そんな日はなるだけ来ないでほしかった
好きな人がいました。
先日、その彼と13時に待ち合わせ。池袋駅東口の喫煙所。いつも私の方が一本多く吸ってた。待ち合わせ場所で顔を見ると「あぁ、いよいよデートが始まるんだな。どんな時間になるかな」と胸が高まる。毎回の待ち合わせ、彼の顔を見るまで落ち着かなかったから、会えた嬉しさを隠すために2本吸うのです。
ふたりで気になってた喫茶店、東池袋のぶどうやへ。綺麗な内装、気さくな店主に囲まれてお互いの仕事の話で盛り上がった。
彼の言うことはわかった。伝わってきた。とても熱い男だった。
その後目黒に移動し、葉桜を横目に散歩した。それなりに歩いて、橋を見つけるたびに足を止めてゆっくり川を眺めた。冗談を言う彼、それに踊らされる私、冗談と気づいて笑いながら彼の肩をつつく。楽しかった。
葉桜が桜餅に見えるねなんて私の冗談は彼にはピンとこなかったみたいだけど、それはそれでもよかった。
気づけば夕方17時をまわっていた。
「少し早めにご飯にする?」の私の問いに、「あ〜財布の中残り3,000円なんだよね」と彼。確か先週、連休を使って久しぶりに会う地元の友達と旅行し出費をしていたことは聞いていた。それにしても3,000円か...と少し考えて致し方なく解散を選んだ。彼はカード主義だから、現金は滅多に降ろさないらしい。九州から上京してひとりでの生活をやりくりする上で、きっと自分のルールがあるんだろう。と私は察した。一応これでも彼の2つ上だ。お金が絡むことに何も口出しはするまいと思った。それでも最後の最後に「寂しいな〜あっという間だったな」と思いつく限り女の子になりきった。それを濁すように笑う彼の姿を見て、彼の言いたいことは伝わってきた。でもさっきの喫茶店での話とは別だ。わかりたくなかった。
それでも階段まで送るよ、の言葉で飲み込まざるを得なかった。
「今度はちゃんと私とのデート代用意しておいてよね!」「わかったよ、またね」の会話の後、私は階段を降りた改札前で涙が止まらなかった。まるでドラマのワンシーンだ。せめてトイレに駆け込んで泣きたかった。でも感情はそこまで待ってくれなかった。
降ろせばあるお金を、彼は降ろしてくれなかった。何故降ろせばある、なんて言ったのだろうか。試されてたのだろうか。
そしてそれから2週間後の今日、次の予定を立てるべく連絡を取っていた。第一候補だった日に彼は急遽出勤しなくてはならなくなった。皮肉混じりに「こんなことならこの間もっと一緒に居たいってわがまま言ってればよかったな!」と言うと「あーホテル連れ込めばよかったな〜〜」と彼が返してきた。こいつは本当に何を言ってるんだか。恐る恐る「なんでホテル?」の問いに「ゆっくりできるし長くいれるじゃん?」と。アホか、アホなのか。これが男女の考え方の差なのかと。もうこの段階でこの口調、お察しの通り私は半分呆れている。「どちらにしても所持金3,000円じゃ降ろす気もないのにホテルも入れなかったじゃん」と返してみると「あのあとバチバチ降ろした( 笑 )」ですって。そうなんですって、バチバチ降ろしたんですって!笑ってしまうよね。
時間をかけて、ゆっくり大事にしてきた恋だった。時間をかけて、好きな人から好きだった人へと変わった今日だった。
そんな日もあるよね あこ @jam2chp
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。そんな日もあるよねの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
そろ十日記/Macheteman
★15 エッセイ・ノンフィクション 完結済 78話
凡生尽語/樵丘 夜音
★5 エッセイ・ノンフィクション 連載中 40話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます