第6話 学校復帰

 翌朝。いつもより早く起床した俺。単に目が覚めただけというか。昨日がね。あまり動いてないのと、俺も結崎と同じく昼まで寝ていたような状態だったので。自然と早く身体が起きてしまったようだ。


 ちなみに昨日みたいに起きてすぐ身体がだるいとかは全くなく。いつも通りである。問題なし。ふらつきなし。元気だ。

 そして俺がぶっ倒れている間に、ばあちゃんが制服もちゃんと乾かしてくれていたので綺麗に?なったはずの制服を着て、じいちゃんばあちゃんの家の方に行くと……。


「おはよー。松尾君。そしてお世話になりました」


 朝からテンションが高いというか。元気な方がいらっしゃいました。今日は髪の毛が明後日の方向に、とかいうことはなく。いつも学校で見る結崎の姿だった。服装もちゃんと制服姿だ。


「……おはよう。今日は元気—―だな」


 ホントいろいろな姿を短期間で見た俺は――どれが本当だ?と疑いつつの挨拶となっていた。


「すっかり体調良くなったからね!やっぱり睡眠は大切だね」

「……そうっすか」


  少し結崎と話しているとじいちゃんが自分の指定席に座る。

 そしてばあちゃんがいつものように朝食を運んできた。違うことといえば……1人分多いことくらいか。っか。いつもよりちょっと気合が入っている気がする。朝から豪華じゃないですかね?ばあちゃんよ。


「あっ、手伝いますよ?」

「あらあら、ありがとね。結崎さん」


 すると結崎がばあちゃんの手伝いへと向かって行った。なんかばあちゃんと結崎仲良くなったな。っか、俺いつもより早く起きたはずなんだが。みんなも早い。じいちゃんに関しては早く起きる必要全くない気がするんだが――お客さんが居るのにグーグー寝ているわけにはいかない。とかそんなことだろうか?


 そんなことを思いつつ俺はとりあえずいつも座っているあたりに座り。待機する。俺にすることはないのでね。

 少しすると、結崎とばあちゃんがなんか楽しそうに会話しつつ。すべての料理が並ぶ。そしていただきますだ。


 朝食のち。俺は1早い電車で学校に向かうことになった。そうそう結崎とともにね。理由は――。


「ヤバっ。学校の準備何も出来てない!ってか、1回家に帰らないと」


 ということがあったから。

 そりゃそうだよね。結崎は俺の家にずっといるので自分の家には帰っていない。つまり学校の教科書やら荷物も2日前の教科の物しか持っていない。って、そもそも授業がちゃんとまだ始まっていないので、荷物というほどの荷物は持っていないか。そんなこんなで一度結崎は家に帰る必要があるという現状。

 結崎曰く。公民館前の駅近くだから1つ前の電車に乗れば余裕とのこと。

 別に俺は結崎と合わせる必要などないので、いつもの時間の電車でもよかったが。ばあちゃんがね。結崎と一緒に行けやら何度も言うので。一緒に家を出てきましたとさ。


 という事で。初めて高校登校時に誰かと一緒に歩いている。ってか、じいちゃんばあちゃん以外と初めて家から駅への道を歩いている気がする。


「うわー、ホント自然の中だったんだね」


 あたりを見つつ結崎がつぶやく。


「ここ田舎だからな。かなり」

「でもいいなぁー、朝から気持ちいいじゃん。緑がいっぱいのところ歩いて登校できるって」

「晴れてる時は気持ちいいけど、雨やらだとね……めっちゃ大変だよ」

「—―大変?」

「この道が川みたいになるし。茶色い水がザーッと流れている感じ」


 どこからとなく水があふれてくるというか。流れてくるんだよな。そして酷いと沼地を歩いているように――舗装されてない道路も一部あるんでね。


「うわー……それは――いやかな……」

「あと、夜遅くなると高確率では何かと遭遇する」

「なにか?あっ、動物とか?」

「そうそう。今のところイタチ?狸?とか」

「あっ、イタチとか見たことないからちょっと見てみたいかも」

「ちなみにじいちゃん曰く。イノシシやクマも居るとか。今のところ俺は見たことはないが――なんか気配は感じたことがある」


 俺が追加で話すと。イタチの時はちょっと明るめの表情だった結崎の表情が曇った。


「……それは遭遇したくないね。あはは……」


 そりゃそうか。普通会いたくないもんな。俺も会いたくないし。

 そんなこんなで、駅までの道のりを結崎と話しつつ今は歩いている。っか、結構結崎と普通に話している俺だった。

 いや、これは――結崎が対応能力が高いというか。すぐに馴染んでくる感じだからか。とか思っていると田園駅が見えてきた。当たり前だが。誰もいない。俺がよく知っている駅の姿だ。ちょっと電車の時間まで時間があるので、電車もまだ駅には来ていなかった。


 にしても――嫌でもここに来ると思い出すな……やばいな。トラウマ。とかではないが。ちょっと満腹時とか。体調悪いときはしばらく注意だな。

 そして結崎もなのか。駅に来ると急に口数が減った気がする。そりゃそうか。同級生に……危ない危ない。自主規制をまたかけないといけなくなるところだった……って、自主規制の言葉は使ったわ。でもまだセーフ。


 結局2人とも何も言わないでホーム立っていると電車が駅に入ってきた。


 どうやらこの電車の運転手さんは楚原さんではないみたいだ。って、俺はここの鉄道会社の運転手さんらには良く知られているので。いつものように運転手さんに挨拶のち。車内へ入っていく。今日もいつも通り。誰も居ない。って、俺の前には結崎が居るから誰も居ない。というのは間違いか。

 そういえばちょっと運転手さんも珍しいものを見たというか。なんというのか。不思議そうな顔をしていたからな。ちなみに結崎は運転手さんと挨拶していた俺の事の方が不思議だったらしくすぐに聞いて来た。


「——松尾くん。さっきの人知り合いの人?」

「知り合いってか。この駅ほぼ唯一の利用客だから自然と全員に知られている」

「あー……そっか。なるほどなるほど」


 そう言いながら結崎は座席に座る。結崎はドア付近の方に座ったので俺は結崎の前を通り――って、いつもながら車内は狭いため。結崎の足にぶつからないように気を付けながら前を通る。そして結崎の横に、1.5人分弱くらい間を空けて座った。なんか距離感がね。正面とかに座るのは――だったから。通路をふさぐことにもなるからな。すると、結崎が話しかけてきた。


「この電車って普通の電車と比べるとかなり小さいよね」

「まあ普通のみんなが想像するような電車からみたらかなり車内もだけど全体的に狭いし。小さいな」

「私さ。放課後とかに大学前とか行くんだけど。あの時はすごいよね。乗れないこともあるもん」

「あー。そんな感じだな。まあ俺は満員電車知らないけど」

「えっ?乗ったことないの?」

「基本あっちは行かないからな。用事ないし」

「そうなんだ――」


 少し車内で結崎と話していると電車は出発した。そしていつも通りトンネルに入り。

 って、こうやって誰かと話しながら電車乗るの初めてかも。とか、思っていたら公民館前駅に到着した。話しているとあっという間だった。


「じゃ、私はダッシュで家行ってくるから!」


 駅に着くと結崎がそう言いながら立ち上がる。


「ああ。まあ俺は早いが先に学校行くわ。気を付けて」

「なんかごめんね。一緒に家出ることになっちゃって」

「問題ない」


 そんな感じで車内で結崎と別れる。にしても、今日の結崎は元気だな。っか、これが普通の結崎か学校でよく見る姿だからな。とか思っていると。結崎が降りたあと一瞬0人になった車内だったが。すぐに数人の乗客が乗ってきた。主に学生と会社員?かな。

 そして電車は出発。また少し電車に揺られると高校前駅に到着した。


 いつもより早く家を出て早い電車に乗ったので、当たり前だが学校、そして教室にも早く着いた。早いと言っても俺より早くから教室に居る人も何人か居たが。

 教室に居たのは、ほとんど話したことない人ばかりなので、しばらく時間もあることなので大人しく自分の席で寝て待つことにした。


 熟睡。とかそんなことはなく。ただ机につぶれているだけと言えばいいのか。寝たふり。と言っても間違いではないか。 

 しばらくぼーっと何を考えるでもなく過ごしていると。クラスがにぎやかになってきたので人が増えてきたことは見なくてもわかる。そして、俺がそろそろチャイムが鳴るかな。とか思っている時だった。


「—―寝てる」


 そんな声が後ろで聞こえた気がした……と思った時だった。


「あー、ゆえだ!昨日どしたの?」

「ごめんごめん。ちょっと寝込んじゃってねーあははー」

「連絡しても全然返事ないし」

「おっ、ゆえ。今日は来たじゃん」

「おはよー。ごめんね。連絡返し忘れてて」


 俺の席周辺が――うるさくなった。

 これは、このまま寝たふりは厳しそうなので起きることに。顔をあげ少し周りの様子を見ると――後ろの席に人がたかっております。俺……邪魔かな?でも、もうすぐチャイム鳴るんじゃないだろうか?とか思いつつ。教室の時計を見ると同時くらいだったと思う。


 ♪♪~


 チャイムが鳴った。これならすぐに後ろの集団は解散になるか。と思った時。教室のドアが開き先生も教室に入場。


「—―おはよう!ほら、今日は配布物あるから早く座れー。そこ。席に戻る。なんで今からどっか行こうとしている。座る。ほら。動き回ろうとするな」


 ちなみに俺は休んでも、特に誰からも声をかけられるようなことはなかった。そう考えると――さすが室長様だな。とか思っていると前から紙の山がやってきた。何かの冊子みたいだ。と思いつつ。自分の分を取り後ろに回す。


「ありがとー」

「——あ、うん」


 そこで本日2度目。と言ったらいいのだろうか。結崎と会う。会うって言い方はおかしいか。でも、1回別れたからな。なんていうんだろうか。って、まあそんなことはどうでもいいか。にしても、こいつ。すごいな。ホント電車1本。確か――半時間くらいあったか。いや、半時間しかなかったはずなのに、その時間で準備して、身なり?っていうのか。見た目というのか。髪やらのセット?も完璧にしてらっしゃいました。すごいですわ。


 ちなみに、俺の家に居る時の姿でも全く問題なかったと思うのだが……あれか。やっぱりいろいろな人と接点があるからか。多分いつも身なり気を付けているんだろうな……って、一瞬しか見ていないこの状況で俺は何をいろいろ考えているのだろうか。


 とりあえず結崎の事は頭から消して、今配られた冊子を――っか結構な分厚さだな。とか思いつつ表紙を見るとそこには――。


『オリエンテーション』


 そんな言葉が書かれた冊子だった。

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