第75話 ガス地帯かミリピード地帯をおすすめします

 不要なアイテムは置いてきた。

 あとはおびき出すだけ。


「大蛇を出すトリガーは特定スポットの採掘でレア鉱石を出すことです」


 見つけた場所は、地底湖奥と次層へ行く別れ道の行き止まり。それにミリピード地帯。

 ミリピードはドワーフ村出身者だと行けてしまうんだよな。もちろん見た目が嫌な人はいる。ただ臭いは全然耐えられる。

 それもこれも、初期のゴーグルでバチクソくっせぇマスクを借りたおかげだな。感謝はしない。運良くその洗礼を受けなかった奴はここに来る資格無し。

 行き止まりはよくわからんガスが出ていて、ランダムで状態異常にかかる。これに関しては薬屋の洗礼を受けていれば問題ない。バチクソまっずい薬を飲めば良いだけだ。


「どこにしますか?」

「「地底湖で」」

「俺としては他のところがオススメなんですよ。蛇も状態異常になるし、ミリピードの体液を被れば攻撃頻度が下がるんです」

「「地底湖で」」

「残念です」


 諦めて地底湖で採掘を開始する。レア鉱石は水鉱石と土鉱石の2種類で、採取率は5%程度かな。大蛇スポットのみ出る量が多く設定されているように感じる。


「うへぇ。なかなか出ませんねぇ」

「モジョコさんは、忍耐がありませんわね。もっと採取に行った方がよろしいですわ。アルデンさまの弟子なんですから」


 そこにアルデンさんは関係ないかと思う。5%と言えど沼ったら出てこない。出現率10%に3日かける冷凍マグロは「黒目が亡くなってからが本番だ」と言っていた。


「あ! 出ましたわ」

「ちょっと良いですか?」


 ツヤ感があるわりにゴツゴツしている。


「おめでとうございます! 宝石の原石です!」

「これで大蛇が?」

「出ません。これは0,1%の超レアですね。水鉱石か土鉱石限定ですので」

「はぁ。仕方ないですわ」


 まだ掘り始めて1時間程度だ。


「これは?」

「土鉱石だ! 来ますよ!」


 蛇特有のほぼ無音。ただこいつはデカすぎて「ズモモモモ」と独特の引きずる音が鳴る。


「これは……大きいですわね」

「うひゃー。話盛ってた訳じゃなかったんですね」


 嘘はついてない!

 まぁ、今までの敵と比べるとサイズ感が飛び抜けて違うので、疑いたくなるのもわかる。


 持ち替えたハンマーで何枚か鱗を剥がしていく。そこからしばらくは全力で逃げ続けるのみ。ヘイトが溜まりすぎて、苛烈な攻撃のほとんどがこちらに来るから何もできん。


「とう!」

「てや!」

「ヘァ!」


「その避け方ふざけてませんの!?」

「なに! 言って! るんですか! 大真面目ですよ。ドワーフの鈍足舐めないでいただきたい」


 走っても遅いなら飛べば良い。転がっても良い。脚力はあるのに何で遅いのかねぇ? 

 見えないデバフがかかってるとしか思えない。

 なんとか避けつつ、削り続けること30分。


「よし! 引きつけてください!」


 引きつけは問題ない。『武器破壊』とヤマトの挑発で一発だ。

 それにしても、何するんだろ?


 モジョコさんが煙を吐き出すと大蛇にまとわりつく。蛇はまだこっちに攻撃していて気づいてなさそうだ。

 煙が全体を包み込むとモジョコさんが吸い込み始めた。

 吸い込んだ空気どこに行ってるの!?

 吸引力だけなら、ランキング1位の掃除機を超えたな。

 なんという力技!


「大蛇を食べるなんてすごい!」

「あ、食べてないですよ」


 手に乗った蛇がチロチロと舌を出している。


「え? これが?」

「さっきの大蛇です。使役しました」


 マジか!

 まさかさっきのがテイム!?

 初めて見たけど驚愕のテイム方法だな。

 オトシンさん以外で使役してる人いないからなぁ。ドワーフはテイムできないし、貴重な経験をさせてもらったのかもしれない。


「良いものが見れました。ありがとう」

「は、はぁ」


 モジョコさんは、小さくなった蛇を髪の中に仕舞い込むと帽子を被り直す。

 帽子の端からちょこちょこ頭を出している小蛇がかわいい。


「私の用事は終わりました。ありがとうございます」

「では帰りますわよ」


 結局2回採掘できたことで、石英が多めに採れた。

 モジョコさんも目的達成したし、どっちも得したことになる。良かった良かった。


 街の入り口までたどり着くと、2人とも用事があるということで解散になった。


「あ、これ良かったら譲りますわ」

「土鉱石? それなら」


 シュルルル。

 土鉱石を出した瞬間に顔を出す蛇君。

 だろうな。何度も戦ったからわかってるぞ。


「その蛇が食べると思いますよ」

「なるほど。では、モジョコさんに差し上げましょう」

「わわ。ありがとうございますー」


 2人と別れてから、何度もあの光景を思い出す。

 何かのスキルだろうか。

 まさか吸引とか?

 ちょっとやってみるか。


「スウウウウ! 違うな。もっと勢いがあった。シュオーーーー!」


 なかなか良いんじゃ無いか?


「シュオーーーーー!」

「それってなんですか? 新しいフラグ発生?」

「え?」


 ———————————————


 <特殊スキル報告版>


 ……

 …………


 208:猫好きポックル

 吸い込みスキルの目撃情報あり

 強烈な吸引力で大蛇も飲み込む。

 情報提供者:某ドワーフ

 信頼度:20%


 209:カカオハンター人間

 信頼度低すぎわろた


 210:毛玉職獣人

 え? 某ドワーフの信頼度低すぎ!?


 211:拳のドワーフ

 あの人の情報はランダムボックスだから、又聞き情報だとはずれが多いぞ。

 有用な情報はすぐに広まるしな


 212:一部がヒュンとした人間

 いつもお世話になっています


 213:鵜ジュージン

 >>212

 何をだ!

 名前が危険すぎるぞ!

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