第4話 松尾家

 あれからしばらく。洗濯物と格闘してとりあえず先ほど干したところだ。これで自主規制は出さなくて済むだろう。

 にしても、今洗ったが――明日の学校に間に合うだろうか?乾くようには……思わないのだが……。

 でも最悪ばあちゃんが何とかしてくれるだろう。ばあちゃんの知恵とやらを発動してもらおう。そんな能力……ばあちゃんにはないか。いやあるか?


 とりあえず洗濯を終わらせてから俺は結崎の様子……ではなく。そういえば体操着のままだったかと。自分の姿を見て気が付いたので、一度自分の部屋へと戻り。私服に着替えた。

 本当は風呂にも入りたい気分だったが……風呂入っておくか。と思った時に、ばあちゃんが俺を呼びに来た。というか俺のスマホを鳴らしてきたため。じいちゃんばあちゃんの家に移動したのだった。


 ちなみにだが。俺が自分の部屋にいる場合は電話。俺のスマホが鳴る。これがここでの俺の呼ばれ方だ。用事がある時にわざわざ外にじいちゃん、ばあちゃんに出てもらうのが悪かったので、2人に携帯の使い方を教えて今の状態になっている。

 ってか、携帯をじいちゃんばあちゃんが覚えたら覚えたで、よく電話がかかってくるようになったのだが……それはいいか。はじめは新しいものは使えないとか言っていたが。じいちゃんがなんやかんやで、興味があったのか、ポチポチしてできるようになったら。いつの間にか、ばあちゃんもマスターしていた。負けず嫌い?


 とまあ、俺はばあちゃんに呼ばれたので、じいちゃんばあちゃんの家の居間へと向かう。部屋に行ってみると……じいちゃんが1人で普通に、ご飯を食べていた。ここは平和そうだ。って、ばあちゃんが居ないということは……俺が向かうべき部屋はここではなく隣の空き部屋だろう。


 俺は隣の部屋に移動する。するとドアが開いていたので廊下から中を覗くと、横になっている結崎とばあちゃんが居た。これは――男が居ていいのだろうか?そもそも覗いてはいけない気がしたのだが。すでに覗いている現状という。どうしようかな?


 俺がどう行動するべきなのだろうか。声をかけようにもなんか書けにくい感じ……とか思っていると、結崎が廊下から覗いていた俺に気が付いて身体を起こした。するとばあちゃんは俺が来るのを待っていたかのように立ち上がり。


「飲み物持ってくるよ。守や。ちょっとついていてやんなさい」

「えっ?」


 ばあちゃんはそう言い部屋を出て行った。すると身体を起こした結崎が話しかけてきた。


「松尾君。ごめんなさい――その……いろいろと」

「それはいい。思い出す方が……うん。ダメだ。やめよう」

「う、うん」


 また自主規制が出てきそうな気がした。あれはなかなかのインパクトというか。記憶を消す装置とかがあるならすぐに利用したいかもしれない。いや、女の子に馬乗りされた記憶は……ちょっと残しておきたい。とかちょっと、ほんのちょっとはあったが。その後がね……あっ、思い出すとだめだな。よし違うことを考えよう。違うこと違う事。なんか身体も寒気がしてきたし。


「……ごめん。本当に」


 俺がいろいろ格闘していると再度結崎が誤って来た。って、本当に学校での雰囲気と違いすぎて戸惑うしかなかつた。


「えっと――その――電車で酔ったのか?」

「そ、そういうのじゃないと思うけど……酔ったのかな?ちょっと夕方から疲れちゃったみたいで」

「まあ、いつも元気に明るくクラスをまとめてくれてますからね。そりゃ疲れるわな」


 クラスでの雰囲気を思い出して――勝手に納得する俺。


「そ、そう?」


 すると結崎が少し不思議そうな顔をした気がした。気のせいかも――と思いつつ俺は話を続けた。


「うん。はっきり言うと今の結崎がちょっとクラスの時と違い過ぎて、どう接したらいいかわからなくなりつつある」


 本当にクラスではいつも明るく。グループの中心に居る人というのか。派手なお方か。そのお方が……ここまで弱っているとね。いろいろ狂う。マジで狂う。

 なんか実はクラスでは、『毎日めちゃくちゃ頑張って明るいキャラを作って生活しています』とか言ってくれると、今ならすぐに納得しそうな気がするが。それはないか。


「あ、えっと――ちょっと、高校入っていろいろあったから疲れたかなー」


 あはは……という感じで結崎が話す。確かにそろそろ疲れが出る頃か。


「だろな。っか、結崎知っているとは思うが。ここド田舎な。スーパード田舎。いろいろあってまともな道路が全く無いから電車でしか帰れないが……親とか呼ぶか?」

「あ――その……私今1人暮らしなんだよね。最寄り駅は公民館前なんだけど」

「そうだったのか。って、すごいな。高校生で1人暮らしか。俺がしたら……無理だな。多分」

「そ、そうかな?まあ、私のところはちょっといろいろあってね。1人暮らしになったんだよね」

「大変だな。まあじゃあ後で……送ってやるよ。落ち着いたら」


 俺が結崎に言った時だった。後ろから物音がして――。


「守や。泊って行ってもらいんしゃん。無理して動いたらまた気分悪くなるわい」

「——へっ?」


 間抜けな声が俺から発せられることとなった。ばあちゃんは何をいきなり言い出すんでしょうかね?泊る?誰が?結崎が?ここに?ほんと何を言っているのか?


「じじいとばばあじゃ、この家は大きいからね。1人くらいお客さんが居ても問題ないよ。それに結崎さんや食事とかちゃんと食べとるのか?あとで身体にいいもの作ってあげるから。大人しくしときんしゃい。ほらほら、横になっときんしゃい」

「えっ、それはご迷惑……」

「いいんじゃいいじゃ。ばあにまかせとき」


 そう言いながら飲み物を持ってきたばあちゃんは飲み物を枕元に置くとまた部屋を出て行った。何だろう。ばあちゃんが生き生きと活動しているような……いや、普段からじいちゃんばあちゃんどちらも元気なんだがね。今日は特にばあちゃんが元気に活動している気がした。


「—―ばあちゃんハキハキしてるなー、久しぶりの来客だからか?」

「……松尾君ところ――お客さん来ないの?」


  不思議そうに結崎が聞いて来た。


「まあ、うちはここ1軒しか家がないからな。じいちゃんばあちゃんは買い物や病院の時くらいしか。公民館前駅とかの町の方には行かないからな。だからお客なんて稀にしか来ない。うん」

「そうなんだ……って、私が居ると松尾君—―迷惑だよね?」

「いや、俺はこっちには住んでないから問題はないんだが」

「えっ!?松尾君ここに住んでないの?じゃなんで今ここに居るの?」


 いろいろな表情するな――と思いつつ。確かに説明せずに理解しろは無理な話なので――。


「あー、ちょっと説明すると面倒というか。本当は見てもらったらすぐに理解してくれると思うんだけど今の結崎を動かすのはだから――まあ敷地は同じなんだが。でも庭にある小屋で俺は生活しているみたいな。食事やらだけこっちで。って感じ」

「……小屋?」

「そう、俺専用の小屋」

「小屋……?」


 結崎の頭の上には、はてなマークが浮かんでいるような感じの表情をしていた。俺の説明力不足が露呈した感じだったな。


 それからの事を言うと。結局ばあちゃんが結崎を帰らせるという事をしなかったため。結崎はじいちゃんばあちゃんの家にお泊りとなりましたとさ。


 俺はまさかこんなことになるとは思っていなかったが……どうなることか。


 結崎がこの家に泊まることがばあちゃんの一声により決定し。それからしばらく、俺はばあちゃんに言われて結崎にジャージやらを貸したりした。

 基本ばあちゃんに指示され続けたというのか。ほんとうはあまり俺がこっち。結崎の居るじいちゃんばあちゃんの家の方に居ても……とか思っていたので、ご飯の後は俺は自分の部屋に居たのだが――それはそれはよく鳴る。何がって?俺のスマホだ。

 何度も何度も俺のスマホが鳴って。ばあちゃんに呼び出されていたとさ。

 結局ほぼ結崎が休んでいる部屋に物を運んだり貸したりしていたので、あれでは結崎が休めない気がしていたので、とりあえず、行動はささっと。素早くして。やっと先ほどばあちゃんからのお電話などもなくなったところ。


 普段と違うことをしたからか。何かすごく疲れた気がした。そして動いたはずなのになんか身体が寒いので、ばあちゃんのお呼びがなくなった後は風呂にさっと入り。自分の部屋でくつろいだ。そして横になったら急に睡魔というのか。何だろう。わからないけど。身体が寝ろと言っている気がしたので俺はそのまま寝たのだった。


 その際に、『あっ、ばあちゃんに制服洗ったこと言わなかった』と、ちょっと思ったのだが。思っただけで俺の意識はすでに無くなっていたのだった。


 ◆


 いろいろあったこの日はやっと終わり……翌日。


 ――俺は風邪をひきましたとさ。


 思い出せばわかることだが。なんやかんやあったし。そういえば俺、水かぶって適当にしていたので、あれがダメだったらしい。帰って来た時も、風呂に入ってシャワー浴びようかとか思っていたら、呼ばれたりで結局いつも通りの時間にしか風呂に入らなかったし。っか、何度か寒気があったのはこれが原因か。あれは身体からのサインだったらしい。気が付かなかった俺だが――。


 はい。現在体温計がとっとと寝ろ。という温度を示していた。


 それに――制服乾いていないだろうし。このまま休んでいいだろう。寝ます。おやすみなさい。

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