第79話 告知後の反応。気分です。

「ハッチさん。告知見たよー」

「にゃぁぁぁん」

「俺も見た! いつ合同イベントになったんですか!?」

「会場とかもう決まったんですか?」


 発表してから、いろんな人に声をかけられるようになった。申し訳ないことに、俺が知ってる内容はほぼ全部告知してるんだよなぁ。


「悪いねー。詳しいルールや場所はわからないんだ。近々次の発表もあると思うから待っててよ」


 賞品なんかも用意されるみたいだけど、入賞者には運営の用意したものになるみたい。俺が発表できなかったのはこの話くらい。

 オトシンさんも、仕事が忙しいのか、ほとんどINしてる姿を見なくなったな。


「にゃぁぁぁ」

「さっきからウルサイ! あと引っ付くな!」

「新作作ってに゛ゃああああああああ!」

「兄貴! もうちょっとですにゃ」

「がんばれー!」


 強牙たちは他のネコと比べて異様にしつこい。毎回こいつを振り解くのが面倒だ。他の人はどうやって対応してるんだ?


「強牙ちゅあああん! 私が作ってあげるわ〜」

「遠慮するにゃ。ネズミ臭い耳はイヤ」


 サビ猫さんいつまで付けてるんだろ。


「だったらお前らはどの匂いは良いんだよ」

「オレは魚派にゃ」

「アルフヘイムのケットシーは魚好きが多いにゃ」


 釣り好きが多いのもそういうことか。待てよ? 一人というか一匹肉好きいたよな?


「確か二尾は肉派じゃなかったか?」

「それは新情報。詳しくお聞きいたします」

「俺の話が先にゃぁぁぁ!」

「いや、強牙の話は聞かないぞ」

「びゃああ!」

「あにきぃー!」


 泣きながら走り去る強牙。釣竿職人は他にもいるから、そいつらに頼んでくれないかなぁ。


「ところでサビ猫さんたちの進捗はどうですか?」

「順調に釣竿増産中だよ。それより二尾ちゃんの情報プリーズ」


 ブレないな。二尾の情報って言ってもあまり知らないぞ。

 ケットシーの変種だってのは聞いたのと、猪肉が好きってくらいか?


「猪肉!? ありー! 探してくる」

「あ! 猪肉は……もう行っちゃった。進入禁止地区で取れるって話なんだけど。まぁ、いっか」


 俺も少しは生産しておかないと、全然スキルが上がらない。というか、全く上がってない。釣りスキルだけ20まで増えたけど、他が据え置きというのは困る。


「今日は生産の日にしよう」


 そうとなれば、溜め込んだ素材を使ってアップグレードだ。



 俺がいるのは町の入り口の区画。時計みたいに分けられているので、一番下として6区と呼ぶ人もいるが、ドワーフ区とよく呼ばれている。

 そんなドワーフ区に似つかわしくない建物が一軒建っている。


 シュッ。コイーン。

 カランカラン。

 パンパン。


「あれ? ハッチさんがお参りって珍しいですね」

「珍しいって、ここ建って4日くらいだろ?」

「気分です。おっ。かなりお布施溜まってるじゃーん!」


 こいつが1000万ゴールド集め、この神社を建てた当事者。そして俺も100万ゴールド寄付し、氏子として名前が載っている。


「お布施でオプション追加するって言ってたけど、何作るの?」

「神社と言えば守り神ですよね」

「確かにいるね。狛犬とか作るの?」

「まさか! アルフヘイムと言えばエルフ! エルフと言えば森! そして、森ならこいつでしょ」


 神社の影から持ち出してきたのは、キリリと尻尾を立て、見下ろしながら片手を下ろしている石像。


「そう。これが守り神の仁王シマリス!」

「お、おう」


 仁王って寺じゃなかったか?

 まさか、俺は今まで自分は氏子だと思っていたが、いつの間にか檀家になっていたのか!?


「なんてことだ。柏手ではなく、お経を唱える場所だったのか」

「神社なんだから柏手でしょう?」

「じゃあ、なんで仁王なんだよ!」

「気分です」


 この気分が問題で、当初は教会になる予定だったはず。今度は残りの吽形うんぎょうを作らず別物になるんだろうな。地獄から牛頭ごずあたりを引っ張って来ないかと心配になってきた。


「今ハッチさんからビンビンとアイデアが飛んできましたよ! 雷神も悪く無いと思います」

「なんか違う!」

「そういう気分だったんですけどね」


 気分って、俺のアイデア受け取ってないだろ。

 話してるだけで1日が終わりそうだし、早く鍛冶場に行こう。


「2日後にはオプション追加しておきますからねー」


 気分屋生産者ロキ君。

 残念ながらしばらく来るのは止めようと思う。

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