第7話 オリエンテーション 上
オリエンテーション。何と言ったらわかりやすいのか。うーん。馬鹿の俺にはこの説明はかなり難しそうだ。
ちなみにオリエンテーションが行われるということは知っていた。入学してすぐに配られた年間の予定表みたいなものに書かれていたからだ。
簡単に言ったら――高校生活に慣れてもらうためというのか。集団生活?の指導というか。もしかしたら友達作りの場?とか言った方がわかりやすいのか?これからの生活のためにいろいろやります。それも泊りがけで。というのが。うちの高校のオリエンテーションらしい。いや、説明って難しい。
ちなみにパラパラと冊子を開いてみると――。
講義。
ウォーキング。
集団行動。
キャンプファイヤー……。
「—―—―うん?キャンプファイヤー?」
何だろう。中学の時にあった自然教室とか言うのを思いだ出した。その前の集団行動やらは、——何か面倒という感じがプンプンしているが……。
さらにほかにも書かれていることではウォーキング?何するんだよ。歩くのか?って、いろいろ詳細を聞きたいものがあるが。一発目に書かれている講義ってホントなんだよ。
と、とりあえず。これは、やっぱりお友達作り?みたいな行事なのだろうか。パラパラ見ていくとその後にもいろいろ予定が書かれていた。いや、マジで気になる言葉多いな。『これは面倒かも……』とか思ってると担当教諭が室長。俺の席の後ろに居る結崎を前に呼んだ。
「室長。病み上がりのところ悪いが。この先頼んでいいか?これからの時間で冊子読んで……これ決めるだろ。で、あとは――ってことなんだが大丈夫か?」
「わかりました。えっと……じゃあ……」
いやいや、ホントすごいわ。先生に呼ばれて後まかせる。みたいな感じで丸投げられてもちゃんとそれを始める結崎。昨日は休んでいるのでこのことについての打ち合わせはしていないはずなのだが……頼まれたらすぐに動けるやっぱり結崎すごいわ。そりゃ疲れてあんなことになるわな。
――そうそう誰にも言わないから安心しろ。思い出すのもだからな。
とか頭の中で思っていたら。部屋分け。と書かれた紙を黒板に先生が張っていた。大きな紙に1から数字が書いてあり……1つの数字に4人とか書かれていた。
「—―えっと、先生。今から決めるでいいんですよね?」
結崎が先生に確認をとっている。クラスでは何やらワイワイの雰囲気。ざわざわしだしていた。あれ?俺――ついていけてない?大丈夫か?大丈夫じゃない?まだ――大丈夫かな?
「ああ、決め方は自由でいいぞ」
「って、事みたいなんだけど。みんなどうやって部屋決めたい?」
結崎がクラスメイトに聞くと……。
「もちろん。フリー。自由にだろ?」
「くじでもいいんじゃない?」
「1部屋マックス4人か。あっ、2人のところもあるな」
「おーい、なんか盛り上がっているが。よく見ろ。男女別だからな。俺たちの仕事増やすなよー」
途中で先生が付け加えていたが。なんかクラスはもうざわざわ。楽しそうですね。皆さん。何か1日しか休んでいないのだが……やっぱり俺クラスから置いていかれた感じかな?
ちなみに、少しざわざわしてから結局はくじで部屋分けということになり。先生が必死に紙切れに数字を書いてビニール袋に入れていた。そして、くじが完成すると――。
「じゃ、先生がくじ作ってくれたので……席の順番でいい?くじ回すの」
結崎が全体に遠慮気味に聞いて――。
「OKOK」
「問題なし」
「男子から?女子から?」
そんな感じでくじ引きが始まった。あいうえお順に座っているため出席番号1番の人から順番にくじを引いていく。
しばらくしてほぼ最後にあたる俺にも回ってきた。ちなみに男女別でくじは引いたため。すでに女子は部屋分けが決まっている。なのでちょっとクラスの半分女子のみざわざわ度アップ中だ。
そんな中俺が引いたのは――。
――――――真っ白。
裏を見ても――――――真っ白。ミスかな?先生慌てて作っていたからミス?
「……あの……これ白紙なんですけど」
俺は引いた紙を見て――一応2回くらい見直した。裏面も見たが白紙。意味が分からない俺は、先生と結崎の方を向く。ちなみに今までは普通に数字が書かれていたみたいだったのだが。もちろん今はざわざわが無くなり。めっちゃクラスの視線が今俺に集まっている……これなにかな?いじめ?まさかね。
すると先生がすぐに反応して――。
「おー、やっと出たか。松尾。それ当たりな。人数の都合で4人部屋じゃなくて2人部屋が1つあるんだよ。で、もう1人は隣のクラスの生徒だから。当日までの楽しみな」
ニコニコしつつ担任の先生が言ってきた。あっ。そういえば担任の先生に関して何も言ってなかった気がするが――今はいいかな?ちなみに男の先生ですという事だけ。
「えっと……あ、はい?」
「えっと、松尾君が2人部屋っと……」
俺は、何というのか。あたり?を引いたらしい。微妙だが知らない人が4人より――2人の方がなんか話が合えばいい感じになるか。いや、沈黙が出来てしまうのでは?」とか思っていると。結崎が俺の名前を2人部屋と書かれたところに記入していた。
って、あっ本当だ。一番隅っこに白紙で2人と書かれている部屋があった。これはちゃんと見ていなかった。話を聞いていなかったのは俺だったらしい。
って、何だろう。俺だけ完全に仲間外れ感があるのだが――まあいいか。って、もう1人が当日までわからないとか。そんなことあるのか?そりゃ気になるなら隣に聞きに行けばいいのだが。でも他のクラスには知り合いがいないのでね。何か聞きに行くというのは――無理かな。よし。当日の楽しみにしておこう。
その後もオリエンテーションの話と当日の持ち物やらの確認などをした。途中から決めることなどがなくなったの結崎は俺の後ろに戻ってきていた。
ちなみにこのオリエンテーションは来月。とかではなく。すぐにやってくる。ちゃんと授業が始まるか始まらないくらいにというか。このオリエンテーションから高校生活が始まるみたいな感じか。ってかホント数日後にあるんだよな。
それからいろいろあって、あっという間に放課後。俺は先ほど楚原先生に昨日の事でお礼を言ってきたところである。
そして今日はちゃんと委員会。図書委員の仕事をしている。なんか昨日の分?の返却本もあるが――楚原先生も忙しいからな。昨日は出来なかったのか?とか思いつつ仕事をこなしていた。
それからは特に何事もなく下校時間になった。今日は本の移動ばかりで図書室内を行ったり来たり。地味に疲れたな。
「松尾君お疲れ様。後は大丈夫よ」
「はい。わかりました。さようなら」
「気を付けてね」
楚原先生に声をかけられた俺は、片付けて帰り支度。そして図書室を後にする。すべての部活が終了時間なので、窓から外を見てみると慌ただしく片付けてる生徒が何人も居る。中には座ってくつろいでいる生徒も見えるが……って、俺はそんな感じでちょっとぼーっと廊下を歩いていたからか。真横からの人影に気が付くのが遅れた。
「あっ、松尾君。お疲れ様!」
「—―ひっ!?あ、あー……結崎か」
「ちょっと驚きすぎじゃない?」
声の主は結崎だった。
いや、急に部屋の中から声かけられたら驚くのは普通かと……って、ここなんの部屋?とか思いつつ入り口のプレートを見ると。書道室と書かれていた。
「あー、そうか。結崎は書道部だっけ?」
「そうそう。今片付け終わって帰るところ。松尾君は?」
「俺も今委員会終わって帰るところ」
「じゃ、同じ方向だし一緒に帰ろうよ。私今日はこの後予定もないし」
「えっと――まあ俺はいいけど?」
「決まりっ!」
ということで結崎と下校することになった。話の話題なんかあるかな?とか思っていたが。会話は主にオリエンテーションの事があり無言とかいう変な空気。場にはならなかった。
「えっ?松尾君。結局隣のクラスに聞きに行かなかったの?」
「あいにくお隣のクラスに知り合いがいないんでね。ま当日の楽しみにした。すぐに当日来るし。それに向こうからも来なかったからな」
「えー。誰と部屋一緒とか気にならないの?」
「気にはならなくないけど……まあいいかな?みたいな。ちなみに結崎は誰と同じ部屋に?」
「あっ、私はねー……」
と、結崎からクラスの人の名前が出てきたのだが……うん。俺の知っている人が居なかった。クラスの方ごめんなさい。結崎とよく話しているというか。クラスの中心の人たちなら多分わかるのだが……今聞いた人は全く顔と名前が一致しなかった。
そんなこんなで結崎と話しながら校内から出たところで――。
「ゆえー。今帰り?」
「おー、結崎さんじゃん」
「ねえねえ。今からご飯食べに行かない?」
数人の声が横から聞こえてきた。あっ、これは噂をすれば……ってやつか。クラスでよく結崎と話している。中心メンバー。えっと――
にしても、さすが結崎のお友達。結崎に負けずというか――ホント目立つんだよな。明るいというか。派手と言いますか。髪を染めている率が100%。
そしてふと思ったが。ここまで結崎と2人で歩いてきたからすれ違った人は何だこの組み合わせ。とか思っていたかもしれない。ホント今更だがね。
俺と結崎は住んで居る世界が違うというか。俺と結崎の組み合わせは……変だよな。偶然一緒にってことになっただけだったから。とかいろいろ勝手に思っていると。
「あっ……えっと――」
いつものお仲間さんに話しかけられた結崎がこちらとあちらをキョロキョロと不審な動きをしている。って、俺が居るからだ。
「あー、どうぞどうぞ。俺は1人で帰るからごゆっくり」
「えっ……と。一緒に――来る?」
「—―へっ?」
社交辞令というのか。結崎は一応俺も誘ってくれたが。さすがにあのメンバーの中に初めまして。と言いながら入っていく勇気は俺にはない。というか……できれば関わりたくない。という感じもある。多分話が全く合わない気がするから。
いろいろ大変と言いますか――ね。苦手と言いますか。いろいろな理由からです。はい。断りましょう。
「大丈夫。多分俺が……行ってもだから。気にしなくていいから。じゃ」
「……ごめん」
――なんで謝るのだろうか?とか俺思っていると。結崎は声をかけてきたクラスメイトの方へと小走りで移動していった。
ほら、やっぱり結崎はあのメンバーと居る方が馴染んでいるというか。同じ属種というのか。なんていうのか。っか、属種はおかしいか。そんなことを思いつつ。俺は駅の方へと1人で歩いて行った。
特に振り返るとかそういうことはしなかったので、あの後あの方々がどうなったかなどは俺は知らない。
1人になり。なんか適当なことを考えつつ歩いていると駅に到着。ちょうど駅に着くといつも通りのほぼ空っぽの空いている電車が駅に入って来たので乗り込み座った。待ち時間なしはちょっとラッキー。
ちなみに今日は楚原さんとは遭遇しない日だった。って、そんなことは多々あることか。運転手さんも何人かいるみたいなんでね。それに楚原さんにも休日はあるだろうし。
って、そんなことを思いつつちらりと窓越しに反対側のホームを見ると――学生で大混雑。密っている。めっちゃ密っていた。とか思っていたら電車は発車した。
その日の帰宅後はいつも通りの生活だった。じいちゃんばあちゃんと過ごす平和な時間である。
◆
時間は進みそれから数日後—―。
今日はオリエンテーション当日。ホント。あっという間に当日になった。時間が経つのは早いんだよな。ホント、何もしてないのにどんどん日にちが過ぎていく。
今日から2泊3日の学校行事である。
2泊3日……長すぎないかな?これが普通なのだろうか。日帰りうとかで良くないか?とかそんなことを昨日の夜はずっと考えていた。まあズル休み。とかいうことはせずにちゃんと登校してきた俺を褒めてほしい。
先ほど電車から降りて、いつもよりかなり多い荷物を持って駅から学校までの道のり。短いのだが。そこを歩いてきた。キャリーケースがあると楽だったかもしれないが。あいにく俺は持っていなかったため。大きめのカバンを持って登校。
今日の集合場所は教室ではなく校庭なのだが。俺が着いて周りを見てみると……まあ俺と似たようなカバン。大きめのカバンで来ている生徒が7割ほどだった。残りの人がキャリーケースや……何か一部アタッシュケースみたいな人も居るが。カバンは人それぞれか。そりゃそうかカバンに指定はなかったからな。っかこういう行事の時はみんな来るの早いな。俺はいつも通り来たのだが……到着は結構遅い方だったらしい。ちなみにもう1本後の電車でも一応間に合ったんだがな。
そんなことを思いつつ。集合時間になるまで校庭の隅にある階段のところで待機することに。
ぼーっと校庭の方を見ていると。朝から元気な人も居る。サッカーして時間つぶしをしている人が居る……って、あれは誰かわかるというか。うちのクラス。在良君、大木君たちの中心メンバーの方々ですね。元気だな。そして、サッカー上手いですね。俺素人だからわからないが。さすがというか。何でもできるというのか。上手いですね。そして先ほどから女性陣数人もその男子のグループのところに混ざりだした。って、みんな朝から元気だわ。俺にはそんな元気はなかった。
って、その時ふととある人影が無いことに気が付いた。
「そういえば……結崎いないな」
俺はクラスの室長様の姿が見えないことに気が付いた。普段の結崎ならもう居そうなのだが……もしかして先生と何か打ち合わせだろうか?とか。いや、ちょっと知り合いというか。関わったからな。何かちょっと気になったというか。
って、俺は何故こんなことを思ったのだろうか。と思った時だった。後ろから足音がして――。
「ふー。間に合った間に合った」
知っている声が聞こえてきたのだった。
「……」
俺が振り向くと予想通りの人が後ろに立っていた。
「あっ、松尾君。おはよう」
「ああ、おはよう。今来たところ?」
「あ、うん。ちょっとね。朝バタバタしてて、さっきの電車で着いたんだよ。で、走って来たところ。ふー」
「結崎1人暮らしだもんな。いろいろ大変だわな。っか、急がなくても普通歩いてきても間に合ったのでは?」
「そうなんだけどね。先生に朝来るように呼ばれてるんだよ。って、行かないとじゃん。じゃまたねー」
そういうと結崎は職員室の方へと小走りで移動していった『大変だな。室長は』とか思いつつ結崎の後ろ姿を見ていたのだが……っか、オリエンテーション始まる前から結崎は疲れた感じ表情をしていたように見えたのは……気のせいか?声はいつも通り――いや、息が切れていたのは――まさかな。気のせいだよな。駅から走ってきたみたいだからそう見えたのだろう。
その後、チャイムが鳴ると同時くらいに先生らが職員室から出て来て。多分あれだな。各クラスの室長が朝呼ばれていたらしく。先生らと共に結崎ら室長と思われる人が紙?を見つつ歩いてきた。
今日のスケジュールだろうか……とか俺は思いつつ。クラスごとに並ぶように言われたため。いつもの自分の場所へ移動した。
その後点呼があり。というか各クラスの室長が持っていたのは単なる出席確認の紙だったらしい。ホントいろいろな仕事あって大変そうだな。
「——はい」
俺、点呼終了。
その後駐車場に待機していたバスに移動して――。
座席は決まっていなかったので入った順という感じだった。なお俺は早くにバスに乗り込んだので一番後ろに座っていた。
全員が乗り込むとバスは出発。ここから1時間?ほどのバス移動らしい。特にバス内ではイベントというか。遊びなどが行われることは聞いていないので……寝てていいかな。とか思いつつ。早々に寝る準備をしていた俺。
結果として、目的地に着くまでゆっくり寝れました。
ちなみに俺の周りに居た人も何人か同じように寝ていたらしい。
そしてしばらくぶりに窓から外を見てみると――。
「……山だな」
これはそのあとバスから降りて周りを見た感想とも同じだ。
いつの間にか、山奥に連れてこられたらしい。って、よくよく考えたら、じいちゃんばあちゃんの家もこんな感じのところにあるわ。
新鮮、初めて見た景色。みたいな声が周りから少し聞こえていたが、俺なにも新鮮じゃない。むしろ。いつも通りの雰囲気で逆に安心感すら覚えていたのだった。
ざっくり現在地の説明をしておくと、俺たちの周りはほぼ緑。そして目の前には――建物。多分ここが3日間過ごす施設だろう。っかここしか建物ないし。はい。説明終了。木々と建物ということだ。
「おーい。並べー」
すると先生の声が響いた。早速何かが始まるみたいだ。
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