第78話 釣り師の禁断症状

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 1st フィッシング! by SHOWA

 ネオ・アース・テラフォーミングの合同初イベント。


 4つの会場を行き来し、スタンプを集めろ!

 合計8つのスタンプを集めると抽選で豪華景品が貰える。


 参加賞:親方サイズのゲンコツクッキー(空腹度3日分)


 1stステージ KOKKA

 2ndステージ フィッシング大会

 3rdステージ 惑星でGO

 4thステージ クリケット ザ ジャっパーン!



 初めてのイベント。

 一つだけじゃ物足りない!

 全部はムリ?

 4つ行こうぜ!


 詳しくは公式HPへ

 https…………

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 とりあえず今わかってるのはこのくらいかな。

 あとは追加情報でちょくちょく出していくか。

 中島さんに送ってと。

 ここ3日は、リアルでの打ち合わせだったりでログインできてないんだよね。


「ちょっとだけ釣りを」


 ぷるるる! ぷるるる!


「ちょっとだけ」


 ぷるるる!


「海老名でございます」

 ”あ、海老名さん。話してくれたブースの件なんだけど、そこそこ集まりそうでね”

「それはよかったです」

 ”それでね。今日会う他のイベント開催者から、君とも話してみたいとあってね”

「いや、私は外部の人間ですので」

 ”うんうん。それをわかってて頼みたいんだ。もちろんこちらも追加報酬は払うし、先方も出すと言っているんだ”


 めっちゃ断りづれぇ。

 俺に必要なのは釣り成分なんだ。


 ”そういえば、海老名さんのホームページにGreat Tuna−Hygh 244が欲しいってあったよね? 在庫1個渡せるよ?”

「是非お願いします!」


 あ! しまったぁ。


 ”ありがとうありがとう! これでこちらの顔も立つよ。4時間後にこの間の会社へお願いできるかな”

「あ、はい」


 時すでに遅し。久しぶりの釣りが遠のく。

 しかし。しかし! グレートツナは逃せないんだ!



 ◇ ◇ ◇



「や、やっと時間ができた」


 忙しくも充実した日々だったが、釣り竿ならぶ会社で話しているだけあって、常に誘惑がある。


「あ゛ー! 釣りがしたいんじゃぁぁぁ」


 ピッ。ぶ〜ん。

 ぬぎぬぎ。

 ササッササ!

 カチカチ。

 ピッピッピッピ!


 Nowloading......


 <Neo Earth Terraforming の世界へようこそ>


 ごそごそ

 さっさっさっさ

 スタスタスタスタ


「あ、ハッチさんひさし……」


 タッタッタッタ!

 しゅっ

 カチっ

 スッスッス

 シュルシュル。ビっ!

 ちくちく


 ざっ

 しゅーーん

 ポチャン


「あ゛ーーーーー」

「久しぶりじゃの。息抜きか?」

「あ゛」

「そうかそうか。たまには必要じゃて」

「あ゛。ゔゔ」

「ふむふむ。イベントとはな。儂らも参加するじゃろうて」

「お゛お゛ー!あ゛」

「無論参加できるとも。むしろ景品は領主も協力していると聞いたからの。腰の重いエルフすらも来るじゃろうて。ほっほっほ」

「お? おぉぉぉ!」

「なかなか大きいぞ! 気を引き締めるんじゃ」


 ズルルル!

 ザッ

 ググググ!

 ビチャビチャ

 ぐいっ!

 びったんびったん


「余裕の尺超え!」

「やったのぉ」

「ちょっと補給できた」

「一匹だけで終わるのか?」

「もちろん、やらいでか!」


 うっひょー!

 人差し指サイズでもこんなに感動する。

 最高やぁ。


「それで、魔導ランプは?」


 すっかり忘れてた。


「あ、これです」

「うむ。問題なし」


《納品クエスト:ケットシー族の風足に自作魔導ランプを1個納品 を 完了しました》

《パスポートを取得しました》


 通行手形じゃなくてパスポートか。

 似たようなものだけど、実際のところはどうか。

 手のひらサイズで俺のアバターが写ってる。しかも服まで連動してるのか。


「行ける地域は裏面を見ると良い」


 ひっくり返すと、いくつかマークが描かれている。

 人族とエルフとドワーフ。


「その地域の支配者の顔が描かれるようになっている。エルフはここで。ドワーフがスヴァルトアルヴヘイムじゃ。ミズガルズは人族になっておるが、時々変わるのぅ。獣人の時もあれば、他の場合もある」

「へぇ。短命だからってこと?」

「いや、戦争が耐えないからじゃの。人族と獣人族だけでいくつも国がある。今は下火じゃが、どうせすぐ戦争が始まるじゃろうて」


 生々しい話じゃのぉ。じゃなくてだねぇ。

 一瞬コンプラを気にしそうになったけど、余計な詮索はやめよう。


「我が道は釣りと共にあり!」

「うむ。なかなか物騒な地域じゃが、ミズガルズは多様な魚が多い。アングラーを名乗るなら一度は行くことをすすめる」


《初心者アングラー の 称号を得ました。》

《世界釣りマップ の 記入コンテンツが解放されました》


「おぉ! 釣りマップ!」

「とうとう出たか。それではお主にこれを渡そう」


《風足 より 白紙を受け取りました》


「へ?」

「それに書き込むのじゃ」

「え? 手書き?」

「もちろん。我らにとって地図スキルと健脚スキルは必須。火の中、水の中、毒沼の中。場所によっては溶岩も超えねばなるまいて。先人たちはそうやって切り開いてきた」


 それを白紙から始めろと?

 なかなかに厳しい先行きである。


「まずは10個の釣り場を開拓せよ。さすれば新しい機能が追加されるじゃろう」

「え? 今機能って言ったよね? システム的な話?」

「では、またの!」

「待って」


 高性能のAIが積まれているという話は聞くけど、時々突出して変なキャラクターがいる。風足さんもそれなのだろうか?

 だとしても、機能説明を口頭で言うのか。


 俺個人としては……全然ありだ。

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