第74話 PR大使ハッチ任命
「あいつとはヒドイですね」
「すまんすまん。探してたからついな」
「ところで、オトシンさんは何用で?」
「そうそう、これがウチの会社の企画担当者だ」
ん?
ウチの会社って。
「え? まさかメーカーの」
「初めまして、SYOWAの中島です」
「どうも。えーっと、ドワーフのハッチです?」
ちょっと頭がバグったわ。
一瞬リアル言いそうになった。
「今回は仕事の話なのですが、一度お座りになってから話しましょうか」
中島さんの話だと、スポットごとに釣具普及率というのがあって、アルフヘイムがダントツで高いらしい。というか他の地域だとあって1本、もしくはゼロといった感じ。
それで、今回アルフヘイムで釣り大会を行うことになって、最優先券を勝ち取ったという話だ。
「ライバル社に一歩先ん出たわけですが、何分初イベントなわけでして人が集まるかどうか。そこでハッチさんにイベント告知を手伝っていただこうと参ったわけです」
「はぁ、なるほど」
告知と言われてもなぁ。
「何すれば良いんですか?」
「待て待て! 会社で来たと言ったろ? ほら、中島さんも」
「今シークレットメッセージで報酬の概算を送りますので」
———————————————
依頼内容
・イベント告知 及び PR
・ゲーム内の配信
・ブログでの発信
報酬
○○○○○○○○
———————————————
マジか!?
1年遊べる!(さすがに無理です)
いかん。
顔に出さないようにしなければ。
「なななななな、なるるるほど。く、詳しい内容をお聞きしましょう」
◆ ◆ ◆
「では後ほど、資料と正式な依頼書を送りますので」
「よろしくお願いします」
出発した馬車が去っていく。
「ふ、ふふふふふ! よっしゃぁ!」
小躍りが止められないわ。
「喜ぶのは良いが、PR方法はちゃんと考えてくれよ?」
「オトシンさんの心配は無用ですな。すでに案はあるのです」
「どんなのさ?」
「それは彼らに手伝ってもらって……ゴニョゴニョ」
「なるほど、それなら最低人だけでも集まるか」
そうなるってくると更に忙しくなるな。
「そんなことしなくても人だけなら集まるんじゃないですか?」
「なんで?」
「いや、なんでって日本初のネテライベントですよ。どういう感じでやるかわかりませんが、無理してくる人も多いかと思います」
なるほど。
それだったら必要以上に頑張らなくても……。
「おい。ウチも馬鹿な奴だけじゃないから、ある程度の概算は出してるはずだぞ。あまり手を抜くと依頼料出さないからな」
「もちろんでございますー!」
———————————————
<生産者専用 連絡スレ2>
(アルフヘイム)ハッチ
「ミズガルズの生産者諸君へ。私の実力ではそちらに行けず、映像のみになってしまい申し訳ない。さて、今回の会合だが、私の持つ一部の釣竿レシピを公開することにした。もちろん最高ランクでは無いが、なかなかに使えるものだ。釣り大会に先立ち協力者には先行公開を行うので、協力を頼む。同志諸君の連絡を待っている」
———————————————
「こんなものかな。ポン竿もここだとダブついてるみたいだし、それをレンタル品にしても良いか」
「やっぱりハッチさんは甘いですね。数十万単位で参加希望が来るはずです。となるとプレイヤーだけでは生産体制が整わない」
確かに数十万だと全然足りないな。
「ぶちさんに良い考えがあるの?」
「ふふふ。私のHIGHになった脳細胞に任せてください。3日で話をつけてきます。あとレシピください」
レシピを渡すと、テロップとサビ猫を連れ立って出て行ってしまった。
今日はやることも終わったし、明日の準備でも始めるか。
◆ ◆ ◆
Now Loading......
ところどころ光が降りてくるこのスポットは何度見ても素晴らしい。
地底湖に胸を弾ませるのは俺だけじゃなく、モジョコさんも喜んでくれている。
「ゲームの中とはいえ、そうとうな作り込みですね! どこがモチーフなんでしょうかね。グランセノーテに似てる気もします」
そーゆう詳しい場所はわかりません。
綺麗。
ヨシ。
「石英の必要数は手に入ったんですよね?」
「そうですよ」
「なんで釣り?」
「ここは特殊な奴が釣れまして、今度のイベントでも使えるんですよ。もうかかった!」
こいつの引きはほとんど無いと言って良い。引いてる最中も、感触はズモモモモと水底を擦っている感覚になる。
「戦闘になるので注意してください」
白い体が水から出てくると針が外れる。
なぜか毎回外れるんだよね。
「ハードボーンラットです」
「まさかスケルトン!?」
「一応骨だからスケルトンだけど、考えてるのとは違うと思いますよ」
教授に診てもらったけど、アンデッドでは無いらしい。
生物とゴーレムの半々のような……動物で良いのか?
骨と魔石のみで構成された体は、声を出さない。顎を上下させながら威嚇を続けるが、気にせず突撃して鉈を振り下ろす。そして、落ちた首の間から魔石を取り出せばこちらの勝ち。
延々攻撃しててもなかなか倒せないし、魔石を取り出すだけとわかった時はガックリした。ただ、それからはここで一番弱い部類になったかな。
「なかなか使えるやつで、小さいけど骨は頑丈だし鉄みたいな性質してます」
熱したら溶かして鍛冶にも使える。
難点は一度溶かすと重くなることで、師匠レベルになると軽さを保ったまま再利用しているんだけど、まだまだレベルが足りないね。
「他の人は、魔石目当てですかね」
「このちっこいのを?」
「これ、正確には魔核と言うらしく、小型ゴーレムの核にできるみたいですよ」
「「ふぁ!?」」
おぉ!?
静かだったモウカさんまで驚かせられたか。
「これがゴーレムに」
「作れても手乗りサイズなので、ペットです。しかもプレイヤーで作れる人はいないので、ゴミですな」
「でもハッチさんは取りに来るんですよね?」
「まぁ、ウチはこいつがいるので」
取った魔核を横へポイすると、ヤマトがうまくキャッチ。
そして、そのまま飲み込む。
すぐにプリっと塊をひり出した。
「あ、10回目だったか」
「ウンチした!」
「魔石食べさせてからわかったんですけど、必要な魔力吸い取ったら残骸を出すんですよ」
これも使える素材で、魔石が多めだとガラスの代わりになるし、魔核が多いと研磨剤にできる。たまーに廃棄物も出すけどね。
その情報が出回ってから、ドワーフどもは地下界へ行く方法をずっと探しているんだよね。パスポートの話もできれば良いんだけど、言っても伝わらないだろうな。
2人とも素材を全部譲ってくれるので集まるのが早い。本当に助かります。
「おかげさまで必要分が集まりました。今度はこっちが手伝う番ですね。何しましょうか?」
「私は育成援助で来ただけですので、モジョコさん何かありますか?」
モウカさんも何か言ってくれても良いんだけどな。釣り大会も控えてるし、釣竿でも渡しますかね。
「それなら、大蛇に会ってみたいですね」
マジか。
あいつだけは未だに苦戦するんだよな。
「正直戦力としては微妙ですよ」
「あ、戦うというより見たいだけなんですけど……ダメですかね?」
見る=戦闘なんだけど、ここでダメというのも可哀想だし。
まだ昼過ぎか。
「一度荷物だけ置いてきても良いですか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます