第5話 風邪

 どれくらい時間が経っただろうか。俺の記憶が正しければ朝は一応ちゃんといつもの時間に起きていたはずだが。身体がダルすぎて、ばあちゃんに連絡のち寝た気がする。その後は大人しく寝ていたから現在は身体が元気になってきた気がする。

 熱は……測ってみないとわからないが。身体は朝よりはかなり楽になった気がする。

 

 そうだそうだ。はっきり言っておかないとな。俺は風邪をひいたため入学して早々学校を休んでいる。皆勤賞とか別に狙っていないので特に気にはしていないが。まさかこんなに早く学校を休むことになるとは思っても居なかったな。


 でだ。時間はもう昼過ぎだと思う。部屋に入ってくる太陽の角度がお昼ごろの感じなのでね。

 確か近くに転がっているはず……と、手探りでスマホを見つけて、画面を確認してみると――現在13時05分。お昼を過ぎてますね。朝も食べてないし。ちょっとお腹空いてきたから『もう動いても大丈夫だろう』と、そんなことを思いつつ起き上がる――訂正。ちょっと一瞬ふらつきました。よし。もう少し安静にしてよう。変に動いてぶっ倒れるとじいちゃんばあちゃんに余計な心配をかけるのでね。

 ちなみに風邪引いたくらいなら。『寝ときんしゃん。寝たら治るわい』とか言われるくらいなので、でも、心配かけていますね。早く治そう。


 そういえば……朝のだるーい気分の時にばあちゃんと話した時『結崎さんもまだ居るからね』みたいなことを言っていたので、もしかしたら結崎も学校を休んでいるのかもしれない。って、そういえば結崎居たんだな。ちょっと忘れかけていた。風邪って怖い。


 ちなみに、ばあちゃんに連絡というのは、スマホで電話をしたという事。一応じいちゃんばあちゃんもいい年なので、風邪をうつすと――なのでね。うつさないようにしっかり対策している。電話で話すだけなら問題ないからな。これ完全に隔離だね。この俺の部屋便利。超便利。隔離に。


 っか今思ったのだが。もし結崎も本当にあれからずっとこの家に。じいちゃんばあちゃんの家に居るというのだと……これ、変にクラスで目立たないよね?大丈夫だとは思うが……俺達の席は前後、その2人が一緒に欠席。

 でも学校では結崎と接点がないから問題ないか。気にし過ぎだな。


 いろいろと考えられるようになったので、やっぱり回復はしてきているみたいだ。

 とりあえず起きたので一応ばあちゃんに連絡をした。すると15分くらいすると再度ばあちゃんより連絡。電話がかかってきた。


「守や。食べ物置いておいたから食べときんしゃい」


 ばあちゃんからの電話を切ってから部屋のドアを開けてみると食事やら飲み物が入り口の前に運ばれていた。ばあちゃんに感謝感謝である。ホント隔離生活にもってこいというか。良いところに俺住んでますわ。


 ちなみにその時の電話で結崎もまだ居る事を聞いた。どうやら結崎は……体調が悪いとかではなく――。

 朝になり。ばあちゃんが結崎を起こしにいったら『——安心したかのようにとっても気持ちよさそうに寝ていたから。そのままにしている』と。

 それは――いいのかは知らないが。ばあちゃん曰くあれは疲れがたまっているとか言っていたが。って、もうお昼過ぎているが。結崎よ。さすがに寝すぎでは?逆に大丈夫?ちょっと様子を見に行った方がいいのでは?って思ったが。


 ……何か結崎が起きたらめっちゃ騒ぎそうだな……って。ちなみに学校への連絡してないわ。


 ばあちゃんがしているかもしれないが――あと、今更連絡してもだと思ったが……委員会とかもあるので、一応学校に電話をしてみることにした。


 ♪♪~


 普通は保護者が連絡するものだと思うが。一応学校にも俺はいろいろあって、じいちゃんばあちゃんの家に居る。ということは説明してあるので……なんとかなるか。みたいなことを思っていると電話が通じた。

 そして運よくというのか。学校の電話をとったのが。図書の楚原そはら先生だった。


 簡単に俺が今日休んでいることを説明すると……どうやら楚原先生は旦那さんから昨日の事をすでに聞いていたらしく。そういえば昨日の件に関しては関係者がもう1人いたな。


 さらにばあちゃんも朝に連絡していたらしい。ちなみに朝ばあちゃんからの連絡を受けたのも楚原先生だったとか。そのため結構な量の説明が省けて俺は助かった。

 そしてちょっと気になっていた事。結崎の事も――おせっかい。余計な事とか思ったが。ちらっと言っておいたら楚原先生がすでにばあちゃんから聞いており上手い事言ってくれたらいい。これなら大丈夫だろう。入学早々先生と仲良くなっておいたことがいい方に話が流れたというか。面倒なことにならなかった様子だ。


 俺は学校への連絡も終わり。ばあちゃんが準備してくれたご飯も食べ。水分もとると――多分元気。ふらつきは無くなった。熱も測ったら……はい。いつも通りの体温に戻っていました。俺の身体治るの早いなー。食べるのと水分も大切だな。


 それから今日は朝から部屋ばかりに居るのでちょっと外に出てみる。ド田舎だからか空気はとっても良い。周りは……緑ばかりだからな。


 深呼吸してその場でぼーっとする。


 そんなことをしていると。ばあちゃんに見つかり『結崎さんが呼んでいるよ』とか言われたため。俺は一応マスクをして結崎のもとへ向かった。一応俺の部屋何でもあるというか。ある程度の物がおかれている。ホント隔離生活にぴったりだわ。


 そんなこんなでじいちゃんばあちゃんの家へと行き――。


「……なんだ?結崎」

「あ……うん?え、えっと――松尾君なんでマスク?」


 ドアが開いていたので声をかけつつ。結崎が泊まっていたと思われる部屋に入ると。結崎は元気そうに、というか。こいつ絶対まだ起きたばかりだよな。髪の毛片側だけ明後日の方向を向いてるし。って、自分の姿の現状に結崎は気が付いてないのだろうか?その姿見せていいの?だったが――いいか。ここで変なことを言ってもだからな。って、マスク姿の俺に疑問を持っているということは。結崎は何も知らないと見た。


「一応、風邪うつすとだからな」

「えっ……風邪?」

「大丈夫だ。寝たらもう治った」

「……治るの早いね。って、どうしよう」

「なにが?」

「……今日学校無断欠席しちゃった。どうしたらいいと思う?説明とかいるよね?学校に」


 俺が呼ばれたのはそういう事らしい。っか、何だろう。派手と言いますか。はい。派手ですね。ちょっと髪の毛が明後日の方向を向いているので、おバカキャラーー訂正。おバカとか言ってません。はい。言ってませんよ?はい。で、えっと、なんというのか。明るいキャラの結崎が……昨日からなのだが。


 別人に見えている。


 俺はそっちの方が気になっている。とか思っている結崎がまた口を開いた。


「……実は私……さっきまで寝ちゃってて」


 結崎の今の髪の毛見たら想像は付く。


「——ある意味すごいわ。どんだけ疲れていたんだよ。って、結崎の方が体調不良だったような?」

「あっ、昨日はその……まあいろいろ疲れで」

「だろうな」


 ここで結崎とだらだら話していて、もしかしたら俺が風邪菌を結崎にうつすと……なのでとっとと学校への事は先生にばあちゃんが朝。そして先ほど俺からも連絡して図書の先生。そこそこよく話している先生に偶然繋がっていい感じに話しておいてくれると言っていたことを伝えた。


「……松尾君すごいね。入学したばかりなのに、もう先生と仲良しって」

「仲良しっていうのは変かもしれないが。楚原先生とは放課後よく会っているから」

「私その楚原先生?顔すらわからないんだけど……」

「まあ、結崎が図書室に来る雰囲気が無いからな」

「えっ?」


 どうして?という顔を結崎はしているが……いやいや、見た目で判断しては……だが。どう考えても結崎は放課後はお友達と町へ。の雰囲気しかない。

 結崎が放課後に図書室で本を読んでる……ごめん。想像できないわ。


「結崎あれだろ?放課後は部活や委員会よりみんなで遊びにとかの人だろ?だから室長して内申点稼ぎみたいな?」

「え、えっと……まあ、遊びに行くのもあるけど――一応私……部活入ってるよ?って、室長は……あー、そういえば内申点とか書いてもらえるよね」

「内申点稼ぎではなかったのか……」


 おっとここで俺の知らない情報が出てきた。結崎の奴、部活入っていたのか。あれか運動部のマネージャー?とかだろうか。といくつか頭の中では候補が出てきたのだが。本人が目の前に居るんだし聞けばいいかということで。


「ちなみに何部に入っているんだ?」

「書道部。まだ昨日入ったばかりだけどね。あっ、部活もいきなり休んじゃったー」


 ……どうしような。全く予想していなかった。文化部だったか。見た目的に……いや、何度も見た目で判断して悪いのだが――仕方ないということにしてくれ。って、静かな空間で結崎が字を書いているイメージが無いのですが。再度、ホント見た目で判断して悪い。なのだが。想像できなかった。

 あー、でも、黒板に書いていた字は綺麗だったな。委員会決めの時に確か書いていたが。綺麗な字を書いていたと今思い出した。


「……まあ楚原先生が上手い事言ってくれていることを……だな。にしても……」


 こいつ。結崎って学校ではもっとひまわり……ではないが。花が咲いたように明るくいろいろな人に接している感じだったんだが。そりゃまだ数日くらいしか見てないからそれが全てではないのかもしれない。

 そういえば休み時間とかでも常時みんなではじけているとかでもないか。それに授業中は真面目な感じだし。結崎の前に座っているでね。わかるよ。なんとなく少しくらいはでもね――。


 そういえばちょっと思い出してみると、結崎はいつもの仲良しグループの会話でもなにか断る時はきっぱり。とかではないが。ちょっと濁しつつ……みたいな感じで断る時は断っているか。常に仲良しグループと一緒に。とか周りに合わせてなんでも参加。賛同する。みたいなことでもないのか……?

 っかこんなことを思っていると『お前、結崎の事めっちゃ見てるじゃん』とか思うかもしれないが。そうではない。何度も言うが席が前だからだ。結崎ゆえ。という生徒の前だからだ。休み時間とかで、嫌でも結崎がお友達と話している会話が聞こえてくるんでね。そういうことだ。


「っか、結崎。もう午後だが。帰らないのか?」

「—―あっ」


 どうやら結崎は自分が今いる場所も覚えていなかったのだろうか。俺が言うと。周りをキョロキョロって、さっきまでばあちゃんと話してなかったですかね?あっ、時間を確認したかったのだろうか?


「結崎さんや」


 俺がそんなことを思っていると廊下からばあちゃんが入ってきた。


「ごはん。できたよ。ちょっとでもいいからお食べ」

「—―えっ?」

「遠慮せんでいい。若い人はしっかり食べんとの」

「でも、そろそろ……」

「いいからいいから」


 そんなこんなで結崎は着替えもすることなく。ほぼ強制的にばあちゃんに連れて行かれた。

 ちなみに結崎はちゃんと歩いているし。大丈夫そうだ。


 俺は……風邪もあっという間に治った気がするが。一応大人しくしていようかね。


 部屋に残された俺はとりあえず自分の部屋に戻ることに。

 そういえば結崎の奴。俺の貸した服。ずっと来ていること覚えているかなー。あれないとそのうち俺体育の授業とかで困るんだが……とか思いつつ。俺はそれからは大人しく部屋に居た。というか。ばあちゃんが結崎にご飯を作った。と言い連れて行ったので、食べ終えるまではどうせ帰らないだろうし。ばあちゃんからも結崎を駅まで送っていけ。とかの連絡もないだろうと思い。のんびり身体を休めていたのだが。


 時間は過ぎていく……過ぎていく。さらに過ぎていく――。


「……いつ帰るんだ?結崎の奴」


 あれから1時間、2時間—―4時間。うん。おかしいだろ。ご飯食べて着替えたら帰るとかになりそうだが。もしかしたら、俺が風邪ひいたと言ったから1人で帰ったのだろうか。とか思っていたら。


 ♪♪~


「……噂話すればか」


 ばあちゃんからの着信。電話に出てみると――。


「守や。晩御飯食べるかい?」

「……えっ?まあ、食欲はあるけど」


 ……おかしいな。いつも通りというか。休日のやり取りだった。どうやら結崎はもう帰った?らしい。俺はそんなことを思いつつ。再度マスクをして……って『ご飯を食べるからマスクはいいか』と1人つぶやいてから、マスクを置いて、じいちゃんばんちゃんの家に向かう。すると――。


「……まだ居たよ」

「あ、松尾君。その……おばあちゃんが……」


 じいちゃんばあちゃんの家に行ってみると、結崎まだ居た。というか。捕まっているというのだろうか。ちょっと困っている感じの表情をしているようにも見えた。って、昨日からホントいろいろな結崎の表情を見るな。


「結崎さんや遠慮せんでいいから、ゆっくりしていきんしゃい」

「……ばあちゃん明日学校あるんだから。結崎帰らしてやらないと。もう暗くなってきているし」

「なら、また泊っていってもらえばいいでしょ」

「……」

「……」


 うちのばあちゃん……お世話好きというのか。久しぶりに男以外が家に居るからか。結崎を帰したくない?らしいが。明らかに結崎も困っているみたいだから。ご飯を食べたら送って行こう。俺はそう思いつつ。結崎の隣。いや、いつもの俺の指定席がそこなんですよ。決して結崎の隣を選んだわけではない。見てもらえばわかるが。すでにじいちゃんばあちゃん。結崎が座っているからね。って、わからないか。今の状況をうまく説明するより。まずご飯を食べる俺だった。ご飯を食べ終えないと何もできないからな。


 ちなみに結崎も俺を見てか。ちゃんといただきますをして食べ始めた。そして俺の隣からは小さな声で『美味しい』という声が聞こえてきたのだった。


 そうそうじいちゃんは1人でお酒を飲みつつ食事を楽しんでいる。結崎が居ること以外いつも通りの夕食だった。


 そしてその後。結崎は帰る――事にはならなかった。


 簡単に言えば――ばあちゃんに負けた。もう遅いやら。暗いやら。とにかくいろいろ理由をつけて、結崎をこの家にとどめてしまった。


「悪い。何か……ばあちゃん久しぶりに男以外が居るからか。あんな感じで」

「あ、松尾君が悪いんじゃなくて……私もちゃんと断れなくて、何か流れでこうなってごめん」


 現在結崎とともに結崎が昨日から使っている部屋で話している。というか。結崎に着替えを俺が持ってきたところだ。完全に俺の私服。休日や夜着ているジャージとかなんだが……これしかなくて何か申し訳なく思いつつ渡したところである。


「……っか、なんか結崎のイメージ変わったわ」

「—―えっ?」


 俺がそう言うと結崎は驚いた顔をしていた。

 俺もいきなり何を言っているんだろうか。とか言っておいて自分で今思っているがな。


「いや、なんか結崎って陽キャラ?みたいな感じで思っていたが。結構真面目なところあるというか。礼儀正しいというか」

「陽キャラ――——ほっ」


 結崎は嫌そうとかそういう表情ではなかったが。なんていうんだろう。不思議な表情をしていた……って?うん。嬉しがって――無いな。気のせいだな。


「あっ、いや、悪い意味とかなんもないぞ?明るいってことだ」

「——よかったー。上手くいってる」

「上手くいってる?」

「あ、うんん。なんでもって、私もう元気だから!」


 すると何かスイッチが入ったのか。急に結崎の表情が明るくなった気がする。そうそう、こういう感じだよな。クラスでは。って、今まで見てきた結崎は――。


「ま、まあ無理しないように」

「ありがとね!大丈夫。ちょっと、昨日は疲れてただけだから……って……あ!!」

「……結崎……ボリューム。声」

「あっ、ごめんごめん。って、あ!!ごめんなさい!」

「……はい?」


 いきなり結崎がささっと、俺の前で正座したと思ったら――――土下座された。

 いやいや、何が起こった?俺はなんでクラスメイトに土下座されているのだろうか……それも室長様に――って土下座とかダメでしょ。


「そ、そ――その、昨日は――」


 そこまで結崎が言って俺はこの先に結崎が何を言おうとするのかわかったため。すぐに遮断するかのように俺は話始めた。また自主規制――出す必要が出てくるかもだからな。


「あっ、それはマジでいいから……思い出す方が――だからな」

「でも――」


 昨日の事を思い出すというか。再度いうことになるとホント自主規制祭りが起こってしまうため……勘弁願いたい。


「昨日の私。ホントおかしかったんだよ」

「だろな。態度もおかしかったから。ついさっきまで」

「で、でしょー。ホントごめんねー。ちょっと調子がね。いつもの感じ忘れた?みたいな感じでね。うん。あっ、そうそうなんかあったら言ってよ。何でもするから」


 何でもする。とかを軽く言わない方が……とか頭の中では思っていたが。頭からその言葉を追い出してから。


「とりあえず、明日は朝に起きろよ?」

「大丈夫だから!ホントちょっとおかしかっただけだから。もう元気だからね!」

「はいはい。じゃ……おやすみ」

「うん。おやすみー」


 はい、俺退場しました。って、急に明るい結崎というのか。クラスでのいつもの結崎というか。なんか――接しにくく……はないのだが。変な感じがしたのだった。


 クラスの時は全く感じなかったが……今さっきの結崎は変な感じだった。

 

 元気な雰囲気を作っている感じが見え隠れしていた気がする……そりゃ病み上がり?みたいな感じでまだ本調子じゃないのだろうが。なんだろうな。あの感じ。俺はそう思いつつ。じいちゃんばあちゃんにおやすみを伝えてから自分の部屋に戻ったのだった。

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