第73話 光虫の素材回収完了

 光虫の爆発後、再戦までちょっと時間かかったな。

 それでもその日中に4体分の光油こうゆを手に入れることができた。ここまで狙った種類が出てくるのも珍しい。


「クモモの糸も手に入ったし、予定より相当良い成果でした」

「それなら良かったですわ。それで明日は洞窟でしたっけ」


 モウカさんたちもヤマトの働きを認めて、明日も同行してくれることになった。


「それにしても、こんなに至れり尽くせりな狩りは初めてです」

「これは雑貨屋の弟子特典ですね。といっても武具屋の弟子もそれなりに修理できますから、あいつらもオススメですよ」


 逆に木工関係は頼むし、生産者仲間ゆえの便利さでもある。

 それにしても、モジョコさんもかなり戦闘よりの育成なのかな?

 威力はモウカさんと良い勝負だし、それも風属性だけでしょ。明日は火も使えるから楽になるかな?

 洞窟の情報を伝えつつ街まで戻ると、今までに見たことないちょっと豪華な馬車が止まっていた。


「初めて見た。モウカさん知ってる?」

「いえ。私も初めて見ました」


 馬車の横にマークが付いていて、それが車輪と釣竿のマークをしているわけよ。これはちょっとテンションがあがるよね。


「なかなか良い趣味しているな」

「車輪は馬車でしょうか?」


 気になるのは俺たちだけじゃなく他の人たちも野次馬している。

 グスタフさんやテッケンさんも見えるし、ケットシー族はテンションをあげて飛び跳ねている。


「ハッチ氏! やっと戻ってきましたか」

「グスタフさんはこの馬車何か知ってます?」

「何ってあなたに用事みたいですよ」

「俺に?」


 用のある人がすぐ戻ってくると言うので待つことになった。

 それでこの馬車なんだけど、企業専用車らしく特別に大きなロゴをつける許可が与えられているらしい。


「そうだ。新しい釣り場の魚があるから、待ってる間に食べようよ」

「それなら私が焼きますよ。得意なんです」


 得意というならモジョコさんにお任せしよう。


「こんな魚もいるんですねぇ」


『角なまず』

 ツノでは無い。こいつはカクなまずと言って角ばっている形と海底を歩くようなヒゲがある。


「俺は『ほぼホウボウ』って呼んでる」

「じゃあちゃちゃっと焼いてきちゃいます」


 モジョコさんは手早く串を打ち、焚き火にかけ始めたが、目敏い奴らが見つけて近づいてくる。


「おうおう。良いもの焼いてるじゃにゃーか」

「もちろん、強牙きょうが兄貴の分もあるんだよにゃ?」

「そうだそうだ」


 魚大好きの3猫が強請ってくる。


「おい! この間も玉ウグイをやったじゃないか!」

「あんな小魚じゃ足らんにゃー!」

「自分で釣れよ。ケットシーなら、もう買えるくらい出回ってるだろ!?」

「そ、そんにゃの買ってられるかにゃ!」


 横から子分2匹がヒソヒソ話をしているが、すべて丸聞こえだ。


「兄貴は金にゃいからにゃぁ」

「新作の装備買って今月何もできないってにゃ」


 釣竿買えなくて強請ってるのかよ……。


「私の作った手甲鉤が売れました」


 グスタフさんのお客さんだった。


「お金が無いなら他にアイテムとか無いわけ? それなりに貴重なら作ってくれそうな奴探すけどさ」

「ほんとか!? 頼む!」

「それで、ぶつを出しな」


(これじゃどっちが悪者かわからないですわ)

(もともとは突っかかられたはずなんだけどなぁ)


 良いんだよ。他のケットシーはわからないけど、こいつはしょっちゅう強請ってくるんだから、多少出させないといつまでもついてくるぞ。

 強牙がゴソゴソとカバンを探ると一個の石を取り出してきた。


「良いもの作ってくれるにゃら、これをやるにゃ」


 みんなで覗き込むが首を捻るばかり。


「ただの石ですわ?」

「石が報酬ってことですか?」

「ばかにゃ!? これの価値がわからにゃいのか?」


 うーん。モウカさんの言う通り石に見えるけど、何かありそうな気もする。

 テッケンさんが何やら操作してるのを見て、ふとあれを試そうと思った。ちょうど場所もセーフティだからスキルの付け替えができる。

『鉱物探知』

 付け替えてから石の中に光りが見える。


「何かの鉱石かな?」

「それにしては光が強く無いか?」

「宝石では無いかと思いますが」


 そこで強牙の顔が綻ぶ。


「やっぱりグスタフはわかる奴にゃ。上手く削れば良い宝石が出るって」

「俺の伝手だと宝石は微妙かな」


 今は宝石よりも魔石や皮の人気が高い。

 テッケンさんの知り合いも使いそうな人はいないみたい。


「それなら、ぶち猫さんに聞いてみたらどうですか?」

「いや、彼女も魔石が欲しいって毎日騒いでますよ」

「それは私も聞いてます。だけど使えそうな気がするんですよね」


 よくわからないが、連絡してみることになった。


「……というわけで、どうする?」

「うーん。宝石の原石ですか。今は使い道がなぁ」

「そうだと思ったんだけど、グスタフさんにも言われたし一応ね」

「グスタフさんが? またどうし……そうか! 受けます受けます! そこで待ってて」


 通信が切れると数十秒でテロップと一緒にやってきた。


「それで新しいネタって何?」

「ハッチさん! どれですか!?」


 石を見せると2人して覗き込む。


「うーん。本当に宝石ですか?」

「「「おそらく」」」

「先行3人がそう言うなら、行けますかね」

「よし。告知して明日夜に配信しよう」


 どうやら配信のネタに使われるみたいだ。

 物としての価値じゃなくて、ネタとしての価値になったか。

 依頼者として強牙も一緒に見守ることになったが、ぶち猫さんの釣竿がもらえることになってそれどころではない喜びよう。


「兄貴おめでとう!」

「これで兄貴も大人の仲間入りにゃ!」

「にゃー! 今度はお前たちの分まで手に入れるにゃ」


 両前足を高く掲げて雄叫びをあげる3匹。

「「「やー!」」」


 タイミング良く魚が焼けた。

 モジョコさんの焼き魚を頬張りスタミナを回復していると、お待ちかねの相手がやってきた。


「いたいた! あいつがハッチですよ」


 見知った人だけど、丁寧語を使ってると違和感が強い。

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