第55話 狼に慣れ、戦闘で勝利。ただし補助輪付き
およそ1日の接敵数は3回程度。
通常の戦闘職であれば、装備の修理などを考えると無理はできない。
そこは生産職の強みだろうな。
「装備を直せるから、強敵と何度も戦えるね」
「ハッチさん。それは違いますよ」
「え? 何が?」
「そもそも我々と戦闘職では、もともとの強さが違いますからね」
確かにそうだな。
狼程度には負けないのかもしれない。
オトシンさんのリトルウルフも強いのかね?
一緒に戦った感じだと、かなり動きが良かったし。
「ぶもぉぉぉ」
「敵が出たぞ!」
本日2度目の戦闘は、狙った通りならば……。
「草原狼だ! 前回と同じで!」
「「了解!」」
毎度ながらモウカさんと後方担当。
さすがに4度目となれば狼の対応も上手くなるってもんよ。
モウカさんが追い抜かれるところまでは織り込み済み。
そこで鉄の玉を投擲。すぐに土弾も放つ。
スリングをガシャコンするよりも、この方が早いし牽制できることに気づいた。
体制が崩れたところで、すかさず鉈を振りかぶる。
それを何度か繰り返すと、小さな振動が終わりを告げる。
「南無三。お前の体は大事に使わせてもらうぞ」
祈りを捧げたら、剥ぎ取りの開始だ。
「ハッチさん」
「はい」
「その動きは手刀を切ると言って、お相撲さんの作法なのですが……」
「あれ? 何か間違ってました?」
「間違ってるとかではなく……。いや、受け取る時に使うから良いの? だけどこの場合は」
考え込んでしまったな。
こうなるとしばらく動きそうに無い。
どうせ俺は剥ぎ取りをするだけだ。
あれから1日に1度だけ、狼を呼び寄せている。
モウカさんのフォローがあるうちに慣れてしまおうという、保護者付きの戦略だ。
そして俺が他の人と一緒にやらないのは、簡単な話で、俺が一番弱いから!
そもそもの武器威力も戦闘スキルも一番低い。
「お疲れさまー」
「そっちは剥ぎ取りも終わったんですか?」
「2人がかりだからね」
こんな感じで昨日から、先に倒されてしまっている。
「やっぱりテッケンさんの一撃は大きいですね」
「戦闘寄りだからね。まだまだ抜かれたくないよー」
敵の動きに慣れるのが早く、強撃を当てるのが上手い。真似しようと思っても、なかなか動けないんだよなぁ。
まぁ、こっちでは更に上の人がいるんだけどね。
「モウカさんどうかしたの?」
「いや、こうやったら考え込んじゃってさ」
さっきの手の動きを見せると、テッケンさんは不思議そうにしていた。
「とりあえず埋めて中に入ろうよ」
そういえばまだ埋めてなかったな。
2人に手伝ってもらい、さっさと後処理を済ませる。
「モウカさん。中に戻るよー」
動かないな。
「ほら。いつまでも止まってないで!」
「え? あ、すみません」
モウカさん再起動!
牛バスに押し込んでやっと出発した。
「予定だと明日到着だよね?」
「そうですわ」
「気になったんだけど」
「はい?」
「敵って2種類しか出ないの?」
出てくるのは狼とうさぎばかりで、他の種類は見てないんだよね。
街道とは言っても、もうちょっと種類が増えても良いと思うんだけどなぁ。
「私も気になってました」「同じく」とグスタフさんテッケンさんも同意してくれる。
「私も詳しいことは知りませんが、この馬車に乗ってるとその2種類だけですわね」
「馬車にってことは、乗ってなかったら他にも出るの?」
「他にもというか、他のしか出ませんわ」
他のしかって、今出ているのは馬車専用のモンスターってこと?
それなら特殊モンスターになるのかな? とか思ったけど、アルフヘイム近辺に出てくるみたい。
「徒歩で移動しようとすると、私程度では死にますわね」
「え? モウカさんで死ぬレベルなら俺ら無理じゃん」
頷く影が隣から見えてきた。
「これはアルフヘイムに着いても、戦闘訓練した方が良さそうですね。ハッチさんもテッケンさんも、良かったらたまにチーム組みませんか?」
それは願ったり叶ったりだ。1人じゃ厳しいし、他のプレイヤーがどのくらいいるかわからない。
「モウカさんもしばらくアルフヘイムならどうですか?」
「私は1ヶ月後に戻るので、それまでなら」
「そっかぁ。それでも色々知ってる人がいるのは頼もしい。是非お願いします」
「わかりましたわ。ハッチさんは入ってますけど、2人もフレンド追加しても?」
「「お願いします」」
到着してからもなんとかなりそうかな?
いや、生産拠点や素材の場所も探さないといけないな。
思ったよりやることは多いぞ。
「ハッチさん? どうした?」
「いや、新しい拠点や素材集めをどうしようかと思ってね」
「確かに、皮加工も場所とるよな」
そこでグスタフさんとモウカさんが会話に入ってくる。
「私の予想だと、拠点に関しては気にしなくて良いかと思います」
「生産場所も気にしなくて良いです。素材は……私も全部は知らないです」
この2人が言うなら何かしらの心当たりがあるんだろう。
それにしても、モウカさんが勝てない敵かぁ。
どんな奴なんだろうな?
ヤマトに鉄の玉を与えつつ考えていると、手を押し上げる感覚があった。
みんなの視線もヤマトに集まっている。
「なんか光ってない?」
「え?」
「まさか進化!?」
「おぉぉぉ!」
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