ってすごいな。とか思っていると。マイクから先生の声が聞こえてきて……。
「よーし。集まったな?じゃ、間隔とれー。ラジオ体操するぞー。ちゃんとやれよー。サボっている奴いたらやり直しするからなー」
――朝っぱらからラジオ体操が始まりました。いや、朝だからラジオ体操か。とりあえず適当に周りと間隔をとる。
するとどこからかはわからないが。どこかにスピーカー?があるのだろう。よく聞くというか。聞きなれたというか。あのラジオ体操の音楽が聞こえてきた。
嫌でも1回は聞いた事があるであろうあれである。ちなみに俺は小学生のころから夏休みとかで嫌というほど聞いてきている。
それからは普通にラジオ体操。不真面目にしていると先生に『そこー、真面目にしろー』とか。名指しで言われている人もいた。
そして第1が終わり――よし終わった。とか俺が思っていると。
「第2始まるぞー。そこー勝手に座るなー」
いやいや、第2はちゃんと覚えてないし。とか思いつつも。音楽は始まってしまうので、俺は周りを見つつ――という感じで、カンニングしつつだな。何とかラジオ体操の時間を乗り越えたのだった。
にしても運動系の部活の人?と言えばいいのか。よくやってるのだろうか?普通に第2も出来ている人がいたが……あれ?第2って知らない方がレアなのだろうか?とか途中で思ってしまった。知っているのが普通なのだろうか?誰か教えてくれ。って、まあいいか。もう終わったことだ。学校の体育なら第1までしかしないだろうし。
ラジオ体操が終わるとまた初めの時と同じように出席番号順で集められた俺たち。
次は朝ごはんにでもなるか?とか思っていたのだが……あれ?冊子には何か書いてあったような……と、ここにきてちゃんと冊子を見ていなかった俺はこの先の流れが読めていない状況。
そんなことを思っていると先生がまたマイクを持って……。
「じゃ、朝ご飯の時間までしばらく時間あるからな。走って来るか」
「嫌だよ」
多分列の前の方に居た生徒の誰かが言ったのだろう。先生が走って来るか。とか言ったと同時くらいに突っ込んだと言えばいいのか。突っ込んだな。マイクが声を拾ってしまったらしい。周りからは笑いが起きており――俺の見えないところで誰かが先生により小突かれた様子だ。そしてさらに笑いが聞こえてきた。
「——えーっと、まあ走らなくてもいいが、せっかく空気のいいところに居るんだ。建物の周りに散策のコースがあるから全員1周歩いてこい。で、ただ歩いてくるのも面白くないと思うからな。朝食の後で作品作りしてもらうから。その材料集めて来いよー。枝とか葉っぱなんでもいいからな。工作懐かしいだろ?」
まてまてまて、そんな予定だったのか?もう少しちゃんと冊子見ておけばよかった――作品作り?俺にそんな能力ないのだが?
「ほらほら、朝ご飯食べたかったら行ってこい。あー、そうだそうだ材料集めで袋欲しいやつ。ここにあるから持ってけよー。あと、極端にデカいものとか変なもの拾ってくるなよー」
前では先生がまだ話している。
「いやいや、作るとか言われてもな……」
俺が1人ぶつぶついろいろ思っている間に前の方から人が進みだしていた。面倒というか。面倒。朝からホント何させてくれるんだよこの学校。とか思っていると。
「作品作りかー。そういえば書いてあったね。作るのはなんでもいいのかな?」
「——うん?」
急に後ろからそんな声が聞こえてきた。声は結崎の声だったのだが……俺に話している――ではないかと思ったが。何か結構近くで声が聞こえたので振り返ると。
「松尾君はどんなもの作るか予定ある?」
「え――っと……全く」
俺に話しかけていた様子だった。振り向いたら普通に目が合った。
「なんか中学の時の自然教室?でもなんか森にあった枝とか使ってなんか作ったなー」
「こっちはそんな経験……ないな」
「あれ?私のところだけ?」
「いや……どうだろう?」
俺の記憶には過去にそんな経験はなかった。
「とりあえず、適当に何か集めておいたら見本とか先生見せてくれないかなー」
そんな感じで結崎と話していると、前が空いてきたので俺と結崎も進みだした。前の方で先生からビニール袋を受け取り建物横にあったウォーキングコースとか書かれていたところに入っていく。
はっきり言おう。面倒だ。ほとんどの生徒がそんな話をしながら。愚痴をだな。言っているような感じだった。中にはちゃんと枝やらを吟味?して拾っている生徒もいたが。
ちなみに俺は歩きながらどうしようかな。とか一応思いながら歩いているのだが。
「あっ、これいい形してる」
「……」
何故か俺の横を歩いていた結崎は地道に枝やら木の実を拾っていた。もしかして、結崎こういう事好きなのだろうか?見た感じ――工作とか得意そうな雰囲気はないのだが。はじけて遊んでいる雰囲気はめっちゃあるんだがね。座って黙々と何か作っているイメージが無いのだが――あっ、何度もになるが結崎書道部だった。悪い。黙々と――は出来るな。いや、ホント見た目ですぐ判断してしまう俺だった。
「……何作るか決めた感じ?」
俺はボソッと結崎に話しかけた。
「うん?あー、何かねちょっとイメージは出来たよ」
「—―マジっすか」
「なんかこの木の実に細い枝刺したりしたら、人みたいになるじゃん」
「……なるほど」
やっぱり結崎こういうことは好きらしいです。なんかもうイメージで来てるみたいですわ。俺もちょっと探そうかな?真面目に。
しばらく歩いていると短いコースだったので初めに集まっていた場所に俺たち2人も戻って来た。結局何やかんやでずっと結崎と話しながら歩いてきた。ちなみに、適当に材料は拾ってきた。これで何ができるかは――今のところ全くわからないが。
「あっ、ゆえ居た居たー。全然来ないからどうしたんだろうって思ったんだよー」
俺達がはじめに居た場所に戻って来るとすぐに結崎は声をかけられていた。声をかけてきたのは、
いつも結崎と居るメンバーの1人である。もちろん俺とは接点なし。よし。そっと離れよう。とか思っていると……。
「あっ、ごめん、私列後ろだからね。ちょっと周り見ながらゆっくり歩いていたら遅くなっちゃった」
「うん?あれ?隣……誰?」
ちょっと行動が遅かったらしい。まさかのこっちに話が来てしまった。来なくていいのに。
「
「えっ。嘘。全くわからないんだけどー。なんかごめんごめん」
ホント、俺の知名度低い。っか、蓮花寺さん謝るようなことではないかと。
「いや、大丈夫大丈夫。気にしてないから」
「とりあえずよろしくー」
「あ、うん」
「で、ゆえは朝からナンパしてたと?」
「違うからー」
なんでそうなるのかな――と呆れる俺は――。
「じゃ、じゃ、俺は――」
なんか楽しそうなガールズトークが始まりそうだったので俺は隅の方に移動していった。ちなみにその後チラリと結崎達の方を見てみると。いつものメンバーその他の人も集まってきて賑やかになっていた。ホント目立つグループである。
そんな光景をちょっと見つつ俺は集めてきた材料と1人にらめっこをして……。
「うん。このあと何を作ればいいのだろうか……」
と、1人集合がかかるまで考えていたのだった。
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